天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編39話後編『編みぐるみを届ける』

今回の理由
「編みぐるみブームだ。編みぐるみは相当可愛い。だから、編みぐるみネタなのだ。という理由で作り始めた編みぐるみだが、赤い怪獣も編みぐるみを始めた。しかし彼女は基本がない上に、いきなりオリジナル作品を手がけているため、完成の目処はまるでたっていない(笑)」

yukio
 

「これどーすんの?」
「だから、1段編んだら、編み終わりにこのリングをいれとけばいいんだよ」
「これ?」
由紀夫に渡されたリングを、正広はしげしげと眺める。
「でも、どうやって?」
「どうやってって、端を編み目に通して・・・」
「これ・・・」
「円・・・?」
由紀夫は頭の上に「?」マークを10個ほど飛ばし、それが入っていたケースを眺める。
「・・・棒針編み」
「あ」

「に、兄ちゃん・・・っ」
黙ってしまった兄に、正広は慌てて声をかける。
「これ、すきま、開けちゃえばっ?だって、こんな細いのに、ニッパかなにかで、ぱちんっ!ってやっちゃえば一緒だよ!俺、やってみるっ!」
なんと健気な・・・!
そのフットワークの軽さに、いけない、こんな事じゃ、と、反省した由紀夫は、自分も輪を切ろう、と、リングに手を伸ばす。
「ん?・・・正広ーっ!」
「何ー?」
どこかな、どこかな、とがさがさ押し入れによつんばいで上半身を突っ込んでいた正広が振り返る。
「わりぃ。あった」
そのケースには、2種類のリングが入っていたのだった。
「もぉ〜、兄ちゃぁ〜ん」
「すみません、正広さん。あ、正広さん、喉乾いてらっしゃらない?お飲みになりたいものは?」
「ビール」
「500万年早うございますわ。正広さん。ささ、ウィンダーインゼリーを召し上がれ?」
「もー、これ、俺が買ってきたヤツじゃーん!」
「まぁまぁ。腹減ってると力でないときもそりゃやっぱある訳よ」
「・・・似てる・・・!」

得意の声真似でけむに巻き、よっこらせ、と、由紀夫は座り直した。
「指に2回巻いてぇ」
「巻いてぇ!」
「かぎ針通してぇ」
「通してぇ!」

編み、編み、編み・・・・・・・・・・

「・・・ごぉ、・・・ろぉくっ!それでリングっ、って兄ちゃん、何それ!」
「だって、どこが編み目かわかんねんだから、しょーがねーだろぉー?」
たった6目編んだだけの、小さな、小さな毛糸の固まりは、かなりぶさいくな事になっていた。由紀夫は、編んだ編み目一つ一つにリングをつけていっていたのだ。(毛糸の固まりと、リング1つが同じくらいのサイズだと思えば、目安となるでしょう(笑))
「兄ちゃん、ホントにO型ぁ?」
「そーゆーおまえは、ほんっとにA型か?」
「何が不思議かなぁ!」
この段階でははっきりしないが、どうも正広の編み目は整っているとは思えない。
「だぁいじょうぶだよ!こっから、サイズが大きくなって、それで、綺麗に整うだって!」
「とにかく、数ちゃんと数えろよ。そのリングまでに12目だからな!」
「いくらバカでも、二桁の数字ぐらい数えられますぅ〜。いーち・・・、にぃーい・・・」
「正広」
「さぁ〜ん・・・、し、しぃ〜い・・・、な、なにぃ〜」
「今、何時だい?」
「ナンドキ?」
「あ。いや、ごめん」
「変なの」
と、照れた様子の由紀夫に不審な視線を送り、改めて手元に目をやった正広は。
「あぁーーっ!!」
と叫んだ。
「もー!これ、何目目よぉーっ!」
「変だよな、ナンメメって」
「でもナンメメ、だよね・・・」
「何目目か・・・。だから、俺みたいに、リングいれてきゃいんだろ!」
「俺、さっきまでなんて言ってたぁ!?」
「4目」
「さっすが兄ちゃんっ!」

夜更かしな正広と、夜更かしな上、負けず嫌いな由紀夫が、夜通し編みぐるみに取り組んだのは言うまでもない。

「どーよ!」
「眠い・・・」
「眠いな・・・」
そろそろ夜が明けそうな頃、由紀夫は揃ったパーツを正広に見せ、疲れた呟きを返される。
「あー、なんか、ちゃんとできてるっぽーい」
「おうよ。正広くんは、どーですかぁー?」
「俺、とっくだもん。数揃ってるもん」
「数はな・・・」
「なぁんでぇ〜っ!可愛いじゃーんっ!」
正広のパーツは山盛りになっている。大きい、小さい、取り混ぜて、かなりな数。
「頭はこれでしょー?胴体でしょー?・・・あれ。手は、どれにしたっけ・・・」
「それ絶対綿いれらんねーぞ」
「ん?あ、大丈夫!こっちからいれるし!」
小さいサイズの編みぐるみだったため、手、足などはさらに小さい。ただでさえ、小さく、小さく編めてしまう正広なので、上にいけばいくほど狭まってしまって、綿をつめられるだけのスペースがない。
「こっちって、どっち?」
「こっち」
「・・・・・・」
しかし、一段目がきちんとできていなかったので、手足の先は、いい感じに開いていた。
「にーちゃんのは、味がないっ」
作ったものは、作った分だけ、ぜーんぶとっておいている正広とは違って、由紀夫はうまくできなかったものを、ぽいぽい捨てていっている。
手元に残っているのは、これは!と由紀夫が納得したものだけ。
「味がないって・・・」
「手作りの味は、ちょっと歪んでたり、とかそーゆーとこにあるんだもんねっ!兄ちゃんのは味がないっ!」
びしぃっ!と指差した正広は、突然ふわぁ〜・・・と後ろに倒れた。
「正広!?」
驚いた由紀夫は慌てて駆け寄る。
「・・・!・・・寝てるだけかい」
ベッドに半分頭を預けて、くかー、と寝ている正広だった。

よいしょっ、と正広をベッドに寝かせ、パーツを縫い付けるには・・・とベッドに座って考えていた由紀夫は、

「あんたたち何で家にいんのよぉーっ!!!!」

という奈緒美のどなり声で目を覚ました。
「寝てたか・・・!」
5時まで起きていても、10時まで寝てたんじゃあ睡眠時間、いつもと一緒、ってとこだった。

 

「あー、疲れたっ、ひろちゃーん、お茶ー・・・、って・・・何やってんの!?」
一人で出かけていた奈緒美が帰ってきて、事務所の様子に目を見開く。
「お帰りなさーい」
さっと立ち上がった正広は、腕をぐるんぐるん回しながらお茶室に入っていった。
「由紀夫!何よそれ!」
「あー?編みぐるみ」
「いやー、楽しいなぁ〜、懐かしい」
「懐かしいって何よ、野長瀬」
「僕ねぇ、小さい頃、かぎ針編み、よくやったんですよねぇ〜」
「「その顔でぇ?」」
奈緒美、由紀夫から同時に言われ、ぶー、という顔を野長瀬はするが、編み目を数え間違わないように目線を落とす。
「はい、奈緒美さん」
にこっと笑いながら、奈緒美の机に日本茶を置いた正広は、肩いてぇ〜・・・と首をコキコキさせながら、自分の席に戻る。
「どう?典子ちゃん、できた?」
「でぇきぃなぁいぃ〜っ!」
「んー?これ、どこまでできたのー?」
えっらそうに言いながら手を出す正広を見て、由紀夫は喉の奥で笑う。
「ちょっと、由紀夫っ!だから何やってんのよっ!」
「編みぐるみだっつーの」
「編みぐるみねぇ・・・。ちょっと貸しなさいよ」

電話がならなかったのをいいことに、その日の午後、腰越人材派遣センターは、腰越編みぐるみセンターを化し、どうにかこうにか、6体の編みぐるみが完成した。

 

「この千明のは、すげーよな」
小学生の純ちゃんと待ち合わせた場所で、由紀夫は3時過ぎにやってきた千明が、正広のパーツと合わせて、無理矢理つくりあげた編みぐるみを見て嘆息する。
「うーん。これはね、これは、俺勝ったよね」
「勝負の対象にしようってとこが間違いだろ(笑)」

事故から始まった編みぐるみ作りだったが、かなり面白かった。
正広の編みぐるみは、水色一色で、黒い目がくるくる動くもの。由紀夫は昨日は、淡いピンク一色で作っていたが、二色に挑戦。鼻と、手足の先を水色にした編みぐるみにした。
「いいよなー、兄ちゃんの編みぐるみ、ツートンだもん」
正広も二色づかいにしてみたかったのだが・・・。色替えができなかったのだ。ただでさえ細い腕や足で、色まで替えるのはもう全然不可能だった。
「純ちゃん、許してくれるかなぁ〜・・・」
心配そうに手の中の編みぐるみを見下ろす正広の頭に、ぽん、手を置いて、由紀夫はくしゃくしゃと髪をかき回す。
「出来はともかく、愛だけはこもってるんだから大丈夫だよ」
「そっかなぁ・・・、ってなんで出来はともかくっ?見てよ、ほらっ!」
千明、典子の作品を並べて、ほらほらぁっ!と顔の前に編みぐるみをつきだしてくる正広。由紀夫はごく落ち着いた物腰で、奈緒美の編みぐるみを差し出した。
「うー・・・!」
「まぁ、年寄りには勝てねぇよなぁ〜」

「あ。おにいちゃん!」
背中から声がして、早坂兄弟が振り返ると、小さな女の子が走ってきていた。
「あー、純ちゃーん!」
ひょいと膝とついて、走ってくる女の子を待ち受ける正広。
「あ、バンドエイド、ポケモンだ」
「うん。ピカチュウ好きだもーん」
ニコニコと笑う純ちゃんに、正広は、じゃーん!と自分の作った編みぐるみを見せる。
「あ、クマちゃん・・・」
「あのね、これ・・・。ちょっと首とか曲がっちゃって、あれなんだけど・・・。俺が作ったクマちゃんなんだ。純ちゃんがもらってくれたらって思って」
「わー・・・」
「後ね、こっちのお兄ちゃんが、あ、このお兄ちゃんは、俺の兄ちゃんなんだけど、兄ちゃんが作ったのがこっち」
「ピンクのクマちゃーん!」

純ちゃんの小さな手の中は、次から次へと現れる編みぐるみですぐに一杯になっていく。
「どう、かなぁ・・・」
おずおずと聞かれて、じーっと手の中を見ていた純ちゃんは、ぱっと顔をあげて、にこっと笑った。
あっ!と正広もにこっと笑う。
二人は、可愛い笑顔でニコニコと笑いあった。
よかった、気に入ってもらえたんだ、と思った時、純ちゃんは、きっぱりと言った。

「あのね。純ちゃん、きのうはくまちゃんあみぐるみがほしかったんだけど」
「うん・・・?」
「きょうはね、ピカチュウがほしいの!ぴかちゅうのあみぐるみがほしいのー!」

「ピ・ピカチュウ!?」

「うん、ピカチュウ!ピカチュウのあみぐるみー!」

「正広ー、がんばれよぉ〜」
呆然とする正広にひらひらと手を振って、由紀夫は自転車に足をかける。
「いやー!待ってよぉー!ピカチュウってどーやって作るのぉーっ!?」
「ピカチュウ!ピカチューっ!」

やっとこさクマさんまで到達した正広の編みぐるみ人生は、これからも続くであろう様相を呈してきはじめた。

がんばれ正広!負けるな正広!編みぐるみ界は正広の登場を待っている!!

かな?


案の定、ひろちゃんが可愛くないっ!と赤い怪獣から、めちゃめちゃに叱られました。なので、今回は、四つんばいで押し入れに頭を突っ込むひろちゃんをサービスカットとしていれてみました(笑)
ひろちゃんファンのあなた。思い浮かべてください。
イカと焼きそばのハーモニー。
じゃなくて。四つんばいで押し入れに頭をつっこんでいるひろちゃん。衣装は皆様の御自由に(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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