天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編1周年記念特別企画!大ゲスト大会!

『あの頃の早坂兄弟』(適当な題(笑)黒ラブちゃーんごめーん!!)前編

ご挨拶
「3人目のゲスト様!そーれーわぁー、
Toy kitchen
の黒ラブ様!かぁわいいじょー!」

yukio
 

その日、目が覚めたらお母さんがいなかった。

夢の中で、お父さんが起こしに来たんだ。
「今からお母さんを病院に連れていく」
びっくりして、
「お母さん病気なの?」と聞いた。
「病気じゃない、だけど病院に行かなくちゃいけないんだ、もう一年生なんだから、お母さんがいなくても大丈夫だな?」と言われた。
ちょっと(だいぶ)寂しかったけど、うん、て頷いた。

そんな気分のまま、武弘は目覚めた。

だいたい毎朝、武弘は起こされなくてもちゃんと起きることが出来た。お母さんが、トントンと包丁を使う音が聞こえてきて、おいしい朝ごはんの匂いが漂ってくると、キチンと自分で起きられたから。
武弘は、とてもいい子だった。

辺りを見回したが、いつも隣に寝ているお母さんの姿はなかった。そして、お母さんと反対側の隣にいつも寝ているお父さんも、いなかった。

大きな目をぱしぱしとさせて、武弘は布団の中で考えた。
夢じゃ、なかったのかな・・・・お父さんが起こしに来たの、本当だったのかな・・・お父さんが言ったこと、本当だったのかな・・・・・
え?お母さん、病院に行っちゃったの?!

武弘は、飛び起きた。どきどきして、どきどきどきどきして、胸がきゅーっとなった。止まらない。どーしよー・・・・おかあさん!おとうさん!
しばらく、お尻をぺたんと落として座った姿勢のままで武弘は固まっていた。カーテンが閉まったままの部屋は、ネズミ色を混ぜたような朝の光でぼおっとした空 気を作っている。武弘の、今の気持ちみたいだった。

隣の居間とを仕切っている襖が開いて、光と一緒に、朝の匂いが流れ込んだ。でもそれは、溝口家の朝の匂いじゃない。トーストがこんがり焼けて、コーヒーが入った、そんな匂い。
慣れないその匂いは、それでも武弘の鼻を無意識に目覚めさせる。
覗き込んだのは、近所のおばさんだった。いつもスカーフをしていて、エプロンをしていて、口が大きくて、いつもにこにこしている明るいおばさんだった。特技は、一人息子の忘れ物を届けること。武弘にも、いつも優しくしてくれる。背中に乾電池入ってるんじゃないかって思う声で、話しかける。
「武弘ちゃん、起きた?お父さんとお母さん、いないからね、今日はおばちゃんが面倒みたげるわ。」
「おとうさんと、おかあさん、どうしちゃったの?」
面倒みたげるなんて、ぼくもう1年生なのにな、と思いながら、それを口には出さずに、武弘は尋ねた。
「お父さんはね、お母さんが入院するから、付いていったのよ。武弘ちゃんも、後で一緒に行こうねー」
え・・・・やっぱり本当だったんだ・・・・・夢じゃなかったんだ・・・・・・そんなことをぼんやり考えた。

 武弘は、今から2年くらい前に、施設からこの溝口家に引き取られて養子になった。4歳だったから、もう、自分がどんな立場でよその家の子になるのか、少しはわかる年齢だった。
 溝口の両親は、とても暖かく武弘を愛してくれた。結婚してずいぶん経つのに子供に恵まれないために武弘を引き取ったのだと言うのは、後から知った話だ。寡黙な父親も、優しい母親も、武弘を自分の子のように慈しんだ。武弘は、だんだん、ゆっくり少しずつ、自分の殻を破って、素直な本来の自分を発揮しつつあるところだった。

 武弘は、キチンと起きて、パジャマから普段着に着替え、ちゃんとパジャマを畳んで、布団も畳んだ。えっと・・・・お布団重いから、お父さんが上げてくれるんだけど・・・・ちらっと、おばさんを見た後、武弘は、自分で布団を押入にしまうのにチャレンジした。

どっさ・・・

あっという間に、布団の山に埋もれてしまう、小さな武弘。
「ああ、ほら、おばさんがやってあげるのにー。いいから顔洗ってらっしゃーい」
歌うように言って、おばさんは、布団の山から武弘を引っぱり出し、お尻を1回ぽんと叩いた。
「ありがとう、おばちゃん。」
にこ、と全力で笑うと、おばちゃんは嬉しそうに笑い返した。
「んもう、いい子ね、武弘ちゃんは!おばちゃんちの吾郎ちゃんね、昨日もまた忘れ物して、おばちゃん、パリまで届けに行ったのよ。何だと思う?バナナなの!パリまで行くのに、おやつのバナナもなくっちゃ、ダメよねー?」
 よくわからなかったので、中途半端に笑い返して、洗面所に向かう。今のおふとん上げ、「やって?」って言えばよかったのかな・・・おばさんにどこまで甘えてもいいのかわからなくて、ちょっとどきどきした武弘だった。

 いつもと違うパンと牛乳の朝ごはんを終えて、おばさんに連れられて武弘は病院に行った。
 バスに乗って行く大きな病院は、武弘自身は1回しか来たことがなかった。お父さんとお母さんのところに来たばかりの頃、うんと熱を出して、夜中に連れてきてもらって以来。それを思い出して、どきんとする。お母さん、そんなに具合悪いの?もしかして、お父さんも?
ピンク色の壁と、ピンク色の服を着た看護婦さん。連れてこられた病棟は、武弘が以前行った小児科とは、壁の色も、看護婦さんの色も違って、また不安になった。
「着いたわよ、武弘ちゃん。」
ひっそりと小声で言われて、武弘はその部屋に入った。
カーテンだらけで、どこに何があるのかわからない。おばさんに示されたカーテンを開けると、お母さんが寝ていた。お父さんも側に座っている。
「おとーさん、おかーさん・・・」
ぱたぱた、と近づいた。
お父さんがぎゅっと抱きしめてくれる。お母さんは、布団から手を出して、武弘が差し出した手を握った。そして、頭を撫でてくれる。
「あのなぁ、武弘。お母さんは、これからしばらくの間、ここに入院することになったんだ。武弘はもう1年生だから、いい子にしていられるな?」
「うん。大丈夫だよ。いい子にしてる。おかーさん、しばらくっていつまで?」
「ほんのちょっとよ。すぐに退院するからね。おばさんの言うことよく聞いていい子にしててね。」
「うん!ぼく、いい子にして待ってる!」
「武弘ちゃんは、いい子だから、大丈夫よねー」
歌うおばさんに励まされて、お母さんとお父さん、それにおばさんを交互に見上げて、武弘はにこっと笑った。ぼく、いい子にしてるよ・・・・・。

 でも、それから半年、お母さんは帰ってこなかった。
 武弘は、思った。ぼくのいい子が足りないのかな。お母さん、ぼくがもっといい子にすれば、早く帰ってきてくれるのかな。
 一生懸命、いい子にした。けれど、お母さんは入院したきりだった。

 そして半年後、お母さんが突然入院した時と同じように、夢の中でお父さんに起こされた。
 目をこすりながら、武弘はわたわたと着替えをして、お父さんに連れられて病院に行った。おばさんは、何日か前から病院の方に行っていた。

 道すがら、お父さんは武弘に話して聞かせた。
「武弘・・・お前になぁ、弟か妹が来るんだぞ。お母さんは、もうすぐ赤ちゃんを産むんだよ」
「弟か、妹?・・・どこから?」
自分が養子だから、当然の質問だった。お母さんが、赤ちゃんを産むんだと、教えられた。
「それで入院してたの?」
頷く父親に、武弘はつないだ手をぎゅっと握った。
 お母さんは、体があまり丈夫ではなくて、初めてのお産が大変だったらしく、絶対安静を申し渡されて入院していたのだ。武弘にはよくわからないことだったが。
 そして、武弘は、その日、生まれたばかりの弟に初めて会った。

 

(・・・サル?・・・真っ赤だよぉ・・・・ちっちゃいんだね・・・・目が大きい・・・・痩せてる・・・・声ちっちゃい・・・・)
 新生児室のガラスにおでこをくっつけてへばりついて、武弘は弟と対面した。小さい子が赤ちゃんと出会うときに感じる大抵のことを考えつつ、口から出たのは
「可愛いね」
という言葉。嘘を付いたわけじゃない。いろんなことを思ったけど、この弱々しい生き物が、可愛く思えた。そして、言ってみたら、なんだかホントに可愛くなってきた。お父さんを見上げて、全開の笑顔で、笑った。
「おとうさん、弟、可愛いね。」
お父さんはとてもうれしそうだった。顔が土砂崩れを起こしていた。こんなに嬉しそうなお父さんを見るのは初めてだったかもしれない。
 武弘は、もう1回、「弟」を見た。ちっちゃくて、ホントにちっちゃくて、頼りない生き物。
(大切にしてあげよう)
武弘は、そう思った。入院してたお母さんのことも、「弟」のことも。

それが、血の繋がらない弟、正広との出会い。

 

 もうずっと見ていなかった夢を見た。正広が生まれた頃の夢。

(サルみたいでさ、真っ赤で、小さくて、目ばっかりでかくて、弱々しかった。なんだ今と大してかわんないじゃん。)
 武弘の頃には決して楽しい夢ではなかったのに、由紀夫である今、昔のことは、ちょっと暖かい思い出になったようだった。溝口家にいた頃を、懐かしいと思える。

 元武弘の由紀夫は、起きあがって、夜中でも真っ暗にはならない都会の部屋で、ぼうっとした薄明かりに浮かぶ正広の寝顔を見る。
ここんとこ、夏の疲れが出たのか、ちょっと疲れ気味の正広は、日焼けした顔を上気させて寝ていた。

 あれこれ思い巡らして、由紀夫は、に、と笑った。すっかりはいでしまっているタオルケットを肩まで引き上げてやりながら、由紀夫も朝までもう一眠りしようと、横になった。

つづく


ほらー!!可愛いやろー!これが!これが後2週間も続く!しやわせやなー!な!皆様も幸せでしょー!あたしはしやわせ・・・!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ