天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第22話プロローグ編『代理で届ける』

これからの簡単なあらすじ。

「正広が、特に用もなく歩いていた時だった。ふと、違和感を感じて立ち止まり、振り返ると、何かがあからさまに怪しい動作で、とあるショーウィンドウを眺める仕草をした。怪しい・・・!爽やかな5月に、全身黒づくめで、下着屋のディスプレイを眺めている男・・・!関わり合いになってはやばい!正広は足を速めた」次回のあらすじに続く(笑)

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そもそも由紀夫は、公共交通機関を利用しない男である。少々遠くても、基本的には自転車。無理だったら車。
自分の都合で動きたいタイプだから、5分であっても、駅で待っているのがあまり好きではないし、一番早いのは解っていても、電車に乗っている最中、じっとしている時間がなんだか無駄な気がする。

だからその日、由紀夫が山手線に乗って、グルグルグルグルグルグルグルグル回らされていたのは、ひとえにややこしい依頼のせいだった。
12時に新宿から新大久保の間で受け取った封筒を、1時に新橋−有楽町間で引き渡し、2時に田端−西日暮里間で再度受け取って、4時に目黒−渋谷間で・・・。

ムカつく・・・。

あっちへこっちへ引き回され、由紀夫は相当イライラしていた。西日暮里から目黒に向かう電車は、そこそこ空いていて、由紀夫は座席についている。
そして、そこそこ空いているのに、由紀夫の両隣には人が座っていた。由紀夫の斜め前にも人が立っていた。
不機嫌な顔をしていても男前の由紀夫を狙った女たちだったが、相当ムっとしている由紀夫には、短いスカートも、まぁまぁ、75点?な足も目に入らない。

と、その時、斜め前の女が、思いっきりくしゃみした。
『へっくしょい!』
という、コントのようなくしゃみで、思わず由紀夫は笑いそうになり、さりげなく口元を押さえてごまかした。
たっけーヒールに、ぴったりしたスーツで決めたキャリアウーマンが。うぷぷぷ・・・・。

なんとなくイライラした気持ちが解消され、最後の受け渡しをすまし、由紀夫は帰途についた。

こういう仕事だという事は解っていたから、いつもの自転車は事務所に置いたままになっている。
「ぃーす」
「あ、おかえりー!」
「お疲れ様です!どうでした?」
「だりぃ」
ポラロイドとバッグを、ささっと受け取りにきた野長瀬に渡し、ん?と事務所を見回す。
「正広は?」
引き渡し2回分のポラロイドをひらひらさせながら弟を探す。この写真の管理は正広の仕事だった。
「今日はもう帰りました」
「あ、そ」
時間は6時を回っているから、別段不思議はないなと正広の机にポラロイド2枚を置き、そんじゃ俺もー、と由紀夫は事務所を出た。

そろそろ暗くなってくる時間で、事務所を出た由紀夫は、思いっきり背伸びをする。ずっと閉じ込められていたような気分がして、胸の中でよどんでいた何かを振り払うために、ちょいと走るか、と由紀夫は自転車に乗った。

のが失敗だった。

その日は確かに変な天気で、山手線でグルグルしてる間にも、空は明るいのに、突然雨が降ってきたりしていた。

「だからってよぉ!!」
夏の夕立のような突然の雨に、由紀夫は呆然と立ち尽くす。
家まではかなり距離もある。
値段以上の愛着のあるこの自転車を、いきなり外に置いていくのも忍びない。
「何で、今!降り出すんだよっ!」
濡れた髪をゴムで結わえて、空に向かって一応怒鳴り、改めて自転車に乗る。
「心配しなくても、連れて帰ってやるよっ!」

「うわぁ」
家に帰り付く5分前に、雨は、降って来た時と同じく、突然やんだ。だからといって、すぐに服が乾くものではない。
うちに帰り付いた時の由紀夫は、見事な濡れねずみだった。
「どしたんだよぉ!ゆってくれたら傘でも、カッパでも持ってたのにぃ!」
食事の支度をしていた正広は、猛ダッシュでバスタオルを渡した正広が、早く、早く!とバスルームに由紀夫を押しやる。
「シャワーじゃなくって、ちゃんとお湯いれないとダメだからねっ!」
「いわれなくったってそーする・・・」
水のたまりそうなブーツを脱ぎ捨て、スーツを脱ぎ捨て、さっさとバスルームに入った由紀夫は、お湯を出そうとして、あ、まだ水か・・・と、蛇口から流れる水を眺める。
由紀夫たちの部屋は安普請というか、古かったりするので、お湯が出るのに時間がかかる。しっとり濡れた髪のまま、ぼけっと、何度か手をつっこんだりしたが、いつまでも水。
今までの最高記録で、5分ほっといても水、って事があったので、そのうち湯になるだろうと思ったのだが。

8分たって。
「・・・まぁさひろー?」
「はーい!」
「ガス、ついてっかぁ?」
「え?・・・あぁっ!!!!」
ばたばたっ!!と足音がして、バスルームのドアがバン!と鳴った。
「ごぉめぇーんっ!!!」
「・・・てめぇ、風呂上がったらぶっ飛ばぁーす」
ごぉめんなさぁーいぃー!!心から申し訳なさそうな正広の声をBGMにようやく温かいお湯に漬かる事ができた。
「兄ちゃんっ!なんか飲むっ?持ってこよっかぁー!?」
「んー、えーと、ビールー」
「はぁーい!」

ビールを渡されていい調子になった由紀夫は、珍しく長風呂だった。
疲れていたのか、ちょっとうとうとして、ビールの空缶が水面に落ちる音で目を覚ます。
「やべ・・・」
自宅のお風呂で溺れたんじゃシャレになんねぇととっとと立ち上がった。

「あっ!お兄様!ささ、どぞ、お食事できあがってますっ」
「ん」
昔のお父さんみたいに、どっかりと座った由紀夫は、テーブルにたっぷり並んでいる夕食に小さくうなずく。
「お疲れでしょう?肩、おもみいたしましょうかぁ?」
「正広」
頭からバスタオルを被った由紀夫は、ちょいちょいと指先で正広を呼ぶ。
「は、はいっ?」
びくびくっ!近寄ってきて、ギュっと目を閉じる正広の額をぺちんと叩き、寒ぃよと笑った。
「ごめんなさぁーい・・・」
「いや、でも、ビールもらっちゃったから、ポカポカです。さ、正広さん、食べましょう、食べましょう」

熱々のグラタンを作ったため、小さな台所の小窓は開けっ放しで、そこから涼しい風が入ってきている。
「あー、気持ちいー」
「寒くない?」
「ぜーんぜんっ」

おパンツ1枚で、濡れ髪のままで、濡れたバスタオルを肩からかけて、ビール片手にいつまでも由紀夫はフラフラしていた。

 

そんな1日だった。

翌朝、目覚ましの音に、うーーー・・・と正広は手を伸ばして目覚ましを探す。目覚ましは、2回もなれば目を覚ませる兄の側にあるはずで、日頃、目覚ましがなったことにも気づかない正広は、うー、うー・・・、とぱたぱた、あちこち叩いた。
目がちゃんと開かないものだから、ぺちん、と軟らかな感触を感じて、はっ!と目を覚ます。
「ごぉめん、兄ちゃん!叩いたっ!」
叩かれたら叩き返すのが由紀夫で、人によって、倍にも3倍にもなる。
大声で一気に謝って、きゃー!!!と布団に潜り込んだ正広は、兄のリアクションが何一つないため、あれ・・・?と顔を出す。
「兄ちゃん・・・?」
寝てるのか・・・?と背中を向けている由紀夫の顔をのぞき込んだ。
「ん・・・?」
何せ寝起きが悪いので、正広が由紀夫の寝顔を見る事はめったにない。でも、自分より先に寝られた時に、うわ、子供みてー!可愛いー!と、思った事はある。

それに比べると、随分と険しい顔をしていた。
悪い夢でも見てんのかな・・・。深く刻まれた眉間の皺に、そろぉーっと触れて、ぱっ!と離した。
『熱だっ!』
心で叫ぶ。
熱だ、熱だ!兄ちゃん熱があるっ!熱だぁーっ!!!

・・・。
ど、どぉしよう・・・。

正広は小学生の時から入院していて、自分が熱を出す事には慣れっこだったが、人の看病をしたことはなかった。
薬・・・?
薬ったって、俺のは、特別だから、兄ちゃんには効かないかもしれないし・・・。
病院?そだ、病院行ってもらって・・・、あ、熱!熱計ろう!

すぐに微熱を出す自分のために、結構精度のいい温度計がある。
由紀夫が顔を向けてる方のベッドサイドにぺたっと座って、はた、とまた正広は困惑した。
せっかく寝てるのに、熱なんて、起こしてまで計るようなもんかなぁ。

うーん・・・・・・・。

腕をくんで、首を傾げた正広は、もう1度立ち上がった。

ひえピタ!頭冷やそう!!

正広がとってきたひえピタが額に当てられた時、由紀夫の瞼が重たそうに持ち上げられた。
「・・・何・・・?」
「あ、兄ちゃん・・・。頭、痛くない?」
「・・・?痛い・・・。んで?二日酔い?」
「熱があんの」
「・・・俺ぇ?」
「俺、です。はい、熱計って」
「ねぇよぉー」
病気知らずの由紀夫は、寝過ぎが二日酔いだと信じていたのだが、デジタル体温計は、39度を表示した。
「39!」
「うわ。未知の領域・・・」

ど、どぉしよう・・・!自分でもあまり体験したことのない温度に、正広は呆然と立ち尽くした。

<つづく>

先週の予告通り、Maki様からの、由紀夫病気ネタでーす!でも、病気なってからどうなるかは解らないの(笑)私ってそぉーゆぅーヤツなのぉー(笑)

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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