天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編34話中編『おみやげを届ける』

前回までのあらすじ
「ついにハワイに到着した早坂兄弟!おそるべし計画力を持って、到着初日にすべてのおみやげを買い揃えるという技をやってのけ、明日っからはビーチで遊ぶぞ!!と思っていたのだが・・・!」

yukio
 

「に、兄ちゃんっ!」
「んあ?」
なぜか雪山で遭難する夢を見ていた由紀夫は、正広の声で目を覚ます。まさか自分より先に正広が起きるとは思ってもいなかった由紀夫は、それだけでもかなり驚いた。
「なんかついてるぅ!」
「何かって・・・」
時計を見ると、すでに10過ぎ。ゆっくり寝たな〜と伸びをしながら寝室を出ると、正広が蒼い顔で電話を指差している。
「電話・・・?」
「何がついてんのっ!?」
「・・・メッセージランプ・・・」
「メッセージランプぅ・・・?」
寝癖だらけの顔で、正広は電話を見降ろした。
「フロントに伝言でもあんだろ・・・、って誰からだ!?」
「誰からでもいいけど、電話しなきゃいけないんじゃないのっ?」
英語で!英語でぇ!
別に自分が喋る訳でもないのに正広はパニックしていた。

俺の記憶力を舐めんなよ?とすちゃっと受話器を取り、正広の尊敬〜のまなざしを受けながらフロントに連絡した由紀夫は、FAXが来ているから届けると言われた。
「FAX・・・?」
「誰からだろ」
「仕事の依頼だったりしてな」
「ハワイまでー?そーだなぁー早坂由紀夫担当課長としては、受けるかどうか考えもんだなぁ〜」
などとふざけていたのだが。

「『由紀夫とひろちゃんの、松本アイスのプリクラが欲しいぃ〜!ち・あ・き・よ・りっ(はぁと)』」
「・・・松本ハウス?」
正広がFAXを読み上げ、由紀夫は首を傾げる。
「ハウス加賀屋のアイスがどうしたって?」
「兄ちゃん、ボケすぎ。松本アイスだよぅ」
「どこだっけ」
「どこだっけぇ」
ワイキキ近辺と、ブランドショップしかチェックしてなかった早坂兄弟は、改めてガイドブックを眺め。

「ふっざけてんのかあの女ぁぁ〜っ!!」

松本アイス。言うなれば、オアフ島の北のはずれであった(ワイキキが南のはずれ)

オアフ島はそう大して大きな島ではない。南北が50km、東西が60kmあるかないか。
北のはずれまで行く事が不可能な訳ではないが。
「どーやっていくんだよ、んなとこまでよっ!」
早坂兄弟の足は、自転車のみだった。
ぶーぶー言いながら由紀夫はガイドブックをめくる。
「バス・・・」
「バスで行けるんだ」
由紀夫も正広も、バスはほとんど使った事がない。これが海外ともなると何が何やら。
「でも、一周しても1$か!」
「やっすーい!バスで行く?」
「4時間かけてバス・・・」
うーん、と首を傾げた由紀夫は決心を固めた。
「レンタカーしよう」
「えっ!に、兄ちゃん、左ハンドルだよ!」
「左ハンドルはいつも運転してんだろうが!」
腰越人材派遣センターの社長車はベンツである。
「あ、そっか。でも車線」
「それがなぁ〜・・・」
左ハンドルはなんでもない。問題は右車線を走らなきゃいけないって事だ。レンタカーを借りるつもりなぞまるでなかったから、全然下調べもしていない。
「ふーん、右折はいつでもOKなんだ」
「え?どゆこと?」
「信号が赤でも、右折ができるんだってよ」
「便利だねぇ」
「・・・。イケるかな」
「えっ、だ、大丈夫・・・っ?」
「・・・イケるだろ」
根拠のない自信を持って、早坂兄弟はレンタカー会社のカウンターに向かった。

「うわー!兄ちゃん、綺麗綺麗ー!!」
窓から見を乗り出すようにしながら、正広が声をあげる。
「おまえ、箱乗りする気か?」
驚異のバランス感覚とでも言うか、由紀夫はあっと言う間に車道の左右を頭の中で入れ替えてしまった。なんの問題も感じられないスムーズな運転をしている。
「だって兄ちゃん、海きれぇーー!!!」
「はいはい、綺麗、綺麗。いいから落っこちんなよ」
「ねー、どっかで止めようよー!兄ちゃん、見られないじゃーん!」
「解った、解った、解ったから顔ひっこめろ」
「きれぇー・・・」
一応は引っ込んだものの、大きなお目々はキラキラと海に向けられている。

途中のビーチで車を止めて、海に入りたい!焼けたい!とうずうずする正広を、どうにかこうにか由紀夫は引き留めた。
「おまえにはあの波が目に入らないのか!」
「うーうぅーー・・・!」
「サーフィンなんかやったこともねんだから、やめとけ!」
「たのしそぉぉぉ〜〜!」
「楽しい、楽しい。せめて、日本でやってからにしような」
「入りたいぃ〜〜」
この日は風が強く、当然波も高い。サーファーにはこたえられない波だろうが、陸サーファーですらない正広は太平洋の藻くずとなる可能性大!
由紀夫は髪をボサボサにしてきゃあきゃあしている正広の細いウェストに、えいや、と腕を回し車に引っ張っていく。
「はぁいぃりぃたぁいぃぃぃ〜〜!」

それからも綺麗なビーチが続き、正広の興奮はどんどん高まって行く。
が、突然、静かになった。
「正広?」
「・・・しんどい・・・」
「騒ぎすぎなんだよ、おまえはぁ!」
路肩に車を止め額に手を置くが、特別高熱ではなさそう。
すでに2時間近く走って来ているので、帰るにしてもそれくらいの時間はかかってしまう。
「おまえ、薬持ってる?」
「んっと・・・、熱だよね・・・?うん、ある、けど・・・。それほどじゃない」
「そうかぁ?帰るぞ、こっからでも」
「だめ〜、松本アイスぅ〜」
へとへとになってでも、正広は松本アイスに行きたがる。
だってかき氷じゃん・・・。
由紀夫は冷静に思ったが、正広のその必死な表情を見ると、とても口にすることはできなかった。

「えーっと、松本アイスって、どこらだっけ」
「んっと・・・」
くってりしながらガイドブックを捜した正広は。
「あれ・・・」
「え?」
「あれ、ガイドブック・・・」
「え、ないのか?」
「ううん。だって・・・、あれ、車に乗ってから見てなかったっけ」

見てなかったのだ。
由紀夫の記憶力があだとなった。松本アイスはノースショアにある。ノースショアへの大雑把な行き方は、このハイウェイに乗って、何号線に乗って・・・、というところを由紀夫は覚えてしまったのだ。
「ちょっと待て!松本アイスがどこにあるかまでは覚えてねーぞ!」
「ほ、本屋、行く?」
「あー、俺なぁ、会話については任せとけって感じだけど、読むのはどうかなぁ〜」
「でっ、でも、地図があればっ!」
よっしゃ、本屋だな!と思ったのだが。
「店ねんだけど・・・」
「ないねぇ・・・」
セブンイレブンさえ見えなくなった。どんどんビーチ沿いを北上しながら、きょろきょろとあちこち眺めるが、どうも店らしきものがない。この辺の人たちはどこで買い物してんだよ!と思ったけれど、店がないのはどうしようもない事実。
その間にも、波の高い、綺麗なビーチが次々現れて、正広は具合が悪いながらも目を輝かしている。

そのうち、道はビーチを離れて行きはじめた。
「あ、海、見えなくなっちゃう・・・」
「そうだなぁ〜・・・。新たな局面があるかも」
「そっかな!」
松本アイス!アイス!と徐々に回復しはじめた正広が嬉しそうな顔をする。
「だから、場所解んないんだって」
「そっか・・・」
狭かった道が広くなり、由紀夫は周りの車に合わせてスピードを上げる。
「あ、あっち、店とかあるんじゃない?」
助手席にいた正広が右手側を指さす。目をやると、確かにそこは街になっていて、本屋でもなんでもありそうな感じだった。
「んだけど、悪ぃ!こっち乗っちゃった!」
ハイウェイに乗ってしまったらしく、右折できる場所がない。
「どっか適当に走って、Uターンするから」
「あ、うん」
Uターン、Uターンと思いながら由紀夫はどんどん車を走らせる。
「なんか、すごい風景だね」
「だな」
まっすぐのハイウェイ。左右に果てしなく広がる畑。
「ここでエンストしたらさびしーだろーなぁー・・・」
「に、兄ちゃん、ガソリンはっ!?」
「これ今朝借りた車だぞ・・・」
なんの畑かなぁ、などと言いながらただまっすぐに走っていた二人は、見てはならないものを見た。
「ドール・・・?」
「パイナップルのとこだ!」
「行き過ぎてるよ!行きすぎてる!!」
由紀夫の大雑把な把握によると、松本アイスは北の外れ、ドールパイナップルは、島の真ん中。
「じゃあ、松本アイスに気づかなかったんだ!」
「道沿いにあるとは限ってねーだろ!」
「そっか!」

とりあえずドールパイナップルにつっこんで、一応中を見て、カットパイナップルを買った。
パイナップルを頬張りながら元来た道を戻る。さっき正広が来た街にいけば、本屋でもなんでもあるだろう。
「って、ちょーっと待て!また行きすぎたかっ?」
「今のとこだったかもぉー!」
今度は左折しなくてはいかないのだが、どうも入り道が解らない。左手側にその街を見ながら、再度のUターンを試みる。
そしてようやくその街に突っ込めて、ショッピングセンターのようなところを見つけた。
「やったじゃん!」
「やったね兄ちゃんっ!」
もちろん本屋もあって、喋れても読めない早坂兄弟は、地図だ地図!とキョロキョロする。
「地図、地図地図・・・」
「ガイドブックでもいいよね」
「タウン誌でもいいか。ってあるのか、そんなの」
あれこれ言いながらようやくガイドブックを見つけた由紀夫は、ハっと気がついた。
「兄ちゃん・・・?」
「・・・ここ、どこだ・・・?」

地図というのは、現在位置が解らなければ見られないものなのだった。

つづく


松本アイスというのは、7色のかき氷で有名な場所。果たしてどこにあるのだ松本アイス!無事につけるのか松本アイス!がんばれ早坂兄弟!次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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