天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編29話というかお遊び編後編『王子様を届ける』

前回までのあらすじ
「白雪姫様はその美貌ゆえにお后様の嫉妬を買い、殺されそうになったのですが、気弱な手下の手によって、森に逃げました。そこで、個性的な7人+1人の小人に会い、楽しい日々を過ごしていたのですが・・・」

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お后様のナオミ様は、もうウッキウキです。ここのところ、毎食、毎食、美味しい白雪姫のモツ煮込みを食べてるんですもの。
「しょうがが利いてて美味しいわぁ〜!人間、一つぐらいは取り柄があるもんよねぇ〜」
煮込みを作ったのは、もちろんノナガセ。お后様が白雪姫のだと信じているモツは、そこらの牛のものでした。
「また、この煮込みが、酒に合うのよねぇ〜!」
お后様なのに、お后様が飲んでいるのは、冷や酒。お后様としてどうかと思います。
「いやー!もう、気分いいっ!そうだっ!ここらで久々っ!」
ウキウキとはずむ足取りで、お后様は歩き、たどり着いた先で
「鏡よ、鏡よ、鏡さぁ〜ん。この世で一番美しいのはだぁ〜れ?」
と陽気に言いました。
真実を語る鏡・スーパーエクセレントスペシャル46号は、それに勝るとも劣らないハイテンションソプラノで歌い上げます。
『こぉーのぉーよぉーでぇー、いぃちぃばぁん、うぅつぅくぅしぃい〜、そぉれぇわぁ〜』
「あたしよねっ!あたしっ!」
『あぁ〜たぁ〜しぃ〜でぇ〜すぅ〜!』
「・・・一回壊れとく?」
『やだ、鏡の中ではって事でしょお?あんた、ほんっとすぅぐそれなんだから、昔っから狂暴なのよ、狂暴っ!』
「うるっさいわね!あんたは真実を語ってりゃいいのよっ!ほらっ!さっさと答えるっ!」
真鏡・スパスペ46号の前で、ぴしっ!とポージングをしたお后様は、もっとも得意な角度を鏡に向けます。
スパスペ46号は、あーあと面倒そうにしながら、口を開き。
そして、ノナガセは、慌てて部屋から出ようとして。

「なぁんですってぇぇ〜〜!!????」

パリーン!ガラスが割れるほどの大声。
「ノナガセぇーーっ!!!」
お后様は魔女ですから、ながぁい、綺麗な爪がびよぉーーーん!!と伸びてきて、ノナガセの首に巻きつきます。
「血!お后様ぁ!血が出てますぅーっ!!」
「あんた!今このバカ鏡がなんてゆったか聞いたのっ!?」
『だぁれがバカ鏡よぉ〜』
「バカをバカってゆって何が悪いのよっ!この大バカっ!」
『ちょっとしっつれいしちゃうわねぇ〜、あたしはねぇ、真実を映す鏡よぉ?』
「だったら、真実を述べろって言うのよ!」
『述べてますっ!この世で一番美しいのは白雪姫よっ!』

 

「あんた、ほんっとに殺すわよ」
しかしもう、すでにぼこぼこにされてしまい、引きずられていたノナガセは、死体とあまり見分けがつかない状態になっていました。
「生きてんじゃないのよっ!白雪姫っ!」
「いいじゃないですかぁ〜・・・、もうお城も出ちゃったことだしぃ〜・・・」
「この世で一番美しいのはあたしなのっ!」
聞く耳もっちゃいません。ノナガセは、じゃあ、2番目に美しい人は誰って聞いてみたらいいんだ・・・、と思いましたが、これは、墓の中まで持っていく秘密です。
お后様は、何せ魔女ですので、アっと言うまに白雪姫様の行方を突き止めました。いや、まぁ、これは、ノナガセが必死こいて捜してきた、というのが正しいのですが。 

そして、白雪姫様が、7人+1人の小人と一緒に住んでいるおうちが見える場所に、お后様は潜んでいました。
天気のよいお昼で、白雪姫様は、窓からお顔を出して、思いっきり伸びをしています。すべすべのほっぺが、イキイキと輝いています。
「計算よ・・・っ」
そのばら色のほっぺを憎々しげに睨みつけながら、お后様は呟きます。
どうやって、ほっぺで計算を・・・!薄れゆく意識の中で、ノナガセは思いますが、それはもちろん口に出してはいけないことです。

どうしてくれようか・・・!メラメラと燃え上がるジェラシーの炎。
ジャンっ!
そして懐から出てくるのは、赤い、おいしそうなリンゴ。
「これを、白雪姫に・・・!ノナガセっ!」
お后様は振り向きましたが、あぁ、残念。ノナガセは、あっちの世界に行ってしまった後でした。

つかえねぇっ!
蹴りっ!と倒れているノナガセを蹴っ飛ばしたお后様は、魔法の力で、えいっ!と姿を変えました。美しいお后様から、人の良さそうなおばあさんに。そして、可愛いバスケットにリンゴを一杯に積めて、白雪姫様の前に出ていったのです。

「こんにちは」
おっとりと言うと、お后様おばあさんに気付いた白雪姫様が、にっこりと、それはそれは可愛い笑顔を向けました。
「こんにちは。いいお天気ですね」
「そうですねぇ。あ、お嬢様、リンゴはいかがです?」
「リンゴ?おばあさまがお作りになりましたの?」
「そうですよ。とても美味しい、特別なリンゴです。お嬢様にだけ差し上げましょう」
誰がおばあさんやねん!!と心でツッコミながらリンゴを差し出すお后様おばあさん。
大きな、毒々しいほどの赤いりんごを、白雪姫様のきゃしゃなお手々が受け取りました。
「甘い香り・・・」
「そうでしょう?農薬なんて使ってませんよ、そのままかじって下さい?」
リンゴを丸噛りするなんて、あら、いいのかしら。
白雪姫様はちょっぴりためらいましたが、小人たちと暮らし始めてから、そういうことにも慣れてきつつありました。それに、おばあさんはワクワクしながら白雪姫様を見ています。
ここは、思いっきり食べなくちゃあ!
精一杯大きなお口を開けて、かぷっ!とリンゴにかじりついた白雪姫様は。

その場にぱったりと倒れてしまいました。
キラキラとした瞳は、滑らかな瞼に隠され、そしてその瞼は、再び、開かれることは・・・。

 

その日、1番最初にうちに帰ってきたのはユキオちゃんでした。
いつうちに帰っても、誰かいるのっていいな、と思いつつ(あたしがいるじゃなぁーい!!byチアキ)、優しい白雪姫様の「おかえりなさい」を楽しみにドアを開けたのに。
「あれ?」
おうちの中に人の気配がありません。
「白雪姫?」
ユキオちゃんのお部屋なんて小さなもんですから、1周するのに時間なんてかかりません。
どんどん!床を蹴ってタムラに呼びかけます。
「おい、白雪姫は?」
「ソッチジャナイッテユッテルノニっ!シラユキヒメ、ソトニデテイッタゾ!サンポジャナイノカ?」
あぁ、そうか。ユキオちゃんは一人うなずき、お外にでました。小人たちのおうちは、森の中にたっていて、辺りには散歩どころか、フルマラソンでも楽勝よ、という道が広がっています。
だから、おでかけできる場所もいっぱいですが、道に迷う人も多いので、大丈夫かな、と、窓からぴょん!と身軽に飛び出したユキオちゃんは。

「うわっ!」

柔らかなものの上に飛び降りてしまい、バランスを崩して柔らかな草の上に転んじゃいました。
「何・・・っ、白雪姫!!」
ユキオちゃんはびっくりして、うつ伏せに倒れている白雪姫を抱き起こそうとし・・・!抱き、起こそうと、し・・・っ!抱きっ!起こそうっっ!!とっしてっ!!

「ただーいまぁー!あれぇー?カツくーん、だぁれもいなぁーいよー?」
「いいから手伝いにこいっ!!」
何がいいんだか解りませんが、カツくんとシンゴちゃんは、単純な性格だったので、ユキオちゃんの声がするほうにちゃんと行って、
「あぁっ!」
驚きました。
ユキオちゃんが、白雪姫様の体の下に入り込むようにして、持ち上げようとしているのです。
「ユっ、ユキオちゃん!それはちょっとっ!」
「息してねんだよっ!」
「えぇーっ!!」
ラッキーなことに、この二人は人間のお医者さん。力自慢の慎吾くんが、どうにかこうにか、白雪姫様の体を仰向けにしました。カツくんは真剣な顔で、診察します。他の小人たちも帰って来て、心配そうに見守る中。
「呼吸も心臓も停止」
「あっさり言うなよー!」
「だってホントだもん!止まってるよ!何があったの!?」
「知らねぇよ!帰ってきたら外に倒れてて・・・、あっ!タムラっ!タムラてめぇ、何やってたんだよっ!」

・・・寝てたんですよねぇー・・・。タムラは昼夜逆転の生活をしているので、お昼間の事は、あんまり解らないんですよねぇー・・・。

だからって自分がいたのに白雪姫様がこんな目にあっただなんて!このままじゃあタムラだって自分が許せません。様々な情報網を駆使して、何が起こったのかを調べていったら。
「オキサキダ!」
「お后?」
「ウカレッテゾ!」
「あんの、クソばばぁーっ!」
飛び出して行こうとするユキオちゃんを、みんなが止めます。
「ダメだよ!ユキオ、危ないよっ!」
「そうよっ!いくらババアでも、魔女は魔女なんだからっ!」
可愛い顔で、失礼なことをさらっと言うノリコちゃんは、街の噂に敏感な、おまえ女子高生か、という感性で言いきるのです。
「王子様よ!」
「王子様?」
「お姫様のピンチは王子様が救うと、恐竜の時代から決まってるのよ!」
ビシっ!と、方角で言えば、北北西あたりをノリコちゃんは指差します。「白雪姫に必要なのは王子様!もう少し詳細に述べるとしたら、王子様のキスっ!」
これも恐竜の時代から決まっているようです。

「え?キスでいいんなら僕でもいいんじゃないっっ?」
ばっ!と手を挙げたシンゴちゃんを、冷たい目線が襲いました。
「だ、だって・・・、僕だって、このうちの王子様として・・・」
「それは俺でしょおー!?」
大声を出したのはカツくん。
「どこから見たって王子様じゃん、俺」
「でも、気品というか、知性って言うかがねぇー・・・」
くるん、と、綺麗にセットされた前髪を指にからめて、どこを見ているのん?という視線を、ゆったりと投げかけるゴロちゃんは、ひっそり王子様合戦に参戦しているようです。
「てゆーかさぁ、王子様って、育ちがいいから、おっとりってしてて、いい人ってのがホントだと思うんだけどなー」
自分の魅力を的確に判断したツヨちゃんも口を開き、王子様が4つ巴になりそうだったところへ、

「だったらもういっそ俺が!」

といきなりキスしようとしたユキオちゃん。これはもちろん、6人がかりで止められました。

「だぁかぁらぁっ!」
血管切れそうになりながらノリコちゃんが怒鳴ります。
「王子様よ、王子様!ほんものの王子様っ!誰がここんちの王子様を決めろっつったのよっ!そんなもんねっ!子供がいるうちで、『いやぁーこの子は我が家の王子様だなぁっ』なんて言ってるのと一緒でしょっ!」

白雪姫様が死んでしまった、という現実から目をそらすために、つい悪ふざけに走ってしまった小人たちは、王子様・・・と聞いて考え込みます。
この森に、王子様はいません。白雪姫様の国にも、王子様はいません。
「ってことは、こっちにはいるって事か?ノリコ!」
北北西の方角を見てユキオはいいますが、ノリコちゃんは首を傾げます。
「え?そうなの?あたし、王子様って見たことないから、どこにいるか知らないんだけど」
じゃあ、なんで指差すんだよぅぅ!
と思いましたが、ユキオちゃんだって届け屋です。王子様の力で、白雪姫様が息を吹き返すのであれば、どんな手段を使ったって連れてきてやる!
「俺が行く・・・!」
凛々しい表情でユキオちゃんは言いました。
「俺が王子様を連れてくる!」

そして、ユキオちゃんは、特注自転車で走り出しました。

白雪姫様を助けるため、野を越え山を越え、谷を越え。王子様をもとめてさまようユキオちゃん。
携帯電話に随時入ってくるタムラ情報によると(森でも携帯は使えますよ。アンテナがたってますから)、隣国の王子様が、森で狩をしているといいます。広い森ですから、捜すのは大変ですが、それでもユキオちゃんは、がんばって、がんばって!

「あ・・・腹、減った・・・」
何せ、夕方おうちに帰ってから何も食べずに王子様を捜しているのです。そろそろ日もくれかかり、何か、木の実でも、と思ったら。
そこにあったのです。
おいしそうなおいなりさんが。
ユキオちゃんは、おいなりさんには目がありません。ぴかっ!とおいしそうなおいなりさんに、ついフラフラっと手が出て、食べ始めた途端。
「何だっ!?」
頭の上から網が落ちてきたのです!

「やった!キツネが・・・っ、って、あなた、キツネですか?」
「俺のどこがキツネに見えるんだよっ!」
それが、ペットにするためのキツネをおいなりさんで捕まえようとしていたマヌケな王子様と、そのマヌケな罠にはまってしまった、マヌケ度さらに倍!なユキオちゃんの出会いでした。

ユキオちゃんが事情を説明すると、王子様は白馬にまたがり、ユキオちゃんと自転車も乗せて、一心不乱に森を駆け抜けます。
王子様のDNAには、お姫様を救うというのが刻み込まれているのです。

小人たちのおうちの前に、まだ白雪姫様は横たわっていました。手を胸の上で組み合わせ、周りにはお花がいっぱいです。
「死化粧まですんなー!!」
しくしく、と小指で、白雪姫の赤い唇をもっと綺麗に見せるための、グロスを塗ってあげているチアキちゃんに、ユキオちゃんは怒鳴り、顔を上げたチアキちゃんは、とても嬉しい顔になりました。
「ユキオちゃんが!」
「あ!王子様だっ!」
遺影を選んでいたり、一緒に埋めるものを選んでいたり、精進料理の準備に取り掛かっていた小人たちが、飛び出してきました。

ヒラリ、と白馬から降り立った王子様は、まずは、ユキオちゃんと自転車を降ろしてあげて、白雪姫様に近づきます。
雪のように白い肌をしているから、白雪姫。今はその白い肌が、もっと白く、透き通るようになってしまっています。
「美しい・・・」
「えぇ、えぇ、うちの白雪姫は本当に美しいです。どうか、この白雪姫を、王子様の、キスで・・・っ!」
声を詰らせるノリコちゃん。

王子様は、そのノリコちゃんににっこりと笑いかけ、そっと、白雪姫様にキスをしました。

するとどうでしょう!
ぱっちりと、白雪姫様の瞼が開き、キラキラと綺麗な瞳が、王子様を見上げているではありませんか!
「あなたは・・・?」
鈴を転がす声で尋ねた白雪姫様に王子様は答えました。

「マサヒロと申します、白雪姫様」

一目ぼれしあったマサヒロ王子様と、白雪姫キクエ様は、それから結婚し、7人+1人の小人とも一緒に、幸せにくらしましたとさ。

めでたし、めでたし。


「あー、面白かった」
菊江は、39冊目の「Kikueの創作ノート」を閉じた。

つづく


騙された!?ねぇ、騙されてくれた!?
白雪姫はひろちゃんではなかったのです(笑)

どないやねん!!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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