天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編34話後編『おみやげを届ける』

前回までのあらすじ
「千明からの要求で、ノースショアはマツモトアイスまで行って、プリクラを撮らなくてはいけなくなった早坂兄弟。しかし恐ろしいことに、二人はあ地図を忘れてしまっていたのである!大丈夫!大丈夫なのか!マツモトアイス!どこにあるのだ、マツモトアイス!」

yukio
 

「さぁ〜って・・・」
思わずヤンキー座りになってしまった早坂兄弟は、本屋の中だというのに気にもせず、じっ!っと地図を眺める。
「うーん・・・、と、あ、あった。これじゃない?マ・ツモト、・・・なんだろ」
「おまえ、それくらいは読めるだろ。ストア」
「オゥ!イーングリッシュ、ムチュカシイ、デェスネェ〜イ?」
「駅前行け、駅前」
真剣に地図を睨みつける由紀夫は、あぁ、ここにっ!と指を差す。
「ドールパイナップルパビリオン!」
「オゥ!コォンナトコロニィ!」
「やめろ」
ヤンキー座りのまま器用に身振り手振りで外人風を演出する正広の首をぐいを捕まえて、これ!と地図を見せる。
「ここが、さっきのドールパイナップルパビリオン!そんで、ここがマツモトハウス」
「アイスだよ、兄ちゃん・・・」
「るせぇ、この間が!・・・どれくらいだ?」
「んー・・・こんなもんだから・・・」
正広が真剣な顔で、縮尺のめもりに自分の指を合わせようとする。
「に、兄ちゃん、これ、マイルで書いてある・・・!」
「いいよ、何マイルあんだよ」
「6、6マイル、くらい・・・?兄ちゃん、6マイルって、何キロ?」
「うーん・・・、なに、おまえしんないの?」
「知らないよぉ、俺、中学もまともに出てないんだからぁ」
「高校まで行っても、多分授業ではやんねぇだろうなぁ」
中学もまともに出ていない、といえば由紀夫も同様で、換算の仕方がよくわからない。
しかし、世の中を渡っていくのに必要なのは、知識ではなく、知恵。
由紀夫はびしっと言った。
「大体、普通の道の制限速度が30マイルだったんだよ」
「30マイル」
「日本だったら、大体50kmだから」
「うん、って事は?」
「って事は、50km÷30マイル。はい、いくつ?」
えーっと・・・。正広は手のひらにボールペンでうにうに筆算して答えを出した。
「1.6!」
「つまり、1マイルは、1.6kmだ・・・!・・・多分」
「兄ちゃんすごい!」
ぱちぱちぱちっ!正広は手を叩く。そして、パン・パン・パンと間延びした拍手も聞こえてきた。

二人の頭の上から。

「あ・・・」

こっちがヤンキー座りしているせいで、倍以上大きく見える、その人は。
「野長瀬ぇ?」
「野長瀬さんっ?」
ザ・日本男児(一応)野長瀬定幸に激似のロコ店員であった。

彼は、本家野長瀬と同じく、顔は怖いが心根は優しいタイプであったらしい。どうみても地元の人間ではない、幼い兄弟が困っていると思ったのだろう。
ましてや、ヤンキー座りまでしているものだから、具合でも悪いのか?と聞いてきてくれた。
聞いてきてくれていたのだが、やっべ立ち読みより悪い、座り読みだったぜ!と珍しく焦った由紀夫は、これ!と見ていたガイドブックの代金を押し付け、ダッシュで店を出た。

「びっくりした!びっくりしたねぇ!」
「あー、びっくりした・・・。なんでこんなとこに野長瀬が・・・」
「ほら、テレビでよくやってるじゃん、日本人はどこから来たとかって。ハワイから来たのかなぁ」
「野長瀬は、一般的な日本人としてとらえる訳にはいかねんじゃねぇか?」
失礼な言葉を連発しながら、車に戻って再度検証する。
「つまり、ドールから、マツモトアイスまでが、6マイル、10km。ドールからここまでが・・・。何分くらいかかってっかなぁ〜・・・」
「何回か迷ったしねぇ・・・」

うーん・・・と考え、ポン、と由紀夫は手を叩いた。

「ドールに戻ればいんじゃん」
おぉ!正広は再び感動し、大きく手を叩いた。
「兄ちゃん天才!」

現在地が解らないなら解る場所まで行けばいい!

びよーん、と元来た道を戻り、ドールパイナップルパビリオンに二人は降り立った。
「よっしゃ!ここがドールだろ?そんで、マツモトアイスが・・・」
「兄ちゃん、ここ!」
「よっしゃ!元に戻るぜ!」
その前に、とりあえずもう1回くらい、パイナップルくらい食べとくか!と中に入った二人だった。

そこから、きっちり地図通りに走り、二人は無事にマツモトストアに到着することが出来た。
何のことはない、例の本屋から、わずか数百メートル先に進んだだけの場所に過ぎなかったのだ。
ちなみに彼らがいたのは、ハレイワ・ショッピングプラザ。お手元にオアフ島の地図がある方は、参照されたい(笑)

「すげー・・・」
由紀夫は呟き、正広はぽかんと口を開けている。
「ちょっと、今時東京じゃあ捜せないような店構え」
「う、うん・・・」
「あ、でも、海の家とか、そんな感じかな」
「そぉだねぇ・・・」

なんとも昔懐かしい雑貨屋という風情の店は、確かに多くの車が止まっていた。みんな、それは一体!?という色合いのかき氷を食べている。
「まぁ、とりあえず入ってみるか・・・」
二人は、ビーサンの似合いそうな店の中に入り、すげー!とあちこち珍しそうに眺める。
「兄ちゃん、これ!これ、プリクラだ!」
「へー、ホントにあんだ・・・ってぇっ!」
「・・・故障中・・・」
「これ撮りに来てんじゃねぇかぁっ!!」

あのバカ女ぁ〜っ!!
怒る兄をなんとか宥め、かき氷食べようっ!と正広はカウンターに引っ張っていく。
「おまえ、なに食うの」
「何って兄ちゃん・・・。俺、メニュー全然わかんない・・・」
「・・・んじゃ、レインボーにしろ。シングルな」
「えぇ〜、シングルぅ〜?」
「シングルで十分だっての」
レインボーアイスを二つ頼み、色鮮やかなアイスを手にぶちぶちと文句を言いながら店を出る。
「あ、美味しい」
いそいそとアイスに口をつけた正広が言う。
「ん?」
かしゅ、と音を立てて由紀夫もカップに口をつける。
そりゃもうかき氷だから、シロップの甘みの味なんだけど。
「結構いいな」
細かく砕かれた氷の冷たさと、懐かしいシロップの甘み。またタイミングよく、遠い青空には虹までかかって。

いいじゃん、いいじゃん!と、とシャグシャグやっていると。
「うげ」
「うわ、すげ」
「なー、そーだよなぁ〜、イチゴシロップと、ブルーハワイとが一緒になっちゃったら、そら紫だよなぁ〜」
「そこにレモンとか加わっちゃうとね〜」
「限りなく黒に近いよなぁ〜」
レインボーと言われるだけに、7色のシロップが使われていて、それは氷が溶けるごとに混じっていく。入っているのが紙製のコーン形カップで、段々染みてもくる。
「何、これ、一気に食えって事かぁ?」
たとえシングルでも、ハワイサイズのシングルは、日本人には負担が多い。
こめかみキーン!となりながら、二人はそれでもがんばった。がんばって、がんばって食べているその瞬間。

一転俄にかき曇り、バケツをひっくり返したような夕立が!

「・・・うっそぉ」
店先のちょっとした軒先から出ていた二人は、夕立のそのあまりの勢いに、しばし呆然とする。
「ちょ、おまえ濡れたら・・・っ!」
しかしほんとに一瞬で、由紀夫は正広が呆然と握り締めているアイスと、自分のアイスをごみ箱に放り込み、正広をひょいと小脇に抱え、ダッシュで車に向かう。
「何だぁっ!?」
「びっくり、したぁ〜!」
「タオル、タオル・・・ってねぇのか!あ!買いに行くぞ!」

ハレイワ・ショッピングプラザに戻り、タオルと着替えを買って正広を着替えさせる。
「大げさだよ、大丈夫だよぉ。もう雨上がっちゃったし」
と言いつつ、くちっ!と小さくくしゃみする正広。
「ほらぁ!あんの千明がバカな事言い出すからぁ!」
「ちがぁう、平気だってぇっ!」
くちっ!くちっっ!
実は、由紀夫の買ったタオルが、結構ホコリっぽかったためのくしゃみだったのだが、日本にいる千明が、寒いっ!と身震いしたものである。

 

そして時間はすでに4時をまわっていた。
「おいおいおい。これから帰ったら何時だよ!」
「どれくらい?5時くらい?」
「ビーチは!?ビーチには行けんのか!俺たちは!」
「行きたぁ〜い、行きたぁ〜い、海ー海ぃー!」
「夜はダメだって。寒ぃもん」
「うー・・・」
「あ。いいとこがある」

そしてワイキキまで帰ってきた由紀夫が行った場所は、射撃場だった。

「うわぁ。ピストルだぁ」
正広が目をキラキラさせてる間に、由紀夫はスタッフからマジックを借りて的に落書きをしている。
「何?兄ちゃん、何書いて、うわぁ・・・」
「撃つ気でるなぁ〜」
「変に似てるからやだぁ〜・・・」
「ん?おまえのにも描いてやろっか?」
ワイキキに帰ってきたら、案の定日は傾き、風は強く、とても海に入れる状態ではなかった。
そしてその怒りを一身に受けてしまったのが、的に似顔絵を描かれてしまった千明。
「いやぁ、楽しみだなぁ〜」

そして正広が、一発、一発、緊張しながら撃っている横で、ガーンガーンガーンガーンガーン!はい、次の銃といったスピードで、由紀夫はどんどん撃っていった。
「ほらなっ」
「兄ちゃん、すげぇ〜・・・」
見事顔の中心に弾を集めた由紀夫は偉そうに胸を張る。
「俺、あのままヤバイ世界にいたら、スナイパーになってたかも」
高らかに由紀夫は笑った。

明日こそはビーチに行くぞー!
オー!
買い物もするぞー!
オー!

なんやかんやで夜中まで遊んだ後、二人はそう言い合ってベッドに入ったのだが・・・。

カーテンの隙間から入ってくる光が、由紀夫の目を直撃した。
「ん・・・」
それから逃れるように顔を逸らし、ついでに寝返りもうつ。ぬくぬくとしたベッドが気持ちいいなぁ・・・と思う。
今日は、まずはビーチに行って、どっかファーストフードにも行きたいし・・・。
あ、朝飯・・・。
そんな事を考えてるうちに段々意識がはっきりしてくる。由紀夫は正広の500倍寝起きがいい。
まだ目覚ましがなってないから寝てればいいよな・・・。

ん?

しかし、表の部屋から水音がしてる。また正広の方が先に起きたのか?
そんな事を思いながら、由紀夫はまたうたたねしてしまい、その水音はいつの間にか消えていた。
「・・・正広・・・?」
もう一度意識が戻ってきた時、由紀夫は弟を呼んだ。耳を澄ませば寝息が聞こえてきていて、あぁ、まだ寝てるのか、と、枕元の時計を見る。

1時。

・・・1時・・・?

時差が5時間あるから、5を足して6時?
あぁ、6時、にしちゃ外が明るいか。
いや、5引くんだっけ。5をひいて、8時。あぁ、8時か・・・。

「って違うじゃん!!」

ここはハワイで!この時計はハワイの時計なんだから!ハワイは今この時間!
ジャッ!っとカーテンを開ければ、あっかるーい青空に、高い位置にある太陽。
「正広!1時だ1時!」
「しちじぃ〜・・・?」
「1時!なぁんで目覚ましなんねんだよっ!!」

鳴らなくて当たり前なのである。
前夜、由紀夫も正広も、セットしていないのだから。
うわっちゃー!!俺のバカ!と思ったが、こういう事態に陥っても、正広の寝起きは悪い。
ふにふに、うにうに、ブランケットの下に潜り込んでいこうとする。
「こーらー起きろぉー!」
それを渾身の力で一気に引き剥がし、正広を洗面所に拉致。そして気づくのだ。
きちんと整えられた洗面所に、さっきの水音は、ハウスキーパーが入って来た音だと言う事に。
あぁぁ、なんてことー!

「いいからおまえ顔、顔くらいじゃダメか、シャワー浴びろ!シャワー!」
シャワーを捻るだけ捻り、すっかり100%目を覚ました由紀夫は、自分用にコーヒーを入れる。
わずか3泊、しかも、明日は早朝に出発しなくてはいけない早坂兄弟にとって、残されているのは、今日一日・・・!
とにかくビーチだろ?それから?
「正広ー!」
バスルームのドアをノックする。
「おまえどこ行きたいつってたっけぇー」
しかし返事はない。
「正広ー?」
バスルームのドアをあけると、由紀夫がそのドアを閉めた時と寸分変わらない状態で、立ったまま正広は寝ていた。
「おーきぃーろぉぉーーっ!!」

 

「いやー、やっぱり海だね!」
今更ワイキキビーチじゃないよ!と、初ハワイにもかかわらず、チャリを飛ばしてやってきたのは、カハラビーチ。すでに時間は、2時半を迎えていた。
正広は、ABCストアで買った日焼け止めを嬉々として塗っている。
本人は、日焼けオイルだと思っているので、由紀夫も止めはしない。
今日はずいぶんと天気がよく、雲一つない青空が広がっている。何よりもいいのは、風が弱いというところ。これでずいぶん体感温度が変わってくる。
「兄ちゃんも焼く?」
「あぁ。うん」
日焼けは結局やけどの一種になるし、正広は前に日射病で倒れたこともあるから、日焼けをさせたくない。
が、由紀夫本人は、少々焼けたっていい。
んだけど、ここでこれを使わなかったら、なんで?なんで?と突発性「なんで?」症候群に弟が襲われる可能性があるので、大人しく日焼け止めを塗る。
それを待ってる間、正広はうずうずうずうず、散歩に行く前の犬のような状態になった。
「な、何・・・?」
「海入りたいっ、海っ!」
「入ってくりゃいいじゃん」
「いいっ?」
ざっ!と立ち上がり、瞳をキラリラリ〜ン♪と輝かせた正広を見て、思わず由紀夫は足首をつかんでいた。
「待て。一緒に行く」

外は温かくても、海の水は冷たいはず。
そんなところに勢いで突っ込まれたら何が起こるか・・・!

保護者由紀夫は、海難救助隊の気持ちで海に入るのだった。

ワイキキと違って、あまり人がいない海で、正広はかなりはしゃいだ。はしゃいでは、砂浜で寝て、また海に入って、寝て、の繰り返し。
由紀夫がボートを借りてきてからは、ちょっと起きに出て、ボートにつかまって泳いで、ボートで寝て、また泳いで、ボートで寝ての繰り返しで。

「5時か・・・」
「兄ちゃん、疲れたよぅ・・・」
「帰るか」

自転車の後ろで、遊びつかれた正広は半分寝てしまって、由紀夫の背中に額をくっつけている。落としたら大変と、由紀夫はゆっくりと自転車を走らせた。

こうして、二人のハワイは終わったのである。

翌朝は早い便の飛行機のため、7時にはホテルを出ないと間に合わない。今度こそ!と、目覚し時計を鳴らしてチェックをし、フロントにモーニングサービスを頼み、携帯電話のアラームまでセットして、早めに寝た。
それでも翌朝、6時45分まで起きない正広なのだった。

 

「おかえりなぁーい!」
成田空港は、腰越人材派遣センター一同(−イタリア旅行中の腰越奈緒美)(+稲垣医師+草なぎ医師)が横断幕まで持って迎えに来ていた。
「ただいま」
「んま!すごいお荷物!さ、千明ちゃんお持ちして!」
「なあんであたしがぁ!野長瀬さん持ってよぉ!」
ぷんっ!と言いながら、嬉しそうに由紀夫に抱き着こうとして、額をぐいぐい押しやられていく。
「てめぇ、余計なFAX送りやがって!」
「あっ!届いた!?すごぉい!すごいねっ!FAXってっ!」
「すごかねんだよ!」
「だぁってぇ、あたし、奈緒美さんやぁ、典子ちゃんみたいにブランドもんとか頼んでないしぃ〜」
「頼んでただろ!STTUSYのTシャツだの、キャップだの、ボビー・ブラウンの口紅だの、生理痛の薬だの、痩せるコーヒーだのなんだのっ!」
「・・・ゆ、由紀夫さん、公衆の面前で『生理痛』ってのは・・・」
典子が呟き、二人は車に拉致される。

「お帰りなさい」
「先生、ありがとうございましたー!すごく楽しかったです」
「こいつ、寝てばっかりでしたけど」
「兄ちゃんだってぇ!」
「先生たちにお土産なんですけど・・・」
それは正広が日本では見たことがないと言った、ペット用品&ペットフード色々セット。
「へー、珍しいですね。どうもありがとうございます」
にこっと草なぎ医師は言ったが、稲垣医師は表情を消している。
「先生?」
その無表情の中に、もっと高いものがいい、もっといいものがいい、というメッセージを読み取ってしまった草なぎ医師は、これ日本で手に入れようと思ったら、すごく高くて!といらん気苦労をするのだった。

「由紀夫ちゃん!私たちにはっ?おみやげっ!」
運転中の野長瀬に聞かれ、由紀夫は、はい、と助手席の典子に渡す。
「・・・・・・由紀夫さん・・・」
「だって時間なかったんだもん」
ABCストアで、20箱、30箱売られているマカデミアナッツチョコであった。
「そーそー、千明にはこれ!」
「えっ!あたしっ!?」
ぴょんっ!と車内で跳ね、頭がんっ!とぶつけた千明はいたぁい〜と由紀夫にしなだれかかり、足でぎゅうぎゅうと反対側のドアに押し付けられる。

そしてそのみやげとは。

「ひっどぉぉぉ〜〜〜いぃぃ〜〜っ!!!」

由紀夫による千明のイラスト、WITH弾痕であった。

翌日からすぐ仕事。
タダより高いものはないって、ホントだよなぁ〜・・・。
大あくびとともにそう実感した、早坂兄弟であった。


今回の話は虚々実々入り乱れておりますな。私の経験も入っているのですな。果たしてどれ!当てた人には!
何もでないよん(笑)次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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