天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編42話前編『モジュラージャックを届ける』

前回までのあらすじ
「正広が窃盗した温泉まんじゅうは、よりにもよって稲垣アニマルクリニックの稲垣医師のものだった。稲垣医師の荷物を窃盗するとは・・・!恐れ知らずか!溝口正広(笑)!!」

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腰越人材派遣センターは、1階に駐車場、2階にオフィスがあるというなんということのない事務所である。
しかし当然エレベータはなく、みんな元気に階段を上がってやってくる。
「おはよーございまーす!」
その日、元気に一番乗りをしたのは早坂兄弟の弟、正広だった。自分でカギをあけたにもかかわらず元気なご挨拶はなかなかいい感じ。
窓を開けて、部屋の空気を入れ替える。
5月の太陽は明るく、風は涼しくオフィスを流れていく。
「兄ちゃん、何飲む〜?」
自転車を止めてあがって来た兄に尋ね、アイスコーヒーという答えを受けて、氷を取り出す。
「今日、ちょっと涼しいね」
「そーだなぁ」

そのうち、他の社員たちもやってきて、和やかに、楽しく、仕事は始まるはずだった。

のだが。

「静かぁ〜・・・・・・・・」
典子が机に突っ伏して、声をあげる。
「今日、全然電話ならないねぇ〜」
「ホントだねぇ」
「こう静かじゃ、私用電話もできやしない」
「それはうるさくてもしちゃいけないんですっ!」
野長瀬に言われて、うるさそうな顔をした典子は、銀行!と出ていった。
おそらく2時間は戻ってこないと推察される。(よいこのみんなは、しごとちゅうにちょうじかんぬけだしたりしちゃ、いけないぞっ!)

「あ、お客さん用のお茶がなかったや・・・。どーしよ、典子ちゃんに買って来てもらおうかな」
「電話してみれば?」
ポルシェに突っ込まれ、ぶっつぶれたレンタルビデオ屋から勝手に持ってきたビデオを見ていた由紀夫にいわれ、うん、と正広は受話器を取る。
正広は、その受話器を耳に当てて、首を捻った。
「ん?」
首を捻ったまま受話器を戻し、もう一度取り上げ耳に当てる。
「ん?ん??」
「どした?」
アタック・オブ・ザ・キラートマト、という超くだらないビデオを見ていた由紀夫は、何度も受話器をあげたり、下ろしたりしている、正広に声をかける。
「電話、おかしいんだけど・・・」
「電話?」
はりぼての巨大なトマトが、滑車を丸見せしながら坂を転がり落ちてくるシーンから目を離し、由紀夫は典子のデスクの電話を取り、片方の眉だけをあげる。
「・・・断線か?」
「えー?どしたんだろー」
正広はモジュラージャックを引っ張るが、デスクとデスクの間で絡まってるらしく、すぐには出てこない。
「野長瀬ー、奈緒美のとこの電話は生きてっかぁ?」
「え?・・・あ、はい。社長の直通は大丈夫ですねぇ」
「じゃあ、こっちだな」
由紀夫は、よいしょ、と典子の机を引っ張り、デスクとデスクの間を覗き込む。
「うーうわっ」
「す、すごい・・・?」
「すげぇ〜、ここまで大掃除してねーもんなぁ〜」
さまざまなケーブルが入り乱れ、そこにホコリが積もっている禁断の空間。
「腐海だ・・・!」
「それだったら、その地下で、水は綺麗になってるんだねっ!」
モジュラーケーブルの先がどうなってるのか確認しようと体を乗り出しながら正広は言い、バランスを崩し。
「っぶねっ!!」
「ひろちゃんっ!?」

腐海に頭から突っ込みそうになり、兄と野長瀬に助けられる。
「・・・っくりしたぁ〜・・・!」
「びっくりしたのはこっち!野長瀬、早くひっぱれって!」
とっさにデスクとデスクの間に身を投げ、腐海を渡す橋と化した由紀夫は、その背中で弟の頭を支えつつ声を上げる。
「大丈夫ですかぁ〜?」
足首を持った野長瀬は、よいしょ、と正広を机の上に座らせる。
「兄ちゃんごめーん!」
「いいけどよぉ・・・・・・」
「あっ!」
「何ぃ!」
「モジュラージャック、どっか行った・・・」
「何おぅ〜っ!?」

正広の手から落ちたモジュラージャックは、腐海に落ちて、行方不明と化してしまっていた。
「どーなってんだよ、ったく。あ、典子のひっぱりゃいいのか」

と、早坂兄弟&野長瀬はがんばって、ついに腐海から、モジュラージャックの端を見つけ出したのだ!
「やった!」
「やったね、兄ちゃんっ!」
「由紀夫さんっ!」

「・・・何やってんの・・・?」

日本全国津々浦々、大物との交渉はあたしに任せな、の腰越奈緒美が呆れ顔で立っていた。

 

「モジュラージャックが切られてる?」
「まぁ、切られてるって言うか、この状態だから千切れたとも言えるけど」
奈緒美の顔の前にかざされたモジュラージャックは確かに千切れている。
「なんで!?」
「さぁ・・・」
「わざわざこんなとこのケーブル切るなんて・・・」
腰越人材派遣センターに思い沈黙が流れる。
「と、とりあえず、新しいモジュラージャックを準備しなきゃ」
「俺、買ってきます」
事務所を出た正広だったが、なんだか不気味なものを感じていた。いったい何が起こっているのか。

ふと振り向いた腰越人材派遣センターは、なんだかどんよりとしているように見えた。

 

「腐海を掃除しないと」
痛ましい顔で由紀夫は言い、奈緒美も野長瀬も重々しい顔でうなずいた。
そして、野長瀬の手に小さなホウキと、化学雑巾が渡される。
「えっ!?」
「野長瀬ちょうど青いスーツだし」
「えっ?えぇっ!?」
「そのもの、青き衣をまといて。ナウシカだよ」
「まーったく、そこまで汚れてたなんてぇ〜!」
「俺なんですかぁ〜?」

どんよりしている腰越人材派遣センターで、野長瀬はさらにどんよりするのだった。


腰越人材派遣センターにせまる魔の手・・・!闘え腰越人材派遣センター一同!負けるな腰越人材派遣センター一同!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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