天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編26話中編『チケットを届ける』

前回までのあらすじ
「これからはインターネットだ!そんな、週刊誌のみだしに踊らされる人のように正広は思って、役職者会議の席上でそう言った。その結果、インターネットメールを使っての初の依頼をGETしたのだが!果たして竹の塚とはなんなのか!由紀夫の周囲は謎に満ち満ちているぞ!?」

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「えー!明日のチケットぉーっ?やだー!あたしが欲しいー!」
「だから、何だよタケノヅカって」
「えっ!兄ちゃん知らないのっ?」
テレビっ子正広は、驚いたように由紀夫を見詰めた。
「西の宝塚、東の竹の塚って言ったら、有名じゃん!」
「宝塚ぁ?え?ってことは、SKDとかそーゆーの?」
「SKD?」
「松竹歌劇団」
「ふるっ!」
典子が叫ぶ。
「もぉっ!由紀夫さん、元遊び人なんだから、しっかりして下さいよねっ!ねぇ、社長!」

「今日の竹の塚?」
言われた奈緒美の目の色は、静かに、しかし確かに変わっていた。
「中日だし・・・。由紀夫に取りに行かせて、それを無くした事に・・・、あぁ、でもダメ!今晩の予定だけは外せないぃーっ!」
「予定があろうがなかろうが、ネコババできるか!」

奈緒美も大好き、竹ノ塚歌劇団。いかなる集団であり、いかに魅力的であるかというレクチャーが散々行われた。
「まぁ、月並みだけど、やっぱりユウキよね」
「社長、やっぱりユウキなんですかぁ?でも、あたし、最近、綾波ゴロウもいいなーって。可愛いでしょー?」
「あぁ、ゴロウねぇ」
でもやっぱり娘役トップは!だの、どの公演見に行ったっ?だの、もりあがってる二人の声を聞きながら、由紀夫は心の底からうんざりする。
「ろっくなもんじゃねぇじゃん」
「なぁーんてこと言う訳ぇーっ?」
「だからぁ!なんで、ホントの男が、さらに男を目指さなきゃいけねんだよ!」
「そんなの喜んでみてるのなんて、ちょっといっちゃってる女ばっかだろぉ?」
「あ、わ、私も・・・」
「・・・それと、かぁなりいっちゃってる男」
控えめに手を挙げた野長瀬に冷たい一瞥をくれて、由紀夫はわざとらしいため息を零した。

「あ、あの」
そのどよんとした雰囲気の中、声を出したのは、正広だった。
「とりあえず、この依頼・・・、受けたら、どうですか?」
「正広ぉ?」
「だって、せっかく依頼してきてくれたんだし、なんか、せっぱ詰まってるみたいだし」

ん?と由紀夫はパソコンの画面をのぞきこんだ。
「・・・確かに」
依頼内容は、その西の宝塚こと竹ノ塚歌劇団のチケットを劇場に届けて欲しいと言うこと。ただし、そのインターネットで知り合った人から譲り受けたチケットは、明日の夕方東京駅に戻ってくるその人から受け取り、そのまま劇場のある足立区竹の塚まで行かなくてはいけない。
「自分では取りにいけない訳か」
「お仕事で、劇場につくだけで、時間ギリギリになっちゃうって言うから」
「え?何。どういうことよ」
依頼文を見てない奈緒美に言われて、簡潔に由紀夫は言った。
「東京駅で、顔も知らない女探して、40分で竹ノ塚まで移動。また顔も知らない女探して、チケットを渡せってよ」
そして、正広の顔をじっと見る。
見られた正広もじっと見返す。
『それ、やれって?』
『兄ちゃんならできるって』
早坂由紀夫担当課長は、たった一人の課員の事を、大変信頼していた。

「それじゃあ、OKの返事出しておきますね」
早坂由紀夫担当課に臨時異動させられた典子が由紀夫に言う。
「とにかく、顔が分からないから、写真か何か」
「だって、明日ですよ?」
「・・・服装と、目印!」
「はーい」
こういったもの珍しい状況があっても、今日は今日で由紀夫にも仕事がある。
「正広」
荷物を準備しつつ、由紀夫は正広を呼ぶ。
「ん?」
「準備、ちゃんとしとけよ?」
「任せてっ!」
・・・ホントに・・・?
少々の不安を胸に、出発した由紀夫だった。

 

「ひろちゃん!返事来てる!」
「見せてっ!」
由紀夫に任せて!と言ったものの、何せ直接話した訳じゃなし、やっぱり不安だった正広は、デスクをぐるっ!と回って、典子のそばに行く。
「お願いするって。それで、相手の人との連絡は、晩じゃないとつかないらしいのね」
「相手、あ、チケット持ってる人か」
そのチケットを持ってた人が急用で行けなくなったため、依頼者にチケットが回ってきたらしいのだが、あまりにギリギリで、しかも出張中って事で、チケットの受け渡しをどうしていいか悩んでいたところに、正広たちの書き込みを見て連絡してきたという。
「新幹線の時間は解ってるから・・・、後は、相手の人と、依頼者の目印か。あ、後、竹ノ塚での待ち合わせ場所」
「劇場のどこらあたりが解りやすいか、よね」
「あれ?でも、依頼者の目印はもう解るんだよね、典子ちゃん、書いてくれたんでしょ?メールに」
「え?うん。そういや、書いてないわね」
まったく、うっかりしてるったら、と言いながら送信メールを確認した典子は、青くなった。
「・・・ごめん」
「何?」
「書き忘れてた・・・」

 

「で?」
「えっと、これが大変なんだけどね、依頼者は、会社にしかパソコンがない。チケットを譲ってくれる人は、もー・・・、なんだ、えっと、もばいる!もばいるってのだから、一応いつでもメール見られるんだけど、結局その人がメールを送ってくれても、依頼者は明日の朝じゃないと見られない」
「って、事は?」
「結局、待ち合わせ場所、目印は、明日」
「うーん・・・」
夕食のテーブルで、由紀夫は眉間に皺を寄せる。
「40分しかないからなぁ。はっきり解る目印が欲しいんだよなぁ。おかわり」
今日の夕飯は、秋の楽しみ栗ご飯。
「でも、会社帰りだったら、そんなとっぴなことは・・・。これくらい?」
栗の数はもちろんカウント済みで、残りの栗の数は、由紀夫が8個で、正広が7個。
「もーちょっと」
由紀夫が6個になった。
「はい」
七分目くらいごはんの入った茶碗を受け取りながら、由紀夫は頭の中で東京駅のシミュレーションをする。
「乗り換えがどれくらいうまくいくかだなぁー・・・」
「お茶いる?」
「ん」
「さ、お兄様、どうぞ」
「はぁっ?」
ぶつぶつ言っていた由紀夫は、弟の言葉に顔を上げる。
「粗茶ですが」
「・・・知ってる」
早坂家のお茶は、ほぼ間違いなくお特用茶葉使用だった。
「お兄さま、お肩でもお揉みいたしましょうか?」
「何だよ、気持ち悪いぃ」
「いや、だってさぁ。なんか、やっぱり兄ちゃんすごいなーって思って」
「はい?」
「すごい真剣に考えてくれてるしー・・・」
「お仕事ですから」
すらっと言って、またあれこれ考えてる由紀夫に、えーい!今日は一本つけちゃえー!!
でも、ビール。
飲み出すと、いっくらでも飲めてしまう由紀夫なための、良識の歯止めだった。

 

そして、チケット受け渡し当日。
典子は会社に来るなりメールチェックをして、まだ返事が来てないことを由紀夫たちに告げた。
「でも、大丈夫ですよ。相手の方が必死のはずですから」
「そーだよなー。俺ら、そのチケットがどうなろうと、知ったこっちゃねぇもんなぁ」
「・・・もし、依頼者に会えなかったら、そのチケットぜひ私に!」
「野長瀬さん何言ってんですかー!あたしですよぉ?由紀夫さぁーん!」
「バカな事言ってないで仕事しなさーい!野長瀬!昨日の報告書はっ?」
「あっ!ただいま!」
そこから鉛筆を削り出すほどの作業のどこが「ただいま」なのかは謎だが、野長瀬は報告書を書き始め、典子は他のメールが来てないか、を調べる体裁を取りつつ、あらたなショッピングサイトを覗き、正広は朝のお茶を入れ、由紀夫は奈緒美に呼ばれた。
「解ってると思うけど」
「何が?」
「依頼者が見つからなかったら、事務所責任者のこのあたしに連絡しなさいね。キチンと保管するから」
「・・・死んでも見つけてやろ」
なんですってぇっ!?なんだよぉっ!!
瞬間、ハブVSマングースの空気を漂わせる二人だった。

そのメールが到着したのは、9時半の事だった。

『突然の依頼に応えていただき、誠にありがとうございます。諦めるしかないかと思っておりましたので、大変喜んでおります。チケットを譲ってくださる方と連絡が取れまして、今日の服装を教えていただきました。水色のジャケットと、黒のパンツだそうです。背が高くて、170cm近くあるということですので、解りやすいのではないかと思います。指定席が12号車なので、12号車の前よりから出るとおっしゃってました。そして私なんですが、中肉中背のどこにでもいるおばさんです。丸顔で、ボブ、というよりおかっぱです。あぁ、中背はともかく中肉ではないかもしれません。腕も、足も、おなかも、立派なおばさんしています。会社帰りになりますので、茶色の大き目のバックで、やっぱり茶色のアンサンブルを着ています。私は、会場正面の、チケット売り場の前にいると思います。それと、今時珍しいとは思うんですが、携帯もPHSも持っておりません。今日は午後から外出しまして、そのまま会場に入りますので、連絡をつけられるのは午前中だけになります。これを見ていただけましたら、お届けいただける方の連絡先など教えていただけますでしょうか』

「・・・携帯ないってぇっ?」
「あらー。困りましたねぇ」
「うわ。って事は、あっちからの連絡待ちになっちゃうんだ」
「でも、俺の携帯教えんなよぉ?」
「そうだよね。だから、うちに連絡入れてもらって、そこから兄ちゃんに連絡するようにしよう。電車移動多いからあれだけど」
「まぁ、大体入るでしょ。じゃあ、由紀夫さんの特徴と、うちの電話番号を改めて連絡しときますね」

典子の手元をぼんやり見ながら、大丈夫かなぁと由紀夫は思う。新幹線の方は、到着する便も、車両も解ってるから、まぁ、間違いないだろう。その車両中の人間が降りてきたって、たかが知れてる。
でも、その竹の塚の劇場の前ってのは、行った事がないもんだから、どれくらいの人数がいるのか解らない。
「そもそも、この竹の塚劇場って、どれくらいでかいんだ?」

「大きくないですよ?」
キーボードを打ってる典子に聞いたつもりだったのに、答えたのは野長瀬。
「元々小さな劇場、っていうか、小屋みたいなとこから始まってるんですよ。酒屋の2階とかにあって。それで、そのままあまり劇場を大きくしてないんで、だから、チケットが手に入らないんですよぉ!」
「あっそーなんだー、すっげー、野長瀬ってぇ、なんでも詳しいよなぁーっ」
一切の感情を排除した声で由紀夫はいい、正広に住宅地図を用意させる。
駅から、劇場までの道筋を簡単に頭に入れ、他の仕事のために立ち上がる。おそらく、そのまま東京駅に向かう事になるだろう。

「ま、うまく行ったらめっけもんだな」
「うまく行くよ」
その正広の言葉に小さく笑って、由紀夫はドアを開けた。

 

つづく


やっぱり短ぇ・・・(笑)!短いよ!短いんだよ!!なんで3回にもなってるんだよぉ!!しくんしくん・・・。でも、来週はほんとに終わるぞ!終わるからっ!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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