天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編37話後編『ダイエッターを届ける』

前回までのあらすじ
「正広はりんごダイエットに取り掛かったが、ちょうどその時テレビで見た、リンゴがパイナップルみたいにきれて、皮も剥けちゃうって商品に心奪われたことは言うまでもない。」

yukio
 

「ひろちゃん、お昼行こっか!」
「あっ、えっと、俺、ちょっと用があるんで。一人で・・・」
「そうぉ?」
正広は、ダイエット中であることを大々的に宣言するつもりはなかったので、りんごを食べる事は秘密。
家から持ってきた3つ分のりんごを、しょりしょりとミニキッチンの隅で食べる。
「これでダイエットになるなんて楽だよねぇ〜」
8つに切ったりんごは、可愛いうさぎさんになっている。
「ちょっと不細工だけど・・・」
なんだかうさぎになったような気持ちで、アっと言うまに3つのりんごを食べた正広は、まだおなかがすいたまま。
「・・・でも、リンゴ以外は食べちゃだめだろうし・・・」
おなかすいた・・・と思いながら、正広は午後の仕事をしたのだった。

毎日、毎日、リンゴを食べつづけて4日。そりゃもう、たらふく食べた。いっくらでも食べた。朝はあんまり食欲がないからちょっとしか食べられないけれど、それでも食べつづけた。
のに。

「ひろちゃーん、大丈夫〜?」
「え?うん、大丈夫、だよぉ〜・・・」
「ねぇ、こないだから、お昼一緒に食べてないけど、どうかした?具合悪いんでしょ、ホントはぁ」
「んなことないよぉ〜」
典子と二人、事務所の留守番をしながら、正広は机に突っ伏している。
「ちょっと・・・寝不足ぅ・・・」
「もー、由紀夫さんがいないからって遊びすぎー!今、何やってんの?」
「・・・熱闘プロ野球・・・」
「ちょっと!もっとあるでしょー!?」

ポケモンショットは?という典子の声が遠くに聞こえる。
なんか、だるーい。だるーいし、でも、痩せないしぃ〜・・・。

そう。正広の体重は減っていなかった。こうなると、何か別の事も考えなきゃいけないのかなぁ。
夜、ゲームをする気にもならずゴロゴロとテレビを見ていると。
「あ。腹筋が火を噴いてる」
アメリカの通販番組がかかっていた。
「アブシェイパー・・・」
1日5分の運動で、腹筋が鍛えられシェイプアップもできるというすぐれもの。
「結構安いし!」
正広の手は、すでに電話に伸びていた。

よーし!もう大丈夫だ!あれが来たら、痩せるぞぉー!と晴れやかに目覚めた朝。珍しく食べられそうだったので、いつもは半分くらいのリンゴを1個にして、ショリショリ食べていた正広は、
「う」
と口元を押さえた。
だだっ、と洗面台に走った正広は、「そう言えば、遅れてる・・・!」とお約束のボケを一人っきりにも関わらずかまし、その場に座込んだ。
「気持ちわりぃー・・・・・・」
こてん、と頭を壁にもたせかけると、ひんやりした壁が気持ちいい。
「・・・ん?」
その冷たさに記憶がある正広は、よてよて、と、四つんばいのまま部屋に戻り、体温計を引っ張りだした。
「・・・38度7分!」
微熱だ微熱!
どうしよう!

どうしようったって、この程度の熱であれば、正広には慣れっこで、森医師のところで薬を貰うか、じっと寝てれば直る。
そして熱が下がった頃には、ちょっとやつれて・・・・・
「やつれるって事は、痩せるって事!?」
きらぁ〜ん☆
自分の熱のパターンをちゃんと把握している正広は、今日1日働けば、翌日もっと熱が上がる事を知っていた。
「がんばるぞぉー!!」
熱のせいだろうか。すでに正広から『正常な判断力』といったものは奪い取られているらしい。

「ひろちゃん?あんた、顔赤いわよ?」
「え?そぉですか?」
「そうよ。熱でもあるんじゃないの?」
「そっかなぁ」
あるんだけど・・・、と思いながら、額に手をやる。もちろん、手も熱いから自分では解らなくなっていた。
「でも、大丈夫です」
なんだかぽかぽかして気持ちいいのは熱が上がってる証拠。きっと明日は起きられないくらいになってるはず。
「もういいから、帰りなさいよ。野長瀬、送ってあげて」
「えっ、いいですよ!まだ、これ残ってるし」
ワープロ打ちしている書類を見せたけれど、はーい!私がやりまーす!と典子が立候補してくれて、正広は野長瀬に拉致される。
「あーん、大丈夫、なのにぃ〜」
「大丈夫じゃないでしょ!ほら、腕も熱いよ!病院行こうね」
「いいですー、ホントにぃ〜」
「ひろちゃん!」
怖い顔で野長瀬に見られても、ここで、注射だの、点滴だので治される訳にはいかない。
「うちに、薬もあるしぃ・・・」
おずおずと、そして上目遣い。
おねだりの定番ポーズで野長瀬を見上げると、野長瀬は、そ、そぉ?と正広の言う通りにしてしてくれた。

由紀夫に比べれば、よほどちょろい男、野長瀬定幸。

「うーん・・・」
ベッドに倒れて、シーツの冷たさを堪能する。
「気持ちいー・・・」
関節が痛い。
「薬・・・、は、いっか・・・」
一気に熱を下げるためのキツめの薬しかないので、それはやめてベッドに潜り込む。
「熱が下がる頃には、ふふ・・・」

熱が高いんだわ!
だって熱にうなされて、笑ってる!
電話しなきゃ!お兄ちゃんに、電話しなきゃあ!!

枕元で焦るしーちゃんの気持ちなんて、全然気づかない正広なのだった。

「うー・・・・・・・・・」
低いうなり声をあげて、正広は手を伸ばす。
「み、ずぅ・・・・・・・・」
しかしベッドサイドにおいてあるコップは、すでに空だった。
「ふにゅぅ・・・・・・・」
喉は渇いているけど、だったらいいや、と諦める。
頭はズキズキするし、気分は悪いし、関節は痛いし、肌も敏感になっちゃってて毛布ごときでも擦れて痛いし。
小さく唸るような声を上げながら、正広は自分の体に思いを馳せる。痛くないところだってあるはずだ!と。
えーっとえーっと・・・。
かかと、は痛くない、かも・・・。
正広の脳裏に、全身がかゆい時、かかとはかゆくない!というのに気づき、ということは、自分はかゆくない人だ!と自分に言い聞かせて乗り切った、というマンガが浮かび上がった。(by気分は形而上orよしえさん)
って事はかかとは痛くない俺は、痛くない人だ!

そんな強がりはすぐさま聞かなくなり、うーん、苦しいよぉー、と体中が騒ぎ出す。
気持ち悪い〜、吐くぅ〜、でも起きれないぃ〜・・・・・・・
「にー・・・、ちゃぁーん・・・」
いつもなら、すぐに助けてくれる兄は、未だ北海道の空の下。
「くぅるぅしぃいぃ〜〜・・・・・・・・・」

この苦しみの果てに、すっきり標準体重の自分がいるんだ・・・!と思っても、脂肪より先に、命が減りそう、とも思う。
兄ちゃん。
こんな隠れ肥満の弟でごめんなさい。
ましてや先立つ不幸をお許しください。
俺が死んだら、しーちゃんの面倒をよろしくお願いします。
冷蔵庫の中の肉は、まだ食べられると思います。でも、よく焼いてね。
後、スーツをクリーニングに出したまんまなんで、とってきて下さい。
んーっと、事務所の机の中に、お菓子が入ってるから、それは・・・、もう食べない方がいいかも。
それからえーっと。
俺が死んだら、灰はハワイの海に撒いてください。派手なお葬式はいいです。あ!でもやっぱりお父さんたちと一緒のとこの方がいいかも・・・。
あ、プレステのソフト、野長瀬さんに返しておいてください。
あー、でも、奈緒美さんたちにも、なんか色々借りてたぁ〜・・・。見に来てもらってもいいかなぁ・・・。
それから、それから・・・。
兄ちゃんの、弟に生まれてよかったです。楽しい毎日でした。
兄ちゃん、ほんとに、ありがとう。
さようなら・・・・・・・・・・・・・

 

「だーっ!!寝言かうわ言がしんねーけど、ちょっと黙れーっ!」

「・・・・・・う?」
「おまえは旅行に行く前のお母さんか!」
「にー・・・・・・ちゃん?」
「そうそう。お兄ちゃんだよ。はい、正広くん、お尻出してねぇ〜」
「もり・・・・・・せんせ・・・?」
ぼけーーーっとしているうちに、二人がかりでひっくりかえされ、いきなり注射される。

「いって!えっ?何、どして!?誰!どこ!?」
「錯乱してる錯乱してる」
森が笑いながら注射をしまい、正広は相当あられもない姿のまま、何、何?と首をぶんぶん振りまわし、頭痛に襲われる。
「イタタタタタタ・・・・・・・」
「インフルエンザだね。注射したから、熱はひくと思うけど。栄養とって、寝てれば大丈夫です」
「すいません。往診してもらっちゃって」
「いえいえ!」
にっこり笑った森は、その後、由紀夫にあれこれと指示をして、薬を渡しかえっていく。
残されたのは、何がどーしてどーなったの!?と混乱している正広と、薬はいつ飲ませるんだ?と薬の袋をじっと見ている由紀夫だけ。

「・・・なんで兄ちゃん、いるの・・・?」
「なんでって。正広が出社してこない、電話しても誰も出ないって連絡が入って」
「え、電話なんて、なってない・・・」
「聞こえてなかったんだろー。俺も電話したけど、留守電のままで誰もでないし。みてみろ、このメッセージ件数」
「・・・みえなぁい・・・」
さっきの注射がやたらと痛くって、動けない。
「赤ちゃんか!」
パジャマを直されて、上からぎゅうぎゅう布団を被せられ、正広は回らない頭で色々考える。

「・・・ひょっとしてぇ、俺ってぇ、何日か、寝てた?」
「丸1日半くらいじゃねぇか?」
「・・・しーちゃんの、えさ、は?」
「ちゃんとやりました」
「そっか・・・、よかった・・・」
「よかねーだろ!俺は北海道から飛んで帰ったぞ!」
「あー・・・ごめぇんなさぁいぃ〜・・・」
「なんで病院行かなかったの!」
「なんで・・・って・・・」

それは、痩せるかもしれないと思ったから。

「にーちゃん・・・!」
「ん?」
「体重計、のりたい・・・」
「はぁ!?」
由紀夫の手のひらが、びしっ!とでこピンくらいの勢いで額に当てられる。
「大丈夫か!?」
「体重計・・・、のせ、て・・・」
何かに憑り付かれたようにそればかりを言う弟に根負けして、体重計を持ってきた由紀夫は、正広をベッドから引っ張り出し、その上に立たせてやった。
「あー。おまえまた痩せたぁ?」
「えっ!ほんとにっ!?何キロになってるっ!?」
「44。おまえ、まずいってそんな痩せちゃあ」
「44・・・?45だったら、1.65で割ったら・・・」
ふらつく体で筆算をすると、26。
「あーん、ダメぇー!!」
「何が!」
「俺、絶対、隠れ肥満だ、もぉん!」

はい?

この溝口正広くんが隠れ肥満ですと?
この人が隠れ肥満だとすれば、奈緒美だの、ジュリエット星川だの、典子だの、千明だのは一体どうなる訳?

「なんで隠れ肥満よ」
「だって、計算したらそうだって・・・」
「計算〜?」
「うん。あのね・・・、体重÷身長、なんだって。身長は、mで表わすの。だから、俺だったら、44÷1.65」
「それがどうなったらいいんだって?」
「22」
「・・・・・ってそれ、身長×22が体重って事か?」
「・・・・・・?そうなの?」
「身長×22・・・、俺だったら、1.75×22・・・、って38.5kg!?」
「嘘ぉ!」
「おまえだって165だから、かけて・・・36.3kgだぞ!そんなのおかしいだろ!」

そう言われて、はじめておかしいことに気づく。
「だって、でも・・・・・」
情報紙を取り出して、兄に渡す。
「体重÷身長だって・・・・」

渡された紙をじーーっと見ていた由紀夫に、正広はそれを見て、ダイエットをしようとした事を訴える。食事抜いても落ちなかったから、リンゴダイエットをして、そのうち具合悪くなったから、これで痩せると思って・・・と話している最中。

ゴイン!

珍しく本気のゲンコツが、正広の頭頂部を襲った。
「いったぁーーーーっ!」
「これ、なんだ。これ!」
「これ・・・?これ、ってメートルで、って意味じゃないの?」
「mか?これ。2だろ」
「2?何、2って」
「二乗だろ!身長を二乗して、体重を割れって事だろ!!」
「?????」

体重÷(身長)

「ジジョウ?」
「だから、身長×身長だよ。・・・おまえ、そうか。学校行けてないのか」
「うん。・・・あ!でも見たことある!kyon
?」
「それ!」
「ってことは、えーっと」
再度計算しはじめた正広は、「16!」と声をあげた。
「痩せすぎだっつーの!」
「そっか!」

よかった!

と思った瞬間から正広の意識は途絶えている。

急激にきいてきた薬のせいで、くてくてっ、とその場に崩れた正広を、由紀夫は慌ててベッドに運び入れた。
そして半日後に目を覚ました正広には、厳しい、厳しい、食事指導がつけられることになったのである。

いいよな・・・・太れって言われるんだもんな・・・・・。

なお、それから10日後、きちんと届けられたアブ・シェイパーは、腰越人材派遣センターに寄贈され、社員たちの腹筋から火を噴き出させている。

つづく 


先週さっぱり効果がでないと言ったが、結果的に今もその通りだ。
実は先日、外出から帰ってきて、トイレに入り、それから体重計に乗ったところ、いっきに3kg減!目標体重まで後数百グラム!まで来ていて、嘘!と目をうたがった。さらに、体脂肪率もがくん!と落ちていて、きゃーー!私に何がおこってるのー!!って感じだったのだが。
15分後、もう1度はかったら、さっぱり元のままだった。
・・・・・・・。
どゆこと!?
痩せるお茶は、体調によってはおなかがゆるくなることがあります、とかかれているものだが、私はゆるくなる。ふふ・・・。平気、平気さ、痩せるのなら!!そもそも私は、誰にでも効くってものがとことん効かない女。なのに、ゆるくなることがあります、ってのがどんぴしゃだけでも珍しいさ(笑)

さて、今回の話のネタ提供は赤い怪獣ちゃん。怪獣ちゃんはひろちゃんと違い、ちゃんと高校まで出てますが、二乗が理解できなかった女(笑)電話で私にこの計算はおかしい!と訴えてきて、しばらく、おかしいわそれ!!と一緒にエキサイトしていた私が、ほかの本なんかで見たのを思い出し。それ二乗ってかいてあるやろ、と注意したものに他ならない(笑)
怪獣ちゃぁーん!がんばれぇー!まけぇるなぁ〜、力ぁのぉ、限ぃりぃ〜・・・♪

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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