天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第24話前編『智子を届ける』

これからの簡単なあらすじ。

「あれなんだ!?猛ダッシュで部屋に帰った由紀夫は弟に聞いたが、答えられるはずもない。知らないっ!知らないっ!と首を振るばかりの正広だった。そして、例の黒塗りベンツ!から降りてきたのは・・・」次回のあらすじに続く(笑)今回由紀夫の登場、ここだけ(笑)

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野長瀬智子は、『お嬢様』である。
一山幾ら的な売られ方をしていたとは言え、ペットショップ出身の『彼女』のプライドは高かった。

自分は選ばれた者だと。

『彼女』のうちは、あまり大きくはない。しかも、豪華とは言えない。少し不満だ。やはり、渡辺篤史の建物探訪に出られるくらいのうちじゃないと、みっともないと思う。こんなんじゃ友達も呼べやしないと常々思っている。
そんな『彼女』の世話係は、従順だが、少々愚鈍だ。
手際が悪いというか、要領が悪いというか・・・。
なんかと言えば食事をお皿から零している。どんくさいと思う。

朝起きて、さっさと六甲の美味しい水の一杯も出せと思うのに寝ていたりするのだ!世話係のくせに!
なので『彼女』は、がっしゃんがっしゃん!!部屋の壁を蹴っ飛ばして起こしてあげる。こう見えても『彼女』は優しいのだ。
起きろ!起きろ!起きろっ!!

「え・・・っ、あっ、と、智子、ちゃーん・・・」
智子『ちゃん』とか言うな!なれなれしい!がっしゃん!がっしゃん!!
「はいはーい、えっとねぇ、今日のごはんはねぇー」
いいから急げっ!
「いやぁ、智子ちゃんは今日も可愛いねぇー」
そんな事は解ってんだよっ!早く出せってのっ!

ミニウサギといわれて売られていたが、今は5kgにもなろうかという旧ミニウサギ野長瀬智子は、こう見えても男の子だった。

 

智子は昼間、ゆったりとした時間を過ごす事にしている。
部屋のドアは簡単に開くので、そこから出ていって、屋敷を見て回る。何せ、当主としての責任がある。
む。この行く手を阻むものは何だ?と智子は上を見上げる。
白くて、なんだかザラザラしている。遥か上方に何か模様がついていて、黒い、丸いものが・・・。
・・・襖か。
これは、襖というヤツだ。こないだ世話係が、張り替えとかって、シールみたいなのを張っていた。
しかし、この智子の行く手を阻むとは!
許せん!!
頭つき!頭つき、頭つき!!
む?それでも行く手を阻むか!それなら、噛み付き!噛み付き、噛み付き!!

モーゼの前で海が割れたように、智子の前に襖が開(ひら)く。というか、開(あ)く。自分が出歩ける程度の穴から外にでると、そこはフローリング(板張り)の、キッチン。ひんやりした感覚を智子は楽しむ。
ま、なかなかいいな。
てこってこっと歩いていた智子は、ムっ!と立ち止まった。
なんだ!この床ぁ!
右後足に小さな違和感。板張りなので、小さな刺がひっかかった感じ。
掃除くらいやっとけぇぇーーーっ!!!

がじぃ!がじぃ!がじぃ!!!

手当たり次第にあたりを齧りまくり、世話係に躾をしようとする智子だった。

そうは言っても智子は寛大な主人でもある。
テーブルの足、何かのコード、古新聞の山などを齧り倒して気をつけるように注意をすると、それはそれとして、と、ころんと横になった。
智子は寝るのが相当好きなので。

 

思いがけずぐっすり眠ってしまった智子は、何かの物音に耳をぴくんと動かした。ん?ん?
これは、世話係が帰ってきた音じゃあ?
でも、世話係を出迎える必要なぞないので、もう片方の耳も動かして、音の方角だけを探っていると、世話係には出せない音がした。
「ともちゃーん?」
お!これは!
智子は、鷹揚に立ち上がって、顔を出してやった。座布団の山の奥から。
「あ、ともちゃんそこかぁ・・・、って、こぉんないたずらしてぇ」
智子の躾の数々を見て、メっと眉を寄せたのは、智子の臨時世話係だった。専属世話係の500倍有能で、800倍可愛らしい世話係で、智子のお気に入り。
何せ、従順なのに、有能。
「ともちゃん、寂しかったの?」
臨時世話係は智子の頭を軽くマッサージする。
「ん、でも、ごめんねぇ。今日ねぇ、野長瀬さん帰れないかも知れないんだって。だから、智ちゃん、うちで待ってようねぇ」
何?
専属世話係のくせに、なんと生意気な!
ムっ!とした、と表明するため、後ろ足でたんたん!と床を蹴ると、臨時世話係は智子を抱き上げて、すりすりと頬を寄せてきた。
「あぁ、寂しい?ごめんね、ちゃんと帰ってくるから。ね?それまでうちでいてね?」
寂しいじゃねぇだろぉ!
「えーっと、お出かけバッグは・・・っと」
智子を抱いたまま、臨時世話係は智子のうちをウロウロして、バスケットを見つけ出した。智子の外出用である。智子くらいのクラスになると、自分で歩くということはあまりない。
「・・・自転車、乗るかなぁ」
ピクニックにいくような籐のバスケットは、蓋が両側に開くようになっていて、そこに智子をいれた臨時世話係はおっそろしい事を言う。
自転車!?自転車だとぉ!?
この智子を自転車で連れて行くだとぉぉっ!?
バスケットの中で、不満を表明していると、ひょいと蓋を開けて、にこっと臨時世話係は笑った。
そうか、解ればいいんだ、解れば。失敗することが悪い訳じゃない、間違えた時は、直ちにそれを改め、二度と同じ間違いをしなければいいんだ。
鷹揚に臨時世話係を見た智子に、謝るべき臨時世話係は言った。
「だぁいじょうぶ!怖くないからっ」

怖くなんかねぇよぉーーーーっ!!!
智子、怒り爆発!
バスケットの中で躾しまくったが、臨時世話係はさすがに有能。バスケット中にタオルをいれていたため、躾たさいにポイントになる音があまりしない。
きぃっ!ストレス溜まるぅ!!

しかも、この臨時世話係の自転車ときたら!
揺れるんだ!揺れる、揺れるっ!
ばっかヤロウ!このままだったら吐くぞ!!てめっ!止めやがれ!!

 

別荘についた時には、智子はぐったりとしてしまっていた。
「あぁ、ごめんねぇ、ともちゃん!大丈夫ぅ・・・?」
臨時世話係は慌てて智子をバッグから取り出し、よしよしとマッサージしてくる。
大丈夫じゃねぇだろ、このボンクラっ!
と思うのだが、ここがこの臨時世話係のポイントの高いところ。専属世話係と違って、マッサージが繊細かつ、ツボを心得ているのだ。
まぁ、うまくできた時には誉めてやらなくては・・・。それが、上に立つものの使命ってもんで・・・。
うと・・・っとなりかけた時、臨時世話係は智子を床におろした。
むっ!?
と顔を上げると、臨時世話係が何やら白いものを指に止まらせている。
なんだありゃ?
じっと見ていると、その白いのにチュっとキスをした臨時世話係が言った。
「しぃちゃん。この子ね、智子ちゃん。今日、うちで預かるから仲良くしてね?」
そう言われて、白いのは、こくんとうなずいてるようだ。
「えっと、智子ちゃんにごはん、ごはん・・・」
臨時世話係はその場を離れていき、白いのがテーブルの上に残された。
見たことない。
そんな思いで、智子は、白いのを見上げていた。 

<つづく>

うさぎって何をするのか、よく解らないのだった。うさぎの本はたくさん読んでいるのだが、本屋で立ち読みしているだけなので記憶できないのだった。心の憩い、本屋さんのペットコーナー・・・!しかし、先日、なぜか大学生くらいの男が固まって猫の本とかみながらわーわーゆってたので、近寄れなかった・・・!なんだおまえら!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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