天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編26話『正広を運ぶ』

ご挨拶
「今週は大ゲスト大会をいったんお休みして、私でーす。どんなんでしょうねぇ。ひろちゃん、お誕生日ですものねぇ」

yukio
 

「正広・・・、正広・・・っ?」
「う・・・・、う・・・・?」
ぺちぺちと頬を叩かれ、正広はうっすらと目を開けた。ぼんやりした視界の中に由紀夫がいる。
「ん・・・?」
「誕生日おめでと」
きちんと髪をあげ、スーツを着込んだ由紀夫は片手をあげる。
「う・・・?ん・・・?」
「んじゃ、俺、仕事いかなきゃいけねぇから!」
「あ、は、い・・・」

正広は朝に弱い。
一度起こしてもらったくらいで起きられた試しはなく、今日も再び夢の世界に入っていきそうになる。
そのうつらうつらしてる中、正広は、ゆっくりと兄の言った言葉を反芻する。

『誕生日おめでと』
・・・あぁ、8月、18日、だぁ・・・。
『んじゃ、俺、仕事いかなきゃいけねぇから!』
・・・。
・・・・・・・・?
あ、そっか・・・。
そ、だよね・・・。仕事、だよ、ね・・・。
うん。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「今、何時ぃっっ!?」
ガバっ!と起きあがった正広は、9時半を指している時計を見てめまいを覚えた。
「もー!にーちゃん、なーんで起こしてくんない・・・っ!って、目覚まし止めちゃったの俺かぁっ!!」
大声を出すことで自分の目を覚まさせながら、支度をして飛び出して行く。
少し不思議だった。
由紀夫の仕事って、一体なんだっけと思う。早坂由紀夫担当課長の正広は、今日の午前中の仕事なんて、知らないし・・・。

 

「って、奈緒美さん、これぇっ?」
「あ、ひろちゃん、ごめんなさいねー。ほら、お盆明けでしょう?いろんな会社から、急ぎの仕事が入っちゃって」
遅刻寸前で駆け込んだ正広が、由紀夫のファイルを開くと、そこには、びっちり埋められたスケジュール表があった。
「うわぁ・・・」
週末、21日までびっしり!どこかの芸能人のような分刻みのスケジュールに、しばしぽかんと口を開けっぱなしになってしまった正広は、この暑いのに・・・、と静かにファイルを閉じる。
あんなにちゃんとスーツ来て、この炎天下に自転車で!?
想像しただけでめまいがしてくる。
思わず小さくため息。

そこへ。
「あ、ひろちゃん、おめでと」
奈緒美が、ことん、と机の上に手のひらサイズのケースを置く。
「あっ、ありがとうございますっ」
ケースの中には、由紀夫も持っているGUCCIのカフスボタンが、デザイン違いで入っていた。
「うわー!すごい!ありがとうございますー!」
「なんだ社長、珍しいじゃないっすか、そんな地味、いやいやシンプルな」
俺はね、俺はね、と自分のプレゼントを出して来ようとする野長瀬を、じろっと睨み、奈緒美は言った。
「それに合うスーツは、直接うちに届けさせたから」
「はあっ!?」
「しゃ、社長ぉ・・・っ!」

「・・・ホントに来た・・・」
うちに帰る時間を見計らったように、店員直々に届けにきたスーツを受け取り、正広は呆然と呟いた。
カフスボタンに合うスーツを選んだって、奈緒美さんって一体何?と大きなバッグを抱えて正広は思う。
野長瀬からは、ポケモンスタジアムに、ポケモンピカチュウ、攻略本つき。典子からは、スニーカー。千明には、あたしのチュウをプレゼントするからぁ〜!といわれたので、丁重にお断りした。

「プレゼント一杯だぁ」
嬉しそうに言いながら、せっせと片づける。ポケモンスタジアムやりたいけどぉ・・・、と未練を残しながら、夕食のしたくをした。
あの、とんでもないスケジュールによると、由紀夫がいつ帰るか解らなかったけど、せめて好物を作っておいてあげたいしー、と。

しかし。
夜更かしの正広がポケモンスタジアムで遊びながら待っていたにもかかわらず、由紀夫は帰ってこなかった。
コントローラーを持ったままうつらうつらしていた正広は、仕方なくベッドに入る。

誕生日、もう終わっちゃったなー・・・。

いや、だって、仕事だし。
それに、こないだみーんなで、ビヤガーデンでパーティしたしね。
うん。

大人しーく、ちょっぴりしょぼんと眠りについた正広だった。

 

翌朝も、正広は由紀夫に起こされた。
「おはよ」
「は、よー・・・」
「ごはんありがとな。今日も遅い、かもしんないから、俺のこと気にしなくていいから」
「あぁー・・・、うん・・・」

19日も、20日もそんな感じで、正広は由紀夫とは朝しか顔を合わせないような状態が続いた。
来週からは普通の状態になるから、と、思っているものの、大丈夫かなぁというのと、なんかちょっとさみしいなぁ、と言うので、あんまりよく眠れない正広は、次の朝も由紀夫に起こされた。

「正広ぉ」
「う・・・」
「ちょっと。ちょっと、起きな」
「ん・・・?」
「いいから。体起こすだけ。本気で起きなくてもいいから」
ぐったりしてる体を抱えあげられ、ゆらゆらと揺れてると、パジャマが抜き取られ、頭からTシャツをかぶせられる。
「な、何ぃ・・・」
「これ、はける?」
渡されたバミューダパンツに、ふらふらしながらはきかえて、まだボーっとしていると、よいしょ、とベッドの脇に立たされた。
「う・・・?」
「いいからいいから。寝てていいからなぁ〜」

まるで、ひょいと小脇に抱えられたような状態で、階段をおろされて、あれれ?と思ってるうちに車に乗せられた。その揺れで、再び眠気に襲われた正広は、車が止まって降ろされるまで、意識が戻らなかった。
すぐ側に由紀夫がいるのが解る方が落ち着くらしい。
「ん・・・?ここ、どこぉ・・・」
「いやいや、いいよ。寝てな、寝てな」
元々寝るのは大好きだし、完全に覚醒しないままだから、うつらうつらしながら、由紀夫に誘導されるがままに歩いて、座らされて、随分座り後こちがよかったため、そのまま熟睡。

そして、到着したのは。

「・・・新、大阪ぁ・・・?」
ざわざわとうるさいホームに立って、正広はようやく自分が乗っていたのが、のぞみで、しかもグリーン個室だったことを知った。
「あれぇ、今日って、金曜日・・・」
「休み、休み。ほら、行くぞ」
大阪に来るのは初めてで、もの珍しくキョロキョロしてるうちに、あれよあれよと引っ張られる。
「あ。ねぇ、休みって、兄ちゃん、今日まで仕事びっちりだったじゃん」
「終わらせたぜぇ〜」
「お客さんの、都合は?」
「ん?心から丁寧にお願いすれば、どうにかなるもんなんだって」
兄の『心から丁寧』というのが、だいたい想像のつく正広は、お気の毒に、と、お願いされた人たちの事を思う。
「そ、それで、なんで大阪?」
「そりゃ、大阪にしかねぇからだよ」
「何が」

 

「甲子園球場」
「うわぁーー!!甲子園ー!!」
大きな目を、さらに真ん丸にして、正広はツタのからまる球場をうきゃー!!と見上げる。
「今日!今日、準決勝じゃん!」
がしっ!と由紀夫の手首をつかんで、急がなきゃ自由席なんてなくなっちゃう!と声を上げた。
「いやいや、席あるし」
「ホントにぃ!」
「ホント、ホント。バックネット裏」
「ギンサンの下ぁ!?」
「・・・なんだそりゃ」
何語だ?と聞き返す由紀夫に、日陰になってる場所だと正広は言う。
「そこまでは解んねぇけど、とにかくいい場所だって」

実際に座ってみると、そこは確かに日陰になってる場所で、真夏の炎天下に長時間正広を置くのが心配で、帽子やら、ヒエロンやらをやたらと用意してきた由紀夫はホっとする。
「兄ちゃん・・・」
「んっ?」
「どーしよぉー、俺、すごい嬉いぃー・・・」
じっとグラウンドをみつめながら、ぽつんと呟く。
「そりゃよかった。遅れてごめんな」
「何?」
「誕生日プレゼント」
「えぇーっ!!!?」

正広の誕生日に高校野球観戦付き大阪旅行をプレゼント。
高校野球が開幕した日から、熱心にテレビ観戦している正広を見て、これは!と思いついた。
18日から22日の決勝戦まで。

「って、あんた、何考えてんのよ」
「何が」
「16日までお盆休みで、18日からまた休むって、あんた」
「ダメ?」
「ダメに決まってんでしょ!」
「なぁんでよ」
盆休み前にケロっといった由紀夫に、奈緒美は深い深いため息をつく。
「大体、チケットどーすんのよ」
「チケット・・・、当日券とかあんだろ?って、あ!甲子園ってドームじゃねぇんだ!」
「はいっ?」
「・・・炎天下か。んじゃ、長時間は・・・」
「はいっ!」
野長瀬が手を挙げた。
「ホントは、準々決勝からいくのがいいんですよね。ベスト8からベスト4だから、八強が見れて。でも、4試合あると、朝から夕方までずっとだから、ひろちゃんにはキツいと思います。だから、準決勝と決勝でどうですかね!」
「んーと?だったら、21日と22日か。じゃ、そこ休むな。俺と正広と」
「まぁちぃなぁさぁ〜い」
「なんだよぉ。22日は土曜日じゃん」
「チケットいらないのぉ?」
「え?」
「バックネット裏。連番2枚。二日間」
「うっそ!持ってんのっ?」
「持ってるだろう人間は知ってるわ。欲しい?」
「欲しい欲しい!」
「んじゃ、これ」

と、びっちり埋められたスケジュール表を渡される。このスケジュールをこなせたら休みをやろうと言われた由紀夫は、男と男の約束だぞ!といらん事を宣言して、半分蓋が開きかけのマニキュアを投げつけられた。

 

試合は、さすがの4強で、いい試合だった。正広は、カチワリを頭に乗せて、きゃあきゃあ興奮していたが、なにげで由紀夫もぎゃあぎゃあだったくらいに。

「うわー!明日すげぇ楽しみじゃないーっ?」
「そうだなぁ」
二人で、今日の二試合の事を話ながらの帰り道。正広はぴたっと立ち止まった。
「どした?」
「兄ちゃん、ありがと!」
「は?」
「お礼言うの忘れてた!」
18日、誕生日の朝にもおめでとうって言ってくれたのに。
「ほんと、ありがとー!俺、兄ちゃん孝行するぅー!」
「おう!下の世話は頼むぞ!」
「えぇー・・・、そんな長い間なのぉ〜・・・」

そこに、奈緒美から電話が入った。
「あ、何?仕事なんかしねぇぞ」
『あんたはホントに目上の人間に対する口のきき方を知らないわねぇ!』
「知ってるよぉ。目上の人間に対する口のきき方くらい」
『・・・。あんたがとってたホテル、キャンセルしたから』
「はぁーっ!?何考えてんだよ、てめー!」
『だぁかぁらぁ、そぉーゆー口のききかたはやめなさいって言ってるわねぇ〜』
「なんでそんなことすんだよ!」
『ご優待券があったのねー。阪急インターナショナルとってあるから、いきなさい。なんだったら、リムジンで迎えに来てくれるわよ』
「嘘ぉ」

ホントだった。

リムジンで到着。案内された部屋は阪急スィート。
「何考えてんだ、あの女・・・」
「すげー!!兄ちゃん、すげぇー!!!」
「ま、あいつが勝手にとったくらいなんだから、払ってくれんだろうなぁ・・・」
広い部屋ではしゃぎまわる正広を見ながら、「優待券がある」というだけで、奈緒美に払うつもりはないのを知らない由紀夫は、こりゃ、ルームサービスも取り放題か・・・!
と、正広と目を皿にしてメニューを眺めるのだった。

絶対に起きてたこ焼き食べに出るからねっ!!と浴衣の上にバスローブという、なんだそりゃってカッコで夕寝している正広と、何!?ソフトドリンクのみ放題!?とみみっちくジュースを飲んでいる由紀夫は、この大阪旅行で、あんな事件に巻き込まれるとは思ってもみなかったのだが、それはまた、別の話(笑)

つづく


わはははははー!!
何がおこったんだろう。私も知らないけど(笑)なんか、楽しい事があったにちがいない。うん、きっと(笑)
そして、来週は、またまたゲスト様復活!なーんと黒ラブ様だよー!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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