天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編41話後編『他人の荷物を届ける』

前回までのあらすじ
「ゴールデンウィーク中、温泉で自堕落に過ごした溝口正広。しかし乱れた生活は、乱れた精神を宿すらしく、正広は電車の中で、他人の荷物を窃盗してしまうのだ!どうした正広!グレたのか正広(笑)!」

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GW最終日。早坂兄弟は、とある駅のホームで見知らぬ大きな荷物と一緒にいた。
寝とぼけた正広が、勝手に椅子にしていた人の荷物を、勝手に列車から降ろしてしまったために。
「んー、どーすんべ」
由紀夫が呟いた時、真剣な顔で正広は、兄の顔を見上げる。
「兄ちゃん」
「おぉ。どーするよ」
「・・・俺って人でなしかなぁ」
「は?」
キュ、と眉を寄せ、難しい顔の正広は、小さく言った。
「8時、40分・・・」
「ん・・・?あ」
「だ、だってぇ〜っ!」
「そんっなに!あの馬面が好きかっ!!」
「どーして、リーダー城島でなくなっちゃったのかなぁ〜っ!」
正広の大好きなはぐれ刑事純情派まで後20分。駅に預けるというのも事情を説明するのが大変だし、そもそも中身が何かも分からないし、だと言うのに、はぐれ刑事純情派を見たがる弟がいる!
「正広ぉ〜・・・」
「俺っ!ちゃんと後で調べるからっ!」

そんな訳で、窃盗したまま、早坂兄弟はうちに帰りついた。
結果的に、はぐれ刑事は野球で遅れており、正広はGLAYの特番を喜んでみることになった。
そしてはぐれ刑事が終わったのが10時半。
ふぅっ!と息をついた正広は、無表情でソファに座っている兄を見て、びくっと後ずさる。
「調べる、っつったなぁ〜」
「う。うん・・・、し、調べる、よ・・・?」
怒ってる、怒ってる・・・?と思いながら、びくびくと正広は大きな袋をのぞきこむ。中には、ぎっしり箱が詰っていた。
「・・・温泉まんじゅうだ」
「温泉まんじゅう?」
弟の自主性を尊重し、一切手をつけていなかった由紀夫が始めて中を見る。
「どーりで重たい訳だよな」
勢いで持ってきた正広の代わりに、家まで運んだ由紀夫がため息をついた。
「11、12・・・、18箱!1・5ダースの温泉まんじゅう!しかも20個入り!」
「うわぁ〜・・・」
「温泉まんじゅう360個!」
「聞きたくねぇ〜・・・」
「しかも日本全国どこの温泉場にもあるだろう、異常に日持ちのするヤツ!」
「半年とか持つヤツだ」
「絵に描いたような義理土産・・・っ!」
あまりにも義理すぎる!とこぶしを固めた正広に、由紀夫は冷静に聞いた。
「そんで、どーすんの?」
「えっと。まず、ここの土産物屋に電話するっ!」
袋には、土産物であろう、電話番号が印刷されていた。
「それから、駅に電話して、間違えてもってきちゃったけど、問い合わせがあったかどうか聞く!」

お。なかなか冷静じゃん。
そう思いながら、由紀夫は軽くチャチャをいれる。
「土産物屋はもう閉まってんじゃないの?10時半だし」
う。と詰った正広は、じゃあ、駅っ!と、受話器を取った。

「特に連絡ないって」
「うーん。どの駅で降りたか解んねーしなぁ〜・・・」
「でも、これだけの荷物だもん。どこかの駅には問い合わせしてるよねぇ」
「・・・そりゃどうかな」
「え?」
「盗られた、と思ってたら、わざわざ届けたりしないだろ」

そ。そうか・・・。
もっと凝ったお土産ならともかく、ザ・義理みやげなら、また新しいのを買うかも・・・!
「うわーん!兄ちゃんどーしよー!」
「どーしよーって!」
「いっくらみんなが大食らいでも、温泉まんじゅう360個なんて食べきれないよぉ!」
「証拠隠滅かぁーっ!!」

 

冗談はさておき、翌朝いつもより早く出社した正広は、会社から土産物屋に電話をかけた。(よいこのみんなは、かいしゃからしようでんわなんかしちゃ、いけないぞ!)

「おはようございます。早くからすみません。ちょっとお伺いしたいことがあるんですが・・・」
奈緒美に鍛えられた丁寧な口調で、昨日、温泉まんじゅうを18個買った客の事を覚えていないかと聞いてみたら、電話に出た女性は、昨日、一昨日とお休みだったという。
『昨日でたものに聞いてみますね』
と言ってもらって、いくらなんでも、温泉まんじゅう18箱も買う客なら、絶対誰かが憶えているはず!と確信を持つ。

「でもねぇ、ひろちゃん」
事情を聞いた典子は、冷静に口を挟んだ。
「ハワイで、マカデミアナッツチョコを30箱買ったって、誰もそんな人の事、憶えてないと思うけど」
「のっ、典子ちゃんっ!」
きっ!と典子を睨んだ正広は、そんなはずない、そんなはずない・・・と自分に言い聞かす。
もし見つからなかったら、360個の温泉まんじゅうが宙ぶらり・・・!そんなの、そんなのダメだぁ〜っ!!

しかし。
会社は連休明け、社長休み、と意外にごたついた。
「FAX、きましたー、って奈緒美さんいないからぁ〜、野長瀬さんっ!」
「はい、ありがと!えーと、これは・・・」
「ひろちゃん、3番!」
「あっ?」
「お土産もの屋じゃなーい。由紀夫さんに仕事の依頼」
「あ、はーい」
由紀夫は、朝からさくさく仕事をこなしていて、事務所には3人だけ。たまってた新聞やら、郵便物やらを仕分けして、FAX見て、返事出して、電話して、電話受けて、あーでこーで、こーであーで。

「うわーん!午前中、はやーい!」
「なぁんか、仕事したって感じぃ〜・・・」
ようやく一段落したのは、12時15分前。
「ねぇ、野長瀬さぁん、疲れたぁ!」
「疲れたって、典子ちゃん。そりゃ、みんな疲れてるし」
「ランチ食べにいく元気なぁ〜い!」
「あっ!僕もないでぇ〜すっ!」
で・ま・えっ!で・ま・えっ!と出前コールをされて、なぜかそういう時には料金を払わされてしまう野長瀬は、よよ、と泣き崩れながら出前メニューを差し出す。
「典子ちゃんは、なぁ〜んにしよっかなぁー!」
「えっとね、えっとね、ひろちゃんはねー!」
カワイコぶった二人が、きゃいきゃいメニューを眺めているところで、事務所のドアが開いた。
「いらっしゃいませぇー!」
明るくはきはきご挨拶!を実行した正広は、驚いて立ち上がる。
「稲垣先生!」
「お久しぶり」
「お久しぶりですね!って2週間前にも会いました?」
しーちゃんをつれて、またまた稲垣アニマルクリニックでだべったのは、それくらい前だっただろうか。
「そうだね。だから久しぶりって」
・・・それって「久しぶり」か?
小さく正広は首を捻り、稲垣医師も同じ角度で首を傾げる。
「お兄さんに仕事をお願いしたくって」
「あ、そうですか!じゃ、どぞ!」
応接セットに案内し、お茶の準備、と思うと、稲垣医師の目は、典子の手の出前メニューに釘付けになっている。
「・・・召し上がります?」
「え?あぁ、そういえばおなかすいたかなぁ」

えぇえぇ、それを払うのは私なんでしょお?

野長瀬はお空のお星様に、せつない、と小さく訴えた。

 

「先生は、GW何してたんです?」
「僕?僕は、学会があって」
「学会!カッコいいー!」
「お医者さんって感じー!」
結局、ピザと、ラーメンと、ギョウザと、和風懐石膳と、散らし寿司と、4つの店からそれぞれに注文したランチを囲んで、楽しいランチターイム!
話題はもちろんGW中の話である。
「野長瀬さんは?どーせ家でごろごろしてたんでしょー!」
「そ、そぉゆー典子ちゃんは、どーなの!お金ないお金ないって言ってたくせに!」
「んー?だって、お金なんかなくったってぇ、女の子はいいじゃなーい?男が出してくれるんだしぃ〜」
典子はケラケラ笑いながら、お箸を振り回す。
「いいなぁ、女の子ってぇ」
「なぁに言ってるのよ!ひろちゃんと由紀夫さんなんて、社長がスポンサーで温泉でしょー?」

「温泉?」

稲垣医師の目が、キラ、と光る。
「温泉に行ったの?」
「あ、はい」
「どこ?お土産は?」
「え?」
「お土産」
「お、お土産?」
「僕らにお土産はないの?」
「え、えとぉー・・・」

稲垣医師たちどころではなく、だーれにもお土産なんか買っていなかった正広は、おたついた。
野長瀬、典子の目もじとっとこっちを見ている。

「あ!電話っ!」
鳴った電話に飛びついた正広は、待っていた土産もの屋からの電話に安堵する。
「はい、溝口です。あ、解りましたか?はい、すみません。えっと?若い、男の人で、細くて、黒髪で、軽くウェーブで、重たそうに荷物を持って、後ろ体重・・・・・・・・・・・・・・・」
ばっ!と振り返った正広は、稲垣医師に叫んだ。
「先生っ!?学会って、熱海っ!?」

「そう。熱海。なんで?」

 

「・・・ということは、僕のお土産を盗んだのは、ひろちゃんって事?」
「盗んだなんてぇ〜・・・」
「ひどいっ、あたしたちにお土産も買わずに、人のお土産盗むなんて!あたし、ひろちゃんをそんな子に育てた覚えないわっ!」
「ひろちゃん!自首しましょう!お上にも慈悲はあります!」
うぇーん!そんなんじゃないのにぃーっ!

稲垣医師のお土産は、患者さんのパパ、ママへのお土産だった。その重さに、とても席までもっていけず、ここは日本、治安はいいし、だーれがわざわざこんな重たいもの、とデッキに放置していたら無くなって、ちきしょー!盗られたー!と早坂由紀夫に奪還を依頼しにきたところだった。

「ひろちゃん、じゃあ、示談にしよう」
「示談?」
「僕は、そーだなぁ〜・・・。ワインとチーズでいいや。国は任せるね」
「あたし!あたしはねっ、ちょっとほしい香水があるんだー!」
「僕はあれかなー、干物がいいですねー、地のものがいいですよねー」

にいちゃぁん・・・!
心で助けを呼ぶ正広だったが、彼のスーパーマンはまだ登場しないらしい。

<その頃の早坂由紀夫>

とある裏技で温泉まんじゅうを買ったのが稲垣吾郎医師であることをつきとめた早坂由紀夫は、重たい温泉まんじゅう18箱を稲垣アニマルクリニックに届けてすんだところである。
とある裏技は、どうやら秘密だ(笑)


GW明けはちょっと仕事が暇かもしれない。でも、6月からしぬほど忙しくなるんだ。知ってるんだ・・・。あたし、知ってるんだ・・・。シクシクシク・・・!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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