◆機動戦士ガンダムSEED
原作(矢立肇、富野由悠季)、 著者(後藤リウ)、イラスト(大貫健一、小笠原智史)
◆第1巻「すれ違う翼」4
原作(矢立肇、富野由悠季)、 著者(後藤リウ)、イラスト(大貫健一、小笠原智史)
というわけで、TVアニメ「機動戦士ガンダムSEED」のノベライズ。
今巻は、ザフトの急襲によるヘリオポリス崩壊から、アークエンジェルの大気圏突入まで、13話(1クール)分が描かれていた。
なかなか面白かった。
基本的には本編であるTVアニメの話に準拠した展開で、忠実なノベライズであるが、TVアニメの方では描き切れていなかった状況描写や心理描写などの補足説明などがあり、TVの方よりもわかりやすくなっていて理不尽さや唐突感を感じる所が少なく、ストーリーの方も展開が早くてテンポが良い。
文章の方も結構しっかりしていて、それがゆえに型にはまった印象もあるが、なかなか読みやすい。
まあ、アニメの方ほどのビジュアル的インパクトはないけども、TVアニメの方の副読本として読むのが良いかな。
イメージとしては、富野御大のオリジナリティ溢れる小説版とは違い、率直なノベライズがされている「機動戦士ZZガンダム」(遠藤明範)や「機動戦記ガンダムW」(神代創)と同じって感じだね。
ってな感じで小説の方は、アニメよりも文章(ビジュアル)としての面白さには欠けるんだけど、ストーリーやドラマとしての整合性という意味ではしっかりしてるんだよねえ。
なんつうか一長一短って感じで、創作って難しいねえ(苦笑)
アニメ版の「足りなさ」は、小説版読めば補完できる感じだな。
小説版をそのままアニメ化すればいいのになあとか思っちゃうよね。
というわけで、今後の怒涛の展開の補完に期待です・・と、「キディグレイド」感想を参照(笑)
◆第2巻「砂漠の虎」4
原作(矢立肇・富野由悠季)、著者(後藤リウ)、イラスト(大森英敏、小笠原智史)
というわけで今巻は、クルーゼ隊の執拗な攻撃を振り切り、地球へと降下したアークエンジェルはアラスカを大きく外れ、アフリカ北部へと降り立つ。
しかし、そこはザフト勢力圏の真っ只中であり、その前にはザフトの名将「砂漠の虎」こと、アンドリュー・バルトフェルドが立ち塞がるって話。
第1巻が「宇宙編」だとすれば、第2巻は「砂漠編」・・そして敵はラウ・ル・クルーゼから、「砂漠の虎」・アンドリュー・バルトフェルドへと移行。
相変わらず、小説版はアニメ版の説明不足や、描写不足を追加補足る感じの作りとなっており、話のテンポもバランスも良くわかりやすく、なかなか面白かった。
特に、アニメ版ではわかりにくかった「砂漠の虎」が、「変人」って感じで描かれており、アニメ版より好感が持て、結構格好良かった(笑)
ランバ・ラルとはまた違った「味」があるな、虎。
あと今巻のキモは、「少女」を守り切れなかったことにより、苦悩し葛藤し、そして虎との出会いにより「戦う」ことの意義に迷うキラなのだが、その辺りもわかりにくかったアニメ版が補足されてあり、結構心の流れがわかりやすくて良かったな。
映画版やる時は、この小説を元に「砂漠編」を再編集して欲しいかもしれない(笑)
それと、今巻から「はっちゃけお姫様」カガリんも登場。
でもやっぱカガリんは、アニメ版の方が勢いがあり、馬鹿で可愛いよな(笑)
で、次巻からは海編、そしてオーブ編か・・楽しみである。
◆第3巻「平和の国」4
原作(矢立肇・富野由悠季)、著者(後藤リウ)、イラスト(大貫健一、小笠原智史)
というわけで今回は、砂漠の虎バルトフェルドを倒し太平洋上を進むアークエンジェルは、中立の国・オーブへとやって来るって話。
相変わらず、なかなかに出来の良いノベライズである。
はっきり言って、アニメ版は大まかな流れ自体は悪くはないのだが、細かい部分での説明や描写などの不足などが多く、流れが唐突な印象になることが多いのだが、このノベライズはきちっとそれらの不足部分を補完する形での描写が多数あり、話がバランス良く再構成されており、流れ自体のおかしさはほとんど感じない。
流石にバトルやドラマなどの迫力はアニメの映像的パワーには負けてはいるが、アニメに
足りなかった補足描写や心理描写によって、ドラマやストーリーは密度が濃くなっておいてグっと良くなっている。
特に今巻は、それぞれの心理描写などがきちっと描かれていて、アニメ版よりもそれぞれのキャラクターに深みが出ている。
この「細やかさ」がアニメ版にもあればなあ(笑)
アニメ版はどうもそれぞれのシチュエーションごとのインパクト重視で、ストーリーやドラマの流れや動きがチグハグだったからねえ。
まあそれはともかくとして、第1巻の「宇宙編」、第2巻の「砂漠編」に引き続き、海上が舞台の第3巻「オーブ編」である。
「平和の国」オーブを主軸に、カガリとアスランの出会い、キラとアスランの再会、そしてキラとアスラン、それぞれの友達の死によりもたらされる激闘が描かれる。
「戦争」という悪夢がもたらしたそれぞれのキャラの悲劇や、オーブを「日本」の比喩として描いている内容によって、ドラマ的にもテーマ的にも、テンションは高め。
特に、トールやニコルに美味しいところをふりながらも、ラストにその二人の死によってもたらせた衝撃がキラとアスランの激闘をもってくるのは、お約束だが上手い。
続きを知ってるのに、続きが気になる作りになってるのは凄いね(笑)
それにしても、巻末の石田彰のあとがきは、なかなかに知的で、でもって読ませる文章で素晴らしいな。
石田彰って、賢いんだねえ。