天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編34話プロローグ編『おみやげを届ける』

前回までのあらすじ
「無事に成人式が終わったが、元木はただいまハワイに行っているので思った通りの展開になってしまうことを許してほしい」

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その日、正広はしぃちゃんの定期検診ということで、アルバイトの身分にも関わらず有給休暇をもらって稲垣アニマルクリニックに来てきた。
定期検診といっても、別に変わった様子はない?なんて聞かれて、はいないです、と答え、一応様子を見てもらうだけ。
しぃちゃんも、ひろちゃんとお出かけできるのを楽しんでいるだけ、というものである。
散々世間話をして、それじゃあ、と立ち上がったところで、稲垣医師に言われた。

「そうだ、ひろちゃん。これ、あげるよ」
「え?」
白い封筒を渡され、肩にしーちゃんをとまらせた正広は首を傾げる。
「多分、ひろちゃん好きだと思うよ。お兄ちゃんも一緒にどうぞ」
「そう、ですか・・・?」
「うん。それじゃあ、また来月に」
「はい、ありがとうございました」
ぺこんと頭を下げ、稲垣動物病院を出た正広は。

「えぇっっ!?」
封筒の中身を見て、稲垣動物病院へ飛び込んで行った。

 

その日、由紀夫は立て続けに5件の仕事をこなしていた。朝一に会社に出てからは、5つの荷物を抱えて、都内を駆け回っていたため、家に戻ったのは夜8時をまわっている。
「ただいまぁ〜・・・」
「おっかえりなさぁ〜い!!」
仕事を休んでいた正広が迎えに出てきて、えらくニコニコしている。
「どした?」
荷物を置いて、服を着替えようとする由紀夫の後ろをとことことくっついて来て、とにかくニコニコ、ニコニコ笑っている。
上着を脱いで、ネクタイを外して、シャツのボタンを外して、なおもニコニコと、しかし何も言わない正広に、由紀夫はもう1度聞いた。
「ひろ?」
正広は、きらきらっ!と瞳を輝かせる。
「あのね、兄ちゃん」
「うん」
どうしたんだろうかと首を傾げると、正広は心から嬉しそうに言った。
「兄ちゃん、ハワイ行こう!」
「羽合?」

 

稲垣アニマルクリニックの前で正広があけた封筒の中には、ハワイ旅行ペアご招待のチケットが入っていた。
「い、い、稲垣先生っ!」
「ん?しーちゃん、どうかした?」
「そ、そじゃなくって!これ!こんなのいただけませんよっ!」
チケットを返そうとする正広を、稲垣医師はやんわりと止めた。
「それはね、近所の商店街の福引きで当たったやつでね、出発日指定なんだよね」
「だ、だったら、稲垣先生、行ったらいいじゃないですかぁっ」
「病院休めないでしょう?」
そう言われて、正広も、それはそうか、と考える。
「で、でも、だからって、俺、そんなのもらえないですよぉ」
「何で?」
「何で、って・・・」
そんなの当たり前じゃないか!と正広は思うのだが、稲垣医師は心から不思議そうな顔をする。
「だって、お金はかかってないし、僕はいけないし」
「え、でも・・・、あ、草なぎ先生、とか・・・」
「剛がいなかったら診察できないし」
「そりゃっそうだけどぉぉーー!」

しかし口で稲垣医師にかなう訳もなく、正広はそのチケットを押し付けられる事になってしまった。

その理由が、稲垣医師が飛行機が嫌いである事に深く関わっていることを正広は知らない。
「ほら、なんとかと煙は高いところが好きだって言うし、あそこのお兄さん、飛行機とか好きなんじゃないの?」
「ていうか、稲垣先生。助けてもらってばっかりなんだから、そういう失礼なこと言うのはまずいんじゃないですか?」
「船旅だったら僕も行ったなぁ〜」
譲ってやったのに、文句くらい言わせろ、という意味らしい。
フランスだったら死ぬ気で行くくせに。誠実な草なぎ医師はそう心の中で思った。

 

「そう!ハワイ!」
正広から突然言われ、日本のどこかの地名を呟いた由紀夫は、正広から同意されて、えっ?それってどこだっけ?と思ってしまう。
「え、と?羽合ってどこにあるんだっけ?」
「え?」
「ハ、ハワイは、アメリカだよぅ」
「はっ?アメリカのハワイ!?おまえ、何言ってんの!?」
「だからぁ、ハワイ行こうって!」
よいしょ、と由紀夫は正広の額に手を置いた。
「大丈夫か?」
「んもぉ、兄ちゃん!」
正広は、稲垣医師のチケットを由紀夫に見せた。
「ほら、これ!稲崎先生にもらったの!」
「貰ったって・・・はぁっ!?」
「商店街の福引きで当てたんだって!でも、先生いけないから、兄ちゃんと行きなさいって」
「返してこい」
「え?」
「こんなもん、貰えないだろーが」
「俺もそう言ったよ。でも、これ、日時指定だし、先生病院休めないって言うし」
「だからって俺らが貰える筋でもないだろ?それに知ってるか?」
「え?」
「ただより高いものはない」
大体、稲垣先生にもらったなんておっそろしくて使えないだろー!という兄を、哀しげに正広は見つめた。
「何」
「だってぇ・・・」
「それに、正月に休んで、また1月になんて休みもらえないの!」
「でもぉ」
「何!」
「これぇ・・・」

 

稲垣医師からチケットを押し付けられ、結果的に受け取ってしまい、どうしたもんかと思った正広は、事務所にいるかもしれない兄に相談に向かった。
しかし兄はおらず、そこにいたのは、兄をのぞく全メンバー。
「あら、ひろちゃん、今日お休みなのに」
「こんにちはぁ。あの、奈緒美さぁん」
「ん?」
「これ・・・」
困ったなぁ、と差し出したチケットを見た奈緒美の目は輝いた。
「ハワイ!んま!ハワイじゃないの!」
「え!ハワイ!ハワイですか!?」
「ひろちゃん、ハワイ行くのっ!?」
「いやぁーん、あたしも行きたぁ〜〜いぃ〜っ!」
正広がふっとばされるほどの勢いで、野長瀬、典子、千明が奈緒美の元に集まり、いつ出発だの、どこのホテルだの、何日だのきゃあきゃあ騒いでる。
「あ、あの」
「あー!!その頃あたし、イタリアかー!」
「えっ!?社長!?」
「うっそ!奈緒美さん、イタリア行くの!?」
「社長、聞いてませんってばぁ」
「でも、イタリアよりハワイの方が安いかもしれないわねぇ。とりあえずプラダの値段は見てくれる?グッチも」
「え?」
正広が口を挟む間もなく、次から次へと、おみやげのリストを渡される。

「いや、あの、でも、お仕事が・・・」
「ひろちゃん、調整しなさいよ」
自分がイタリアに行くもんで、すっかり気が大きくなってしまっている奈緒美は、あっさり言った。

 

「・・・なんでもう土産リストがあんだよ!!」
「ガイドブックとかも、こんなにもぉ〜!」
何があるのか気にしてなかったベッドの上には、ガイドブックが山盛りになっていた。
「楽しみだねっ!」
「楽しみって・・・」
「兄ちゃん、海外はじめてっ?俺ははじめて!」
「・・・って、俺ら、パスポート持ってないだろ」
「あるよ」
「ウソ」
正広は、2通のパスポートを取り出した。
「俺、身分証明代わりに作ればって言われて作ってた」
「え!?なんで、早坂由紀夫でパスポートがあんだよ!!」
早坂由紀夫には戸籍が存在しない。あるのは、溝口武弘のものだけのはずなのに。
「・・・ジュリエット星川か・・・!」
「すごいねー!」
「すごいねーって・・・」

家に帰りついてから15分。偽造パスポートに、大量のお土産リストを手にした由紀夫と、兄ちゃんと旅行ー!ハワイぃーに、旅行ー!とウキウキしている正広は「タダより高いものはない」ということを実感する、ハワイ旅行に出発する羽目に陥ってしまった。

つづく


ハワイから国際電話使ってまですることか!?でもとりあえずやってみた!次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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