天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編1周年記念特別企画!大ゲスト大会!

『初めてのビアガーデン』前編

ご挨拶
「大ゲスト大会。第2回目のゲストでございます。
すのもの
で有名な、赤い怪獣先生ー!!ありがとー!!突然、ごめんねー(笑)かわゆいバカ兄弟をお楽しみくださーい!」

yukio
 

 8月も半ばに差し掛かり、もうじきお盆と言うこの時期。口からでる言葉と言えば、
「あっちぃ〜」
 だけである。
 配達から帰った由起夫は、指先でネクタイを緩めながら、ダルそうにソファに身を投げた。
「お疲れさまでしたー」
 すかさず正広が持って来てくれた冷たーい麦茶を、一気でゴクゴクと飲み干して、また、だらんとソファにもたれ掛かる。
「そと、暑そうだもんねぇー…」
「もー、あっちぃってもんじゃないね。アスファルトは焼けて鉄板みたいになってるし。あー…クーッと冷えたビールでも飲みてぇー…」
 パタパタとお盆で由起夫を扇いでいた正広は、ぱっと冷蔵庫の中身を思い浮かべた。とてもオフィスの冷蔵庫とは思えない立派なフォードア冷蔵庫には、中身もオフィスらしからず、野菜だの調味料だの冷凍した肉だのがギッシリ入っているが、そうは言ってもオフィスの冷蔵庫なので、さすがにアルコール類は入っていない。
 が、家の冷蔵庫には、ちゃーんとビールが冷やしてあるし、グラスも凍らせてあるので、帰ったら冷奴か何か作って、すぐに冷たいビールを飲ませてあげよう!
 と、正広が密かに決意したとき。
「あ、いいねぇービアガーデン!」
 野長瀬が能天気な声を上げた。
「なに言ってんだよ。一日中クーラーの効いた事務所にいたくせに」
「やや、そうだけどもさぁ、なんか、ほら、ビアガーデン日和じゃないの。ねぇ?」
 由起夫にじろっと睨まれたのも気にせず、野長瀬はヘラヘラと典子に話を振った。すると、
「あ。そう言えばあたし、ビアガーデンの招待券持ってますよ」
 典子は伝票から顔を上げて、さらりと言った。
「えっ?典子ちゃん、ホントに?」
「えぇ。出掛けに新聞の集金が来て、何かくださいって言ったら束でくれましたから。えーと…ほら、これ」
 そう言って典子は、軽く10枚はあろうかという招待券を野長瀬に渡した。
「はぁー、気前のいい新聞屋さんだねぇ。俺なんて何も貰ったことないのに」
「そりゃ可愛さの違いだろ。正広だって色々と貰ってるよなぁ?」
「うん。えっとねぇ、プールのタダ券とか、ジャイアンツのタオルとか、空気で膨らますクッションとか、メガホンとか」
「あ、そう言や、今度ドームのチケットくれるって言ってたわ」
「え?うっそ、ホントに?巨人戦の?」
「そうそう。えーっと、来週の、木曜…ってやってる?」
「ある!中日戦!」
「んじゃ、それ」
「すっげぇーっ!さっすが兄ちゃんっ!」
 使える物は何でも使う主義に従って、集金人がオジサンの場合は正広が可愛くニコニコと、集金人がオバサンの場合は由起夫が爽やかにニコニコと相手をして、色んな物をせしめている兄弟の会話に、なんで俺には誰も何もくれないんだ…と、ちょっと悲しくなりながら、野長瀬はビアガーデンの招待券をチェックした。

 場所は、駅前にある百貨店の屋上。有効日は、ビアガーデン開催中の月曜から木曜。
「これ、いいねぇ典子ちゃん」
「いいでしょう。せっかくですから、皆さんで行きません?」
 兄弟(主に弟)がウキウキとナイター観戦の予定を立て、酒好きの野長瀬と典子がワクワクと宴会の計画を練っている中。
「あっつぅ〜いぃ〜っ!やだもぉっ、日焼けしちゃうぅ〜」
 バン!と事務所のドアが開き、けたたましく千明が飛び込んで来た。そして、目ざとく由起夫を見つけて、きらりんと瞳を輝かせる。
「あ、あんまり暑くて、貧血になっちゃったみたいー…」
 どこが貧血だよっ!というイキイキした顔で、千明は由起夫の隣に腰を下ろし、ぐったりと由起夫にもたれた。…つもり、だった。
「きゃんっ!やだ、由起夫ぉっ!」
「暑いんだろ?だったら1人で涼んでろよ」
「もー、いじわるなんだからぁー」
 千明は、さっと立ち上がった由起夫を睨みながら、
「あ、でも由起夫の温かさが残ってるっ」
 なんて、ソファに顔をすりすりする。
「……変質者か」
 由起夫は、心底イヤそーな顔で呟いて、正広に「兄ちゃんっ」と小声でたしなめられた。
「まーったく、こう日差しが強いと、エステ行くより部屋でじっとしてた方がいいわねぇ」
 千明から少し後れて戻ってきた奈緒美も、うんざりした顔でクーラーの風が直撃する場所に仁王立ちする。
「野長瀬っ、なにボケッとしてんのよ。扇いで!」
「はいはいっ」
 呼び付けられた野長瀬は、とっさに持っていた招待券で、パタパタと奈緒美に風を送った。
 奈緒美は、横目でチラッと招待券を眺める。
「…何よ、それ」
「あ、これはですね、典子ちゃんが貰ったビアガーデンのタダ券なんです。一枚どうぞ」
「ふぅ〜ん…」
 爪を綺麗に整えたばかりの指先で、ぴっと招待券を一枚抜き取り、奈緒美は素早く招待券の裏書きに目を走らせた。
「ビール、ソフトドリンク飲み放題。プラス1000円で食べ放題のバイキングコースに変更可。時間制限なし、ねぇ…」
「ね、いいでしょう。ですから、今度みんなで日にちを決めて、納涼会ってことで…」

「6時」
 野長瀬の言葉を遮り、奈緒美はよく通る声で言った。
「……は?」
「本日。6時にデパートの屋上直通エレベーター前に集合よ」
 全員を睨み付けるように見渡しながら、奈緒美はキッパリと断言した。
「いや、ボクはかまいませんけども…」
「今日ですかぁ?あたし、今日は用事が」
「キャンセルしなさい」
「あ。俺らは、いいよ。正広まだ未成年だし、俺そーゆーとこは、あんまし…」
「ダメよ。会社のレクリエーションの一環なんだから。全員参加」
「えっ、ってことは、俺も行ってもいいの?」
「だって、ひろちゃん、もうすぐ誕生日で18でしょ?解禁じゃない、解禁〜!」
「はぁっ!?」
驚く由紀夫に、奈緒美は言った。
「18だったら、酒は解禁よ?」
「ちげーだろ!未成年は酒のんじゃダメだろーが!」
「あ、それは、法律ね?」
「…法律…?」
奈緒美はにっこりと微笑んだ。
「社則はそうじゃないのよ。腰越人材派遣センターの社則。あんた、入社する時に渡したでしょう、腰越人材派遣センター社則『やぶるべからず集』をぉ」
「あんなもん読めるか!5ポイント以下の字が、びっちり詰ってんだぞっ!!」
「ま、ともかく」
奈緒美は、正広に向かってにっこりと笑った。
「ちょっと早めのお誕生日パーティってことで。ね?」
「やった!俺お酒飲むとこに行くのはじめてー!」
「ダメだよ、お前。あーゆー場所は酔っ払ったオヤジとかいるし」
「由起夫っ、あたしは?あたしは行ってもいいでしょーっ?」
「行けば?俺らは行かないけど」
「えーっ?由起夫も一緒に行こうよぉ」
「俺も行きたいー!奈緒美さんがいいって言ってくれてんのに」
「えー…どうしよ。もう約束しちゃったし」
「いいじゃないですか、みんなで行きましょうよ」
「なんでだよ。お前が奈緒美と二人で行ってくりゃいーじゃん」

「うるっさいわねっ!全員参加だって行ってんでしょっ!」

 ダン!と床を踏みつけて一喝され、 行くの行かないの行きたくないのと、口々に騒いでいた面々は、シーンとなって奈緒美に注目した。
 奈緒美は、半眼でこめかみをピクリと震わせる。
「…会社の行事に参加しないような非協力的な社員は、給料減俸されても仕方ないわよね、野長瀬」
「は、はいぃっ!それは、もちろんですとも」
「うわ、きったねー…」
「とにかく。今夜6時に、エレベーターホールに集合よ。遅刻したら給料から差っ引くからね」
 キッパリと言い切り、静かにブーイングしている由起夫と典子を無視して、奈緒美はヒールの音も高く、入ってきたばかりのドアから出ていった。

 

「信じらんねー横暴…って、あいつどこ行ったんだ?」
「帰られたんじゃないですか?」
「そうだ!あたしも帰って支度しなきゃ!じゃね由起夫、また後でねー」
 ばたばたっよ千明も出て行き、オフィスには元いた四人が残され、静寂が戻ってくる。
「…なんか、急展開って感じだねー」
「天災みたなコンビだな」
 正広と由起夫の呟きに、野長瀬はウンウンと頷き、典子は静かに溜め息をついた。

 

 その、二時間後。
「遅刻者ゼロね。優秀じゃないの」
 どことなく悔しそうに言いながら、奈緒美はストップウォッチを止めた。
「あったりまえだろ。こんなことで給料引かれちゃやってらんねぇって」
 不満そうに呟いた由起夫と正広が到着したのは、6時3分前。もちろん他のメンバーは、すでに全員揃っていた。野長瀬、典子、千明に、なぜかジュリエット星川と菊江までいる。
「さすがに田村は無理だったけどね」
「そりゃそうだろ。…ところでさぁ」
「なぁに?」
「…なんで浴衣なんて着てるわけ?」
「あらぁ?出会いなんてどこにあるか分からないんだもの。当然でしょ?」
 粋な浴衣を着こなした奈緒美は、広告なんて入ってない涼しげな団扇を胸に当てて、にっこりと微笑んだ。
「ウチの先生、あの着付けのために呼ばれたんですよ」
「…なるほどねぇ」
 菊江の耳打ちに、溜め息交じりに典子が答える。もちろん、着付けした星川も浴衣姿だった。
「ずるぅいー!あたしも浴衣着たかったぁー!」
「ダメダメ。浴衣ってのは大人が着こなしてこそ粋ってもんなのよ」
「そうそう。ほら、行くわよ」

 オホホホホ…と声を合わせて笑う二人組みに先導され、一同はエレベーターに乗り込む。エレベータは一気に屋上まで上がり、チンと扉が開くと、そこは。

「うっわぁー…提灯だぁー…」

 しっかりとキリンレモンとか書かれた提灯がズラズラと垂れ下がり、その下には何の飾り気もない広いテーブルと、可愛げのない椅子。点々といる客は、明らかに会社帰りのサラリーマン集団ばかりという、これぞ、絵に描いたような平日のビアガーデン!だった。
「……出会い、ありますかねぇ」
「うるわいわねっ!」
 ウクククク…と忍び笑いをもらす野長瀬の頬を、左右から袂で叩き、奈緒美と星川はズンズンとフェンス側の席を目掛けて突き進む。由起夫は、目を丸くしている正広の腕を引っ張って、その後に続いた。

「こうなったら、飲むわよっ」

つづく


水曜日。あらぁ。ゲスト様から原稿が来ない・・・。そして私は赤い怪獣に電話した。「怪獣ちゃーん!あのね、あのねっ、ぎ・ギフト・・・」「・・・・・・・・あの・・・。前半、は・・・」「2回に分けよっかぁ!?」「・・・こ、後半、削除・・・しちゃ、って・・・」「後半、書こうかぁ!?」
そんな訳で、前半だけ送ってもらいました。ありがとう怪獣ちゃん。でもよかったら後半もがんばれ(笑)!
誕生日にちょっとひっかけたのは、時期がこーゆー時期だから!そこのところは、私がちょっとだけ内容を変えさせてもらったとこですが後はぜーんぶ怪獣ちゃん。さぁどーなる!どうなってしまうんだ!狂乱のビアガーデン!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!来週もゲストはいるのか!?

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