◆＜卵王子＞カイルロッドの苦難
著者（冴木忍）、イラスト（田中久仁彦）
というわけで、冴木忍の「＜卵王子＞カイルロッドの苦難」の第１巻。
今巻は、城塞都市ルナンの卵から生まれた王子である「卵王子」の異名を持つカイルロッドが、突如何者かにより石化させられた町と人々を救うために、苦難の旅に出るって話。
まあまあ面白かったです。
まあ、よくあるライトファンタジー世界と展開で、話が唐突だったり、展開が単調だったり、世界観があいまいだったりって感じではありました。
でも、主人公らしくない不幸ぶっかぶりなキャラであるカイルロッドや、特になんか色々と秘密がありそうで一癖も二癖もあるイルダーナフがいい味を出していて良い感じでした。
まあこのあとも色々とカイルロッド王子には「苦難」と「秘密」が待ち受けていそうで、一応楽しみです。
あと、田中久仁彦さんの流麗なイラストも良いですね。
◆第２巻「出会いは嵐の予感」３
著者（冴木忍）、イラスト（田中久仁彦）
というわけで、卵王子カイルロッドの第２巻。
今巻は、魔道士ムルトを探して北へと旅をするカイルロッド達は、ある町へとたどりつき、封印されていた魔物を解き放ってしまう。
そしてその魔物を倒したカイルロッドに、フェルハーン大神殿からの刺客が襲いかかるって話。
なんかいつものように騒動に巻き込まれる一行って感じです。
まあ少々ご都合主義的展開ではあるかな。
あとドラマチックとはいえ、次から次へとお約束のように悲劇がやって来るのもちょっとアレですな。
まあ、それがカイルロッド王子の宿命なのでしょうなあ。
今巻は、メリインとシャオロンの姉弟が良かったです。
で、カイルロッドとイルダーナフには色々と秘密があるようで。
その辺りがどのように明かされて行くか楽しみってことで。
◆第３巻「愁いは花園の中に」３
著者（冴木忍）、イラスト（田中久仁彦）
というわけで、卵王子カイルロッドの第３巻。
今巻は、魔道士ムルトの下僕である水妖の襲撃を受けたカイルロッドは傷を負い、少女・パメラと老人・ザーダックに助けられる。
そんな時に、パメラと共にカイルロッドが立ち寄った町を突如として化物が襲い、そしてカイルロッドは少女・パメラに秘められた謎を知ることになるのであったって話。
カイルロッドの出生の秘密を縦軸に、出会った人々が悲劇に巻き込まれて行くってパターンなのだなこの作品は・・了解しました（苦笑）
正直、悲劇的展開が押しで来るので、ちと萎えてしまう。
でも、ネタ自体はやはりいい感じです。
しかし、やっぱ淡々過ぎるかなあ。
まあ、演出過剰なのも良くないとは思いますが、パメラをカイルロッドが自らの手で殺すところは、もっと盛り上げて欲しかったなあ。
ちょっとあっさりしすぎ、かな。
まあ、それはともかくカイルロッドはムルトの下僕である魔物と、フェルハーン大神殿の追っ手の両方から狙われているようです。
果たして、カイルロッドの出生の秘密とはいかに？（こればっかですが）
◆第４巻「面影は幻の彼方」３
著者（冴木忍）、イラスト（田中久仁彦）
というわけで、卵王子カイルロッドの第３巻。
今巻は、魔物との戦いの末に、イルダーナフの故郷へとやって来たカイルロッド達は、イルダーナフの娘であるメディ−ナと、その師である魔女ゲオルディと出会う。
その魔女ゲオルディの元、力の使い方を訓練したカイルロッドは、自らの《影》と対決することになるって話。
今巻はそれほど大きな悲劇もなく、淡々と進んでいました・・まあそれでも人死にまくりでしたが（苦笑）
で、とうとうイルダーナフがカイルロッドに見切りをつけたのか、別れてしまうことに。
果たしてこのあとはどうなるか。
今巻はやはり、幻の中の母・フィリオリのシーンが良かったですねえ・・挿絵も綺麗だし。
しかし、「ミランシャ、好き」の挿絵にはだまされた（笑）
あれは、《影》の話だったんですな。
◆第５巻「野望は暗闇の奥で」３
著者（冴木忍）、イラスト（田中久仁彦）
というわけで、卵王子カイルロッドの第４巻。
今巻は、イルダーナフと別れたカイルロッドとミランシャは２人だけで北への旅を続け、レイブンという女賞金稼ぎと知り合う。
そしてかつての神殿の遺跡で自らにそっくりな像や彫刻を見つけたり、《影》ことグリュウを加えて幻の街へと行ったり、雪の魔物に襲われたりするって話。
今巻も、それほど大きな悲劇もなく、淡々と進んで行く「流浪編」って感じでした・・まあそれでも人は死にまくりでしたが（苦笑）
イルダーナフがいないせいか、そこはかとなく喪失感みたいなものがあったのは良かったですな。
まあすぐにグリュウが合流して、ワタワタとした感じにはなりましたが。
しかし、「飢餓のために子供を食っちゃう大人」っていうのはちとやり過ぎかも（苦笑）
不幸の押し売りはちと疲れます。
なんか妙に残酷シーンの多いひかわ玲子や、エロゲーのＫｅｙや野島伸司の作風を思い出します。
それはともかく、カイルロッドに似た像などがあった神殿の遺跡があったり、人々が魔物に変わり始めたり、フェルハーン大神殿の方でも動きがあったりと、話は少しづつクライマックスへと向かっているようです。
そして、カイルロッド立ちはついに魔道士ムルトのいるタジェナ山脈へとたどり着きました。
果たしてそこに待ち受けているものとは。
◆第６巻「悲しみは黄昏とともに」３
著者（冴木忍）、イラスト（田中久仁彦）
というわけで、卵王子カイルロッドの第６巻。
今巻は、ついにタジェナ山脈へとたどり着いたカイルロッド達は、ムルトと対面する。
そして、そこでカイルロッドは衝撃の事実を知るのであったって話。
げふ・・グリュウ、ミランシャ死す・・そう来たか・・。
実は、ミランシャはムルトに「造られた存在」でしたか。
で、なかなかに酷い展開だったんだけど、なんかずっとこういう悲劇的展開だったせいか、あまり感動できなかったな。
あんま「不幸の押し売り」のしすぎのせいか、ちょっと感覚マヒしちゃったのかもしれないなあ。
でも、ミランシャがああなってしまったのは、やっぱり残念です・・いい娘だったのに・・ひど。
あと、ムルトは想像していたよりもはるかに三流で、かなり萎えました（苦笑）
ムルト、格好悪い・・。
で、どうやらこれからはタジェナ山脈の封印が解けてしまい、「あの方」が当面の敵になりそうな感じです。
果たして「あの方」の正体とはいかに。
◆第７巻「微笑みはかろやかに」３
著者（冴木忍）、イラスト（田中久仁彦）
というわけで、卵王子カイルロッドの第７巻。
今巻は、少女の姿をした三つ子のウルト・ヒケウが聖地へと帰ってきて、カイルロッドは「語らぬもの」との対話により少し自分の事を知る。
そしてロワジーにより伝えられた口伝により、聖地を捨て「第二の神殿」へと移ることを伝えられるって話。
前巻の怒涛の展開とは違い、クライマックスへの前ふりみたいな展開で、それ程大きな荒事もなく意外にまったりしていたが、なかなか面白かった。
なんと言っても、突如やって来た三つ子の少女であるウルト・ヒケウがいい味を出していて、暗い展開に明るい光明を指していて可愛かったのと、実は意外にいいヤツで、周りの人間に翻弄されているに過ぎなかった実直でなアクディス・レヴィが良かった。
で、どうやらイルダーナフは実は大神官で、今後はイルダーナフの元、「第二の神殿」への移動が行われるようである。
もうすぐ最終巻のようなので、この物語がどのように終着するのかが楽しみである。
◆第８巻「やさしさは風の調べ」３
著者（冴木忍）、イラスト（田中久仁彦）
というわけで、卵王子カイルロッドの第８巻。
今巻は、実は大神官だったイルダーナフの命により、人々はフェルハーン大神殿を捨てて、「第２の神殿」へと向かうことになる。
そしてカイルロッドも、フェルハーン大神殿の真実を知ることになるって話。
相変わらずなかなかに非道い展開である（笑）
特に、アクディス・レヴィと、その母キアラ絡みのネタは凄いね。
まあよくできてるんだけど、やはり非道い展開過ぎて、自分はちょっとついていけないかもって感じである（苦笑）
まあそれはともかく、赤ん坊絡みの話はなかなか良かった。
で、次巻はついに最終巻・・どう締めてくれるか・・。
◆第９巻「思い出はいつまでも」４
著者（冴木忍）、イラスト（田中久仁彦）
というわけで、卵王子カイルロッドもついに最終巻。
今巻は、「あの方」との戦いのために第２の神殿を後にしたカイルロッドとイルダーナフ。
そしてついにカイルロッドは、世界を救うための決戦を迎えるって話。
なかなか良かった。
正直、決戦シーンはムルトの時の方が迫力があったが、やはりカイルロッドの悲壮なる決意と、その優しさが出ていたのが良かった。
特に、最後のエピローグは泣けました。
で、総論。
まあまあ面白かったです。
正直、怒涛のように現れる悲劇や不幸、カイルロッドへの苦難にはなかなか乗り切れないものがありましたが、それぞれの設定やドラマがきちんと作られ、きちんと収束しているのは良かったです。
特に、なかなかに多彩なキャラ達ばかりで、それぞれ成長したりしてたがいいですな。
カイルロッドやイルダーナフも良いですが、やはり弱さも強さも秘めて、最後に大きく成長したアクディス・レヴィが好きでした。
まあ、なんだかんだと途中は大変でしたが、最後は一応ハッピーエンドで良かったです。
最後のエピローグは泣けました。
新しいカイルロッドとミランシャ達の未来に幸あれ。