ACT.緑の地球を救え




   舞台中央にネライ。ベンチ。
   女1ベンチに板付き。
   女1がノートパソコンを抱えて座っている。

女1 ガチャ。


  パソコンを起動させる「緑の地球を救え」オープニングテーマ。
  画面から漏れる光に顔を照らされる女1。キーボードをたたく。
  間。
  しばらくして同じベンチに座る女2。

女2 ねえ。
女1 うん。
女2 砂漠?
女1 うん。砂漠。
女2 アマゾンが。
女1 うん。
女2 アマゾン。
女1 見たいの。
女2 うん。どうなっているかなって。
女1 こっちも大変なんだから。
女2 そうだけど。
女1 違うでしょ。
女2 何が。
女1 何がって。
女2 アマゾンの熱帯雨林。
女1 うん。開けるよ。
女2 うん。
女1 開ける、待ってて。
女2 え。
女1 ああ。
女2 こんなになってる。
女1 これ、伐採。
女2 だから誰か見てなきゃ。
女1 人手がないんだよ。
女2 誰か見てなきゃだめなんだって。
女1 しかたないじゃない。焼き畑農業やめさせないとだめなんだよ。
女2 海外青年隊送って農業の指導してたのに。
女1 手っ取り早く食料送ればいいんだよ。
女2 それじゃなんにもならないよ。
女1 現にこんなに緑が減ってるじゃない。
女2 それじゃさあ、砂漠化だってさあ。
女1 何。
女2 難民キャンプの燃料で木を切るから、進むんじゃない。内戦やめさせないとダメなんだよ。
女1 外交はやってるよ。調停団だって送ったし。
女2 送っても話し合わないと。
女1 あれは敵が飛行機落としたんだよ。知ってるでしょ。
女2 敵がいるのはわかってるよ。
女1 アマゾンには敵が来ないから。
女2 敵は来たよ。
女1 来たの?
女2 すっごい高い値段で木を買ってる。
女1 アマゾンにも敵がいるのか。
女2 もう、やめようか。
女1 何を。
女2 もう、ダメだよ。無理だよ。
女1 だって、地球が。
女2 テスト近いし。
女1 テストって。いいじゃん、テストなんて。
女2 もうさあ、ダメなんだよ、地球は。
女1 ダメじゃない。
女2 昨日、担任に言われた。まだお前地球防衛軍やってるのか。
女1 言わせとけば。
女2 地球救うのもいいけど、自分の成績救えって。
女1 言わせとけば。
女2 明日、英語のテストなんだけど。
女1 うん。
女2 英語全然ダメなの。知ってるでしょ。
女1 うん。
女2 帰って勉強するよ。
女1 地球とテストとどっちが大事なの!


  明かりがつくと教室。女3、男1。

女3 何してんの。
女1 雰囲気でないから。
女3 会議?
女2 会議って?
女3 新しいやつの。
女1 違うよ。遊んでただけ。
女2 ゲームだけだと面白くないから。
男1 パソコン?
女1 うん。
男1 ゲーム?
女1 うん。シュミレーション。
女2 緑の地球を救えっていうの。
男1 どんなの?


  パソコンをのぞき込む。

女3 始まってると思った。
女1 まだ。
女3 急いできたのに。
女1 佐藤、ずっと休んでたんだって?
女3 うん。ずっとじゃないけど。
女1 風邪?
女3 いや違うけど。
女2 髪、切ったんだ。
女3 うん。
女2 送っちゃおうか?今の分。
男1 どんなゲーム。
女3 またやってたの。あれでしょ。
女1 うん。
男1 送るってどうして?
女1 あのねえ、地球の環境破壊を防ぐ。
女2 なんか、マジで防いでる気になるように、お芝居してみたり。
女1 参加型なんだけど、地球防衛軍の隊員になって、次々と壊されていく地球の環境を復元するんだけど、政治とか経済とかいろんな要素があって難しいんだ。
女2 なんかやってないともう一つ入り込めないんだ。
女3 ゲームくらいでおおげさなんだよね。
女2 ゲームくらいと言ったな。
男1 いつからやってるの?
女1 わたしたち入ったの、けっこうあとの方。
女2 なんか主催者も結構見放しててさあ、勝手にやってる。
女1 なんかもう、20人くらい。全国で。だから忙しいの。20人で全世界カバーしてるから。
女2 敵もいるし。
女3 うん。敵ね。
男1 何?敵って。
女2 だれか参加してる人で失敗するようにデータ送ってる人がいるんだよね。
女1 悪意あるよね。あの、飛行機落としたの絶対敵だよ。
女2 あれ、誰なんだろうな。あたまくる。
男1 佐藤さんもやってるの?
女3 うん。まあ。
女1 誰なのかね。
女2 ホントはそういうことできないように誰がやったとかチェックできるはずなんだけど。
男1 これさあ、買ったの?
女1 うん。
男1 いつ買った?
女1 去年。でもそのときも型落ちだったから。
女2 データ送るよ。
男1 どうやって?
女1 ここ。PHS入ってるから。カード式の。
男1 そんなのあるの?
女1 うん。早いよ。
女2 佐藤も持ってるよね。
女3 うん。
女1 佐藤の、パソコンもすごいし。
女3 そんなことないよ。
男1 何が早いの?
女1 データ送るの。
女2 けっこう量あるよ。データ。
女1 あ、ホントだ。
男1 あのさあ、六校時からやってただろ。
女1 自習自習。
男1 あのあと、来たよ、高橋。
女2 え!自習じゃなかったの?
女1 あーらら。ま、いいか。
女2 えー、やばい。
女1 いいじゃん。
女2 やばいよ。どうしよう。いまやばいよ。刺激したくないんだよなあ。
女1 なんか、変。
女3 でもさあ、これ、使える。
男1 使えるかも。
女1 何に?
女3 そのゲーム。
女2 どうしよう。
女1 まだ言ってる。あんなにさぼってるのに。
男1 政治経済のレポート。
女1 なにそれ。
男1 高橋が出したの。宿題。
女1 レポート?
女3 あのねえ、今、世界のねえ。なんだっけ。
男1 いま、世界が抱えている問題を一つ取り上げて、解決の手段を考える。
女1 張り切ってる。高橋。レポートの宿題出したら全部読まなきゃならないのに。
女3 そのゲームのこと書いたら。
男1 そうそう。正義の味方としてはさあ、地球の危機を広く訴えなきゃ。
女1 環境問題?書く人多いよ。きっと。でさあ、みんな小さいころは家のそばの小川がきれいだったって書いてさあ、ダメだよね。小論文で裏の小川のこと書いちゃ。
女2 それさあ、いつまで?
女3 来週。
女2 来週かあ。
男1 ちょっとレポートしてていい?始まるまで。
女3 始まるかな、とか言って。
女1 さすがに今日あたり始めないとやばい。いいよ、わたしたちまた地球救ってるから。
女3 借りてきたよ。イミダス。
女1 イミダス?カバンからイミダスダス。
男1 くだらねえ。
女1 いいの。くだらないの好きなの。
女3 ねえ、ベンチ。しまっとけば?狭いよ。
女1 いいの。狭いの好きなの。
女2 ○来週かあ。
男1 ○来週なんかあるの?





  女1、女2、ベンチでゲームを始める。女4入ってきて後ろからのぞき込む。

女4 これはなんですか?
女1 ノートパソコン。
女4 人工知能ですね。
女2 人工知能?
女4 彼の。
女1 彼?
女4 動力はなんですか?
女2 動力?
女1 ていうか、電池だけど。バッテリー。
女4 電気ですか。ぼくは原子力かと。
女2 使うわけないじゃん。被爆しちゃうよ。
女1 そういえば原子力発電所、どうなった?
女2 なんか近所で変な野菜できちゃってさあ。
女1 どんな。
女2 種無しアボガド。
女1 いいじゃん。
女2 よくないよ。
女1 食べてみれば?
女2 食べられるわけないでしょう。パソコンの中だよ。
女4 動きたいときはどうするんですか。
女1 動く?
女2 持って歩くんだよ。
女4 じゃ、自分では動けないんですね。ぼくは飛ぶのかと思って。
女1 飛ぶわけないでしょ。困るよ、飛んだら。
女4 動けないのは可哀想です。
女2 可哀想かな。
女4 ぼくの仲間を大切にしてくださいね。
女1 仲間?
女4 ねえ、君。聞こえるかい?
女2 おいおい。
女4 売られて来たんだね。
女1 確かに。買った。
女4 でも悲しむことはないんだよ。たとえ主人がこんな人でも。
女2 えらい言われようだな。
女4 いつかきっとロボットにも、人間と平等に生きることができる社会が来るよ。そのときにはぼくが迎えにくる。
女1 ロボット。
女4 心の狭い人間たちは、ロボットの能力を嫉妬してるんだ。
女2 うん。そうかも。
女1 納得するな。
女4 お父さん。ぼくはまた人間に受け入れてもらえませんでした。いったいいつになったら人間とロボットが仲良くできる日がくるんでしょうね。
女1 何言ってるの?


  女4服の下はアトム。カツラをかぶる。

女4 ぼくは帰ります。御茶ノ水博士のところへ。


  男1「鉄腕アトム」を歌い出す。

空を越えてラララ星の彼方
ゆくぞアトムジェットの限り

女4 さよなら。
女1 飛べよ。
女2 十万馬力。
女1 飛ぶんだろ。
女2 ジェットだろ。
女1 飛ばないんなら出てくるな。
女4 知ってる?この歌谷川俊太郎が作詞したんだよ。
男1 えー、ほんと?
女1 ねえ、作ったの?
女4 徹夜で。
女2 今日は凝ってたなあ。
女3 着込んでたんだ。
女1 ねえ、家から?
女4 うん。だって学校で着替えて、着替えてるとこ見つかったら恥ずかしいじゃん。
女2 今も恥ずかしいよ。
女3 なんかやってみたい。
女2 おいおい。
女1 身内で二人は多いかなって。
男1 そう?
女1 おい、こいつやりたがってる。
女4 アトムっていいよねえ。
女2 なんか別の楽しみないの?
女1 楽しみっていえばさあ。人生なにが楽しみかっていうと。
女3 人生?
男1 何?人生って。
女2 とうとう人生まで語る?
女3 オヤジ。
女1 バカボンのパパがそこから。
男1 え?
女1 こにゃにゃちわって出てきたら。
女2 出てくるわけないじゃん。
女1 みんな、奇跡を信じないの?
女3 そんな奇跡やだ。
女1 あの鼻毛どうなってるのかなって。
女4 その趣味はわかりにくいよ。
女1 お前が言うな。だいたいここにわかりやすい趣味を持ったやつがいる?
女4 そんなことないと思うけど。
女1 いいから早く服を着ろ。ああ、バカ田大学へ行きたい。
女3 バカ。
女2 いいじゃん、早稲田行けば。
女1 早稲田行けるかなあ。山崎君は行けるよね。
男1 行けないよ。
女4 ワセダねえ。あ!
女1 何?
女4 太田!
女2 うん。
女4 どうしてここにいるの!
女2 うん。
女1 いいじゃん。いても。
女4 今日、補講だって言ってたじゃん。出なかったの?
女2 うん。
女3 なに?
女4 出なきゃ単位落とすって言ってたじゃん。
女3 えー。出たほうがいいよ。遅れても。
女2 うん。
女3 謝ればいいじゃん。
女2 もうさあ、補講にも出られないっていうか。
女4 何それ。
女2 謹慎だから。
女4 何、謹慎って。
女2 タバコ。
女4 バカ!
女1 見つかったの?
女2 うん。
女1 どこで。
女2 なんか、先生来て。体育館の裏。
女4 どうしてこんなときに。
女2 そんな格好でシリアスな顔してもさあ。だれかチクった。たぶん。
男1 原稿どうするの。
女1 原稿はいいけどさあ。
男1 別によくないけど。
女2 ごめん。最低だね。
女3 …タバコ吸うんだ。
女2 うん。明日から謹慎かな。会議が4時半ごろ終わるから職員室に来いって。
女1 しょうがないよ。こっちは何とかしとくよ。
女2 なんかしょうがないね。勉強はダメだわ。謹慎になるわ。授業もサボるし不良だこれじゃ。あ、あたし、不良だったんだ。
女4 勉強は、しないからじゃん。中学のときはできたじゃん。
女2 中3がピークってやだよね。中3がピークの人生って。なんでできたのかな。分かんない。あ、面白かったから。
女3 勉強面白いなんてあるの。
女2 みんな面白いからやってるんじゃないの?
男1 おれは面白くないけど。
女2 面白くないの?
女4 いいから、もう4時半だよ。行った方がいいよ。
女2 くれぐれも部活と地球のことを頼む。
女1 なに言ってるの。
女4 早く行きなよ。
女2 それでは太田一等兵、行って参ります。
女4 バカ。
女2 じゃ、当分会えないけど。さらば。


  女2、出ていく。





女1 バカだなあ。
女4 太田、タバコ吸ってたんだ。
女3 高木も知らなかったの?
女4 なんだかなあ。罪悪感ないのかな。
女1 あるよ。出さないんだよ。…だれか地球救う?
女4 救う救う。
男1 金魚じゃないんだから。
女3 太田は不良じゃないよね。
女4 当たり前だよ。
女1 高校デビュー?
女3 中学の時、成績よかったの?
女4 高校、いっしょになると思わなかった。
女3 ふうん。
男1 この字なんて読むの?
女3 えーと…おせんじゃん。環境汚染の汚染。
男1 ああ。
女4 ワセダ。
女1 レポートやってるの?
男1 うん。
女1 ていうか、何書けばいいか分かんなくない?
女3 なんでも書けば…よくなくない?
女1 世界とかがあ抱えている問題?
女3 うん。
女1 世界とわたし、接点ないし。
女4 ていうか接点という漢字書けないし。
女3 世界には問題がありまくり。
女1 なんか、イケてなくなくなくない?
女4 ムリするなよ。
男1 カラオケ行きたいなあ。
女3 何?急に。
女1 何で小論文なんか書くんだろうな。別にわたしたちが六〇〇字くらい何か書いても解決する訳じゃないし。問題っていうけど、問題なんてないよ。
女3 あるじゃん、いろいろ。
女1 クイズです。さて、何でしょう。
男1 えーと…分かるか!
女3 切れのないノリつっこみでした。
女1 つまりさあ、何の意味もないんだけどさあ、小論文なんてこんなもんでさあ、問題だと思ってないのに無理矢理問題ひねくりだしてさあ。
女3 オヤジが語りだした。
女1 何が言いたいかというと。
男1 (女3に)今日、カラオケ行かない?
女1 おい。
女3 どこの?
男1 いったん家帰って。
女3 めんどくさいよ。
男1 制服じゃ飲めないでしょ。
女3 飲むの!
男1 飲むよ。
女3 飲ませて何かする気ね。
女1 バーカ。
女3 ダメ。飲めないから。
女4 あれ。飲んでなかった?打ち上げの時とか。
女3 学園祭?少し。でもあんま好きじゃない。
男1 少し飲んだ方が盛り上がるって。
女1 太田のタバコのこと言ってられないよ。
男1 小論文「荒れる十代」。どうだ。
女1 禁煙用のパイプとか効くのかな。
女4 太田にやろうかな。
女3 松下にやれば。似合うよ。
男1 どうして?あ。オヤジだから。やば。言っちゃった。ま、いいか。怒る?
女1 思考の過程を全部口に出されると余計腹が立つ。
女3 合法ドラッグだったらいいかな。
女4 罪にならないから?
女1 罪にならないのはいいか…な?
男1 だって罪にならないから。
女3 シンナーって犯罪?
男1 犯罪。合法はね、せき止めシロップ一気とか。でも中毒性がある。高いし。
女4 一本飲むの。
女3 二〇〇〇円ぐらいするんだよね、あれ。
男1 うん。あとはね、バナナ。
女4 バナナでいっちゃうの?
女1 トライアスロンの選手なんかどうするの?ラリったまま走ったり泳いだりするの?
女3 ラリる?
女1 ラリれば、ラリるとき。
女3 オヤジ。
男1 あのバナナの皮あるじゃん、あの裏側の白いとこ。
女3 あの、しぶしぶのとこ。
女4 なに、しぶしぶって。
女3 ちょっとしぶしぶ系入ってる。
男1 その白いとこ削って、水に溶かして、バットに広げて。
女4 バット?
男1 うん。オーブンに入れて。乾かす。粉になるからそれを飲む。
女3 効くの?
男1 やってみようか。


  男1鞄からバナナをとり出し皮をむく。

女1 何でバナナあるの。
男1 オーブンはないから…こここそぎとって…食べる。
女3 どう?


  女3に勧める男1。
こわごわなめる女3。

男1 まずい。
女1 効くわけないじゃん。
女4 ねえ。
女1 何?
女4 バットって野球の?
女1 あとで教える。
女4 うん。
男1 あと、キノコの茎どんぶり一杯とかさあ。
女3 わたしも知ってる。カエル。ゲンカクガエル。背中にね。
女1 うん。
女3 イボイボあってね。
女1 うん。
女3 ネバネバ出てね。
女1 うん。
女3 それ吸うの。わあ。
女1 やめろ!もう変な話やめ。
女3 山崎はどうしてそんなことばかり知ってるの?
男1 うん。それは…小学校三年のときだった。ぼくは…
女3 待って。
男1 何。
女3 長くなる?その話。
男1 今小学校三年だからあと八年。
女3 じゃいい。
男1 聞きたくない?
女3 長い話やだ。
女1 はい終わり終わり。
男1 このあと面白くなるんだけど。
女3 聞きたくない。
女4 「荒れる十代」にする?
女1 教室のゴミ箱がタバコの吸い殻で燃えてるとか、そういう高校あるらしい。
女4 えー。
女1 女子はみんなお水でバイト。みんなパパいて。
男1 けっこうさあ、そんなことしてて大学受かっちゃったりして。
女1 うん。で、同じ大学になったりして。
男1 で、友達になったりして。
女4 ある日分かっちゃったりして。
女3 「私の高校の時のパパがあ」とか言われたりして。
女1 「あ。メール入った」って。
女3 「誰から?」って聞いたら「うん。パパ」とか言われたりして。
女4 パパって言っても別のパパだったりして。
女3 バカ。あ。
男1 なに?
女3 ごめん、ちょっと。
女1 あ。メールだ。
女3 …うん。


  女3、後ろを向いてメールを読む。

女1 パパじゃないのお?
女3 そんなもんいるわけないでしょ!…お姉ちゃんだった。帰り遅いからって。いっといてって。
女4 おねえちゃんかあ。お姉ちゃんって言っても別のお姉ちゃんだったりして。
女3 なに言ってんの。さあ、レポートレポート。
男1 レポートって言っても別のレポートだったりして。
女3 バカねえ。…なんか飲もうか。買ってくる。何がいい。
女1 CCレモン。
女4 CCレモンって言っても別のCCレモンだったりして。あたしコーラ。
男1 コーラって言っても別のコーラだったりして。
女3 バカなこと言ってないで。早く120円。
男1 おごりじゃないの?
女1 そんなわけねえだろ。
女3 早く120円。
男1 120円って言っても別の120円だったりして。
女3 何言ってんだか。


  女3、120円を集める。

女1 何言ってんだかって言っても別の何言ってんだかだったりして。
女3 バカねえ。


  女3、部屋を出る。





女1 電話しにいったんじゃないの?
女4 電話って言っても別の…あ。お姉ちゃんじゃないな、あれは。
女1 別のお姉ちゃんでもなくて。
男1 やるわね。
女1 そうならそうと言やあいいのに。
女4 いいんじゃないのー。
男1 まあね。いいんだけどねー。
女4 ちょっとくやしい?
男1 そんなことないよ。
女4 あ!
女1 あが多い。
女4 明日さあ、漢字テストでしょ。やってある?
男1 げ。
女1 漢字テストって、あれ?
女4 あそこの漢字で漢字テストやってほしくないよなあ。(教科書を取り出して)どれどれ。あーだめだ。わかんねえ。
男1 ちょっと見せて。おー。最初の一文字目から読めねえ。
女4 漢字弱いもんね。
男1 うん。
女1 虎になるやつでしょ。
男1 虎だ!虎だ!お前は虎になるんだ!
女4 そんなとこあった?
男1 違う?違うよね。知ってたんだ。
女4 自尊心と…これなんて読むの?
男1 おれに聞くなよ。
女4 ワセダ行けないね。
男1 おれ、理系だから。
女1 羞恥心だよ。
男1 高木にないやつだ。
女4 あるよ!
男1 ないよ。あるやつがアトムの格好するか?
女1 そのとき、目の前を一匹のウサギが…
男1 ウサギは一羽って数えるんじゃないの?
女4 ぴょんぴょん。
女1 駆けすぎるのを見たとき。
女4 遅刻遅刻。急がなきゃ。お茶会に遅れちゃう。
女1 自分の中の人間は姿を消した。がおー。
女4 わー。虎だー。
男1 羞恥心、ないな。
女1 がおー。
女4 助けてー助けてー。


  女3ジュースを抱えて見ている。

女1 がおー。
女4 助けてー助けてー。
女1 がおー。
女3 バカ。
女1、4 テヘッ
女3 はい、コーラの人。はい。CCレモン。
男1 ありがとう。


  女3、男1椅子に座ってジュースを飲む。

女3 虎になっちゃうんだよね。
女4 うん。あたし、三回読んでやっと分かった。
女3 なんかさあ。自分が違うものになっちゃうってどんなもんかな。
男1 何?突然。
女4 CCレモンCCレモン。(歌う)
女3 さっき変なクスリのことしゃべってたからかな。なんかそんな気になってさあ。クスリでいっちゃうってそういうことでしょ。
男1 人ってさあ、簡単に狂うっていうか。クスリじゃなくても。
女4 ほんと?
男1 ダブルバインドって言うらしいんだけど。
女1 出た!つまんないことばっか知ってんのな。
女3 ダブルバインド。バインドってなに?
男1 拘束。
女4 こうそくってあの靴下、ワンポイントはいいけど線が入ったのはダメってあれか?
女1 そうそう。
女4 ボケたらつっこむていうのはモラルだろう。
男1 あのさ、お母さんが、子供に。
女3 どのくらいのこども?
男1 小さい子。幼児。
女3 うん。
男1 お母さんが「いい子ねえ」ってほめて、でもこっちの手でこう・・・
女3 痛い。
男1 つねるわけ。
女3 どうして?
男1 これがダブルバインド。
女3 分かんない。どういうこと?分かる?
女4 あたしに分かるわけがないでしょう。
男1 つまり、一方でこう、「大好き」って情報くるわけ。
女3 うん。
男1 でも同じ人から「大嫌い」って、こう、情報来るじゃん。
女3 小さい子ってお母さんすべてだもんね。
男1 そうそう。頼り切ってるから。だから、ジレンマっていうの?
女3 すごく悩むわね。
男1 で。ねじれちゃうわけ。
女4 そうかー。頭んなか、こーんなにねじれちゃって。
女3 おかしくなっちゃうわけ?
男1 そう。
女3 どっちが嘘なんだろうって。
男1 うん。
女3 どっちが本当なんだろうって。
女1 そんなことで狂うかな?
女3 わたしだったら…狂うかな?


  女3、ベンチに座る。

男1 (イミダスを読む)えーと。狂気、狂気と。狂気とは人間としての自覚を忘れた精神状態である。狂気はどんな人間にもひそんでいる。
女4 山崎はひそんでないよ。
男1 そう?
女4 現れてる。
女3 ダブルバインドかあ。
女4 (男1に)漢字よりレポートどうする?
男1 漢字はやっても無理。
女4 読めないよ、だいたい。
男1 レポートやろ。
女3 (女4に)高木。
女4 何?
女3 高木は美人だねえ。


  女3、女4の顔を両手で挟みゆがませる。

女4 何!
女3 ダブルバインド。狂った?
女4 びっくりした。狂ったかと思った。
女3 あ。ほんとなんだ。
女4 いきなりこんなことするから。
女3 わたしじゃないよ。高木がだよ。
女4 わたしが何で狂うの。
女3 わたしが狂ったの?
女4 痛いよ。
女3 山崎君。狂わないみたい。
男1 長い時間かけなきゃだめだよ。
女1 部活中に人を狂わせるのはやめましょう。
女3 わたしの魅力で。なんつって。な、山崎。
男1 え。
女4 部活って、やってないじゃん。
女1 原稿いつまでにする?
女4 あ。レポートこのまま使う?
女1 記事に?
女4 締め切り近いし。
女3 荒れる十代?太田に書かせる?
男1 しゃれにならねえ。
女1 環境問題なら書くかも。
女3 時間いっぱいあるし。
女4 かわいそうだよ。
男1 なんか罪悪感あるようじゃなかったな。太田一等兵とか言って。
女4 そうかな。
女3 素直じゃないから。
女1 太田ちゃん。信じてたのに。
女1 嘘ばっか。
女3 何それ。
女1 よく分からないけど。
女3 次、いつだっけ。発行。
女1 わかってるでしょ。毎月一日。
女3 間に合うかな。
女1 内容も決めてないのに。
女4 行事もなかったからね。
男1 文芸特集やろう。夏休みの宿題使って。
女4 俳句?
男1 いいの、あるよ。
女3 メモるなよ。
女4 俳句をメモる十七才。
男1 「夏休みリセットしたい高校生」
女4 どういう意味?
女1 全然勉強しなかったんだよ。
男1 勉強とは限らないけど。後悔ばっかりの夏休み。
女3 「できるなら」の方がいいな。「できるならリセットしたい夏休み」
女4 わたしもリセットしたい。
男1 「できるならリセットしたい高校生」どうだ!
女4 自慢すると悲しい。
女1 季語がなくなった。
女3 「できるならリセットしたい人生を」
女4 それ、悲しすぎる。
女3 「できるなら生まれ変わりませんように」
女4 悲しすぎるよ。やだよそんなの。
女3 もういいかな、と思って。






  メールの着信音。

女1 へえ。
女4 この曲、何だっけ。


  女3、携帯を出し、メールを読む。

女3 太田。
女4 え?
女3 メールだよ。
女1 太田?
男1 メール来たの?
女3 メール来た。
女1 今怒られてるんじゃないの。
女4 まさか行かなかった?まずいよ。
女3 すごく長い。「教室の私の机に『我は放課後の魔術師なり』と彫ってあった。」
女4 何のこと!
女3 読んでるだけだよ。「授業中、その刻み目を指で撫でていたけれど三日目にやめた。私にはもう、放課後は来ないかもしれない。」
男1 わかんねえ。
女1 太田ってこういう人だったっけ。
女4 わかんない、どういうつもりか。どうしてメールなんだよ。しかもさあ。
女3 しかも、わたしあてにね。
女4 そんなこと言ってないよ。
女3 どうしてわたしなんだ。高木じゃなくて。
女1 それよりさ、太田はちゃんと行ったのかな。
男1 行かないと絶対やばい。
女1 経験者は語る?
男1 うん。普通と違うんだって。こういうときは。


  着信音。

女4 太田?
女1 なんて?
女3 「読んだ?書いてみた。載せてね。」
女4 行って来る。
女1 あたしも行く。
男1 探すの?


  出ていく女1、4。
しばらく携帯を見ている女3。

女3 行かないの?
男1 行くけど。
女3 そうだよね。
男1 行くけどさあ、そっちは。
女3 行ってもしかたないけど。あ、行くよ。
男1 うん。


  行こうとする男1。

女3 あ。山崎。
男1 何?
女3 わたしのこと、どう思う。
男1 どう思うって。
女3 気にしないで。聞いただけ。
男1 こんな時に、だって。
女3 こんな時って?太田?いいよ、太田は。


  立ち去る男1。
見送って鞄からパソコンを出す。
  ゲーム「緑の地球を救え」オープニングテーマ。
  キーボードを叩く女3。
  男1、現れる。

男1 あのさあ。


  女3、ゆっくり振り向いて。

女3 行かないの?
男1 あの、さっきのさあ。
女3 行きなよ。いいから。
男1 うん。
女3 (厳しい口調で)早く。
男1 うん。
女3 (優しく)わたしもすぐ行くよ。
男1 うん。


  立ち去る男1。
  振り向いて立ち止まる。

女3 (振り返らず)山崎。
男1 うん。
女3 行きなよ。


  出ていく男1。

女3 送る、と。


  女3、パソコンをしまい、携帯を出す。
  メールをチェック。

女3 「我は放課後の魔術師なり。」


  メールを打つ女3。

女3 「わたしだよ。知ってた?知ってたよね。」


  送信しようとして。

女3 「高木にもメール打てよ。」送る。


  女3、送信。

女3 太田。どこ?太田。なんつって。


  ベンチに近寄って。

女3 ベンチ、しまっとけば。狭いよ。


  女3、ベンチをけ飛ばす。
  立ち去る女3。







  女4の鞄から着信音。
  着信音、切れる。
  女2、入ってくる。

女2 テヘッ。


  女4の携帯を取り出し、メールを読む。

女2 昨日のことなんですけど、帰り道にお母さんに会いました。通りの向こうから歩いて来るんです。通りの向こう側だったから、わたしに気づかなくて。わたしも声かけなくて。しばらく行くとまた向こうからお母さんが来ました。しばらく行くとまたお母さんとすれ違って。お母さん、次々と来るんです。家に帰るまでに三〇人くらいのお母さんとすれ違って。家に帰ったらお母さんはいませんでした。当たり前ですね。三〇人も外に出てたら、家には一人も居ませんよね。 で、思ったんです。お母さん、わたしのこと嫌いなのかな。
載せてね。太田。削除、と。


  女3、入ってくる。

女3 来たんだ。済んだの。
女2 済んだよ。
女3 帰るんだ。
女2 うん。
女3 家庭訪問とかあるの。
女2 今日ね。
女3 あのさあ。
女2 いいよ。
女3 わたしだと思ってる?
女2 何が?
女3 いいよ。わたしだって思っても。
女2 わかんないよ。
女3 みんな探しに行ったよ。
女2 心配してくれるんだ。
女3 どうしてメールくれたの。
女2 原稿だよ。
女3 ちがうでしょ。


  女3、行こうとする。

女3 みんな来るよ。


  女3、立ち去る。





女2 みんな、来るかな。ありがとう。心配してくれて。もう少し頑張ってみるから。


  ゆっくりひざまずき、床に横たわる女2。
女4、入ってくる。

女4 きゃ。
きゃ。 何。
女4 どうしたのよ。
きゃ。 別に。冷たくて気持ちいいよ。
女4 ややこしいことしないでよ。
女2 ごめん。
女4 行ったの?
女2 行くよお。行かないと思った?
女4 変なメールあったから。
女2 ははは。
女4 停学?
女2 うん。五日。
女4 怒られた?
女2 すっごく。泣いた。
女4 ほんと?
女2 びーびー。
女4 他人事みたい。
女2 役立たずだって。
女4 ひどい。
女2 ほんとだから。しょうがないじゃん。
女4 誰が決めるのそんなこと。
女2 それは分かんないけどやっぱり役に立つものと立たないものはあると思う。
女4 太田はそうじゃないよ。
女2 いいよ。そうでも。
女4 やめてよ!
女2 よせよ。大丈夫だよ。


  泣く女4。
女2、女4の後ろに立つ。
  後ろから腰に手を回す。
持ち上げて歩く。

女4 わ。やめてやめて。
女2 高木、重い。
女4 やめろー。


  女1、男1入ってくる。

女1 何してんのよ。
女2 持ってみて。高木重い。
女1 ばかじゃないの。
女4 太田。やめろ。
女2 すっごいよ、ほら。
女1 どれどれ。


  女4を受け取る。

女1 すごーい。
女2 (男1に)山崎、すごいよ。
女4 ばかー。
男1 どれどれ。
女4 やめろー。


  女1、女4を下ろす。

女1 (男1)あんたもどれどれじゃないよ。
男1 そういう時間だと思ってしまいました。
女4 ばか。
女2 太田一等兵ただ今戻りました。
女1 どうだった?
女2 おいらのことかい?ちっちっちいけねえな。堅気の娘さんが前科持ちのおいらにほれちゃあ。
女1 はい、高木の出番です。
女4 まったく。
女1 ヨーイスタート!
女4 お願い。あたしを連れて逃げて。あんたの前科のことなんかあたしちっとも気にしない。何よ、タバコで謹慎くらい。そりゃあ、推薦がなくなるとかみんなに白い目で見られるとか担任が何回も家庭訪問に来るとかあるかもしれないわ。謹慎明けで出てきたとき、こんな声が聞こえるかもしれない。よーいハイ!
男1 ばかでえ、あいつ。
女1 なんか恐い。停学になった人って。
男1 タバコ吸ってて大学受かるわけないよな。
女2 傷口に塩塗って両手入れてかきまわすのはやめてよ。
女4 人のかさぶたはがしたいタイプなの。
女2 悪魔!
女4 ちょっと小悪魔かなって。
女2 そんな重い小悪魔いるか!
女4 「言ったわね!」とか言って。
女2 じゃ、帰るわ。家庭訪問。
男1 何日?
女2 五日。
女1 タバコって五日なんだ。
女2 締め切り、来ちゃうね。
女4 うん。
女2 ごめん。
女1 いいよ。
男1 あれ、載せれば。
女2 あれ?あれは冗談だよ。
女4 早く帰りなよ。あの、担任来るよ。
女2 うん。






  女3、入ってくる。

女3 太田。来てたの。もう終わった?
女2 うん。五日だった。これからさ、家庭訪問あるから、帰ってないといけないんだ。
女3 すぐ経っちゃうよ。
女2 記事、書けないけど。ごめんね。
女3 仕方ないよ。(みんなに)ねえ。
女4 まったく、迷惑だよな。仕事増えちゃって。
女2 人並みに仕事してから言いなって。
女4 テーマも決まってないのに。あ、うちで書けばいいじゃん。あたし、取りに行くよ。
女2 友達呼んじゃいけないって。あ、メールがあるか。
男1 あ、文芸特集。太田のあの詩、載せれば。
女2 あれは詩じゃないよ。
女1 特集のテーマだけでも太田の居るうちに決めるか。
女2 テーマねえ。わたしたちにテーマは必要か。どうだ。
女3 人生にテーマは必要か。
女2 わたしのテーマは…高木は?
女4 嘘をつかないこと。
女3 ふうん。松は?
女1 なんだろう。…とりあえず。
女3 とりあえずっていいね。
女1 満腹、かな。
男1 そういう人生ですか。
女1 おまえは!
男1 とりあえず…恋愛。
女1 バカ。
女4 太田は?
女2 とりあえず、家に帰ることかな?
女3 それ、テーマ?
女2 うん。
女3 だいたいテーマって何?
女1 何かな?言いたいこと?
女3 なんか、言いたいことあるの?
男1 ないよ。佐藤さんに言いたいことなんて別に。いや、あると言えばあるけど。
女1 何?山崎君。変。
女3 違うよ。記事書いて、なんか、言いたいこと。
女4 言いたいことなきゃ何のためにやってるか分かんないよ。
女1 なんか、出すためにやってる感じ。
女3 そんなもんでしょ。
女4 言いたいこと、あるよ。あるって。
女3 言いたいことはないよ。(男1に)ねえ。
男1 うん…ない。
女2 テュイーン。
女3 何それ。
女2 テュイーン。
女3 何?
女4 だから、テュイーンだよ、ただの。
女3 何?
女4 テュイーンって言いたかったんだよ。
女3 (立ち上がって)だから!
女1 どうしたの?
女3 何でもないよ。
女1 テュイーンでもめるなよ。
女4 いいじゃん、言いたいことがテュイーンでも。(男1に)ねえ。
男1 うん。あ、やっぱりさあ、言いたいことがテュイーンじゃさあ、ねえ。
女2 特集のテーマは?
女3 やっぱりさあ、「あれ…」
女4 おい!
女3 ちがうよ。環境破壊。
女2 あ、ゲーム。データ送るから。
女1 うん。頼む。
女2 帰るよ。
女4 うん。


  行こうとする女2。

女2 あ、ねえ、戸棚に柿ピーある。
女3 あ、食べる。
女2 松。戸棚のえびせん、食べて。
女1 うん。サンキュ。
女2 あ、高木。戸棚の桃の缶詰食べていいから。
女1 なんでそんなもんあるんだよ。
女4 早く帰りな。
女2 名残惜しくて、なんつって。
男1 ぼくには?
女1 おまえはいいから黙ってろ。
男1 ぼくにはー!


  女2、去る。

女3 さすがに参ってるんじゃないの?
女1 そうかも。
男1 桃缶分けてよね。
女3 ねえ、帰る?
女1 もういいか。今日、もうできないね。
男1 (女3に)カラオケ行かない?
女3 行かない。(女1に)もう遅いし、帰ろう。じゃ、山崎君、バイバイ。
男1 うん。
女3 暗いよ。
男1 別に。帰る。


  男1去る。
途中で立ち止まり、振り返る。鞄からバナナを出し、食べながら出ていく。



10

女1 もうちょっと地球救うか。
女4 うん。ちょっと。(女3に)やる?
女3 うん。帰る。


  ゲームを始める女1、4。

女3 あのさあ、さっきさあ。電話してたの。
女1 いつ?
女4 ジュースの時でしょ。
女1 ああ。
女3 それはいいんだけど。わたし、やめるから。
女1 何を。
何を。 えーと。あれ?何だっけ。何をやめるんだっけ?
女4 データ、ダウンロードしようか。だれかなんか送ってるかも。つなぐよ。
女1 うん。
女4 なに、これ?
女1 なんか、ひどい。
女4 めちゃめちゃだ。ここまで悪くなってたことないよ。
女3 もうさ、いい加減にやめたら。
女1 ゲーム?
女3 うん。
女1 だってわたしたちがやめたら、だれが地球救うの。
女3 本気でやってるの?
女4 本気だよ。なくなったら困るし。
女1 そう、けっこういいやつだし。
女3 そうかな。
女1 そうだよ。好きだよ、けっこう好き。
女3 地球、好きなんだ。
女1 うん。
女3 あたし、嫌い。
女1 えー、どうして。
女4 これ、ひどい。なんか人、死に絶えちゃうよ。内戦、と、ここは、テロ?ルール作ってもこのゲーム言うこと聞かないよ。
女1 敵だ!
敵だ! 絶対敵だ、これ。間違いないよ。
女1 バカみたい。こういうことして嬉しい人の顔みたい。犯罪的だよ、これ。
女4 ゲームじゃなかったら死刑だね。
女3 こんなにひどくなってるのにまだやるの?
女4 帰んないの?
女3 うん。帰るよ。じゃね。


  女3,帰りかけて。

女3 本当はこうだったらって思ったことある?
女4 なにそれ?
女3 なんでもないけど。
女1 本当はって?じゃ今は嘘か。
女3 敵はさあ。
女1 なに?
女3 敵はわたしなんだ。
女1 え?
女3 じゃ、帰るね。
女1 お疲れ。
女3 お疲れ。


  女3、去る。
女4、女3の去るのをじっと見ている。

女1 ここ。
女4
女1 緑、増えたかな。
女4
女1 ねえ。ほら。
女4 え。どこどこ。
女1 間違いか。
女4 なんだ。
女1 本当はってさあ。
女4 うん。
女1 何か、分かんないな。本当って。
女4 うん。


  徐々に消える明かり。パソコンの画面に照らされる二人。
女1パソコンの画面を客席に向ける。幕。



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