天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編28話後編『稲垣医師を届ける』

前回までのあらすじ
「仕事が終わり、のんびりしようかなーと思っていた由紀夫は、悪魔の獣医師(!?)稲垣医師に見込まれてしまった。そして、悪魔の獣医師の助手として、大きなおうちを往診することになったのだが!(おぉ、あらすじらしい!)」

yukio
 

「稲垣アニマルクリニックでーす!」
稲垣医師の往診につき合わされ、由紀夫が回ったうちは、このうちで3軒目。
1軒目が黒のラブラドールで、2軒目はハスキー、3軒目は、
「なんなんです・・・」
「ぶすっとしなーい。獣医は笑顔が大切ー」
今度こそ、正真正銘のお屋敷!という日本家屋の前で、笑顔のまま、ドスの効いた声で稲垣医師は言う。
言われた由紀夫はひきつった笑顔を、稲垣医師に向ける。
「静香姫。まぁ、このうちのお嬢様みたいな犬だね」
「静香姫!姫!んじゃあ、やっぱり茶髪で、不健康そうな唇の色してんのかな」
「誰もおにいさんの女関係暴露しろって言ってないのに」
「俺の女じゃねーってぇ!」

「いらっしゃいまし!」
その会話をぶちきるように門が開き、出て来たのは。

「・・・ここ、ヤクザんち・・・?」
「大きな声出さない方がいいよぉ。手広く事業をされてる方のご自宅だからねー」
綺麗に整えられた日本庭園を案内されながら、由紀夫は押さえた声で、稲垣医師はいつもの声で話をする。
前を行くのは、明らかにノーマルな職業についているとは思えない服装の若い衆。
「でもさぁ、こういう連中って、これが意外と、可愛い犬飼ってたりすんだよな。まぁ、静香姫ってくらいだから、そーだなぁー・・・」
しかし、ヤのつく自由業の方々のうちだからといってびびるほど、由紀夫は可愛気のある性格はしていない。それなら、それでと納得してしまえば、後はいつも通りの由紀夫だった。
「まめ柴とか、あ、紀州犬とか?」
「そんなもんだね」
「そんなもん?」

「姫!先生です!」
広い庭の片隅、ライオン5頭でもOKという広さの檻に入っているのは。
「土佐犬・・・!」
若い衆はそそくさとその場を離れ、どこからどう見ても土佐犬の静香姫は、重たい目線を、ちらりと稲垣医師と由紀夫にやっただけだった。

「土佐犬じゃん・・・」
「静香姫は横綱の称号も持ってる、最強の土佐犬だよ」
「えっ!闘犬って、オス・メス関係ないの?」
「さぁ。公式ルールは知らないけど、私的な闘犬なら関係ないんじゃないかな?」
「私的な闘犬ってぇ!」
おー、やだやだ、ヤクザなんてっ!おかま的なというジェスチャーをした由紀夫は、稲垣医師がじっと静香姫を見ているのを見て、あれ?と思う。
犬が苦手というのは本当らしく、さっきの2軒でも、ほとんど見ることもなかったのに。
「先生、静香姫は平気なの?」
「そうだねぇ、静香姫は、犬っぽくないからね。何せ、最強の闘犬だからね、気は強い、プライドは高い、しっぽなんかめったな事じゃふらないね」
「ふーん・・・。それで、こいつどこが悪いの?」
「いや、どこも悪くない、と思うよ」
「思うって・・・」
「メインは、散歩」
「散歩ぉ!?」
「見ての通り、人間なんか舐めちゃってるからね、静香姫は。そこらの若い衆じゃ散歩なんて連れてけなくって、日頃は庭を歩いたりしてるらしいんだけど、やっぱりねぇ、思いっきり走るのも必要でしょ」
「あぁ、そら、これだけ大きけりゃあねぇ」
稲垣医師は、静香姫の檻を開け、中に入った。
「平気なのか?」
「この距離ならね」
「・・・って事は?一応確認させていただけると、その、こっちを見向きもしない、巨大な静香姫のお散歩は、俺がさせていただける、って事ですね?」
「そうだよ?」
「そうですよね・・・」

チャンピオンベルトか!?という豪華な首輪に、綱引きの綱か!?というふっとい、豪華な引き綱をつけても、静香姫はちらりと由紀夫を見上げたきり、動こうとはしない。
「おひいさまぁー・・・、お散歩ざますよぉー・・・?」
あんまりにも動かないため、ひょい、と顔の前にしゃがむ。
「お姫様ー、お散歩いかねーのぉー?運動不足はデブるよー?女の子として、どーよ、それぇー」
にっこり笑いかけられ、気位の高い、実はもう結構おば様な静香姫は、わずかに顔を上げた。
内心を言葉にすれば、『珍しいタイプ』とでも言おうか。いつも来てる、あの大人しく丁寧な若いのとも違うし・・・。
何分、見栄えはなかなかいいわ。

「あ!行きます?静香姫?」
立ち上がると、なお一層でかさ強調の静香姫に、内心大変驚きながらも、表面には一切出さず、由紀夫は散歩に出掛けた。

お屋敷の白壁の前に立った静香姫は素晴らしく威厳があった。
女王様が臣下従えるごとき風格で、由紀夫の前を悠然と歩き、近所の犬、猫、子供は、すかさず姿を消した。
まぁ、余計なトラブルもないだろうし、このゆったりしたスピードなら楽だよなー・・・。
と思ったら。
「うわっ!こらっ!!静香姫ーっ!!!」

 

「おかえり。早かったね」
「早かっただぁーっ!?」
「剛だったら、2時間は行ってるらしいし」
「1時間走ってりゃあ十分だろうがぁ!!」
「静香姫、お帰りなさいませ」

子牛ほどのサイズ、力のある静香姫は、いきなり走り出し、由紀夫は引き綱を放しちゃいけない!と、必死について行った。由紀夫の足は速かったが、持久力は・・・。
「死ぬかと、思った・・・!」
「あ、そうですか、静香姫。おにーさぁーん」
「・・・なんすか・・・」
綺麗な芝生の上に突っ伏した由紀夫は、ぜーぜー言ってる由紀夫に、無情にも次の指令が飛んだ。
「静香姫、シャンプーしたげないと」

おーまーえーがーやーれぇーーーっ!!!

って、どーしてその一言が言えないんだろっ。
逆ギレした陽気さで、由紀夫は静香姫にシャンプーを塗りたくった。静香姫のお風呂は、なぁんと静香姫専用の、総大理石。小柄な正広だったら、横に8人くらいは入れそうな、浅めの湯船に、広い洗い場。
「すごいっすねー、静香姫ー」
静香姫はありがたいことに、シャンプーが嫌いではないようで、力が足らん!とでも言うように、ぐいぐい体を押しつけてくる。
「あぁぁ・・・、スーツがシャンプーまみれ・・・」
しかし、すんません!と、静香姫専用ブラシで、ごしごし!こする。
そのうち、スーツのみならず、髪まで濡れて、すっかり由紀夫が濡れねずみになったころ、静香姫のシャンプーはようやく終了し、もういいわ、と出て行こうとするのを止めた。
「ドライヤー!」
「お、解ってるね」
ひょいと顔を出した稲垣医師に、もう外寒いし、と言おうと顔をあげた由紀夫は、
「どこに電話してんだよぉっ!!」
「え?ううん。大丈夫。・・・うん。・・・あ、うん、解った。うん」
ぴっ、と携帯を切られ、言葉を失う。
「あ、あんたって・・・」
「最後、大物があるから、急いでねー」
「急げってか!おいおいー!」
「だって静香姫、全然暴れてないし、協力的なもんじゃない」
言うだけ言って、稲垣医師は出ていってしまい、おまえの前髪セットしてやろうかい!という巨大なドライヤーが残された。

 

短毛種ここに極まれりという土佐犬であるから、毛並みが乾くのは早く、丁寧なブラッシングの結果、静香姫はぴかぴかになった。
表情のない静香姫も、自分の体を眺め、そうね、なかなかかしら、といった感じで、満足気に由紀夫を見上げ、定位置につく。
逆に由紀夫は、中途半端に濡れてしまっていた。
スーツの上からの水と、髪からの水。頭を振ったからといってしぶきが飛ぶほどではなく、全体的にしっとりとしてしまっている。
「だりー・・・」
濡れた後は、いつもよりもずっと疲れるもので、この後の大物ってのは、なんとしてもパスしたい。
「おにいさん、疲れてるみたいだねー」
「めっちゃめちゃ」
「じゃあ、今度は僕が運転するんで、おにいさん後ろに・・・」
「運転しますっ!」
白衣の裾を、がしっ!!とつかんで、由紀夫は言っていた。
「運転させてくださいっ!!」
稲垣医師は、ただ、鷹揚にうなずいただけだった。

 

「ちょっとー!ここ、さっきも来た道じゃないですかぁー!」
「あれ?そうだっけ」
相変わらず、方向感覚の悪い稲垣医師の言う通りに、右に、左にと走っていた由紀夫は、思わず声を上げていた。
「ちょっとー、ほんとに解ってんですかぁーっ!?」
「知ってるよ、住所は」
「だったら、それを、俺に!行ってください!指示ださないっ!」
稲垣医師は、例の何が入ってるか解らないかばんを、右にー、左にーと移動させるものだから、自転車が運転しにくくてしょうがない。
「えー、でもなぁー・・・」
運転しながら後ろを見ると、稲垣医師が時計を見ている。自分も時計を見て、すでに5時を回っていることに気がついた。
「ちょっと、なんなんだよぉー・・・!」
「あ、じゃあ、住所ここ」
さすがの稲垣医師も、この時間か、と思ってくれたらしく、すぐにメモが手渡される。
「ん?あ、これ、全然逆じゃん!!」
都内の住所は、大方覚えました。という由紀夫なので、チラリと住所を見ただけで、ターンをかまし。
「わー」
「うわーっ!!」
稲垣医師がおっこちそうになるのを、慌てて助けた。
「緊張感のある落ち方してくださいっ!」
「いや、すごくびっくりしたんだよ」

 

えっちらおっちら、稲垣医師と重たいカバンをつんで、山を越え、谷を越え、やってきたここは。
「・・・何?エステサロン・・・?スパ?」
こじんまりとした、しかし、上品かつ個性的な建物だった。
「お疲れ様」
(本人は)ヒラリ(のつもりで)飛び降りた稲垣医師は、あー、疲れた、と言わんばかりに、首をコキコキさせる。
「さ、おにいさんも」
「エステサロン・・・で、何を・・・?」
由紀夫の頭の中には、こまっしゃくれた、小型犬が渦巻いた。きゃんきゃんきゃんきゃんうるっさい、リボンとかつけた・・・。

が、自動ドアの向こうにいたのは、きゃんきゃんうるさい時もあるが、概ね大人しい、リボンが似合わない事もないだろうが、つけた事はない、溝口正広だった。

「あ?」
「いらっしゃいませー!お疲れ様でしたー!」
「あぁ?」
自動ドアから出て、店構え、店名を確かめるという古典的な手法まで使って、もう1度店に入る。
「もー、兄ちゃんなにー!」
「・・・何、やってんの」
「ちょっと目先を変えまして!」
「うん」
「今年は、この高級会員制スパ!全館貸し切りで!」
「はぁ」
「早坂由紀夫26歳のお誕生日パーティーをしたいと思いますっ!!お誕生日おめでとぉーっ!」
「・・・あ?」

ぱーんっ!とクラッカーを鳴らされ、まま、お楽になさって、と、ロビーのふかふかソファに座らされ、ま、ハーブティーでもいかが?とアイスティーが振る舞われる。
「何?何が、どうしたって?」
人間疲れると、脳にエネルギーが行き渡らず、理解力が格段に落ちる。その状態の由紀夫は、汗かいたし喉乾いたし!とハーブティーを一気に飲み干し、でも、まだキョトンとしていた。
「だから。あの。今日はね、兄ちゃんの誕生日パーティを、ここでやろうと思ってー」
「うん」
「奈緒美さんが借り切ってくれて、ま、今、奈緒美さんたちは、スパの方で楽しんでるみたいなんだけどぉ」
「あ、おにいさんだー、お疲れさまー!」
「え?あ、森先生っ?」
正広の主治医、森医師が、ほかほかの状態で現れた。
「サウナ、久しぶりー。ビール飲みたくなっちゃうねー」
「お料理も用意してますからねー」
健康ランドではないので、サウナ上がりの森医師が着ているのはバスローブ。足元はふかふかスリッパ。日本人サイズのバスローブだと、足元がちょっとセクシーな感じ。
「おにいさん、お誕生日なんですよね。おめでとうございます」
「あぁ、あ、そうです。どうも」
「ひろちゃん、お兄ちゃんの誕生日に何か変わった事がしたいって言ってねー。それで俺も協力したんだー」
「協力?」
「そ、俺ね、森先生に、マッサージ習ったんだー!兄ちゃん、体使う仕事だから疲れるだろうし、知ってて損はないじゃん?だから、今日は、午後から嘘の仕事を作ってでも、疲れてもらおうって思ってたんだけど」
「・・・稲垣先生に頼んでかぁっ!?」
隣で、ホットのハーブティーを優雅に飲んでいる稲垣医師を見ると、彼も、正広も、首を振った。
「それ、偶然。草なぎ先生が、右手首捻っちゃって、大型犬の往診なんてできなくなっちゃって、仕方なく稲垣先生が出掛けたとこで兄ちゃんにあったんだよ」
「正広くんから、計画は聞いてましたからね。あぁ、じゃあ、ちょうどいいなーって」
「・・・電話の相手は正広?」
「そう」

なぜ、誕生日だからといって、その本人をムリヤリ疲れさせる必要がある・・・っ!
由紀夫は思ったが、正広は、ニコニコ笑いながら由紀夫を引っ張った。
「ねー兄ちゃん、早く着替えなよー。もー、俺、ばっちり!」
「性感」
「マッサージしてあげるからさぁー!!」

「させるかぁーっ!!」
「しないよぅっ!!」

カップは左手、ソーサーは右手、上品な仕草で、下品な事を言う稲垣医師に、早坂兄弟はダブルで突っ込んだ。

 

森医師、香取インターンから学んだ、という正広の性感じゃないマッサージは、力が足りない分を適切なツボを押さえるというやり方で見事にカバーしたものだった。
「うわー、すげー、気持ちいー・・・」
「そぉ!?俺ね、もー、すっげー練習したんだっ!」
今の由紀夫の快楽の影には、練習台にされた野長瀬の涙があるのだが、それを由紀夫は知らない。

サウナに入り、スパで楽しみ、ようやく参加者がホールに集まった。うわ、こんなにたくさん来てたのか、と思うほどの大人数。腰越人材派遣センターから、田村を除く全員(千明含む)、ジュリエット星川と菊江、森医師、香取インターン、稲垣医師、右手首負傷中草なぎ医師。
年齢・性別様々な集団が、全員白いバスローブを着ている、という異様な姿のまま、用意されたシャンパン(ドンペリ・ロゼ)でかんぱーい!お誕生日おめでとぉー!

「あ、ねぇねぇ〜、マッサージだったらぁ、あたしがやってあげたのにぃ〜」

「性感?」
「稲垣先生・・・、あんたほんっとに好きですね・・・」
「んー、性感でも、あたしはいいよぉ〜」
「あ、必要なときは、綺麗なおねいちゃんに頼むからいい」
酔っ払った赤い顔で擦り寄ってくる千明に、きっぱり言うと、もぉー!!と頬を膨らませる。
「あたしだって綺麗でしょー!綺麗でしょぉー!!」
「静香姫の方が綺麗かなー」
「静香ーっ!?誰ぇ!誰よぉーっ!!」
「いや、みはるちゃんの方がいいんじゃない?」
稲垣医師が口を挟み、みはるちゃん、静香姫を知っている草なぎ医師が小さく笑い。

そして、翌日。

腰越人材派遣センター(除く由紀夫&正広、含む千明&田村)で、由紀夫が、静香と、みはる、という性感マッサージ嬢に二股かけてる、という噂がまことしやかに流れた。

つづく


稲垣先生、キャラクター違うわ。なんか(笑)しかしまだまだ稲垣人気衰えず!くくくく・・・(笑)!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ