天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第18話パラレル特別編後編『花束が届いた』

めっちゃ短い予告のような話。

「腰越人材派遣センター社長の腰越奈緒美、野長瀬、典子、千明は、その日、おっそろしいものをみた。それは、確かに早坂由紀夫の姿をしている人間なのだが・・・」すでにネタバレしているのであった(笑)

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「そぉんな気になるんだったら、ここに電話してみりゃいいじゃん。日比谷フラワーセンター」
由紀夫は、正広と眺めていた配送表を奈緒美のデスクに投げる。
「あ!そうよ!そうよね!野長瀬!ちょっと、野長瀬、あんた電話しなさい!」
「えっ!?え、や、やですよ!」
「何でっ!」
「だ、だって!ど、どぉすんですか!それで由紀夫ちゃんが出てきたら!」
「だぁかぁらぁっ!俺は、ここにいるだろうが!!」
「そうです!なのに、出てきたらどうするかって言ってんじゃないですかっ!」
「だから、んな訳ねーじゃん」
「・・・確か、ドッペルゲンガーを見ちゃった人間は死ぬんですよ・・・」
典子がぽつりと呟く。
「やだぁ!由紀夫が死んじゃったら、あたし、やだぁっ!」
ヒシッ!と正広に抱きついて、千明はわめき、直ちに由紀夫によって、排除される。

千明が猫みたいに首根っこをつかまれて、窓から捨てられそうになった時、突然ジュリエット星川が商売モノの衣装に身を包んで現れた。
「匂う!匂うわぁ!!」
「・・・何が」
一直線に自分の元に来られ、うんざりしたように由紀夫は言った。
「生き霊よ・・・!」
「やっぱり生き霊なんですねぇーっ!!!」
「きゃあーーーーっ!!!」
時々知能指数が一桁になってしまう野長瀬と千明がわめきまわる中、由紀夫は正広を連れて事務所を出た。
何せ、ブイヤベースが待っている。

「・・・ところで、この花束、何ですかね」
一人冷静だった典子は、置き去りにされた、お気の毒な花束を見つめていた。
オフィーリア、哀れなり・・・。

それから一週間。
由紀夫は一仕事終えたところで、声を掛けられた。
「あぁ!」
けれど、親しげに手を挙げた男を、由紀夫は知らなかった。
「久しぶりだね、って、うちには来てくれてるらしいけど」
「・・・は?」

由紀夫は、知らない人から声を掛けらる事が結構多い。
大抵はこのルックスのためによってくる女なので相手にはしない。けれど、かつて記憶を無くした事があるため、もしかして覚えてないだけなのかもしれないと、一応、判断がつくまでは相手に喋らせる事にしてあった。
「今日は?カット?」
「カット?」
「うちに来たんじゃないの?」
ん?とあたりを見ると、10mほど先に美容院があった。
「ヘアスタジオ・COOL・・・」
「ちょっと伸びたのかなぁ」
その店を見るためによそを向いた由紀夫の髪を、その男が触った。仕事が終わって、くくっていた髪を解いたところだった由紀夫だったが、さすがに驚く。
「何ですっ?」
「うち、また新しい子が入ってね。ちょっと見学させてあげたいんだけど、毛先だけ揃えさせてもらえないかな。もちろん、お礼はするし」

タダどころか、バイト料まで貰っての髪の毛カット。

腰越人材派遣センターに勤め出してから、不本意ながら、どうも、社長と、社風に染まってしまったらしい。由紀夫は、毛先だけなら、とうなずいて、見知らぬ髪の毛フェチ男について行ってしまう。
(兄ちゃん!知らない人についてっちゃダメってゆったでしょ!!←どこか遠くの正広の声)

「COOL」は、すっきりとセンスのいい美容院だった。
ふうん、と由紀夫は店内を見回した。
由紀夫が行ってる美容院は、奈緒美推薦の、これでもか!というゴージャスなサロンで、しかも、奈緒美が勝手に予約を入れ、仕事のように行かされるものだったりするため、こういう店の方が簡単でいいと思う。
「あら」
若い女の子が驚いたような顔をする。
「今日、来るって言ってた?」

「言ってません」

何せ、先週の事。
誰かと間違えられてる事に由紀夫は気がついた。
「俺、そいつじゃないです」
「え・・・?何、言ってんの・・・?」
「人違いですよ」
「嘘ぉ!」
彼女は、いきなり由紀夫の髪をつかんだ。
「だって、この髪でしょお?」
「あぁっ!?」
「きょ、今日子ちゃんっ?」
さっきの、髪の毛フェチ男もやってくる。
「だって!だって、店長!こんな髪、めったにあるもんじゃないでしょう!?」
「そりゃあ」
うっとりと、髪の毛フェチ店長は、由紀夫の髪に触れる。
「最高の髪質だよねぇ・・・」
「ちょ、ちょっと・・・!」
「もう、ふざけちゃって。何の遊びなの?シャンプーしていいんでしょう?」

こんな遊びには慣れてるって言う風に、彼女は笑った。
「いいよ、いいよ。今日子ちゃんの腕で、ばっちりシャンプーしてあげて」
名残惜しそうに髪が離れ、薄気味悪い思いを感じながら、由紀夫は強引にシャンプー台に引っ立てられて行った。

知らない人についてっちゃいけない。

昔の人は、うまいこと言うな・・・、と思いながら。

 

同じ頃、正広は買い物をしていた。
奈緒美から、何だったか、綺麗にドライフラワーができるグッズがあったはず。探してきて、とアバウトな注文をされて。
あの翌日、ショックから立ち直った、もしくは、目を逸らす事にした一行から、由紀夫はむちゃくちゃに責められた。
一体この花は何で、日の出銀行の水木ってのは誰で、そして、あの配達人は誰。
最後の質問はもちろん、すべての疑問に関して、由紀夫は知らないと首を振った。
知る訳がない。
水木が一方的に由紀夫を見た時があるだけなのだから。

それじゃあ、と次に狙われるのは、当然そのめったにない色合いの美しいバラだった。知らない人からなんだったら、これいらないわよねっ!?という奈緒美たちに、素直ぉーに由紀夫はうなずき、けれど、典子も千明も欲しがったため、オフィーリアはオフィスで飾られる事になった。

そのオフィーリアをドライフラワーにしたいと言われて、郵便局、銀行、と巡る正広が、ついでにと、ドライフラワーグッズを探している。

あ、花屋さんだ。
めったに来ない、綺麗な花が山盛りになっている店先を眺めていた時、隣に立った人がいた。
邪魔になっちゃいけないとちょっと横にずれた正広は何気なくその人の横顔を見て、固まった。

長い、サラサラの髪。高い、通った鼻筋。女の子みたいと言われるふっくらした唇。

「・・・兄ちゃん・・・」

正広の小さな声に、隣にいた男は振り向いた。
大きな、二重の瞳。不思議そうな表情。
正広の兄に、うりふたつの、
「じゃ、ない・・・」
でも、同じ人じゃあ、なかった。

 

俺、美容院替えよっかな。
綺麗に揃ったサラサラの髪で自転車を走らせながら、由紀夫は思った。
最後の最後まで、人間違いだと納得はしなかったけど、お金は取られないし、何せシャンプーが絶品!
あれは相当気持ちがよかった!シャンプーだけしに行っても後悔しないくらい。
髪フェチの店長も、さすがに髪フェチだけの事はあって、とにかく髪に対する愛情も半端じゃなく。
いい感じだったよなぁ。
・・・でも、これから行ってもタダなのかな。
相当人間がせこくなってきている由紀夫だった。

で、ご機嫌よく帰ってきたところ。

事務所に自分がいた。

 

「あ、あの・・・!」
正広は思わず言っていた。
「日比谷フラワーセンターの、TKさん、じゃあ、ないです、か・・・?」
けれど、その人はきょとん、と、軽く首を傾げたままで、あ・・・!と正広は頭を下げる。
「ご、ごめんなさいっ、あのっ」
「あ、いや、そうだけど。どっかで会ったかなぁって思って」
声も一緒ぉー!!!
大きな、零れそうな目を見開いて、まじまじと正広は日比谷フラワーセンターの、TKを見つめた。

 

「あ、兄ちゃん!この人!この人だったの!」
帰ってきた由紀夫を見つけて、正広がすっ飛んでくる。
オフィーリアが生けられた花瓶の側で、自分にうりふたつの男が立っていて、さすがに驚いた顔をしていた。
「早坂由紀夫さん?」
「あ、あぁ」
「すごいね、ホントそっくりじゃん?俺ら。正広くんがあんま、似てる、似てるって言うからついてきたけどさ」
ゆっくりと側に来る由紀夫に、手を差し出した彼は、「拓です」と名乗った。
「拓?」
「そ。これ、持って帰んなかったんだ」
オフィーリアを親指で示し、拓は言う。
「あ、あぁ。なんか、誰からか解んなかったし」
「え?俺、伝票置いてったろ?確か、日の出銀行の水木秘書」
「うん。でも、知んねぇし」
ふーん、といいながら、拓はふと首を傾げた。
「なぁ、ひょっとして、COOL行った?」
「え・・・。あ、じゃ、やっぱり間違えられたんだ」
「え?ホントにそう?なぁんか、あっこと同じシャンプーの匂いすんなって思って」

ケラケラ笑う拓と、あぁ!と何度かうなずく由紀夫を、奈緒美たちは交互に見比べる。
「気持ち悪いわねぇ・・・」
「並べてもそっくりじゃないっすか・・・」
「さすがに並べたら解りそうなもんですけどねぇ・・・」

「あそこ、でも、今日子さんって気づかなかった?俺、いっつもシャンプーしてもらってんだけど」
「あ!やってもらった!」
「「絶品!!」」
二人して声を上げる。
「でも、逆に信じてもらえなかったけど。髪質一緒だって」
「・・・髪質も、一緒なのかよ・・・」
拓は少し気味悪そうな顔で、もう一度まじまじと由紀夫を見つめる。
けれど、すぐに表情が変わった。
いたずらを企む、子供の顔に。
「え、でも、あいつ気づかなかったんだ。うわ。俺、ちょっとこれから行ってみよ。カットとかしてもらった?」
「あぁ、してもらった。それは店長に」
「うん。あの人ね、今んところ、シャンプー専門。まだ見習いだから。昔キョンキョンがやってたCMであったけど、シャンプー屋さんがあったら、大繁盛なんだけど」
そして、さっさと行こうとした拓は足を止める。
「あ、っと。お花のご用命がありましたら、日比谷フラワーセンター、銀座店をよろしくお願いいたします。その際、「拓に」とご指名いただけましたら、アレンジメント、配送等、細かくご対応させていただきますのでー」
にっこり笑った拓は、的確に責任者の奈緒美を見つめる。
「何でしたら、お花生け込みに参りましょうか?」
「え、あ。えっと」
オロオロしてる奈緒美ににっこりと笑いかけ、拓はドアを出る。その時、由紀夫にこっそり言った。
「今度、飲み行こう」
そして、由紀夫もニっとうなずいた。

「それにしても、誰も気づかなかったってのも失礼な話じゃねぇの?」
拓が帰った後、生き霊だのなんだのとわめいた上司、同僚に向かって言う。
「はい!俺解った!」
「えらいねぇー。やっぱり、正広だけだねぇ、俺のこと、解ってくれてるのはねぇー」
「あら、いや、そんな」
拓に笑いかけられて、それにまだおろおろしている奈緒美が口篭もっていると、千明が得意気に入ってきた。
「奈緒美っさぁーん!」
「うるっさいわねぇ・・・」
「あたしねっ!あたしねっ!!さっき、由紀夫にぃ!可愛いねぇって、言われちゃったのぉー!!」

「おまえってそういうヤツだよな」
奥のソファから立ち上がった由紀夫は、ただ一人、自分と拓を間違わなかった正広を手招きする。
「ひろちゃんは偉かったから、お兄ちゃんが、好きなものをごちそうしてあげましょう」

「それにしても、おまえよく解ったね」
たらふく、しゃぶしゃぶを食べた帰り道、由紀夫が尋ねると、正広は不思議そうな顔をした。
「でも、きっと、兄ちゃんだって解るよ。拓さんと兄ちゃんみたいに、俺にそっくりな人がいても」
「そっかな」
「そだよ」
「兄弟だもんな」
「兄弟だもんね」

その頃、下北沢にあるヘアスタジオCOOLでは、拓の髪が3時間の間に伸びているぅ!!と店長以下パニックに陥っていた。

<つづく>

えー、お待たせいたしました。これは、キムトモさん(そして、野長瀬智子さんでもある(笑)←うさぎか!?)がお書きになっている、TKシリーズとのザッピング企画でしたぁ!ですから、当然、元ネタがございます。この日比谷フラワーセンター銀座店の拓についてお知りになりたいあなた!こちらのページへGO!!すんばらしいぞ!!

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TKCOOL編もよろしくね!でも、実はいくつかのミスが先週の私のページにございやす。探してみるのもまた一興かと・・・。
智子おねいさま、いつもいつも、ありがとうございます!!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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