天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編1周年記念特別企画!大ゲスト大会!

『感動の再会を届ける』前編

ご挨拶
「ゲスト大会、最後のゲスト様は、フクちゃん!・・・誰?そう思われるのも無理はありません。彼女はネットができないので、皆様はご存知ない人なのでした(笑)フクちゃーん!忙しいのに無理させてごめんよぉ!」

yukio
 

成田空港。
言わずとしれた日本と海外とを結ぶ玄関口。その出発ロビーのソファーに中居正広と仲間の一人である木村拓哉は人1人分のスペースを空けて座っていた。会話をする訳でもなく、ただボーッと行き交う人々を眺めながら互いに煙草を吸っていた。
木村の足元には大きめのボストンバックが1個。スーツケースは預けてあるとは言え、これから海外で暮らそうというには少なすぎる荷物の量である。
『御搭乗の最終案内を致します。東京発ニューヨーク行き…』
「じゃ、行ってくるわ」
鳴り響いたアナウンスに、煙草を揉み消した木村がゆっくりと立ち上がる。憎たらしいほどの爽やかな笑顔。これから旅立つ希望に満ち溢れている彼が何だか悔しくて、中居は座ったまま木村を見上げた。
「さっさと行きゃいいだろ。行ったら一人前になるまで帰ってくんな」
「冷てぇ言い方。仮にも名コンビだったんだぜ俺達」
「海外研修生を選んで、その名コンビを解消したのは誰だっけ?」
「俺だよ、悪かったな。あーもう、どうして出発間際までこんなこと言ってなきゃならねぇんだよ」
いらだたしげに長めの前髪を掻き上げる木村に、その台詞は俺のだと心の中で呟く。
「ま、いいか。ここでお前と言い合いしてて飛行機に乗り遅れたらシャレんなんねぇしな」
小さな溜息に中居は俯き、唇を噛んだ。自分だって木村とこんなことを言い合いたくないのに、何を言っていいのか分からないだけなのに…。嫉妬と羨望。社内一の名コンビだと自他共に認められ、ずっと一緒に仕事していけると思っていたのに、現実は彼だけが研修生として選ばれた。そのことが、中居の中で小さな刺となって引っ掛かっていたのである。
「2年たったら、戻ってくるから…」
元気でな、と被っていたキャップのツバを引き降ろすように中居の頭を軽く叩き、木村は踵を返した。遠ざかって行く足音を暫くそのままで聞いていた中居は、次第に音が小さくなるのに耐え切れず、勢いよく立ち上がった。
「木村っ!」
中居の声に驚いたのか、木村がゲートの所で一瞬立ち止まる。だが、彼は振り向くことなく片手を上げただけで、中居に背を向けたままゲートを潜ろうとした。
「待てよ、木村っ!!」
ちゃんと見送りの言葉も口にしてないと、中居が彼を止めようと走り出した時…

「…え?」

足元の床がいきなり何もなくなり、中居の身体は宙に浮いた。足をバタつかせても、手を伸ばしても、踏み場になるものも掴まれる所も何もない。

「うわあぁぁぁっ!!」

彼が自分の方を振り返ったと思った瞬間、中居の身体は頭から真っ暗な空間を落下していった。

 

「うわあぁぁぁっ!」

ドシン!

身体が何かに叩きつけられた衝撃に、中居正広は瞬時に覚醒した。上半身がフローリングの床の上、下半身がベッドの上という凄い格好をしていることに気付き、打ち付けた際に走った痛みに顔を顰める。
「いってぇ…」
左肩を押さえ、時計を見ればジャスト7時。目覚ましが鳴る時間までにはまだ1時間もあった。
「ちっくしょー、起きちまったじゃねぇかよ」
ぼやいても、もう眠気は遥か彼方。昨日同僚と飲みすぎたせいで残っている頭痛に顔を顰めながら、中居はベッドに上がり直して胡座をかいた。サイドボードに手を伸ばして煙草を取り、まずは目覚めの一服。ゆっくりと紫煙を吐き、彼はたった今まで見ていた夢を思い返した。
「またかよ…。これで1週間毎日だぜ」
ここ1週間、毎日見ている同じ夢。それは、仲間であり同僚であり、親友だった木村拓哉がいきなり旅立ってしまった日の様子だった。
仕事で海外研修生に選ばれた木村は3年前、アメリカに旅立った。研修期間は2年、彼自身も「2年で帰ってくる」と言っていたのに、実際にはもう3年目が終わろうとしている。会社宛には定期的に報告書は送られてきているが、中居個人への連絡は全くない。中居もまた、自分から連絡を取ろうとはしていなかった。だから3年間、音信不通状態。
忘れた訳ではないが、考えないようにしていたこと。そんな昔のことを、今になってこう何度も夢に見るようになったのは何故だろう?
「あいつに、会ってからだよなぁ…」
夢に木村が出てきた日を思い出しながらポツリと呟く。

一週間前、中居は仕事中に、一人の男と自転車同士でぶつかった。その時、中居が彼のバッグを持ち去ってしまったり、それを返すまでに色々擦れ違いが重なったり、無事にそれを返した後、お礼に焼き肉を奢ってもらったりした。早坂由紀夫と名乗ったそいつは、届ける内容こそ違えど、中居と同じ配達人の仕事(由紀夫は"届け屋"と主張したが)をしていたのである。
その早坂某は中居を始め、仲間達も驚いたほど、同僚だった木村とうりふたつ。超高そうなスーツを着ていて長い髪は1つに束ね、銀色の自転車に乗っており、年齢は由紀夫の方が少し年上らしいが、きっと木村にきちんとした格好させたらあんな感じになるんだろう、と皆で噂したりもした。
そして迷子になった由紀夫の忘れ物を届けてやったお礼に、仲間共々高級焼肉店で腹一杯奢って貰い、気分良く別れたのが知り合ったその日の夜。木村が夢に出てくるようになったのも、その日の夜からである。これはどう考えても、由紀夫と知り合いになったことが起因しているように思えた。
「ったく、おめーが早く帰って来てりゃ、こんな変な夢なんて見ねぇのによ。今、一体どこで生きてんだ?連絡くらいしろっつーの」
短くなった煙草を灰皿に押し付け、壁面ボードに止められている写真に目をやる。3年前の木村の送別会で撮った写真。全開笑顔の自分の隣で、口の端をちょっとだけ持ち上げた笑みを浮かべている木村。彼の額部分を指先でピンと弾き、中居はベッドから降りた。

カーテンを開け、室内に朝日を呼び込む。いつまでも、夢にとらわれている自分が馬鹿らしくなるくらい、すがすがしい日差し。
「さて、今日もお仕事頑張りますか!」
自分で両頬を叩いて渇を入れ、中居は豪快にパジャマを脱ぎ捨てた。

中居正広24歳、都内某メールサービス会社の配達員であった。

「うっそぉ!中居ちゃんがいるよぉ!今日、雨降るんじゃなーい?」
定時より若干早めに出社した中居は、彼のすぐ後に入ってきた森の素っ頓狂な声に、プッと頬を膨らませた。その表情のまま、心外だと言わんばかりに森を睨み付ける。
「何だよそれぇ!時間守れねぇヤツは社会の恥だろが!」
「うわぁー聞いた?吾郎ちゃん、剛。たまーに1週間連続で早く来たくらいで、何かすっごく威張られちゃってるんだけど…」
「まぁほら、中居君もね、いつまでも遅刻キャラのままじゃ可哀想だしさ。早く来た時ぐらい大目に見てあげようよ」
「そうそ。きっとまたすぐ元に戻るって…」
「何なんだよ、おめーらまで!もういい、配達行く!」
誰もフォローしてくれないことに中居は臍を曲げてしまう。吾郎と剛が丁寧に仕分けした郵便物を引っつかみ、そのまま勢いよく会社を飛び出して行く。
「おふぁよーございまぁす…。あれ?中居君??」
中居と入れ違いにあくびをしながら入ってきた慎吾が、走り去る後ろ姿を不思議そうに見る。もちろん、中居は立ち止まりなんてしないから、慎吾は同じ疑問を中にいた3人にぶつけた。
「どしたの?中居君。今日も早いじゃん」
「最近、夢見が悪いらしいよ」
「え?」
「夢ぇ??」
夢見が悪くて出社が早い、なんていう中居らしからぬ行動に、3人が揃って首を傾げる。
「昨夜飲みに行ったの。酔ったら色々話してくれてさ。最近、やたらと木村君の夢を見て、それで早くに起きるんだって」
「へぇ…」
「木村君かぁ…。そう言えばアメリカ行ってもう3年たつもんね。今ごろどうしてるんだろう?」
「2年の研修のハズが延びたんだよね」
「今日帰国」
「はぁ?」
「え?何時の便??」
「午後2時50分着」
「あと6時間じゃん!」
「でも中居君、何も言ってなかったよ。木村君が中居君に連絡して来ないハズないのに…」
またもや吾郎による情報に、3人は目を丸くした。木村が自分達ならともかく、中居に帰国を連絡して来ないなんて2人の仲の良さからは絶対に有り得ない。内緒で連絡してきてるのかと一瞬、考えたが、そんな雰囲気は彼からは全く感じられない。勿論、社内でも噂になっていないのだから、殆どの人間が知らない情報だろう。それを何故吾郎だけが知っているのだろうか?
「社長情報と…これ、なーんだ」
驚いている彼らに、吾郎が一通のエアメールを取り出す。
会社の住所の下に書かれている宛名は中居正広様。そして、封筒左上には木村拓哉という署名。
「木村君からの!」
「吾郎ちゃん、それ、早く中居ちゃんに渡してあげなよ!でもって早く教えてあげなきゃ!」
「3年ぶりだもんね、喜ぶよ、きっと」
性格は正反対でも息はピッタリ、配達の素早さ&正確さも社内で一・二位を争う名コンビだった2人。
3年前、木村が研修生として海外へ赴任した為にコンビは自動的に解消。彼が行ってしまった当初、中居が口には出さなかったけれども随分寂しがっていたことを知っているから、木村が中居宛に帰国予定の連絡をしてきた、というのは素直に喜べることだった。
だが、口々に喜び合う三人の目の前で、吾郎は手にしていたエアメールをそのまま机の引出に仕舞い込んでしまったのである。
「ご、吾郎ちゃん??」
「それ、中居君宛でしょ?渡さなくって良いの?」
「3時に着くのに、教えなくっちゃ…」
中居宛の手紙を本人に渡さず、隠してしまう吾郎の真意が掴めない3人は、それって苛めじゃあとか、犯罪だよぉとか口々に言っておろおろするばかり。そんな彼らに向かって吾郎は優美な微笑を浮かべた。
「3年ぶりに再会するんだよ。ここは一つ、大々的&感動的な演出をしてあげたいと思わない?皆も協力よろしく」
キラキラと目を輝かせて計画を話す吾郎に、反論する者は誰もいなかった。というよりも、誰も反論など出来なかった。反対しようものなら…仕事上における吾郎の協力が得られなくなるのは確実だったからである。 とは言うものの、やはり良心は痛む。吾郎の企みに巻き込まれる当事者達に同情しながら、3人は互いを窺い見るばかり。そんな彼らの内心を知ってか知らずか、吾郎は一枚の名刺を出し、受話器を手に取った。

 

「はい、承りました。確実にお届けさせていただきます。では、失礼します……あーもう、あの男はぁ!!」
電話の応対中は上品な女社長らしい言葉遣い。だが、受話器を置いた瞬間、いつもの調子に戻っておたけびをあげた奈緒美に、事務所に残っていた2人の社員と1人のバイトは揃って顔を見合わせた。
「うちはイベント企画会社じゃないって言ってるのにー!いつもいつも無理難題を押し付けて!!」
よっぽど気が乗らない仕事を引き受けさせられたのだろう。ブツブツ文句を言い続ける奈緒美に、野長瀬と典子から目配せされた正広は、そぉっと近づいた。
「奈緒美さん、どうしたの?はい、お茶」
「ありがとひろちゃん。ちょっとね、注文多い客だったのよ。知り合いだから断れなくって…」
「大変だねぇ」
「本当よ、全く…。あ、ひろちゃん、午後外出してもらえる?私と」
「いいですよぉ」
最近、事務所の簡単なお使いすら頼まれてなかった正広は、久し振りの外出にウキウキしながら頷いた。奈緒美と一緒の外出なら、帰りに喫茶店でティータイム等のオプションがつくだろうし。
「ひろちゃん良いなぁ外出。私、野長瀬さんとお留守番かぁ…」
「の、典子ちゃん、僕と一緒じゃ不満ですか?」
「不満、ていうかねぇ…」
「でもその内兄ちゃんも帰ってくるから。で?奈緒美さん、何処まで行くの?外出って」
「成田空港よ」
どこかそこら辺の会社かホテルのロビー辺りだと思っていた面々は、予想外の場所に何度も瞬きを繰り返していた。

 

「どーもー!メールでーす!」
「あ、中ちゃーん!」
いつものように受け持ち会社に顔を出すと、顔見知りの女の子が嬉々として駆け寄ってきた。確か名前を沙織と言った彼女は、後ろ手に何か持っている様子。それには気付かないフリをして、中居は何?と尋ねる。
「ね、中ちゃん、個人的な依頼しても良い?」
「んー内容と場所と、配達人の気分によるけど、何で?」
「ちょっとね、別会社の友達にこれ、届けて欲しいの」
下手に中居を窺いながら、沙織が中居に手渡したのは薄っぺらい封筒。受け取って封筒を軽く振る中居に沙織が怪しいものじゃないと笑う。
「今日見に行くコンサートのチケット。渡しそびれちゃったの。私、行けるのギリギリだから、困っちゃって…。だから今日だけ特別にお願い、出来るかな?」
「俺今日、忙しいんだけど…」
両手を顔の前で合わせる沙織に、中居は少し考える素振り。交換条件次第では考えなくもないと言外に含ませながら。
案の定、沙織はそんな中居の思惑にすんなりと引っ掛かった。
「送料の他に、お弁当1日つけてあげるから!」
この会社の女の子はお弁当持参者が多い。その中でも美味しいと評判の沙織の手作り弁当という言葉に、中居の目がキラリと輝いた。だが、たった1日だなんて勿体なさすぎる。ここはもう一声、と承諾を渋ることにする。
「1日?」
「んーと、じゃあ3日!」
「OK、交渉成立!で、場所は?」
来週は手作りランチに3日もありつけると、すっかり上機嫌になった中居がニッコリ笑顔で沙織に尋ねる。まんまと中居にしてやられた彼女はプーッと頬を膨らませて怒ったフリ。
「もぉ中ちゃんずるーい!いいよ、作ってあげるから。場所はね、渋谷にある小さい人材派遣会社なの。腰越人材派遣センターっていうんだけど…」
その瞬間、正広の瞳が輝いた。腰越人材派遣センターと言えば、あの同業者が勤めている会社ではないか。1回だけ会ったことのある彼を思い出していた時に、その会社へ物を届ける用事が出来た。これはもう行くっきゃないだろう。仕事で行くのだから、何もおかしいことはない。
「あぁ知ってる知ってる、まっかせてちょうだい!」
これぞ棚からぼた餅。ポンと胸を一つ叩いた中居は、沙織から預かった封筒を手に一目散に駆け出した。

つづく


メールサービス会社のノンキな中居正広くんが再登場!まぁ、嬉しい!フクちゃんありがとお!よし!それじゃあ今度は、由紀夫、拓、木村と3人で飲みに行ってくれ(笑)!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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