天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第19話『春眠暁を覚えずを届ける』

ご挨拶

「ギフト本編の放送から1年!ギフト番外編も41週になりました!1年間が52週ほどですから、ギフト本編の11話を入れて、見事52週、1年間!こんな事をやってきたわけです・・・。アホです。アホ丸出しです。でもいいんです。アホはアホなりに生きていくのです。って訳で本人が飽きるまで!お付き合いいただければ幸いです(笑)」

yukio

春だなぁー・・・。ポカポカと気持ちのいい陽の光をベッドで浴びながら、正広は思った。こういう時、朝早く起きなくてもいい自分をラッキーだと思ってしまう。だって、春眠は暁を覚えないものだから、いつまででも寝ていたいー・・・。
「正広くん」
寝ていたぁー・・・いぃー・・・。
「正広くぅーん?」
だめだ、起きちゃいけない。起きたら、この気持ちよさは失われてしまうんだ。
「まぁさぁひぃろぉー、くぅーーん??」
俺を呼んでる声は、夢の中から聞こえてきてるものだから、これで起きちゃいけない。夢の続きを、ゆっくりと見ないと・・・。

「正広!起きろって言ってんだろっ!」
「やだぁーっ!」
「やだじゃねぇ!仕事あんだろっ!」
う。
兄に引き剥がされた毛布にすがり付きながら、正広は硬直する。
「だ、だって・・・っ!」
「仕事あんだろぉ?」
「だぁ・・・って・・・」
「こぉんなに天気のいい土曜日に!朝っぱらから仕事があんだよなぁ!俺たち兄弟はぁ!」

あるのである。土曜日なのに、あるのである。
事の始まりは、金曜日のうっとりとした正広の一言だった。

「あそこの公園ね、桜、めちゃめちゃ綺麗ですねぇ・・・」
「あ、そうよね。小さい公園なんだけど、桜だけはすごいって言うか」
「いいなぁー、お花見してる人いて。ねぇ、奈緒美さぁん、お花見したくないですぅー?」
「そりゃしたいけど・・・。じゃあ、ひろちゃん、いい?」
「え?何が?」
「お花見、する?」
「・・・はぁ。いい、って、何が、です?」
「ひろちゃんがいいってっ!」
奈緒美がいい、野長瀬がびっくりした顔になる。典子もマジマジと奈緒美を見た。
「え、何ぃ?なんですかぁ?」
「ひろちゃん!お花見って言えば場所取りよ!」
バン!と奈緒美の長い付け爪が綺麗な手が、正広の肩に置かれた。
「え。えっと」
「明日!あの公園は知る人ぞ知るだけど、知ってる人は知ってるから、明日なんて、すごい人出のはず!朝から頼むわねっ!」
パチクリ、と、正広の大きな目が、見開かれる。
「あっ!由紀夫お帰りぃ」
「ただいまぁ・・・。どした?」
「あ、あのね、兄ちゃん・・・」
「由紀夫、手」
「へぇ?」
不審な顔をしながらも、「口付けを許す」風に甲を上にして手を差し出し、
「あんたはお姫様かっ!」
と奈緒美に叩かれた。
「んだよっ」
「さ、ひろちゃん」
まだボケっとしてる正広の手を取って、由紀夫の手と無理に繋がせる。
「はいっ、仲良し兄弟で頑張ってねっ。料理は任してといて!夕方から、夜桜で、行きましょう!」
「何が!なんなんだよっ!正広っ!」
「あのー、あのぉー、ね、えっと、お花見、の、場所、取り・・・」
「はぁっ!?んなもん、野長瀬にやらせりゃいーじゃん!」
そんな人でなしな発言をされても、野長瀬は気にしない。だって、もう場所取りしなくったっていいんだ・・・!
下っ端じゃなくなるってこういう事なんだ・・・!え、ってことは、由紀夫より下っ端かい。いやいや、それは仕方がない。そうだな。何か、お弁当を作ろう。智子(白ウサギ、オス)も連れてってあげよう・・・!
「駄目よぉ。野長瀬仕事なんだからぁ」
「そう・・・。えぇっ!?」
「仕事よ。あんた」
「えぇぇー・・・」

バカみたいに天気のいい土曜日。まさしく花見日和。
幸せそうにすよすよ寝てる正広より先に目覚めた由紀夫は、その天気の良さをうんざり見上げる。
花見の場所取りなんてばっくれたいとは思うものの、そんな事したらイベント好きの奈緒美がどうなる事か・・・。
そんで、こいつが花見がしたいとか言うから。
すよすよと薄いカーテンからの日差しを浴びて、いい夢でも見てるのか微笑んでいるかのような正広をしばらく眺めて、自分一人、支度を始めた。

が。「正広くんはよく寝てるから、起こすのは可哀相。場所取りには一人で行きましょう・・・」なんて絶対に思わない由紀夫は、自分の支度だけすると、正広を優しく声で起こした。最初は。
最終的には、正広がかたくなに目を開けないものだから、無理矢理ふとんを引っぺがすような事になったけども。

無理矢理起こされた正広は、目をしばしばさせながらも、仕事だから行かなきゃいけない・・・と、よろよろ起き出す。由紀夫は、この朝の正広をひっそり観察するのが小さな趣味だった。
ガン!と洗面所から音がしてくると、ククク・・・と声を押さえて笑う。ぶつかってる、ぶつかってる・・・(笑)どこぶつけたんだろ(笑)
「うー・・・」
歯ブラシをくわえたまま、右のこめかみを押さえながらよたよた出てきた正広は、床にぺたんと座り、ソファに背中を預けながら、もそもそと歯磨きを続ける。
意識が余りないから、そのうち口から泡があふれ出しそうになり、慌てて戻っていくのもかなり笑える。
この正広を見ていると、土曜日の朝から起こされた不機嫌も徐々に収まるので、ま、朝ご飯くらい作ってやりますか、と由紀夫はキッチンに向かった。
この後、パジャマから着替えた正広は、お約束のボタンの掛け違えまでやって、由紀夫を大爆笑させたのだった。

「この辺でいいなぁー?」
「うん」
渡されたビニールシートを広げながら、もう結構来てるんだぁ、と正広はあたりを見回した。二人が来たのは、いくらなんでも、と、十時前で、いい場所はそろそろ埋まりそうで、ギリギリセーフってところ。
「奈緒美にぎゃんぎゃん怒鳴られるとこだったぜ」
大き目のシートを広げて、由紀夫はころんと横になった。
「兄ちゃん?」
「寝る。やることねーじゃん」
「えぇー。遊ぼうよぉー」
「何してぇ」
「えっとぉー・・・」
そう言えば、遊べるようなものは何もなかった。しぃちゃんと、お弁当と、飲み物ああるだけ。
「しぃちゃん、と・・・」
「ん。ひろちゃん、しぃちゃんと遊んでなさいっ」
「やだぁ!ねぇ、兄ちゃん遊ぼうよぉ」
横になった自分の肩やら腕やらを、ぐいぐい押す正広に小さくため息をつき、由紀夫は一度体を起こす。
「ひろ。見てみろ、この桜。そして、あの青い空。綺麗だろ?」
「うん」
「でもな、こうして見るともっと綺麗」
ころんと横になった由紀夫は寝たまま上を指差す。つられて横になった正広は、うわー・・・と、感嘆の声を上げる。

重なりあう鮮やかなピンクの桜の向こうに、高く広がる青い空。コントラストが綺麗で、うわー、うわー・・・とキョトキョトしてるうちに。
正広は眠ってしまった。
昼寝好きだった。
「おまえが寝てどーする!」
眠ってる正広に突っ込みながら、自分も!と由紀夫はくっきりと二重の瞳を閉じた。

 

「う・・・、・・・?」
正広は、息苦しい事に気がついた。
「ん、うん・・・?」
「あ。生きてる。剛ぃ、生きてるよー」
「生きてるに決まってるでしょー?」
「なっ、何っ!」
ガバ!と体を起こすと、自分の鼻をギュっとつまんでいる男がいた。よく知った顔の。
「稲垣先生ー!?」
「じゃあ、こっちも生きてるのかなぁ」
びっくりした正広の鼻から手を離し、今度は由紀夫に近づいていく。
「子供みたいな顔しちゃってっ」
うっすらと口を開いて眠ってる由紀夫に、クククク、と笑いながら、どうしようかなぁー、とあっちこっち覗きこんでいた獣医の稲垣は、結局正広と同じように鼻をつまむ。
由紀夫の眉間に皺が寄って、パチンと目が開いて、ギョっとしたように稲垣を見つめる。
「生きてるんだね」
「だから。生きてるに決まってるでしょー?あ、ホント、すみません。先生、行きますよ」
「え。何で、何で。いいじゃん。ねぇ、ひろちゃん?」
「ダメですよぉ。散歩中なんですから。それに、買い物あるんですよ。今日、ペット商品、バーゲンなんですからねぇ?」
「えぇー、えぇー・・・」
ぶー、と不服そうな稲垣は、いいよねぇ、と正広に同意を求める。あ、とうなずきそうになったところで、稲垣動物クリニックの真の獣医、と呼ぶにふさわしい草なぎ剛がその腕を引っ張って立たせた。
「ひろちゃんっ」
助けてくれなかった正広に稲垣は言う。
「桜の木の下には、死体が埋まってるんだよぉ」
「へ?」
「埋まってません、埋まってません。すくなくともその下には」
「なぁんで解んだよぉ。埋まってるかもしんないのに」

「・・・埋まってんの?」
稲垣が連行されていくのを見送って、正広は呟いた。
「おまえね。朝っぱらから怪談されてんじゃないよ」
ようやく事態を把握した由紀夫は、ふと時計を見て、もう十二時近い事に気がついた。
「って、昼か。飯食う?」
「食べるー!」
簡単なサンドイッチを、アイスコーヒーで食べて、また、二人はころんと横になる。
「食べてすぐ横になったら牛になるんだよーっ」
自分も横になってる正広が笑いながら言うと、仕事しなくっていいから、楽じゃん。と由紀夫が答える。大きなシートの上で、寝返りを打ちながら、喋っていた二人だったが、胃が膨れれば、瞼が重くなるってなもんで、はらはらと顔に落ちかかる桜を払いながら、眠りの中に落ちて行った。

ドカっ!
突然、脇腹に衝撃を受け、由紀夫は驚いて目を覚ます。
正広が寝ぼけて蹴飛ばしたか!と思ったら。
「うわっ」
目の前に薄目を開けたまま、さらに口をぱっかり開けてる寝顔があった。
「も、森先生っ!?」
長い足が、横向きに寝ていた由紀夫の脇腹に乗っかっている。
「あ・・・?」
「あ、じゃないでしょー!何してんですっ?」
「あ。なーんか、気持ちよさそうだったから」
パチンとまつげの音が聞こえそうな瞬きすると、いつもの男前、正広の主治医である森先生が戻ってきて、由紀夫は安堵する。
「こう言っちゃなんですけど、森先生、寝顔不細工ですねぇ」
「よく言われるぅー」
ケラケラ森は笑った。
「でも、お兄さんは、寝顔可愛いですねー。女の子みたい」
「えぇー?寝てる時だけぇ?」
千明っぽくクネっとすると、森は大受けしてシートをバンバン叩く。
「正広くんは、いつも見てたからあれだけど、でも、相当可愛いし。問題はこいつなんですよね」

由紀夫も気づいていた。上半身を起こした森の向こうに小山があり、その小山が何やら音を立てている事に。
「慎吾ぉーっ!!起きろーっ!」
耳にぴったり口をつけて怒鳴っても、ぴくりともしないインターン慎吾に由紀夫は驚くが、その向こうにいる正広も、この大声に微動だにせず眠っているってのもどうかと思う。
「こいつねぇー。なんか、病気なんじゃねぇかって思うほど、寝たら起きないんですよぉ。さっき、ここ通りかかったら、お二人が寝てるのが見えて、ちょっと来てみたら、気持ちいよさそー!って横になった途端!これっ!」
慎吾はまさに大の字で寝ていた。正広が小さくなって寝るため、どんどんその寝場所は侵攻され、そろそろシートからはみ出しそうになっている。
「えーと。何かないかなぁー・・・」
正広が地面に放り出される前に、と、二人は慎吾を起こすためのグッズを探す。
「あ」
でも、何もないしなぁ、と思っていた由紀夫に、森が合図をした。え?と思うと、稲垣と草なぎが大型犬、中型犬、小型犬を連れて(吾郎はイヤイヤ)歩いていた。
「先生ー!」
正広を間に入れて、何度かあった事のある森が手を振り、とにかくこの散歩から逃げられれば!と稲垣が公園に入ってくる。
見てみると、稲垣は、相当ながーい紐に、小さなミニチュア・ダックスと、小さなポメラニアンを連れてるだけで、後のボルゾイと、セントバーナードと、柴犬と、柴犬を、連れているのが草なぎ。
「森先生久しぶりー」
「吾郎ちゃん、久しぶりー」
森の人懐っこさは相当なものなので、すでに稲垣は「吾郎ちゃん」だった。
「ねぇ、吾郎ちゃん、そのワンちゃんたちって、病気のワンちゃん?」
「いや、大した事ないよ。リハビリとかだから。人間にうつるような病気はないけど」
「ちょっと貸してもらっていい?」
言いながらガーガー寝てる慎吾の顔の上に、残ってるサンドイッチから取り出したハムを何枚か置いた。
「ハム好き?」
こういった質問は間違えずに草なぎにする。
「好きですよ。この子が」
草なぎが離したのは、おっとりとして見えたセントバーナードで、でも、体が大きいだけでまだ子供な彼女は、大好物のハムに突進した。
のしかかられた慎吾が飛び起きたのは言うまでもない。

びっくりしたものの、動物好きの慎吾は大喜びで犬たちと戯れ、騒ぎに目を覚ました正広も、慎吾ほど積極的ではないものの、小さ目の犬と遊ぶ。
「ふーん、お花見の場所取りなんだぁ。それってさぁ、俺って来ちゃダメ?」
「全然いいですよ。あ、料理持ってきてくれます?」
「あったりまえじゃーん。何人くらいくるの?」
「そうですねぇ・・・」
言いながら、由紀夫はチラっと稲垣を見る。
「・・・きます、よね?」
「うん」
当たり前、の顔で稲垣はうなずき、って事は、と指を折る。
「十ー・・・、二とか、三、とか。かなぁ」
「ん。OKまっかせといてー!慎吾ー!荷物運び!」
「はぁいっ!」
インターンは医師の奴隷、と森に嘘を吹き込まれている慎吾は、良い子に立ち上がった。

一応患畜なので、外に出しておく訳にはいかないと、稲垣たちも一度戻り、飲み物の差し入れを約束してくれた。時間は、そろそろ三時半。ちょうど昼下がりの、もっともいい陽気、で・・・。

「おきなさいっ!」
パシン!頭をはたかれ、由紀夫は目を覚ます。
「邪魔!どいて!あーっ!野長瀬、こぼさないのよっ!」
「何だよっ!」
「なべが来るんだから、どきなさいっ!」
「なべぇー・・・?」
後頭部をさすりながら体を起こすと、大きな鍋を抱えた野長瀬がよたよた歩いている。
「何、あれぇ」
「おでん!ほら、寒いでしょ、夜桜って。大変だったんだから、あんだけ作るの。あ、はい、そう、そこ。後、ガスボンベとコンロ!」
どっかり座った奈緒美は野長瀬に言い、由紀夫は一応手伝いに立ち上がった。
正広はすよすよ寝ている。

「お久しぶりでーす!」
一口おにぎりをたっくさんと、一口おかずをたっくさん作ってきた森(と手伝いの慎吾)が歓迎され、患者さんのパパ、ママからもらったお酒を大量に持ち込んだ稲垣(と実際に運んできた草なぎ)が歓待される。

「それでは、かんぱーい・・・」
奈緒美、野長瀬、千明、典子、ジュリエット星川、菊江、田村、由紀夫、稲垣、草なぎ、森、慎吾は明らかに小さな声で乾杯をした。
輪になって、すぐ隣の人とだけ乾杯する、その輪の中には!
まぁだ、すよすよ寝てる正広がいた。
「素敵ねぇー。これも花見ねぇー」
「・・・起こしてやれよ。こいつが花見したがったんじゃねぇか・・・」
「写真とってからね、写真っ」
面白がって千明がキティの使い捨てカメラでパシパシ写真を撮ったが、昼寝好きの正広はまだ起きない。

 

春だなぁー・・・。涼しい風を感じながら、正広は思った。こういう時、朝早く起きなくてもいい自分をラッキーだと思ってしまう。だって、春眠は暁を覚えないものだから、いつまででも寝ていたいー・・・。

んな事思ってんだろうなぁー、と、思いながら、桜そっちのけで、花見、花見と正広を眺めている面々から守るため、乱暴に正広を起こした由紀夫だった。 

<つづく>

と、言うわけで1年間、お付き合いありがとうございました!智子おねいさまの企画に乗っからさせていただく希望もあったりしますので、今後ともよろしくぅ!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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