天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第25話前編『願い事を届ける』

1周年のご挨拶。

「ギフト番外編も52週になりまして、まる1年でございます。この1年に対して何の反省もせず(笑)これからも書いてゆきたい・・・!過去は過去として、ただただほのぼのと、のんびりと。そのように思っております(笑)。そんな事で、今後ともよろしくお願いいたします!」

yukio
 

その日は、妙に風の強い日で、スーパーから出てきた正広は、うわっと目をかたくつぶる。
「やぁだなぁ」
ホコリも舞い上がっていて、せっかく買った野菜がそれにまみれないよう、さっさと前カゴにスーパーの袋をほうり込み、ダーッシュ!でうちに帰った。

そして、それに気づいたのはうちに帰りつき、カゴからスーパーの袋を取り出した時。
「ん・・・?」
カゴのそこに、それはあった。

「正広?何だぁ、これ」
「んー・・・、お人形、かなぁ」
仕事から帰ってきた由紀夫は、食卓の上にある不可思議な物体を手にとって弟に聞いた。聞かれた正広は、エプロン姿でしゃもじにくっついたご飯粒をかじり取りながらキッチンから出てきて答える。
「人形?」
「うん」
「この不細工なのが?」
「た、多分・・・」
由紀夫は手のひらに収まってしまう布切れを見おろした。
「あぁ・・・、これ、ひょっとして顔かぁ?」
「だと、思うんだよねぇ」
よくよく見れば、その布切れは、和服の端切れのようで、赤に金というその端切れは三角に縫われていて、顔らしき部分もある。
「そんで、これどした訳?」
「いや、いつの間にか自転車に」
「乗ってたのか!?これ!」
「怖いだろー!!乗ってたらぁ!」
全長、せいぜい8cmって人形である。
「カゴに入ってたの!」
「自力で?」
「怖ぇよぉ・・・」

小さな、手作りといえば聞こえはいいけど、あまりに不細工なその人形を、正広は捨てる事ができなかった。

その夜。
由紀夫は背中に衝撃を受けて目を覚ました。枕元の時計は、3時過ぎ。またか・・・、とぼんやりした頭をかきながら体を起こす。こうやって、正広は時々由紀夫を蹴っ飛ばした。そうじゃなければ、反対側に落っこちそうになってるかだが、不思議と落ちたことはない。点滴生活が長かったからかなぁ、と思いつつ、自分の背中に落っこちているであろう足をどかせようとした由紀夫は、振り向いてギョっとした。
「正広!?」
慌てて寝てる弟の肩に手をかける。
「おい。ちょっと!」
「ウ・・・」
「具合悪い!?どっか痛いのかっ?」
そりゃもう、隣で眠ってる弟に寝ながら泣かれた日にゃあ、眠気も吹っ飛ぶってなもんで。
「ひろっ!」
寝てたしーちゃんが、何っ!?と飛び出して、がっしゃん、鳥かごにぶつかる程の大声で呼ばれ、正広はハっと目を開けた。
「かえりたい・・・」
「どこに!」
「どこ・・・・・・、え・・・?」
ぱっちり開いた猫目が、音がするほどぱちくりと瞬きして、じっと兄を見上げる。
「ここ・・・?」
「うち!」
「・・・だよ、ねぇ・・・」
ゆっくりと体を起こして、何気なく顔に触れた正広は、びっくりして手を離す。
「何っ?これぇ!」
「こっちのセリフ!何泣いてんだよ!」
「泣いて・・・?」
んー・・・?と首を傾げ、しーしゃんほどに首を傾げ、正広は首を振った。
「・・・解んない」
「あのなぁ・・・」
がっくり脱力した由紀夫に、正広は慌てて言った。
「いや、だって!なんか解んないんだもん!えっと、夢、とか見て・・・」
「夢?」
口元にグーにした手を当てて、むぅと眉間に皺を寄せた正広は、小さく首を振った。
「ひろ?」
「わかんない」
ぽつんと呟き、パタン、と横になった正広は、クー、と眠りについてしまう。
「正広ぉ!?」
なんじゃそりゃあ!!!由紀夫は目が点になったが、正広は二度と目を覚まさなかった。

「おまえさぁ、昨日のあれどーゆー事よ」
「昨日?」
翌朝、兄から聞かれた正広は、何の事?と首を傾げる。
「昨日の夜」
「夜?」
朝ご飯の準備をしながら、宙を睨んだ正広は、あぁ!と手を叩く。
「ごめん!俺、蹴っ飛ばした?」
「・・・それはいつもです」
「嘘ぉ」
不服そうに唇が尖る。
「だって、俺さぁ、そんなん全然覚えてねーもん!騙してんじゃねぇのぉ?」
「そんな事で騙してどーするよ!」
だって、自分は入院中でもそんなことなかった!その時も暴れてたけど、一人だから気づかれなかっただけだ!

論点ずれてる・・・。
小松菜をつつきながら、しーちゃんは思っていた。

まぁ、寝ぼけてたんだろうなと思った由紀夫だったが、その夜、今度は肩を蹴られ、どんな寝方!!と飛び起きる。
「正広ぉ・・・!?」
いくらなんでも、その寝相は何?と振り向いて、また由紀夫は凍り付いた。

やっぱり泣いてる。

記憶力がコンピューター並みの由紀夫は、正広が泣くような事があったかと思い出そうとした。7月になったばかりでこれだから、7月になにかあるのかと子供時代まで溯って思い出そうとするが、特別7月、という事でひっかかることはないし、せいぜい、去年一緒に暮らし始めたことくらい。
何だ、何だ??
昨日はただ涙を流すだけだった正広だったが、今日はおおっぴらにしゃくりあげ出した。
「正広!」
「・・・っく」
「どした?おい」
肩をゆすり、軽く頬もはたいてみたけど、なかなか目を覚まさない。
「正広!!」

パチン、と正広の目が開いて、突然体を起こした。
「ひろぉ・・・?」
いぶかしそうにする由紀夫に目もくれず、ベッドを下りた正広はぺたぺたと足音をさせながら歩き出した。

おかしい。

由紀夫は確信した。

起きたばかりの正広がこんなにまっすぐ歩けるはずがない!

「正広!」
いつもなら、あっちにぶつかりこっちにぶつかりする正広が、まっすぐにドアに向かおうとしている。由紀夫もベッドから飛び出して、正広の腕をつかんだ。
「かえりたい・・・」
「正広。いいから。寝ろ」
「かえる・・・」
首を振りながら、正広は腕をひきぬこうとするが、由紀夫は離さない。
「いや、かえりたい、かえして」
普段からは考えられないような力で自分を引っ張る正広を、逆にひきずってキッチンに向かう。
「やだ、かえして、かえして」
「まぁまぁ、喉乾いたろ。水でも飲んで。これ飲んだら帰してやるから」
透明な液体の入ったグラスを口元に押し付けると、反射的にそれを受け取って、言われるままに一気に飲んだ正広は、約束通り緩んだ由紀夫の腕から離れて歩き出そうとして、その場にカクンと膝をついた。
「かえ・・・るぅ・・・」
「いつかねぇ」
そのままパタンと横倒しになった正広に由紀夫は言う。
「すげ、ホントに一気に飲んでるわ」
空になったウォッカのグラスを見て、由紀夫は倒れた正広をベッドに運んだ。

帰りたい、ねぇ・・・。

赤い顔で眠ってる正広を見おろしながら、ふいに気がついた。あの、人形(もどき)・・・?

食卓に置かれてる人形を取り上げ、由紀夫はしげしげとそれを眺めた。

<つづく>

「えーっ!結局また元木のやーん!!」
ふはは、騙されたな!騙されたなぁっ?はい、申し訳ございません、今回も元木でぇーす(笑)。いや、でも、来週は!ゲスト様かもよって、前後編やからムリやねぇ(笑)じゃあ、さ来週!?お楽しみにー!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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