天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第24話後編『智子を届ける』

これからの簡単なあらすじ。

「ナニワの帝国金融の社長だった。一緒に降りてきたこわもての専務が書類をちらつかせ、男たちはがっくり膝をつく。とある香港マフィアファミリー、崩壊の瞬間であった。まさか、ナニワの帝国金融から金を借りた香港マフィアが、別ファミリーの御曹司だといわれている自分を狙っているとは露知らず、こわかったぁー!!と事務所で騒ぐ正広だった」あらすぎ劇場(完)(笑)楽しみにしていただいていた方、ありがとうございました(笑)

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「何だおまえ」
智子はお嬢様だから、横柄な態度は当たり前。随分と高いところにいる白いのを見上げて言うと、白いのはパタパタっ!と『彼女』の前に降りてきた。
「あ、あの、しーちゃん、です」
「しーちゃんだぁ?」
「はい」
白いのは、首をこくん、と縦に振りながら答えた。
「しーちゃん・・・って、おまえって、何?それって、鳥?」
「あ、はい、鳥、です。あの。白文鳥です」

ほう。智子は小さくうなずいた。これが、白文鳥か。
「あの、よろしくお願いします。智子、さん・・・?」
白文鳥のしーちゃんは、『智子』が女の人の名前だということを知っていて、そして目の前の智子が男の子だというのが解るため、敬称をつけるにもおずおず、といった風になってしまう。
「それで、ここがおまえのうち?」
しかし智子は小さな事は気にしない『お嬢様』なので、とっとと次の質問に行く。
「え、あ、はい。あたし、ここで飼われてます」

・・・カワレテル・・・?
聞きなれない単語だ。
「買われてきたって事か?おまえもペットショップ出身?」
「いえ、あたしは、お母さんのうちから、ここに貰われてきて・・・」

ブ、ブリーダー出身!?智子はのけぞりそうになる自分を必死にこらえた。ブリーダー出身はペットショップ出身を凌駕する。
こ、こいつ・・・!こんなちびのくせに・・・っ!
負けてたまるか!智子は、必死で気持ちの建て直しをはかった。なにせ智子の座右の銘は『天上天下唯我独尊』である。
「お、俺も、ペットショップ経由ブリーダー出身なんだっ」
「はぁ、そぉですかぁ・・・」
しーちゃんは、何せ生まれてすぐにもらわれてきたものだから、そういうことはよく解らず首を傾げた。ぶりーだーって何?ってなもんである。

「はい、智子ちゃーん。ん?しーちゃんも?」
そこに、智子の臨時世話係が食事をもってきた。いつものよりいい感じだと、智子は、今日は素直に食べてやる事にした。
が、すぐに止めた。
世話係の姿がないからだ。
世話係ともあろうものは、主人の食事中はそばについておくものなのに!
躾がなってない!!
後足で、どんどん!と注意を呼びかけると、慌てて側にやってきた。
「何?これ嫌い?」
いや!これは、世話係に対する躾で!
「おっかしぃなぁ、野長瀬さんの言う通りにしてるんだけどぉ・・・」
そうじゃないって言って・・・!あ、そうか。智子は気がついた。世話係は来たのだから、ここで食べれば・・・。

しかし、食べ始めると世話係はいなくなるのだ。
「どーなってるんだ!」
声を上げると、何がですっ?と白文鳥が飛んで来る。
「おまえんとこの世話係、なってないぞ!」
「世話係?ひろちゃんのことですか?」
「ひろちゃん?」
「ひろちゃんは、あの人で、あたしの飼い主ですよ。可愛いでしょう?」
カイヌシ・・・?
これまた知らない言葉だ、と思っていると、臨時世話係がおかえりーと言ってるのが聞こえてきた。

「兄ちゃん、おかえり!野長瀬さん、どう?」
「あー、ダメダメ。泊り」
「そっかぁ・・・。でも、智子ちゃんうちにいるから安心だよね」
「え?あいつ来てんの?」
あいつだぁっ!?
ギっ!と声の方を見ると、智子の天敵がそこにいた。
「あ、ホントだ。おまえさ、うさぎその辺に出しとくと、あちこち齧られっぞ」
「えー?でも、智子ちゃん大人しいよぉ」
臨時世話係がやってきて、ねー?と頭を撫で撫でした。
「あ。でもぉー・・・」
ソファの上に座って、智子のクッションとして膝を提供した臨時世話係は、ちょっと心配そうな声を出した。
「野長瀬さんとこに迎えに行ったんだけど、やっぱり寂しかったのかなぁ、あちこちイタズラしてたぁ・・・」
「寂しいって。単にそういうヤツじゃねぇの?」
何ぃ!?
ギっ!ギっ!!と臨時世話係、そして天敵を睨んだ。
あれは躾だぁぁーーーーーっ!!!

まったくナメやがって、てめーら。
電気が消された後、バスケットに入れられた智子は、ムっ!としつづけていた。臨時世話係も、俺がいる時に、他の生き物の世話とかしてる場合じゃねぇだろ。あの白いのとか、あのでかいのとか。
でかいったって、うちの専属世話係ほどじゃないけど。
あいつは、この俺に対する畏敬の念とか、尊敬のまなざしとか、そういうのが感じられない!むぅーっ!!
躾だ、躾ぇっ!!

ピョン!とバスケットと飛び出して、躾に出ようとした智子は、ガシャン!という音と、顔面への衝撃に、何おぅっ!?と目をこらした。
これは・・・、ケージ・・・っ!?外敵から智子を守るためのケージが張り巡らされている。
確かに、自分を守るためにという考えは解るが、上は開いてるんじゃあ!?それに、これじゃあ躾ができない!躾が!
智子が歩きまわるくらいのスペースはあるが、躾できるものがないではないか!

うぬぅ・・・っ!
ぬくぬくした寝床に横になりながら、イライラが募り、思わず寝床を齧ってしまった。
あぁ、イライラする・・・!
このうちは、静かすぎると智子は思った。
智子のうちは、夜になると賑やかだった。明るいのはそんなに好きじゃないから電気は消させて、後はテレビ。
ま、娯楽として低俗だなとは思うけど、智子はまぁまぁ、テレビを認めていた。
専属世話係は、やっぱりそこがそこつだよ!と思うのだが、智子よりも先に眠ってしまうので、暗い部屋にテレビの明るさが際立ち、そこに専属世話係のいびきが・・・!

あれだけはどうにかしてやらねばならん。
智子は常々思っていた。
あれはうるさいし、テレビの音が聞き取りにくくなる。いくら、俺の耳をもってしても!!

この白文鳥のうちはとても静かだ。
静かだから、穏やかに眠れるはずなのに、智子はいつまでも眠れなかった。

 

「ここんちにテレビはないのか!貧乏か!?」
「テレビ?ありますよ。ほら、これ」
臨時世話係と天敵が出ていった後、白文鳥に聞いてみた智子は、何を?とややのけぞった。
智子のうちのテレビは床においてあって、智子が背を伸ばせば上に手が届くようなサイズなのに、これは・・・!
「でかい・・・!」
「ひろちゃんがテレビ好きで、お兄さんが映画好きだから」
白文鳥はこともなげに自慢する。
ちっ・・・!智子は心で舌打ちする。
やはり、これが、ブリーダー出身と、ペットショップ出身の差なのか・・・。
世話係のランクが違っているのか・・・!?

「あの、智子さん・・・?」
智子のケージの中に降りてきて、白文鳥は首を傾げた。
「な、なんでもないっ!そ、それより・・・」
智子は気にかかっていることを聞いてみた。
「随分、うまく躾てるようだけど、何か秘訣はあるのか?」
「しつけ・・・?」
どうも昨日から、この人は難しい事を言うなぁ、としーちゃんは思っている。
「しつけって、何です?ひろちゃんが、あたしを」
「おまえが躾られてどーすんだよ!おまえが主人なんだから、世話係を躾てやんないと!」
「ひろちゃんは、あたしのお世話はしてくれるけど、世話係なんかじゃありませんっ!」
ふわふわした鳥に大声で言われ、智子は少し驚いた。
「あたしは、ひろちゃんの・・・!」
「ひろちゃんの?」
「・・・あたしは、ひろちゃんのっ!」
白文鳥は、ちょっぴり頬を赤らめながら言った。
「心の、恋人ですっ!」

コイビト・・・。
それはテレビでも聞いたことがあるぞ。コイビト・・・?

「だからっ、ひろちゃんは、あたしの事を、係だからお世話してくれるんじゃなくって、あたしの事が好きだからっ、お世話してくれるんですっ!」
ふんっ!と胸を張って言われた。
何おぅ?と思う。
好きだとか、嫌いだとか、そんなもん。だって、俺は野長瀬智子だし、あいつは専属世話係なんだから。そこにあるのは、主人と世話係という厳然たる事実だけで。
「智子さん、寂しいんでしょお・・・」
白文鳥が小さく呟く。
「野長瀬のおじさんが帰ってこなくって、寂しいんでしょう・・・?」

なんて事を!
寂しいだと!?なんて事おっ!!

智子は、自分を守ってくれているゲージに突撃し、さらにその上を乗り越えた。
躾だ!躾をしなくては!

がむしゃらに突進した智子は、うさぎとしての習性に従ってしまったのか、狭いところに入り込んだ。それは、イタリア製の、バカ高いソファの下で、躾ぇーっ!!と夢中になっていた智子は、右後足に鋭い痛みを覚えた。
「いてーっ!!」
「智子さんっ!?」
突然暴れ出した智子にびっくりしてカーテンレールの上まで飛び上がっていたしーちゃんが、今度は慌ててソファの下に潜り込む。暗いところは苦手だけど、そんな事言ってられない!
「智子さんっ?どしたんですかっ!?」
「いってー!足いてぇよっ!何っ!?」
「足っ?足ですかっ?ってゆーか、智子さん、どこぉっ?」
「ここだここっ!おまえのー、えっとー!箸もつ方の手・・・、じゃない!逆!」
「えっ?ひろちゃんはこっちの手でお箸持ってますよぅ?」
「それはおまえから見たらだろうが!」
だったら、逆でゆってくださいよぅ、そう思っても、痛がってる様子が伝わってくるから、よいしょ、よいしょ、と暗いとこに入り込んでいくしーちゃん。

ぼすん、と温かいものにぶつかった。
「あ!智子さんですか!?」
「そうだよ!おまえ、目ぇ見えねぇのかぁ?い、って・・・!」
「あぁ、ごめんなさいっ、あたし、鳥目だから・・・。うーん・・・と、あ、解ります、解ります。白いね、うん。これが智子さん。それ、で、足、ですね。足、足は・・・」
そしてシーちゃんは智子の後ろ足を発見した。
「あ!挟まってます!だから、後ろにずらしたら、取れますよ!」
「と、取れねぇん、だよ・・・っ」
「え?なんでです?後ろに、ギュって」
「動かねぇ・・・しっ!」

そう。智子の足は、わずかに浮いたフローリングの板と板の間がっちりはまり込んでしまっていて、前にも、後ろにもいけなくなってしまっていたのだった。

「と・・・、智子、さん・・・?」
「・・・って・・・!いってぇーっ!!!」

智子は泣きそうだった。
こんな痛い思いはした事がない。泣いたりするのはみっともないのを知ってるから一生懸命こらえるけど、それでも、じんじんする足の痛みが・・・!

「バカヤロー!!早く助けにこーいっ!!!」
なんだか、痛み以上に悲しい。ブリーダー出身じゃないから!?そんな事まで思ってしまう。たかが、ペットショップ出身だから、こんな痛い目にあってるのに世話係が来ないの!?
「智子さんっ!待ってっ!待って、あたし、ひろちゃんに電話してみるっ!知ってるの、あたしっ!」
ソファの床板に何度か頭をぶつけながら飛び立ったしーちゃんは、電話の飛びついた。
これを押して、それから、これっ!えいっ!えいっ!!
「あーん!やっぱりあたしじゃ、軽すぎるぅ!!」
「いてぇーっ!!」
「智子さぁーんっ!!」

その時、ドアが開いた。

「えっ?智ちゃんっ?智子ちゃん、どこっ!?」
専属世話係の声に、智子の怒鳴り声は大きくなる。
「こっちだよっ!このボンクラっ!早く来いっ!!」
「智子ちゃんっ!?智子・・・っ!あっ!智ちゃん!!」
火事場の馬鹿力。専属世話係は、イタリア製の3人は座れる皮張りソファを持ち上げてしまった。
「智ちゃん!どしちゃったの!」
そして、智子の足を挟んでいるフローリングをひっぺがす程の勢いで持ち上げ、智子を救出したのだった。
「あぁ、智ちゃん、あんよが・・・。あんよ、大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇだろ!このボンクラどこ行ってやがった!!」
「うん、よしよし、怖くないよ。すぐ病院行こうねぇ」
抱きかかえてきた専属世話係を、抗議の意味で叩いているのに、さすがは抜け作世話係。とんちんかんな事を言う。
大体、おまえの仕事は俺の専属世話係でっ!
智子は、すでに泣いている専属世話係の顔を見上げた。専属世話係は男のくせにすぐなく。みっともない、そんなに泣くもんじゃあ・・・!?
さらなる抗議をしようとした智子は、専属世話係のほっぺたに、大きなキスマークがあるのを見て、前足をグーにする。そして渾身の力で、うさぎパーンチ!を顔面にお見舞いした。

 

「だから、智子ちゃん!仕事だったんだってばぁ!」
稲垣動物病院で足を見てもらっていると、連絡が行ったのか、臨時世話係と、白文鳥までがやってきた。
「智子ちゃんご機嫌悪いの?」
「悪いねぇ」
臨時世話係から尋ねられ、のんびりと、クスクスと稲垣医師は言う。
「智子ちゃん。野長瀬さんね、昨日、飲みやさんのオープニングパーティのお仕事だったんだよ?」
「飲み屋?」
「ゲイバー」
ついでに、と顔を出した天敵がさらっと言う。
「オープニングパーティ用の人員を集められなかったからって言うんで、野長瀬がスタッフで働いてたんだよなぁ」
「・・・そう!だから、智子ちゃん、誤解しないで?機嫌直して??」
ママさん(身長197cm、体重102kg)からがんばってくれたお礼に、とムリヤリされたキスマークを残したまま、米搗きバッタのように謝る専属世話係を、フンっ、と智子は無視する。

そんな智子に、しーちゃんは言った。
「帰ってきてくれて、よかったね」
「帰ったら、また躾直しだよ」
そして、智子は小さく笑った。

<つづく>

さて、もう来週からは7月!もしかしたら、ゲスト様においでを願うかもしれません!題して!『ギフト番外編1周年記念!大ゲスト大会ー!!!』
って、でも、それはどうか解らないのでした。また私の話でもごめんね(笑)
現在、白文鳥が飼いたいキャンペーンが自分の中で巻き起こり中!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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