天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編1周年記念特別企画!大ゲスト大会!

『初めてのビアガーデン』後編

ご挨拶
「大ゲスト大会。第2回目のゲストでございます。
すのもの
で有名な、赤い怪獣先生ー!!前回、前編を送ってくれて、後編もすぐさまくれましたぁー!ありがとー!!今回は、一ヶ所たりとも!手をいれておりません(笑)とってもかわゆいぞー!」

yukio
 

  ヤケになった奈緒美の独断で、由起夫と野長瀬がビール類を運ぶ係、典子と菊江が食べ物を運ぶ係、正広と千明がテーブルの上に配置よく並べる係に任命され、それぞれ文句を言いながらもチャッチャと動いていた。
「ビールは、あと…」
「えっと、千明ちゃんと、兄ちゃんと」
「あ、あたしいらなーい、チューハイにするからー」
「んじゃ、一個だな」
「ううん。二個」
 千明がいらないんなら、後は自分の分だけと判断していた由起夫は、正広の言葉に、ん?と首を傾げる。
「俺のぶんと、兄ちゃんの分だから、二個ね」
 にっこりと笑った正広だったが、すかさず飛んできた手のひらに、ベチッとおでこを叩かれて、
「いたぁい!別にいーじゃんかぁ!にーちゃんだって、どうせハタチ前から飲んでるくせにー!」
 と、頬を膨らませた。

 由起夫は一瞬、ありゃ、と顔を歪めたが、そのまま黙ってビア樽置き場に行ってしまう。やっぱり、ジョッキを一つしか取らないのを見た正広は、
「ずりぃよなぁ…奈緒美さんだって、いいって言ってくれてんのに」
 唇を尖らせながら、そう言った。
「ねぇねぇ。じゃあ、一緒にチューハイにしない?」
「チューハイ…って、おいしい?」
「おいしいよぉ!ビールみたいに苦くないし、飲みやすくって、ジュースみたい」
「そーなんだぁ…」
 ニコニコと千明に言われて、正広の心はグラついた。
 何だかんだと文句は言っていても、基本的に正広には由起夫の言葉に逆らうつもりは、あんまりない。
 とは言え、全くないわけじゃないし、みんなが飲むぞー!と盛り上がっているんだから、自分も一緒に飲みたい。奈緒美さんからアルコール解禁してもらったんだし…。
「うん。じゃあ、俺も同じのにする」
「オッケー!じゃあ…あ、すみませーん!ここ、チューハイレモン二つー!」
 大声で従業員にオーダーする千明の隣で、今のが聞こえたら、また怒られるんじゃあ…と、正広はこっそり由起夫の様子を伺った。が、
「…何やってんだろ」
 由起夫は、空のジョッキを持ったまま、ビア樽の前でボーッとしている。
「ちょうどビールが切れちゃったんだって。ついてないねー」
「あ、そうなんだ」
 典子の言葉に、正広はホッと息をついた。
 新しい樽との交換に結構時間がかかり、由起夫がテーブルに戻った頃には、千明と正広のチューハイも、とっくに到着していた。
「じゃ、とりあえず乾杯しましょうか。グラス持って」
 奈緒美の言葉に、正広は嬉しそうにチューハイのグラスを両手で持つ。
「ちょっと待て。ひろ、お前のそれ、なに」
「え?これ、は…キリンレモン」
「…うそつけ」
 由起夫は素早く正広のグラスに手を伸ばした。正広も、クルンと由起夫に背を向け、胸の前でグラスをしっかり持って応戦する。
「ちょっと飲ませてみ」
「やだ。ただのキリンレモンなんだから」
「うん。だから、のど乾いたから一口くれってば」
「やーだぁー」
 ぎゅっとグラスを抱え込んで、体を丸くする正広に、背中から覆い被さるようにして、由起夫は両手を伸ばす。
「…あんたたち。なに兄弟でベタついてんのよ」
 ひんやりした奈緒美の声に、ハッと顔を上げた由起夫は、このテーブルはもちろんのこと、ちょっと離れたテーブルからも、白々とした視線を送られていることに気がついて、慌てて体を起こした。
「ほら。兄ちゃんがしつこいから」
「ばっ、何言ってんだ、お前。だいたい未成年の分際で酒なんかなぁ」
「まぁまぁまぁ!」
 このままだと、犬ばかりかカラスも突つかないような兄弟喧嘩に再突入しそうなムードに、慌てて野長瀬が止めに入る。
「はい。由起夫ちゃん、ビール持って。えーと、ひろちゃんは」
「キリンレモン!」
「ね、キリンレモンね。じゃ、乾杯ってことで、社長お願いします!」
「よし!じゃ、お疲れさまでした。かんぱいっ!」
『かんぱーい!』

 あれよあれよと言う間にジョッキを持たされ、手を上げられ、ジョッキをガンガンぶつけられた由起夫は、
「おい、ちょっとっ」
 と、ビールの飛沫から身をかわす。
 その間に、他のメンバーは早速ビールに口をつけ、
『くーっっ』
 の合唱となっていた。

「…兄ちゃん」
 乗り遅れて、ぼんやりしてしまった由起夫に、正広がそーっと声をかける。
「あ?」
「えと…乾杯、ね?」
 こぼれたビールで泡だらけの手で持っているジョッキに、正広がチューハイのグラスをチンと合わせて、上目遣いでニッコリ微笑む。
 ちょっと気が抜けていたところに、天下無敵のおねだり攻撃をくらった由起夫は、
「乾杯って……まぁ、飲み過ぎないようにな」
 と、ついつい正広の飲酒に許可を出してしまった。
「はーい、気を付けますー!」
 正広は、掛け値なしに嬉しそうな笑顔で、良い子のお返事をした。

 

 が。

 良い子のお返事というのは、たいてい守られないものと決まっている。

 しかも、正広がお酒を飲むのは今日がはじめてで、どれくらいが飲み過ぎなのかわかるはずもない。
 チョビチョビとグラスに口をつけた正広は、ホントにジュースみたいだと思った。あんまりおいしくはないけど、体がふわっとなって、気持ちいいなぁと思った。
 そして、由起夫がビールのお替わりに行かされている間に、 由起夫のビールをちょっと飲んでみたり、奈緒美の日本酒を一杯だけもらったり、チューハイをお替わりしたりして、そして。

 

「じゃぁー、今度わぁー、よんばんとぉ、にばんがぁ」
「ちょっと待ちなさいひろちゃん!その番号はダメよ!」
「えぇっ!あんた4番なの!」
「って、あんたが2番なのぉ!?」
 正広の能天気な声に、奈緒美と星川は顔色を変える。
「ひろちゃん、番号替えなさい!」
「そうよ、その番号は、不吉なのよ!」
「だめですぅー!王様の言うことわぁ、絶対にきかなきゃダメー」
 正広は、にこにこと笑いながら、二人の意見をあっさり却下し、
「よんばんと、にばんが、ちゅー!」
 と、世にも恐ろしい指令を下した。
「いやよぉっ!冗談じゃないわ、誰がこんな女と!」
「あら。言ってくれるじゃないの。あたしの方こそ一億積まれたってお断りだわ」
「だめですぅー。ほらぁ、ちゅー!ちゅー!」
 ケラケラと笑いながら、椅子にでろんと座っている正広の隣で、由起夫は深い溜め息をついた。

「ひ、ひろちゃんって、酔うと怖いもんなしですね。しゃ、社長にチューだなんて…」
「何言ってんだよ。元はと言えば、お前が変なこと言うからだろっ!」
 由起夫は、キッと野長瀬を睨み付けた。

 ほどよく酒が回ってきたところで、「王様ゲームでもしませんか」と言い出したのは、もちろん野長瀬。
 しかし、その意見に賛成したのは千明だけだったので、企画倒れに終わりそうだったのだが、何を思ったか奈緒美が、
「あら、いいわね。ただし、今日はひろちゃんの誕生日だから、王様はひろちゃんって事で」
 と言い出したのだ。
 その時点では誰もが、正広が王様だったら、せいぜいビールの一気のみとか、腕立て10回とか、子供のお願いくらいで終わるだろうし、と、思って賛成したのだ。が。

 にこにこと笑っている正広が、実は相当酔っていたことに気がついたのは、ゲームが始まってからだった。

 王様って、何を言えばいいの?と首を傾げた正広に、「ちゅーですよ、ちゅー!何番と何番が、ちゅーって言えばいいから」と、くだらないことを吹き込んだのも、もちろん野長瀬で。
 そして、酔って判断力を失った正広は、ただひらすら「ちゅー!」を繰り返し、この惨状があるわけだ。

 

「よかったぁ…俺、早めに当たって」
 由起夫は、心底ほっとした顔で胸を撫で下ろす。
 自分が呼んだ番号が、由起夫のものであると知って、正広は「え?」と困った顔をし、相手が野長瀬であると知った由起夫に思いっきり睨まれた時は、「えぇぇぇっ?」と泣きそうな顔をした。

 そして、

「えっと、えーと、2番と、5番が…テーブルに、ちゅー」
 という、なんじゃそりゃ?という指令に変えたのだった。
 それも、まだ正広に思考能力が少しでも残っていたから、できたこと。今の正広だったら、きっと笑って見ているだけだろう。
 王様ゲームなので、当たるのは一回だけとは限らないが、脅威の強運を誇る由起夫は、きっともう当たることはないだろうなと、周りの狂乱を余裕で眺めていた。

 

 奈緒美と星川が、ちゅーの振りをした所で、「じゃあ」と次の指令に移ろうとした正広に、
「あ、ひろちゃんっ!」
 と、千明がストップをかけた。
「ねぇねぇ、今度はあたしに、王様かわらせて?」
「んー?千明ちゃん、王様したいのぉー?」
「そう、したいのぉー」
「じゃあ、交替してあげるー!」
「ありがとー!」
 ここは女子校の廊下か。
 というノリで、正広とぎゅっと抱擁をかわした千明は、瞳をきらりんと輝かせながら、割り箸を差し出した。
 かったるそうに由起夫が選んだ割り箸の先を、瞬きもせずに凝視する。そして、
「わかったぁっ!」
 ガタンと椅子を蹴飛ばして、パタパタと由起夫の隣にやってきた。
「げ」
 由起夫は、今になって数字の部分をぎゅっと握り締めたが、もう遅い。千明には、はっきりと見えてしまった。
 割り箸の先に書かれた、丸いカーブ…。
「2番が!王様に、ちゅー!口ちゅー!もう、思いっきり、ちゅーっっ!」
 ぎゅっと両手を握り締め、目をつぶって叫んで、千明は唇を突き出して由起夫に迫る。が、
「はいっ!ご指名、承りましたっ!」
「……え?」
 立ち上がったのは、由起夫ではなく、野長瀬だった。
「ちっがぁうっ!由起夫なの、2番なの!」
「2番ですよ!ほらっ!」
 嬉々として野長瀬が差し出した割り箸には、たしかに2と書かれている。
「…ってことは?」
「俺、3番」
 由起夫は、くっきり3と書かれた割り箸を、千明の目の前でヒラヒラと動かした。
「ってことなので、それでは、思いっきりちゅーを!」
「やだやだやだーっ!今のなし!いい間違ったのぉーっ!」
「ダメです!王様とは言え、言い直しは許されません!さぁっ!」
 迫る野長瀬を突き飛ばし、千明はテーブルの向こう側へ逃げた。もちろん、野長瀬は追いかける。
 正広は、
「トムとジェリーみたぁいー」
 そう言って、上機嫌でケラケラ笑っていた。そこへ、
「正広さん。今度は私が王様になってもいいでしょうか」
 今度は菊江が王様を申し出た。
「あ、いいよぉー」
「ちょっと待て。お前、よーく考えないと、大変なことになるぞ」
「だーいじょうぶだよー、ねー?」
「はい、もちろん」
 ニッコリと微笑んだ菊江の笑顔の裏側に、何かとんでもないものが隠されているように感じて、由起夫は背筋を震わせる。
 割り箸を引く時も、しっかりと番号を握り込み、正広の分も菊江からは見えないように手で覆う。
 菊江は、その由起夫の手を透かすように、じーっと見つめて。
「見えました」
 と、ポツンと言った。
「え、見えたの?ホント?」
「えぇ。ちょっと疲れましたが、はっきりと」
 なぜかワクワクしている典子に、菊江はきっぱりと言い切った。額には、うっすらと汗が滲んでいる。
「…何が見えたってんだよー…」
 由起夫は、背中がぞくぞくするのを感じながら呟いた。菊江は、
「1番と、5番が、口付けを」
 満足そうに微笑みながら、そう言った。

「ちょっと待て、1番っつたら、正広じゃねぇか!」
 由起夫は、顔色を変えて立ち上がり、正広の割り箸を菊江に見せる。
「なぁにぃー?おれぇー?」
「いや、いいから、ちょっとじっとしてろ。んな、未成年にそんなことさせられるわきゃねぇだろー?」
「あら、でも、もう飲酒年齢だって聞きましたけど」
「そうね。社則ではね」
「だから、それがおかしいっつってんだよっ」
 由起夫は、ガン!とテーブルを叩く。
「ちょっと、誰だよ5番。お前も何とか言えよぉ」
 しかし、テーブルの誰からも、自分です、という声は上がらなかった。
「あたしは2番」
「6番…残念だわぁ」
「そんな睨まないで下さいよぉ。3番ですから、違いますって」
「え…ってことは…」
 由起夫は、慌てて野長瀬と千明の分の割り箸を取った。しかし。
「あれ?4と6?」
 どちらの番号も違う。
 となると、残っているのは……。
「あ」
 全員の視線が集まっている、自分の左手を見下ろして、由起夫は小さく声を上げた。

 手を開いてみると、出てきたのは、

「……俺じゃん」

 くっきりはっきり、5だった。

「すっごぉい、菊江ちゃん!」
「ふふ…完璧です」
 自信満々の顔で頷く菊江を、由起夫はキッと睨み付ける。
「俺はやんねーぞ。んなこと、できるわきゃねぇだろ」
「…王様の命令を守らない気ですか」
「ざけんなよ。こんなゲームなんかでなぁ」
「えー?なんでぇー?ちゅーでしょー?しないのぉ?ちゅー」
 マジになりかけていた由起夫は、隣からの声にガクッと肩を落す。
「しないのって、お前…・え?」
 誰とかわかってんのかよ、と言おうとして、顔を隣に向けた由起夫は、茶色い物体で視界が一杯になり、これは何だろう?と、一瞬思考が止まる。

 その間に、

「きゃぁ!」
「あら」
「まぁ」
「うっそぉーっ」
「ひ、ひろちゃんっ!」
「……(にやり)」 

 正広が、由起夫に、ちゅーをしていた。

 

「な、何やってんのよ、ひろちゃんったらぁぁーっっ!」
 すかさず千明が飛んできて、正広の体をグイッと離す。
「えぇー?ちゅー…だよぉー…・」
 正広は、体の力が抜け切っているようで、そのままグテンと後ろ向きにひっくり返りそうになっていた。慌てて由起夫が手を伸ばして引き戻す。
 軽い小さな体は、そのまま由起夫の膝の上に、ぱったりと倒れ込んだ。
「ちゅーって!ちゅーって由起夫ぉっ!」
「はいはい。聞こえてるってそんな大声出さなくても」
 涙目になっている千明の頭を、よしよしと軽くまでながら、由起夫は溜め息をついた。そして、唇のやや下、顎のやや上という、微妙な位置を指差す。
「ここ」
「……え?」
「ここに、ガツンって当たっただけ。まだ、いてぇわ」
「…ガツンって…ちゅー?」
「とは言わねぇだろ、普通」
 由起夫は、正広にちゅーされた…と言うより、ぶつかられた場所をさする。
「よかったぁぁーっ!じゃあ、じゃあ、口直しにあたしとっ!」
 立ち直りの異常な速さを見せ付けて、千明が目を閉じて唇を近づけてくる。
 そんな千明を片手で押さえ、
「あれ?野長瀬とすんじゃなかったっけ?」
 と、由起夫は意地悪な笑顔を浮かべた。
「そうそう!誤魔化されるとこだったよぉー!」
「やだぁっ!由起夫のばかぁぁーっ!」
 また、追い掛け合いを始めた千明と野長瀬に、
「がんばれよー」
 と、いい加減な掛け声をかけて、由起夫はふっと視線を下げる。
 正広は、膝の上で小さな寝息をたてていた。
「…18になろうかってのに、あれでチューってのは問題じゃねえか?」
 正広の前髪をそっと払いのけてやりながら、由起夫は自分が18の頃のことを思い出した。

 俺が18の頃って言ったら、チューはもちろん、あんなことも、そんなこともやったし、ここまでは全然オッケーで…そう言や、はじめてアレやったのって18だっけ…いや、もっと前か?
「俺って汚れてたんだー…」
 天使のような正広の笑顔を見ながら、なんとなく落ち込みそうな気持ちを、ぶるんと首を振って払いのける。
「さーって、どーやって連れて帰るかなぁー…」
 口では、そう言いながら、頭の中では、誕生日どうしようか、と由起夫は考えていた。

 来週、誕生日が来る。

つづく


先週、後半書こうか?ってゆったもののゆっただけだった私に、赤い怪獣はすかさず後半も送ってきてくれた。そして、Major通信倫理委員会の検閲の後、掲載するようにいわれたが、通称M倫の規制は、ペットにめろめろになっているおうちのペット様に対する規制よりも緩いので、朱筆の一つもいれずそのまま掲載となった。ありがとう赤い怪獣。なんと可愛いんだ・・・!また頼むよ。頼むんかい!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!ですが、来週は久々、本人の登場かも!だって、ホントに誕生日がきちゃうもんねー(笑)

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