天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編41話前編『他人の荷物を届ける』

前回までのあらすじ
「ゴールデンウィークなので、正広は遊びに行きたかった。しかし由紀夫は混んでるからイヤだと思った。兄の説得が功を奏し、正広は、FFに、ポケモンスナップを与えられて、嬉々として兄にしたがったのだが、その二人の邪魔をしたのは一台の緑の中を走りぬけてく真っ赤なポルシェ(古〜っ!)だった(笑)」

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「はーっ!乗れたぁ〜っ!」
「大丈夫かぁ?」
どうにかこうにか飛び乗った東海道線の中で、正広は大きく息をつき、その弟の手をつかんだまま上り階段を駆け上がった由紀夫は、少々眉間に皺を寄せて、座り込んでいる正広を見下ろす。
「う、うん・・・ケホ・・・っ」
「ほら、もー・・・」
なんどか咳こむので、背中をさすると、額に軽く汗をかいている正広は、にこっと笑った。
「大丈夫、だって・・・」
「まったく、なんでそこまでして・・・」

 

早坂兄弟は、奈緒美に誘われるがままに湯河原にきていた。くそバカ高い温泉に泊まり、日がな一日温泉だの、散歩だの、温泉だの、散歩だの、持ち込んだプレステだの、NINTENDO64だのをしながら自堕落に過ごした。
「自堕落すぎよぉっ!!」
その部屋の襖をあけた奈緒美は叫んだものだ。
「カーテンくらい開けなさいっ!布団!布団あげてもらって!あぁ!自分たちであげなさいよっ!なんで1日浴衣なのっ!」
「温泉だからぁ〜」
横になっていた由紀夫は、文庫本なんぞを見ていたのだが、襖を開けている奈緒美を見上げる。
「奈緒美だって浴衣じゃん。ん?浴衣って、男女別だっけ」
「ばっかねぇ、これは自前よ、じ・ま・えっ」
高級旅館なだけに客室においてある浴衣もいいものらしいが、奈緒美はその上自前でまで準備していたらしい。
「いいから、なんとかしなさいよぉー!ここはあんたたちの家なのぉー!?」
「いい旅館ってのは、自分ちみたいにくつろげるもんじゃないの?」
「あーもー!あー言えばこう言うぅ〜っ!!」

「あ。もしかしておそば屋?」
ゲームに一段落ついたのか、正広が顔を上げる。
「そうそう。そろそろ行ってみなきゃ!」
「だから。だから来ねぇって」
「あらー、解らないじゃない。ねぇ〜」
「ねぇ〜」
ばたばたっ!と浴衣からTシャツ、ジーンズに着替える正広は、由紀夫を見て首を傾げる。
「兄ちゃんは?」
「え〜、俺は〜」
「早く着替えないと」
「行くのかよぉ〜」
「行くんだよぉ〜」

こうやって、木村拓哉が行ったとかいうそば屋に行ったり、木村拓哉が来ただかいう海岸に行ったり、しながらゴールデンウィークは過ぎて行く。

しかし。
「いないねぇ、木村拓哉・・・」
「そりゃいねぇだろ」
ついに5月5日、GW(一般的には)最終日、正広はがっくりしたように声を落とす。
「あー!もー!あたしこっちに残るわっ!」
「はぁっ!?」
カラカラ、と下駄の音をさせる奈緒美は、握りこぶしを作っていた。
「絶対!見てやるわ!木村拓哉ぁ!」
「いや、もう5月5日だし」
「あたしは休む!明日も明後日も休む!そう言っといてっ!」
「俺らは帰れってか!」
「当たり前でしょー!」

「うわー・・・」
部屋に帰ってきた正広は、その惨状に、さすがに眉をひそめる。
「やっぱり、ベッドメイクとかお断りしたの失敗かなぁ」
「ベッドはねぇけどな」
好きなだけゴロゴロしたかったため、部屋にはあまり立ち入ってもらっていない。
しかも、兄弟で温泉に、というのが珍しいのか、仲居さんたちが入れ替わり、立ち替わりやってくるのもうっとうしかったし。
「ってことは、自分たちで片づけか〜」
「ゲームと、布団かたづけて〜」

バタバタと、部屋の片づけをしていた正広は、はっ!と顔を上げる。
「温泉!」
「え?」
「温泉いかなきゃ!今日帰るんだったら、露天風呂!」
「あのな。手がしわしわになるほど、毎日、毎日入りつづけて来ただろ」
「だって、もうこんな温泉いけないよぉ〜?」
「正解。いっとこ」

露天風呂は、正広のお気に入りだった。
熱くなりすぎないのがいいらしい。
由紀夫は由紀夫で、奈緒美の金だと思って日本酒を注文し、ちびちびやっている。
「あー・・・。気持ちいいねぇ〜・・・」
「のんびりしたなぁ〜・・・」
ゆっくりと暮れ行く青い空を眺める。深い青に移り、そしてオレンジに変わるのだろう。
「いいお休みだったねぇ〜・・・」

と、しっとり、いい雰囲気になったところで。

「あんたたちいいかげんにしなさいよぉーっ!!!」
脱衣所の外から、奈緒美の怒鳴り声がした。
「チェックアウト何時だと思ってんのよっ!もう1泊分の料金取られたでしょーがぁー!!」
「・・・明日も休むヤツがなんでそんな事を・・・」
「明日も明後日も休むんだって。いいなぁ〜」
「11連休じゃん」
「え?」
「11連休」
「なんで?」
「なんでって・・・。29日から休んでるだろ。29・30・1・2・3・4・5までが今日。明日、明後日休んで、6・7・8・9で、11連休」
「8・9って?」
「・・・?土・日」
「明日、明後日やすんだら、土日なの?」
「・・・大丈夫か?」
露天風呂の岩にちょん、と座っている正広の額に手を当てる。
「明日って、月曜じゃないの?」
「・・・木曜」
「・・・じゃあ、今日水曜!?」
ざばっ!とお湯の中に立ちあがった正広は、足を滑らせて、倒れそうになる。
「あわわわっ!」
「バカ、あわてんな!」
片腕をひっつかんで立ち上がらせて、ぴしっと叱る。
「兄ちゃん、水曜っ!?」
「そう。水曜」
「やっばーい!」
「何が・・・」
「今日、はぐれ刑事純情派あるじゃん!そんで、GLAYの特番も!帰らなきゃ!」

・・・そんな理由で・・・?

しかしテレビっ子の正広に、ビデオとっとけ、という理由は通用しない。とにかくリアルタイムで見たい弟だった。

そこから大急ぎで片づけて、帰省客でごったがえす東海道線に飛び乗り、デッキに座っている。
温泉に浸かった後、ダッシュさせたものだから正広は疲れて眠ってしまい、由紀夫も立ったままうつらうつらし、そして東京についた。

「ん・・・?」
がくん、と電車が止まった感触で由紀夫が気がつく。
「正広」
「んー・・・?」
「降りるぞ」
「う・・・ん・・・」
目が開いてない正広は、自分の荷物を持って、よいしょと立ち上がり、よてよてとホームに降り、また1度座った。
「この椅子、いいよねー」
「あぁ、椅子・・・。椅子!?」
デッキに入って、正広は、何かに座っていた。床じゃあなかった。
「正広!おまえ、それなんに座ってんだ!?」
「何?何って・・・。・・・何?」

はっ!と立ち上がった正広は、結婚式の引き出物でも入ってそうな大きな紙袋を見て呆然とする。
「これ、何っ?」
「人の荷物だ!戻せ!」
が、時遅し。ドアは閉まり、電車は発車してしまった。
「うそぉ」
「やっべー・・・。正広窃盗だ」
「窃盗!?」


ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか。私は、細切れな遊びっぷりでした。いいんです。カレンダー通りの休みなんですから・・・。いいんです。カレンダー通りも休めない人が多いんですから(笑)
温泉か・・・。
行きてーよなー・・・(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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