天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編38話後編『お餞別を届ける』

前回までのあらすじ
「バス停に落ちていた餞別を持って、由紀夫はレピシエというレストランに向かった。その店にはバンビちゃんのように可愛い店員がいた。どうやらシェフも男前のようである。そういう店があるのだ。いや、とにかくあるのだ(笑)」

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由紀夫は、その卓越した記憶力で、バス停にいた女の子たちを思い浮かべていた。
8人いて、花を持っていた子は、ミニフレアスカートのスーツだった。夜になったら寒ぃんじゃねぇか?と思ったのを思い出す。
後、髪の長い眼鏡をかけた子がいた。小柄な子と、ちょっとぽちゃっとした子と・・・、あ、背の高いのもいたな。ロングのコートが似合ってた。
どの子が落としたのか。
1分やそこら見ただけの8人の動きを追いながら、送別されるのは、やっぱり花を持ってる子なんじゃないか当たりをつける。
会話の中心にいつもいて、回りからしきりに話し掛けられていたし。

時計に目をやると、6時58分。そろそろその子たちがレピシエにやってくるころだな。
由紀夫は時間潰しに入っていた喫茶店を出た。

その店は青山にあって、いかにも女の子の好きそうな可愛い店構えだった。由紀夫が店の前まで行くと、さっき話した従業員が顔を出してにこっと笑った。
「来られてますよ」
「あ、そうですか」
どうぞ、とドアを開けてくれたので、ぱっと中を覗いて。

「ん?」

「あの、壁際の団体さんですけど」
壁際には、確かに団体さんがいた。しかもきっちり8人。
「7時の団体さんは、あちらだけ、ですか?」
「はい」
店は満員で、これ以上1人のフリー客も取れる状態ではない。
「・・・すいません。間違ったみたいです」
「え?」
壁際の8人は、男女4人ずつで、女性の中に、由紀夫が見た女の子は一人もいなかったのだった。

えー!?
ってことは、なんだぁ?
・・・紅茶専門店?

「正広ぉ!」
『あ、にーちゃん、もう見つかった?』
「いや、レストランじゃなかったみたい。なぁ、典子が紅茶専門店とか言ってなかったか?」
『なんか、言ってたよねぇ・・・。俺、もううち帰って来てて、だから典子ちゃんに電話してみる!』

正広からの電話を待つ間に、公衆電話でタウンページをチェックしようと思いつき、公衆電話を探している間に電話が入った。
さすがに我が弟、優秀じゃん。と思った通り、電話は正広から。

『今、青山だよねぇ』
「そう」
『渋谷にレピシエがあるんだって。紅茶専門店。住所は』

そうしてやってきた紅茶専門店レピシエ。
女の子で溢れかえっている店内をじっと眺めると。
「いたじゃん!!」
ちょっと感動。
バス停で見掛けた女の子たち8人が、一人も欠けることなく、店の奥のテーブルで楽しそうに話している。
花を持っていた子がやはり主役らしく、いわゆるお誕生日席に座っていた。

由紀夫も男一人で店に入り、店員、他の客の視線を思いっきり浴びながら、奥のテーブルが見える席につく。
和気藹々としている様子を見て、ほんとに仲よさそうだなと思った。
例えば、ここで誰かが餞別を落としていたとして、落としませんでしたか?と持って行ったとしても、信じられない!と笑われるくらいで許してもらえそうだけど。
でも、そんなに仲良くしてるのなら、逆にそんな失敗をしたことを知らせたくないような気もした。

「いらっしゃいませ」

いやーん、おっとこまえー!!
にっこりと微笑みを浮かべながらメニューを持ってきたウェイトレスは、厨房内での過酷な精神戦での勝者だった。
長いこと勤めて来てよかった・・・っ!
バイト歴4年半。これほどの男前が一人でうちの店に来る事があろうとは!
メニューを開く指の長さ、綺麗さにうっとりし、大抵の(彼女に連れられてきた)男の人と同様に、メニューを見て大きな目を見開く。
紅茶専門店として、店員でも全種類制覇した人はめったにいないだけのメニューを備えているのだから。

「えー・・・、と」
この店で、コーヒーとか言ったらぶっ飛ばされるんだろうな・・・。途方もないメニューの量に圧倒されながら、由紀夫はとりあえず、最初のページから、最後のページまでを眺め、そして、また最初のページに戻り、

「アップルティ」

と我ながらつまらない注文をした。

あぁ、なんていい声なのかしら!
ウェイトレスは、注文のつまらなさになど一切気づかず、ウットリとメニューを繰り返す。
この後、紅茶を運ぶのは誰!バトルにも絶対勝ってやる!と深く心に刻んで。

そんな女同士の闘いが起こっているとは知る余地もない由紀夫は、8人の女の子の様子をうかがいつづける。
断片的に聞こえる笑い声。
それぞれが楽しそうにしている中、主役の女の子が席を立った。
バッグを手に、トイレに向かっているのだが。

『あ・・・』
自分たちの席に背中を向けた彼女は、ふっと表情を暗くしたのだ。寂しそうな顔になる。

席に残った子たちは、まだ楽しく会話を続けていて、その対比が鮮やかだった。
彼女がいない間、席に残った女の子は、自分たちが渡したのであろう小さな花束を眺めてあれこれ言っている。
お花と、お餞別・・・。
って、普通一緒に渡すものか。

お花とお餞別を貰って、仲の良さそうな子たちと別れるのは辛いんだろうな。

春は、出会いもあるけど、別れもある季節だ。

なんとなくしんみりした由紀夫は、餞別を落としたのは彼女に違いない、と当たりをつけ、席を立った。

 

「あの」
彼女は、店の奥で、バックを覗いていた。
「はい?」
振り返った彼女の目に、おぉ!という色が浮かんだが、いつもの事なので放っておく。
「これ、落とされませんでしたか?」

「・・・・・・・・・・・・あっっ!!」

ぱっ!とそれを手にした彼女は、雲の向こうから太陽が現れたような笑顔になった。
「これ・・・!どこにあったんですか?」
「あの、バス停に」
「バス停?じゃあ、わざわざ届けに?」
「えぇ、店の名前があったので」
「うわ、嬉しいぃ〜、よかったぁ〜っ!」

小躍りせんばかりに喜んだ彼女は、にっこりと由紀夫に告げた。

「今日、私、お財布忘れててー、この店私のおごりなんですよー。もー、皿洗いして帰らなきゃいけないとこでしたー!」
よかったぁーっ!!!
と喜ぶ彼女に、送別される暗さは一切なかった。

それもそのはず。
別に彼女は送別される人ではなかったのだ。
送別されたのは彼女の上司で、今時バブリな上司は、あちこちからもらった餞別の一つを、じゃあ、これは君たちにあげるから、お茶でも飲みなさい、とくれたのだった。
「じゃあ、あの花は!?」
「私、誕生日なんで」

紛らわしいことすんなー!!

「俺のアップルティーも払っとけ!」
「払いますよ!ってゆーか、ご一緒しません?」
「え?」
「いいじゃないですか!お一人ですよね?そりゃもう、さっきからみんなで、気になって気になって!」

紅茶しか飲んでいないはずなのに、並みの酔っ払いよりテンションの高い8人の女に勝てる男がいるのだろうか。
いる。
早坂由紀夫は勝てる。
勝てるのだが、今回は敢えて勝負を長引かせた。

『えっ!合コン!?ほんとですかっ?』
「ホントホント。すぐ来な」
『うわ!どんな子がいるんです!?』
「可愛いよー。普通のOLさんが8人も!急いでなぁ〜」

「ちょっと信じられない!すごいカッコいい!」
「あんたよくやったよ!よく誘った!」
「へっへぇ〜!餞別も落としてみるもんだねっ!」
「「「「「「「落とすなよ!!!」」」」」」」
Vサインを出した彼女と、その彼女を四方八方から殴った7人は、電話をしにいった由紀夫が、野長瀬となって帰ってくることをまだ知らない。


春は別れのシーズン。うちの会社のうどん好きの、いかにも田舎のおっちゃん、というにふさわしい、讃岐弁丸出しのラブリィなおじちゃまが、東京本社に転勤になった。心配である。東京に美味しいうどんの店があるのか・・・。おじちゃん・・・!おじちゃんには教わりたいことがまだまだあったのに!お客さんが来た時に、効率よくうどん屋を回れるルートを教えて欲しかったのに!おじちゃーん!!モデルコースを教えてぇ〜(笑)!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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