天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編1周年記念特別企画!大ゲスト大会!

『感動の再会を届ける』2回目

ご挨拶
「前回が『前編』で、今回が『2回目』。なんでかっちゅーと、一体いつ終わるのか解らなくなって来たから。あーん!ふくちゃんごめーん!!ふくちゃん、コンサートのために休みを取るためにめちゃめちゃ忙しかったのに・・・!ありがとう!ありがとうふくちゃーん!!」

yukio
 3年振りに踏んだ祖国の地。3年振りに感じる祖国の空気。
耳に飛び込んでくる言葉が英語ではなく、日本語であることに何処となくホッとしながら、木村拓哉は3年で肩まで伸びた髪を掻き上げ、伸ばしかけの顎髭を撫でながら税関を通り抜けた。
「さて、と……」
荷物を積んだカートを押し、キョロキョロと人を探すように辺りを見回す。が、待ち人の姿はそこにはなかった。
「時間、ちゃんと手紙に書いといたよなぁ…」
帰国1週間前に届くように送った手紙が、吾郎によって阻止され、中居の手には渡ってないなんて事情を知らない木村は、中居が空港に来ていないという事実のみを受け止めて、ガックリと肩を落とす。
「やっぱ怒ってんのかなぁ。3年間、連絡しなかったの。でも中居なんだぜ、行くからには一人前になるまで帰ってくるなって言ったのは…」
取り敢えず会社に行けば顔くらい見れるだろうと、木村はカートを引いたままタクシー乗り場へ向かった。

 

「来たわ、あれよ」
リムジン後部座席から、木村が空港の外に出てくるのを待っていた奈緒美と正広は、それらしき人の姿を懸命に探していた。そして美形の男には目ざとい奈緒美がすかさず見つけ、正広に車を降りて迎えに行くよう指示するのに、正広は預かっている写真と彼とを見比べて、首を傾げた。
「違うよ奈緒美さん、写真と全然違うもん。あんなに髪長くって髭もないよぉ。こっちは爽やかーって感じだけどあっちの人はガラ悪そう……」
「バカね、男見る目ないわよ、ひろちゃん。この写真に髪を伸ばして、髭ちょっと生やさせて、サングラスかけさせてご覧なさい。ほら、目の前の彼の出来上がり」
「本当だぁ……」
持っていたサインペンで奈緒美が写真に書き込むと、目の前にいる男の出来上がり。そもそも、正広に男を見る目が養われてもどうかと思うが、彼はただただ素直に感動していた。そんな正広の隣で、奈緒美は写真を眺めながら小さな溜息をつく。
「男前なのに髭なんて生やして勿体ないわねぇ。あれさえなければ、好みなのに…」
「はぁ?」
正広が呆気に取られていると、奈緒美は慌てててわざとらしい咳払いを一つ。何もなかったかのように、次の指示を下す。
「じゃお願いね、ひろちゃん」
「はぁい」
促されるまま、木村の目の前に止められたリムジンから降り立つ。奈緒美の見立てた真っ青なスーツに身を包んだ正広が彼に深々と一礼すると、彼はキョトンと目を丸くした。
「……誰?」
「木村拓哉さんですね?お迎えにあがりました」
「へ?俺……?」
「はい。さぁどうぞこちらに…」
自分を指差す木村に得意の笑顔でにーっこり頷き、正広は呆然としている彼を車に乗せるのに成功した。。

 

キキキー!と急ブレーキをかけて、中居は愛車スーパースペシャルケッタマシーンマサヒロエクストラを腰越人材派遣センターの前に止めた。背負っていたリュックから預かった封筒を取り出し、階段を一段抜かしで駆け上がる。
ドアノブに手を伸ばしかけ、中居は一瞬開けるのを躊躇った。
「開けていきなりあいつが出てきたらどうしよっか…。久しぶりってのも変だし、この前はごちそうさまっつーのも……」
先程までの勢いはどこへやら、中居はドアの前で独り言をブツブツ呟いた。
「あーもう、何緊張してんだ?俺!ただ、今日は典子ちゃん宛に封筒を届けに来ただけ!それだけなんだから!!」
何も躊躇うことはないと、頭をブルブル振って迷いを振り切る。一つ深呼吸してから、意を決して再びノブに手を掛ける。

と、その時…

「何か用?」
「うわわわわっ!?」
いきなり背後から声を掛けられ、驚いた中居は慌ててドアから飛びのいた。ドアにへばりつくように振り返れば、グレーのスーツ姿の由紀夫が腕組みしながら立っていた。いかにも怪しい人物を見るかのような視線を浴びせられ、中居は条件反射で後ずさってしまった。だが、由紀夫の不躾な視線は中居の顔を認めた瞬間、ふっと和らいだ。
「お前、確かメールサービス会社の…。中居…正広、だっけ?」
名乗ってもいないのに一発で名前と会社を言い当てられ、中居はキョトンと由紀夫を見返した。
由紀夫の記憶力を持ってすれば、一度会ったことのある人物をすぐに思い出すのは当たり前のことなのだが、まだ2回しか会ったことのない中居はそんなことは知らない。確かにインパクトのある出会い方だったけれども、人の顔と名前を覚えるのが苦手な彼としては、ただただ感動するばかりだった。
「うっそ。何で俺のこと覚えてんの?すっげぇ!」
「ん?大抵一回で人の顔って覚えるんだよ。それにお前特徴あったし…。ただそれだけ」
「えー俺、そんな目立つかぁ?」
至極真面目な顔で自分の身体を見下ろす中居に由紀夫は呆れ返った。目立つも何も、中居達の会社の制服は赤とモスグリーンで人目をひくし、何よりも中居が乗っている自転車のカラーリングが派手なことこの上ないのだから。
「自覚ないって幸せだよな…」
「何々?何か言った?」
「別に。それより、こんなとこで何してんの?」
「ここに典子ちゃんて子、いたよな。彼女宛に届け物、頼まれたの!」
「ふーん、典子に。じゃ入れば?」
立ち話もなんだからと由紀夫がドアを開けて顎をしゃくる。会いたかった本人に歓迎され、中居は上機嫌で腰越人材派遣センターのドアをくぐったのだった。

 

その頃、木村を乗せたリムジンは、首都高を降りようとしていた。窓の外に聳え立つビル群が、東京は3年ぶりの木村にここは新宿だと教えてくれている。数がいくらか増えた程度で、記憶に残る映像と変わっていないことに安堵した木村は、そろそろ目的を聞かせて貰おうかと前髪を掻き上げた。彼の向かい側で足を組み、悠然と煙草をふかしている奈緒美と畏まって座っている正広に向き直る。
「で、あんた達一体何者なんだよ。俺は何処へ連れてかれる訳?」
「私は腰越人材派遣センター社長の腰越奈緒美。うちの会社は届け屋もやってるの。そうね、あなた達の会社と似たような仕事ね」
「同業者かよ。で?その同業者さんが俺に何の用?悪いけどスカウトだったら、俺は受けないから無駄だぜ」
相手が社長だろうと何だろうと、全くへりくだる様子のない木村に、奈緒美は頬に微笑を刻む。
(楽しんでるよ、奈緒美さんってば〜)
正広が息を潜めて成り行きを伺っている間に、会話はどんどん進んでいく。
「残念ながら正真正銘の依頼よ。3年間海外で頑張ってきた貴方へ慰労の気持ちを届けて欲しいといわれたの。今日1日、新宿のPホテルでゆっくり休んで下さいって」
「低賃金重労働のうちの会社が、たかだか3年の海外研修帰国後に、そんなリッチなホテルへの宿泊許可なんて出すわけねぇやん。何か裏があるんじゃねぇのか?」
「あら、勘は鋭いのねぇ…。じゃ貴方の会社のある人物からの依頼、と言い直そうかしら?これは本当よ」
「ある人物?そーいうこと企みそうなのは…」
「「稲垣吾郎」」
木村と奈緒美、2人の声が揃って一つの名前を出す。
「やっぱあいつの仕業か…」
「えぇ。で、どうするの?」
この先は木村次第だと、そう言外に含ませて問う奈緒美に、木村は両手を広げ、肩を竦めてみせた。
「何考えてんのか知らねーけど、取り敢えずはあいつの計画に乗った方が良さそうだな。ホテル着いたら電話してみるよ」
「分かったわ。じゃ私達は予定通りの行動を取らさせてもらうわね」
木村の了承に奈緒美はあからさまにホッとした様子である。インターホンで運転手に行き先の指示を伝え、身体の力を抜いてシートに深く座り直した。
「あ、言い忘れたけど、ひろちゃん…ここにいるバイトの溝口正広が今日1日、貴方の世話をしてくれるから。何か要望があったら彼に言ってね」
「奈緒美さん?!」
突然のご指名に、正広が点目になる。ただ「ついてきて」と言われただけの外出の筈が、今日1日木村の世話をと言われ、戸惑いを隠せなかった。
「由紀夫、これからまた配達に出るから帰りは遅くなると思うの。終わったらひろちゃんを迎えに行かせるようにするから、それまでお願い。あ、予備で押さえてある部屋に泊まっても良いわよ。どうせ費用は依頼者持ちだし」
「そーいう問題じゃなくって!」
「残業代はずむから、ね?」
バイト代まで引き合いに出されてしまっては、雇われている身としては辛いもの。迅速に頭の中で電卓を叩いた溝口正広18歳。兄に代わって溝口家の家計を任されている彼は、残業&優雅なホテルライフという魅力の前に頷くことしか出来なかった。
「こちらも交渉成立ね」
自分の思い通りに物事が決定し、満足そうに1人頷く奈緒美。そんな彼女を横目に、正広と木村は顔を見合わせ、互いに大変だな、と深い溜息をつき合った。

 

「わーうまそー!いっただきまーす!」
「いただきまーす!」
無事に配達を終え、勧められるがままに腰越人材派遣センターでティータイムを過ごすことになった中居と、ケーキの匂いを嗅ぎ付けてやって来た千明は、欠食児童のような勢いで出されたケーキにかじりついた。2人揃って由紀夫達が呆れるくらいの勢いで食べていると、
「ただいまー!あー疲れた!」
腰越人材派遣センターの女社長が外出先から戻ってきた。
「あ、お帰りなさい、奈緒美さん」
「野長瀬、風!」
「はい!」
疲れたを連発してドッカリ椅子に腰を下ろす奈緒美に、あたふたと野長瀬がウチワで風を送り始める。大の男にパタパタと煽がせている女王様然とした姿に、中居はポカーンと口を開けたまま固まっていた。
「なぁなぁ、あの派手でエッラそうなオバサン、誰?」
「うちの社長。あ、オバサンっつーのは禁句だかんな」
コクコク頷きながら、中居はコーヒーカップ越しに奈緒美を観察した。見るからに遣り手社長といった雰囲気に苦手意識が先に立ち、ソファーに小さく縮こまる。
「あれ?ひろちゃんは?一緒じゃないんですか?」
一緒に出掛けた筈の正広がいないことに、見送った野長瀬と典子が首を傾げる。
「ひろちゃんね、ちょっと特別任務についてるの」
「特別任務ぅ?何だよ、それ。ひろに勝手なことさせんなよな!あいつはただのバイトなんだから」
自分に無断で仕事をさせたと眉を顰める正広の保護者に、奈緒美は私が雇用主だと胸を張る。
「そんな大変なことは頼んでないわよ。ただホテルで待機して貰ってるだけ。由紀夫も絡む仕事だしね」
「今日はもう終わりじゃねぇのかよ」
「これでラストよ。終わったらそのまま、取ってある部屋でひろちゃんと一緒に泊まってらっしゃい」
「えー由紀夫とひろちゃんがお泊まりぃー?ずっるーい、ずるいずるいずるーーい!!あたしも一緒に泊まるぅー!」
一人おとなしくケーキと格闘していた千明が喚き出すのを、背後から頭を叩いて黙らせた由紀夫は、上司を睨み付けながら一言。
「何企んでんだよ」
地を這うような低い声にも鋭い眼差しにも負けず、奈緒美は悠然と答えた。
「人聞きの悪いこと言わないでよ。ただ受け取りの写真を撮るのが明朝の方が良いと思っただけなの。朝になれば髭剃るでしょうし…。それよりもその仕事の内容だけど……あら?こちらは?」
ソファーで小さくなっている見慣れない格好の若者に気付き、奈緒美が何処かで見た顔…と考え込む。
奈緒美とバッチリ目が合ってしまい、サボりを見つけられた時のようにバツが悪そうにしている中居を見て、由紀夫が彼の紹介と事情を手短に説明する。それを聞いて奈緒美は目を輝かせ、中居に向き直った。
「まぁ同業者の中居さん。先日はうちの社員がご迷惑をおかけしました。よろしかったら、その時のお詫びに今日、お食事でもいかがかしら?」
「へ?」
「もちろん由紀夫も一緒に…」
「何言ってんだよ、まだ配達がって……いてぇっ!」
ピンヒールで思いっきり足を踏まれ、飛び跳ねる由紀夫の耳元に、
「後で説明するから、話を合わせなさい!彼が今回の届け物なのよ」
小声で囁き、奈緒美は彼を黙らせ、中居に微笑みかけたのだった。

 

「うっわー、ひっろーい!」
ベルボーイに案内されて吾郎と奈緒美で予約したというジュニアスイートに通された正広と木村は、その余りの広さに入り口で立ち尽くしてしまった。
「こちらと、向かい側の部屋と両方押さえられていらっしゃいますので…。どうぞごゆっくりお寛ぎ下さいませ」
丁寧に一礼してボーイが下がると、2人は改めて部屋の中の探検を始めた。尤も、率先してドアを開けているのは正広であり、木村は彼の後をただくっついて歩いているだけだったが。
「俺、こーんなスゴイ部屋に泊まるの初めてだよぉ。見て見て、バスルームに小型TVがついてる!夜景も見えるよー!木村さんは?こーいうとこ、泊まったことある?」
「いや、ないけど…」
「だよねぇ。ふつーじゃ泊まれないよねー。うわーベッドもふかふかー!」
窓側のベッドに正広がポスンと身体を投げ出す。ズッポリと埋もれてしまいそうなふかふかのスプリングに、んーと伸びをして寝転がる。仕事というよりはただ純粋にホテルライフを楽しもうとしているその姿に木村は目を細めた。そして自分もベッドの端に腰を下ろし、サイドテーブルの電話を手に取る。
「どこ掛けるの?」
「会社」
「あ、さっき奈緒美さんと言ってた稲垣さん?」
「そう」
鷹揚に頷き、木村は指慣れた番号を押した。

 

TRRRR TRRRR
「はい、メールサービス会社Sの草なぎです!……木村君!?」
仕事の依頼電話だと疑いもしなかった剛は、いつもの調子で元気良く応対に出た瞬間、久し振りに聞く懐かしい声に思わず立ち上がってしまった。周りの視線が集中しているのに気付き、慌てて座り直す。
『何だよ、でっけぇ声だなぁ…元気か?剛』
「うん。木村君こそ元気そうだね。今何処にいるの?今日帰国だったんだろ?俺達、今朝吾郎ちゃんから聞いてビックリしちゃったよ」
『今朝?俺、ちゃんと中居に手紙書いたけど…』
「あ…」
声が聞けた嬉しさに思わず口を滑らせてしまった剛に、木村のいぶかしむ声が聞こえてくる。ヤバイ、どうしようと内心焦っているとスッと横から吾郎の手が伸びて来て、受話器を奪い取られた。
「もしもし木村君?お帰り。ホテルの部屋、どう?快適じゃない?そこね、バスルームから見る夜景が最高なんだよね」
『吾郎…お前、これは一体どーいうことなんだよ!空港着いてみりゃ中居はいねぇし、変なオバサンはいるしよ。で、このホテル、何なんだよ』
「え?僕達同期からのささやかな帰国祝いだよ。渡米前に住んでた場所は引き払ってるんだから、暫くはホテル暮らしなんでしょ?だったら帰国したその日くらいリッチに過ごしても良いじゃない」
『でもさぁ、こーんな立派な部屋に一人で泊まるなんて寂しいぜぇ。ここ、ジュニアスイートだろ?』
「女性斡旋して欲しかった?なんなら、今からでも誰か頼もうか?」
『言ってみただけだろ、本気にすんなよ』
「そんなの最初から分かってるよ。何、木村君こそマジに取ってた?」
やだなぁ冗談の通じない人は…と、電話口で笑う吾郎を窺いながら、剛は新たに鳴り出した電話を取った。
「はい、メールサービス会社Sの草なぎです。あ、中居君?今どこ?え…?嘘、切れたよ…」
『中居!?あいつ、何してんの、今!元気か?』
剛の声を電話越しに聞きつけた木村が叫ぶのに、吾郎は受話器を耳から離して顔を顰める。
「中居君?仕事中だよ。ちょっと待ってね。剛、何だって?中居君」
「今日直帰するって…。ほら、この前会った届け屋さん、その人の上司に食事誘われたからって…。で、携帯が電池切れで切れちゃった」
「届け屋さんね。でもってまた電池切れね。中居君ってば…」
しょうがないな、と肩を竦め、吾郎は木村と繋がってる回線の保留音を切った。
「あ、木村君?待たせてごめんねー。何かね、中居君、今日は直帰するって。配達の途中で知り合いの届け屋さんに会ったから、食事に行くことになったらしいよ」
『届け屋ぁ!?誰だよそれ、何者だよ!何でそんな奴と中居がメシ食いに行くんだよ!』
「同業者。あ、言っておくけど、中居君の携帯電池切れだから。掛けてもムダだよ。じゃ今日はゆっくり休んで、明日、会えるのを楽しみにしてるよ」
『ちょ、ちょっと待てよ、吾郎!』
木村が止めるのも構わず、吾郎は容赦なく電話を切った。
「良いの?吾郎ちゃん…」
「僕達がお膳立て出来るのはここまでだよ。後は、成り行きだって。まぁ多分、今日中に再会出来るだろうけどね」
その時中居はどんな表情をするだろう。そして木村は…。2人の感動の再会をシミュレーションしている吾郎は、何処となく楽しそうで、剛はせめて無事の再会を祈ろうと、溜息をついた。

 

「ちょっと、吾郎!もしもし!切るなよ、てめぇっ!!」
送話口に向かって怒鳴っても、聞こえてくるのは空しいツーツー音のみ。舌打ちして受話器を戻し、ベッドにゴロリと寝転がった。吾郎に言われたことを反芻しながら、苛々と前髪を掻き上げる。
「あのぉ…」
「うわっ」
すっかりその存在を忘れていた正広に上から覗き込まれ、木村は焦って飛び起きた。
「そっか、お前まだいたんだっけ。ごめんな、変なトコ見せちまって」
バツが悪そうな表情の木村に正広はゆっくりと首を振った。見るからにワイルドな外見だけど、頭を掻いたりしている表情は随分と親しみやすいな、と思いながら、微笑する。木村もニヤリと口の端を上げ、笑みを返してくれた。
「そうだ、さっき言ってた"中居"さんって、メールサービス会社の中居さんのこと?」
何処となく由紀夫に似ている顔立ちだな、と思った瞬間、何だか打ち解けた気がして、正広は先刻の電話を側で聞いていて、気になったことを尋ねた。
「そうだけど…え?中居のこと知ってんの?」
「うん、この前兄ちゃんと一緒に会ったから…。多分、中居さんと食事行く"届け屋"って兄ちゃんのことだと思う」
「お前の…兄貴…?でも何でそいつと中居がメシ食いに行くわけ?」
「何でかは分からないけど…」
木村の剣幕にちょっと引き気味になりながら、正広は由紀夫と中居が出会うことになった経緯を説明した。木村は、真剣に、それこそ恐いくらい真剣に、正広の言葉を聞いていた。
「……分かった。それで、兄貴とは連絡取れるのか?」
「ちょっと待って」
由紀夫と中居が食事に行くだなんて寝耳に水だった正広は、まずオフィスに電話した。が、留守番の野長瀬も典子も由紀夫と中居が奈緒美と共に出掛けたことは知っていても、行き先まで把握してなかった。続いて由紀夫の携帯を鳴らしてみたものの、留守電サービスに接続されてしまい、繋がらなかった。
「ダメ、何処行っちゃったか分からない…」
「そっか…。どうしよっか、これから…」
2人揃ってベッドに並んで腰掛け、深い溜息をつく。

ググー

タイミング良く両者のお腹から聞こえてきた大きな音に、木村と正広は顔を見合わせ、次の瞬間には大爆笑した。
「もう6時か…腹減ってる訳だよなぁ」
「木村さん、凄い音だったよ」
「お前だって人のこと言えねぇじゃん」
「お前じゃないよ、正広だもん」
「正広ね。顔が似てるだけじゃなくって名前も中居と一緒なんだ」
ほんの一瞬、木村は懐かしそうに目を細めた。独り言の意味が分からず、正広が首を傾げたままでいると、木村は手を伸ばし、髪をクシャリと掻き混ぜた。
「よし、じゃあ置いてきぼりくった者同士、メシ食いに行くか!」
「うん!奈緒美さん、経費で落として良いって言ってたから、何でも良いよ!」
「そっかスポンサー付か!じゃ今日は思いっきり日本食ってどうだ?俺、アメリカ3年行ってたから、日本食に飢えて飢えて…」
「いいよぉ。その前に、ハイこれ」
「何?」
ブランドのロゴが入った紙袋を手渡され、木村はいぶかしげに眉を寄せた。
「服着替えて。奈緒美さんがホテルのレストランはちゃんとした格好じゃないとダメだからって…」
「メンドくせぇ…」
呟いた瞬間、正広の大きな瞳にジーッと見られる。その訴えかけるような瞳に、何故だか自分の方が悪いような気になってしまう。
「分かった、俺が悪かった!」
先程までの落ち着いた雰囲気は何処へやら、慌てて謝り、木村は正広から渡された紙袋を手にバスルームへ消えた。

つづく


ふくちゃん!今日はオーラスだよ!そんな中、急がせてほんとごめんな!ごめんな!!でも、続きがとぉっても楽しみなのでぇ、続きぃ、待ってるぅ(笑)

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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