天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編33話後編『千明?を届ける』

前回までのあらすじ
「篠原涼子がいない!!千明は戦慄した。だって私が篠原涼子になるだなんてそんな・・・!そんなぁ・・・っ!」

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「やだぁー!あたし、そんなのできないぃぃ〜!」
「なぁに言ってんだよ、カラオケだよ、カラオケ」
逃げようとする千明の腕をつかんで、由紀夫はソファに座らせる。
「そうそう、単なるカラオケじゃないの」
隣に座って奈緒美もにこやかに言った。
「そう、ただのカラオケよ」
反対側にジュリエット星川が座り、さらに言い募った。
「ちょっと観客が千の単位でいるだけの」
「いやぁぁぁーーー!!」
ほほほー!と高らかに笑うジュリエット星川は、ひっそりと憤慨していた。人は、己のことを知らないというが、ジュリエット星川は、自分だってアイドル歌手の変わりくらいできるわよぅと思っているらしい。
「電話借ります」
いじめられている千明を放って、由紀夫は控え室にあった受話器を上げた。

「田村?」
当たり前のように由紀夫は訪ねる。
「篠原涼子って、今日何してんの?」
「そ、そんな由紀夫ちゃぁん・・・、マネージャーじゃ、ないんだから・・・」
呟いた野長瀬は、
「あぁ、やっぱ成人式のイベント?」
という言葉にお約束のコケを見せた。
「な、なんでそんな事までっ!」
うるっさいな、と由紀夫は人差し指で、野長瀬に黙れと言う。
「今その会場いるんだけどさぁ、来ねぇんだよ。事務所でもわかんないて感じなんだけど。うん」
由紀夫は何度かうなずき、「じゃあ、連絡待ってるから」と受話器を置いた。
「正広」
「何?」
「CD屋行って、篠原涼子のCDとビデオ、なんてあんのかな、まぁいいや、買ってこい」
「はぁーい。雑誌とかは?」
「それも」
「りょーかいっ!行ってきまっす!」
ぴしっ!と敬礼して、正広はたったか駆け出した。

「いやーん、いやいや、ほんとにぃ〜?」
「ホントホント。最近、篠原涼子ってどんなカッコしてんの?」
「そうねぇ」
それには、典子が答える。
「やっぱり、男のパンツ?」
「男のパンツぅ〜?」
「そういうCMやってました」
菊江もうなずいているが、意識してテレビを見ない由紀夫には何がなんだか?状態。
「・・・だからって男のパンツ一丁でステージ上げたら、成人式の意味が違うだろ」
「・・・」

大人になるとは、聞かなかった振りができるってことなのね・・・。

このメンバーの中で、ひょっとしたら一番精神年齢が高いのかもしれない典子は心で呟いた。

由紀夫の指示で、典子、菊江がそれらしい衣装を調達に走り、奈緒美とジュリエット星川が千明の両脇をがっちり固め、野長瀬がドアの前で部屋の出入りを見張ることになった。
その由紀夫は、ずっと受話器を持っている。

「で、どうなの?仕事、すぐ飛ばすようなタイプだって?」
『いや、そりゃないなぁ』
今時、あんたそれ・・・、というヘリウムガスを吸ったあひる声で田村は答える。
「そう?」
『仕事飛ばすようなことは今までなかった。ただし、最近は遅れることはままある』
「ん?」
『免許を取って、自分で車を運転するようになってから遅れがち』
「どっかドライブ行っちゃうとか?」
『極度の方向音痴と、誰が免許渡したんだって、運転技術』
由紀夫は黙ったまま、額を押さえる。
篠原涼子が、一体どこまで行ってしまったのか見当もつかない、ということか。
「んー、これは千明オンステージを考えた方が無難かなぁ〜・・・」
「えぇっ!?そんなっ、由紀夫ぉっ!」
「ちょっと、田村ぁ、篠原涼子の1時間のステージっつたらどんな構成?」
「だからっ、由紀夫ってばぁっ!」
「あ、解る?うん、じゃ、FAXして?うん。番号はねぇ」
「聞いてぇぇーー!!」
「あらあら、千明ちゃん、今からそんな声出しちゃダメよぉ〜、発声は、腹式腹式」
「CDお待たせしましたぁーっ!」
「衣装到着でぇーすっ!!」
「やだぁぁーーーーっ!!!」

千明は、基本的には目立ちたがりやだ。
例えばスナックで目立つ、なんてのは大好きだ。ボックスごときでは舞台にもならない。しかし、しかし、ステージは!
まして心の準備もないままのステージなんかは!
ここで、一挙に千明の中のへたれの血が沸き上がった。沸き上がったと言うか、沸き下がったというか。
典子たちが用意してきた派手目な衣装を着せられ、コスメフリーク(これは、千明も含めて女性陣全員がそうだ)たちに、今までに仕入れたメイク知識の粋を結集したメイクをされていても、千明の震えは止まらなかった。
「ちょ・・・と、やりにくいわよぉ」
「アイラインぶれちゃう、千明ちゃん」
「ん、んなこと、言ったってっ」
「大丈夫、大丈夫だって。千明ちゃん、歌うまいじゃん!」
「そんなぁ〜、ひろちゃん、代わってよぉぉ〜っ!」
「俺じゃ、どこをどうしたって、篠原涼子になんか見えないでしょー?」
「あたしだって見えないわよぉぉーー!!」
「ダイジョブ、ダイジョブ、似てるからっ、とっ!野長瀬っ!」
ソファからダッシュした千明を、野長瀬が取り押さえる。
「いやぁぁーーん!!」

「あ、あのぉ〜・・・」
そんな、すでに状況を面白がっている面々と違って、総務課長は真剣だった。
「ほ、ほんとに、行方不明、なんでしょうかぁ・・・」
「そうですわねぇ・・・」
片手にマスカラ、片手にリップペンシルの奈緒美が、とってつけたような心配顔をする。
「ちょっと。どうなの由紀夫。ホントに来ないの?」
「・・・とりあえず、準備するだけはしといた方がいいんじゃねぇかと思いはするけど・・・」
田村から来た構成のFAXを、千明の顔の前でぴらぴらさせてた時、携帯がなった。

『今、事故が起こってるとこがある』
「そりゃあるだろ」
『篠原涼子のマンションから、その会場までの間だ』
「え?」
篠原涼子のマンションまで知ってんのか?という驚きの後に、事故、に対する驚きが来る。
「どこ!?・・・って、事故ってたら、いくらなんでも事務所に連絡するだろうし・・・、え、まさか!?」
「じっ、事故!?」
「嘘っ!」
「うるっせ・・・っ!ちょっと、黙って・・・、え?何っ?」
片耳を押さえた由紀夫に、田村のあひる声だけが響く。
『死者は今のところ出てなぁ〜いっ!』
「あ、あ、そ」

警察無線によると、事故自体は大した事はない。ただし、場所が悪かった。地下道の出入り口での玉突き事故だったため、地下に閉じ込められてる車がある。
「その中に篠原涼子がいる可能性があるって事か」
『ただなぁ、そっちへの最短距離だからなぁ〜』
「だから、そう思ったんだろ?」
『方向音痴だからなぁ〜・・・』
ただし、そこで止まってしまっているのであれば、携帯で捕まらないのも解る。
「行ってみっかな」
由紀夫は言う。
「正広、こいつ、しっかり準備させろよ」
「うんっ、いってらっしゃいっ!」
「えっ、えっ、だって、由紀夫が篠原涼子連れてくるんだったら、あたしもう、いいじゃんっ!」
「だから、そこにいるって決まった訳じゃねんだって」
「だって、だってぇっ!」
「おめぇ、うるっせぇ!」
がっちりと千明の両肩をつかみ、由紀夫は至近距離でじっと見詰める。
「おまえしかいねぇんだから」
「由紀夫ぉ〜・・・」
千明の目が、うるうるっと潤む。
「あたし、あたし・・・っ」
「頼むぞ?」
真剣な表情で見つめられ、あたし、あたしが由紀夫の役に立つの・・・っ!?と感極まってきた千明は。
「由紀夫ぉぉぉーーー!!!」
とひしっ!と抱き着いていったが。
「や、やだなぁ、千明ちゃ〜ん」
それはすばらく身を翻した由紀夫の後ろにいた野長瀬だった。

「人でなしぃぃ〜!!!」
千明の声を背中に受けつつ、由紀夫は羽織姿で自転車にまたがった。
が、ただちに戻って来た。
「由紀夫・・・っ!」
再び目を潤ませる千明を丁重に押しのけ、野長瀬の腕をつかむ。
「由紀夫っ!?」
「由紀夫ちゃんっ?」
「おまえも来て」

「な、なんですっ?」
「チャリ、運転して」
「はぁ?」
「だって、俺がおまえ乗せて運転するよりいいだろー?」
「・・・俺、運転手、ですか・・・?」
「時間ねんだから、急げよっ!」
羽織袴が、ブレザーを蹴っ飛ばし荷台に座り込む。
「なぁんで、俺がぁ〜・・・!」
「いいから急げっ!」

(偽)ロンゲの漕ぐ自転車の荷台に、羽織袴の男前。

成人式って、いろんなパフォーマンスがあるんだなぁ。幸運にもそれに行き当たった人たちは思ったものらしい。

 

田村に言われた事故現場では、出入り口を塞いでいる事故車が、取り除こうとされている。
「こ・・・っ、ここ、で、すっ、か・・・っ!?」
最近、めっきり体力の衰えを感じている野長瀬は、ぜーぜー言いながら荷台の由紀夫を振り返る。
「・・・両方の入り口が塞がってんだ・・・」
「ホントですねぇ。それじゃあ、身動き取れないし」
中途半端に道を塞いでるだけなため、慌てて逃げ出すといった類のものでもないらしい。
「とりあえず、中はいるぞ」
「中入るって!」
「いいから、おまえ来ないと困るんだから、こいっ!っつってんだよっ!」

えぇ・・・!俺が由紀夫ちゃんの役に立てるなんて・・・っ!

野長瀬と千明の発想は、時々兄妹のように似ている。

俺がいないと困るなんて・・・!ふわふわした心で由紀夫についていった野長瀬は、後に、さびしぃー思いをすることになった。

 

その頃。
篠原涼子はめちゃブルーになっていた。
自分の運転技術は未熟だし、自分の方向音痴は、すでに不治の病と化していることを、彼女は知っている。
それでも、自分の車がほしくって、がんばってる自分へのご褒美っ!と小さな車を買った(ちなみに自分へのご褒美は、月、1・2回以上の頻度であげることにしている)。可愛い愛車には、涼子スペシャルとこてこての名前をつけて可愛がっている。水を使わず簡単綺麗っ、ベガっ!も乗せている。可愛い可愛いミニクーパーちゃんは、綺麗な赤。
その可愛いミニクーパーちゃん、涼子スペシャルちゃんは、今、ぶさいくちゃんになっていた。
前の車に顔をぶつけてくしゃん、となり、後ろの車から、ごつんとやられて、可愛いおヒップも、べこんとなっている。
私が、準備なんかしたばっかりに・・・!
篠原涼子は涙ぐんでいた。
やっぱり大人として、社会人として、仕事に遅刻なんかしちゃいけないわ、と、地図を(彼女なりに)念入りにチェックし、2回も、自宅マンションと、今日ステージを行うはずの会場を往復したのだ(失敗を含めると7回)。
それにより、この一度地下に入らなくてはいけない道、というのが最短距離だと判明したのだ。
万が一のことを考えて、早くに自宅を出発もした。
そんな、準備さえしなければ!
涼子スペシャルはこんなことにはならなかったのよぉぉぉぉ〜!!心で叫び声を上げる。
しかも携帯の電源が切れちゃったのよぉぉぉぉ〜!!
篠原涼子の脳のメモリは容量が小さかった。携帯に入れた番号は、頭の中からはすでに消去されており、事務所の番号すらよく解らない。ましてこれが、マネージャーの携帯ともなると・・・!
「短縮の、3、なんだけど、な・・・」
うんともすんとも言わない携帯を手に、じっと見下ろす篠原涼子は、またじわっと涙が浮かんでくるのを感じた。
大人として、社会人として、事故ったからといって、自分の車を置いていくなんてよくない。よくないけど、大人として、社会人として、仕事を飛ばすのもいけない。
しかしこんなことに巻き込まれたのは、大人として、社会人としてしっかりやろうなどと思った自分が原因で・・・!
「いやああーーー!!!」
狭い車内で叫んだ時、窓ガラスがノックされた。

羽織袴姿に自転車二人乗りでは大変難しい事だったが、それでも由紀夫は警察の目をかすめる、という技をやってのけた。警察の目をかすめてトンネルの中に入ると、薄暗いトンネルの中では、多くの車がひしめきあっていた。
「・・・中でも玉突きじゃん・・・」
「あー、たいした事はなさそうですけど、まぁ、ぶつかってますねぇ・・・」
由紀夫は荷台から運転席を確認していく。
確認された車中の人は、何が起こってるんだ!?とイライラする思いを驚きに変貌させていった。
ブレザーのロンゲと、羽織袴姿の男が乗っている自転車が路肩を走っている。
「ミニークーパーの赤、ナンバーが・・・」
「なんでそんな事まで解るんですかぁ!」
「運転免許センターのコンピューターに入り込むらしいぜ」
「こ、こわぁー・・・!」

「いた!」
赤のミニクーパー。運転席には若い女性がいて。
「・・・なんか、叫んでるし・・・」
「うわぁ、篠原涼子ちゃんだぁ、可愛いなぁ〜!」
嬉しそうに声をあげる野長瀬を放って、窓をノックすると、大口開けたまま、篠原涼子は振り向いた。

「早坂由紀夫といいます。今日のイベントのお手伝いをしてるもので」
「えっ!成人式のっ?」
「はい。お迎えにきました。怪我とかないですか?」
「私はないですっ、けど、なんでここがっ?」
「まぁ、蛇の道は蛇っていいますか・・・」
ドアを開けて篠原涼子を車から降ろす。そして、あのっ、握手っ!と近寄ってきた野長瀬を、運転席に押し込めた。
「えっ!?由紀夫ちゃんっ!?」
「事故車放っていく訳にはいかないだろ!社会人として!おまえ、これ前が動くようになったら、どうにか動かして。どこ持ってきゃいいですかね」
尋ねられた篠原涼子は、うーん、と首を傾げつつ、
「じ、事務所、かなぁ・・・」
と答える。
「OK。じゃ、事務所に」
「場所知りませんよ!」
「調べろよ!時間ねんだからっ!ほらもう、30分切ったじゃねぇか!」

ゆぅきぃおぉちゃあああ〜〜〜んんん・・・!!!

地下道に響き渡る腹式呼吸を駆使した迷惑な声を無視した由紀夫は、篠原涼子を荷台に乗せて走り出した。

入るのは大変でも、突破するのは意外に簡単。
「えっ!?」
出口にいた警察官は、飛び出してきた自転車に唖然とするばかりだった。

その頃。
区長の挨拶はついに終わってしまった。
「スピーチは3分で」をモットーにしている区長は、総務課長から事情を説明され、とにかく長く話してください、というお願いをどうにかかなえてあげたいとは思ったが、10分が限界だった。
まだ後、来賓の挨拶もあるが、今年の選考基準は、短くウィットにとんだスピーチができる人・・・。
総務課長は、2枚目のハンカチを冷や汗で濡らしている。

ようやく事務所から連絡は入った。
篠原涼子、急病のため、別のタレントをつれていくと言うのだが、テレビっ子の正広、千明、菊江でも、「誰?」と言うような新人らしい。アイドルおたくなら先物買いの楽しみもあるだろうが、本日、最前列に陣取ってる連中は、どこからどう見ても篠原涼子ファン。
今時、そゆことやるのね、というRYOKOハチマキ眩しい。
「腰越さん・・・!」
総務課長は、天に祈るのと同じ気持ちで、奈緒美に向かって祈った。

そして祈られた奈緒美は。
「違うちがぁーう!!」
パンパンッ!と手を叩き、ビデオを止めさせた。
「違うでしょ、涼子!ここのフリは、こっちからっ、こうっ!」
学生時代、モダンダンス部に体験入部したことのある彼女は、ノリノリでダンス指導に熱い血潮をたぎらせていた。
「あたし、涼子じゃないもぉ〜んっ」
「涼子っ!」
頬を張り飛ばす真似をされ、あぁっ!と倒れる千明。
「そんな事じゃあ、プリマになんてなれなくってよっ!」
「先生っ!」
「だからコントやってる場合じゃないんだってばぁ!」
リモコンを手に、焦った正広が声をあげる。
「もう、あんま時間ないんだからっ!千明ちゃんがんばらないと!」
「ひろちゃんっ!」
奈緒美の鋭い声に、正広はびしっと背筋を伸ばした。
「この子は、涼子よ!元小室ファミリーの篠原涼子!」
「そう!あたしは、元小室ファミリーの篠原涼子!」
人間、緊張の頂点を過ぎると神経が麻痺して、どうでもよくなってしまうらしい。
たった今、千明は超ナチュラルハイ状態に突入した。
「躍る!あたし、躍るわ!」
「涼子!」
「先生っ!」
がしっ!と二人は抱き合い、レッスンは順調に進み、これでもう大丈夫かと思われた。

のだが。

「千明、あ、篠原さん、大丈夫、ですか?」
「はぁ〜い、おまたせぇ〜」
コロコロと笑いながら千明・涼子が登場し、その明るい自信たっぷりな様子に、総務課長は全身の緊張が解れるのを感じた。
すごい。腰越さんってなんてすごいんだろう。
やっぱり、一生ついていこう・・・!
某区役所総務課課長、愛を奈緒美に捧げる42歳独身。

照明が落ち、音楽が流れ、客席がいきなり盛り上がった。そこに出て行き、千明・涼子は歌った。つかみはオッケーな「愛しさとせつなさと心強さと」
客席も盛り上がり、千明・涼子もノリノリだったのだが。
1曲目が終わり、次は田村オリジナル構成によると、挨拶。
ぱっと普通の照明になった時、千明・涼子には見えてしまったのが。客席を埋め尽くす、華やかな姿の新成人たちが。はちまきまでしてる本気の篠原涼子ファンたちが。
「あ・・・」
そこにおいて、千明はただの千明になってしまった。
やだやだやだ、どうしようどうしよう!
マイクを握り締めて、オロオロと舞台袖を見てしまう。見られた奈緒美にしても、総務課長にしても、正広にしても、まさか舞台には出ていけず、これはどうしたものか・・・!
もういきなり照明を落とすか!
と逡巡してた時、おろおろする一同の横を、何かが通り過ぎた。

「おまたせーっ!」

会場に響き渡る声。
「やだ!みんな気がつかなかったのぉ?この子、そっくりさんなのにぃ!」
全身の筋肉を鉄みたいに硬くしてる千明の両肩に後ろから手を置いて、篠原涼子が言った。
「もー!篠原涼子ですっていって誰かが出てきたからって、ほんとかどうかくらい、自分で確かめなきゃだめでしょー?」
がちがちの千明の手をさりげなく開き、マイクを受け取る。
「もういい大人なんだから、ちゃんと目を開けて、ちゃんと見てなきゃ、もったいないよ?」
そして、千明をそっと舞台袖に向けて押し出す。
「どうもありがとー!千明ちゃんでしたー!」

驚きから開放された客席から、驚きを含めたたくさんの拍手をもらい、ぎくしゃくぎくしゃくと千明は歩き、袖に入った途端、倒れた。
「も・だめぇ〜・・・」
「千明ちゃん、大丈夫っ?」
正広が水を持って飛んできてくれる。目はぐるんぐるん回っていた。
緊張して吐きそうだし、なんだかすごく辛いけど、でも、最終的に千明は嬉しかった。
由紀夫が、ちょっと優しい顔で、「ご苦労さん」って言ってくれたから。

 

「あー・・・、これで5万は割にあわねーだろー・・・」
ステージも終了、無事に成人式のセレモニーが終わり、解散、となったところで由紀夫は呟いたが、その段階になっても、思い出さなかった。

思い出されなかった野長瀬は、田村と違って篠原涼子の所属事務所名も解らないため、前と後ろがへこんだローバーを知り合いの修理事務所に渡すために運転をし、その途中でガス欠を起こし、ガソリンスタンドまで走り・・・。
それでも、
「涼子ちゃんの車ぁ〜、涼子ちゃんが、このシートに座っているんだなぁ〜・・・」
と死ぬほど前向き。
地下に閉じ込められたり、篠原涼子のステージが見られなかったり、連絡先が解らなかったり、よりにもよって、携帯もサイフも全部会場においたまま拉致されてたりして、ちょっと寂しい思いもしたけど。
それはそれで、幸せらしい。

野長瀬定幸、おそるべし・・・!

つづく


私が20歳の成人式は、お振り袖を来ていき、帰りは彼に迎えに来てもらい、友達に見せたりした。21と22の成人式はバイトで入った。そのバイトとは、「詩の朗読」(笑)!!新成人に向けての詩を、ステージで朗読するというなぞのバイトを私はしていたのだ(笑)!!ドライアイスをたかれたステージにしずしずと進み、「今、あなたの前には・・・」などという詩を朗読していた私(笑)!笑える・・・!笑えすぎる!!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!だttげハワイだし!

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