天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編38話前編『お餞別を届ける』

前回までのあらすじ
「春である。4月1日から新しい生活に入る人もいるだろう。そして、3月31日をもって、今までの生活とお別れする人もいる。春はそんな季節だ」

yukio
 

3月31日。
98年度も終わりである。
由紀夫も大変忙しかった。何か、俺の使い方間違ってんじゃねぇか!?という使われ方をしている。
どーして、隣のビルに引っ越しするけど、文房具を一緒に持って、とかそんな話に!?
しかし忙しく、殺気立ってる某社総務課OL軍団に逆らうこともできず、何度か2つのビルを往復する。
「いやぁーん、ありがとうございましたぁ〜!」
ようやく由紀夫が男前だったんだ!という事を思い出した仕事熱心なOLたちの、今更ながらの猫なで声に苦笑しつつ、由紀夫が仕事から解放されたのは、そろそろ夕方5時を過ぎようか、という頃だった。

今日はずいぶん花を見るな、と由紀夫は思った。
普段は、全然花なんかと縁のなさそうな、おっさんたちが持ってるのを見ると、あぁ、転勤とか、退職とか、そういう送別の花なのかと気がついた。

由紀夫の進行方向にあるバス停は、多くの女性で賑わっていて、そのうちの一人も花を抱えて、周囲の人たちと話している。
送別される人なのかな、と由紀夫は思った。それか、送別する人に花を渡す人。
その集団がバスに乗り、がらんとしたバス停を通り過ぎようとした由紀夫は、あるものを見つけて立ち止まった。

 

「うわ!」
「すごー!!これって、いくらくらい入ってんですか!?」
「20万くらい入ってそうだろ」
由紀夫がバス停で拾ったもの。それは、現代風のピンクに、えらい派手に飾りのついた熨斗袋。
「ねぇねぇ、由紀夫ぉ、これでぱーっと行きましょうよぉ〜!」
しがみついてくる千明をバックで追い払いながら、じっと睨む。
「おまえ、これ俺が貰った御祝儀とかって思ってる?」
「違うのぉ〜?」
「『御餞別』って書いてあんだろが!拾ったんだよっ!」
「そんな字読めなぁ〜い!」

バス停にあるベンチの下にこの熨斗袋は落ちていた。
妙に分厚い熨斗袋の、後ろにはメモが挟まっていて、それに書いてあったのは、「7時にレピシエ」という文字。

「だから、届けようと思って」
「届けるんですか!?」
心の底から意外そうに野長瀬がいい、正広も一瞬追随しそうになったが、ぐっとこらえて、両手を合わせる。
「神様は見てるんですよ、野長瀬さん」
「えー!神様より、20万〜」
「入ってねぇよ!」

熨斗袋、というのは、その袋自体に格がある。
この熨斗袋なら、10万はいれなきゃつりあいが取れないといったものである。
まぁ、ピンクで女の子用、ということろを考えれば、20万というのはもちろん大げさ。でも、5万くらい入ってても、バチはあたらないくらいの熨斗袋の中身は。
「2万」
「2万かぁ〜・・・」
野長瀬は、2万と、神様の罰について考え込む。
千明は2万あったら、春のお洋服が買える!と勢いづく。
そして由紀夫は、正広と典子に、「レピシエ」の場所は?と尋ねた。

「レピシエ・・・、レピシエ・・・」
「紅茶専門店でレピシエってありますけど・・・」
「送別会、紅茶専門店でやるかなぁ・・・」

タウンページだの、インターネットだの、田村だのを使って調べているうちに。

「あ!」
「何、ひろちゃん」
「レストランがある!」
「え?あ、ホントだぁ〜」
タウンページ班の正広が探し当てたのは、フランス料理、の範疇に入っている店。
「場所は・・・っと」
由紀夫はメモも取らず住所を記憶して、とっとと出て行こうとする。
「えー!!由紀夫ぉ〜!2万もあったら、おいしい御食事できるよぉ〜!」
「おまえ、いい死に方しねーぞ!」

薄闇の中、由紀夫はフレンチレストラン、レピシエに向かった。

 

レピシエは、細い通りにあって、こじんまりとした、いかにも女の子の好きそうなレストランだった。
これなら、あの女の子たちが送別会しててもなんの不思議もない。
窓から中を覗き、結構繁盛している店内を、バス停にいた女の子たちの求めて視線を動かす。
が。
「ん〜?」
いないぞ、と思った由紀夫は、はっ!と気がつき、バカじゃん?と自分を叱る。
メモには、『7時にレピシエ』と書いてあったんだから、まだ来てねんじゃん。

「あのぉ〜・・・」
と、おずおずとした声がかかった。
由紀夫の背中側、レストランのドアから、正広とあまり変わらないくらいの若い男の子が顔を出している。
「お一人ですか?お待ち合わせ?」
「あ、いえ・・・:、あ、あの〜」
「はい?」
制服を着ているから、従業員なんだろう。店の外に出てきた彼は、くるくるとよく動く目で由紀夫を見る。
「今日の7時に、団体さんの予約って入ってますか?」
「7時ですか?えぇ、入ってますけど。なんか、送別会なのでって」
ビンゴ!
「多分、その人たちだと思うんですけど、お渡ししたいものがあって」
「それじゃ、預かりましょうか?」
お願いします、と喉元まで出た時、それはまずいか!と思う。

餞別を落としていた、とうのは、すでに貰っている人間にしろ、渡す前に落としたにしろ、全員の前で渡すのはあまりにまずい。
由紀夫にだって誰が落としたのかまでは解らないが、でも、見ていれば誰が落としたのかくらい見当がつくかもしれない。

「・・・7時頃に、またきます」
「そうですかぁ?」
「はい。どうも、すみません」

すっかり怪しい者になってそうだ・・・。

そう思いながら、一度、レピシエの前を離れた由紀夫だった。

つづく 


レピシエ、というと、紅茶専門店。そして、私の好きな小説に出てくるレストラン。なので今回はレストランを使っちゃいました(笑)そのレストランには、バンビちゃんみたいに可愛い男の子がいるのさ!

送別会ってのが2週に渡るってのも、変だけど、忙しいのよぅ〜(泣)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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