◆気象精霊記
著者(清水文化)、イラスト(七瀬葵)


◆第1巻「正しい台風の起こし方」5
著者(清水文化)、イラスト(七瀬葵)

というわけで、第8回ファンタジア小説大賞・審査員特別賞受賞作、清水文化の気象精霊記「正しい台風の起こし方」
今巻は、気象精霊である風使いのミリィと参謀のユメミが、大精霊キャサリンの妨害や、繰り広げられる宴会にくじくことなく、正しく台風を起こさせるって話。
いや、面白かった。
普通では思いつかないであろう、自然をつかさどる精霊たちによる「お天気ネタ」という、見事なアイデア・独創性・着眼点・発想が非常に面白い。
誰がこんなネタで書こうなんて思うであろうか。
繰り返されるドンチャン騒ぎとギャグ、「スレイヤーズ」を思わせる生き生きとしたパワフルなキャラによるドタバタとバトル、明確な知識に裏打ちされた説得力ある「天候描写」など、ファンタジーでありながら、ある種SFみたいな話である。
お気楽極楽スチャラカ気象バトルですな。
台風などの自然現象の裏には、こんなドタバタが繰り返されているんだなあ、と思うと妙に楽しくなる。
でも、こんなお気楽極楽スチャラカに、災害を起こされたりしてるのはちと嫌だったりはするけどね(笑)
人間の視点からすると、たまったものではないからねえ。
まあやはり、神様や自然様には人間はかなわないってことだね。
神の視点からすれば、人間はまだまだちっぽけな存在ってことですな。
いやしかし、読んでいる間中、ひまわり的映像やら、雨・風やら、暴風雨が吹き荒れっぱなしであった。
お天気である天候や気象というものを、こんなに面白おかしくスチャラカに楽しく描いた発想の素晴らしさに脱帽です。
あと、やはり七瀬葵さんの可愛いイラストもやはり良いですね。
彼女たちの今後の活躍に期待したいです。


◆第2巻「爆弾気分の低気圧」3
著者(清水文化)、イラスト(七瀬葵)

というわけで今巻は、ミリィとユメミの二人は、東シナ海に発生した双子低気圧の管理を任される。
しかしその任務に、「気候変動誘発局」という存在が妨害をかけてくるって話。
前回は夏の嵐こと台風の話で、今回は冬の嵐こと暴風雪(ブリザード)の話である
正直、前回でこの世界に慣れてしまったためか、前回ほどのインパクトはなかったかな?
あと気象関係の事がよくわからないので、細かい部分がどういう風になっているのか、いまいちわからない感じがあるなあ。
あと、ちょっと文章が冗長で説明不足な感じがあるかな。
前回では結構乗れて読めたんだけど、今回はなんか乗れなかった。
なんとなく散漫で、ガチャガチャしている印象があるんだよな。
この作品、どっちかっつうとビジュアル向きなんだよな。
まあそれでも、いつもながらのドタバタスチャラカ気象バトルは、なかなか面白かった。ちょっとSF色溢れる「円形粒子加速器」なんかの描写もド派手で良い。
で、どうやら「気象変動誘発局」という、気象管理室の敵対組織も出てきたようで、面白くなりそうな感じである。
なんか、この世界って結構設定とかも凝ってそうだしねえ。
今後が楽しみです。


◆第3巻「うかれ頭とサクラン前線」4
著者(清水文化)、イラスト(七瀬葵)

というわけで今巻は、ミリィとユメミは弓状列島を北上する桜前線と一緒に移動しながら雲の上で行うお花見大宴会を企画する。
しかし、その大宴会を妨害する者達が現れてって話。
夏の台風、冬の暴風雪に引き続き、今回は春の桜前線でのお花見大宴会。
そのお花見大宴会を巡ってのドタバタとバトルがなかなか面白かった。
特に、今回は新キャラも多数登場し、前回からミリィのライバルとして登場したフェイミンさんがズームアップされ、キャラの掘り下げが行われていたのは良かったな。
でも、やっぱりどうもキャラやネタを生かしきる文章的な表現力や演出力、描写力が低めかな。
ちょっとテンポとかが悪いんだよねえ。


◆第4巻「海底火山とラッコ温泉」3
著者(清水文化)、イラスト(七瀬葵)

というわけで今巻は、ミリィとユメミは温泉諸島で起こり始めている海底火山の噴火を押さえる作戦を引き受ける。
しかし、またもフェイミンさん率いる気候変動誘発局の思惑が働き始めるって話。
今回のネタは海底火山と、その爆発の阻止。
天候ネタとはまた違った緊張感とアクションがあり、まあまあ面白かった。
で、今回は結構シリアスタッチで、フェイミンさん率いる気候変動誘発局との対立がメインで、コメディタッチは少なめであった。
でも、初期のころのドタバタな感じがやっぱ良かったかな。
陰謀合戦は、どうもシリアス過ぎてねえ。
まあ、敵組織とかの目的とかが明確になって、わかりやくなったのはいいけどねえ。
あと、今回は文章的には結構良かったのだが、やはり自分の物理的知識などが乏しいため、いまひとつわかりにくかったなあ。
ああ、もっと学生のとき勉強しておけば良かった(笑)
で、今回はミリィ達の初の敗北で、次巻へと続くようである。


◆第5巻「思惑違いの流星豪雨」4
著者(清水文化)、イラスト(七瀬葵)

というわけで今巻は、敵対する組織「気候変動誘発局」に出し抜かれ、大量の火山灰を成層圏までバラまかれたミリィ達は、その対処法を知るというミリィにそっくりな妖精界の姫君・フローラの元へと向かう。
そして、成層圏の火山灰を洗い流すために、氷の微惑星群を地球へと落とす作戦を決行するって話。
なかなか面白かった。
今回のネタは、火山に引き続き、流星雨って感じで、気象精霊が総動員されての地球規模での総力戦ってのが面白かった。
ミリィvsフェイミンさんとの対決も一段落を終え、今後は仲間となるようである。
フェイミンさんがミリィにこだわっていたのは、お約束の「嫉妬」だったわけだな。
あと、色々とミリィ関係で伏線も張られ、今後の展開が楽しみである。
どうやら深い裏設定なども多いようだしねえ。
ミリィの正体ってのはいったい何なんでしょうな・・まあ、それらは今後の楽しみってことで。
まあしかし、やはりシリアスな陰謀合戦よりもドタバタ気象バトルの方がやっぱ面白くはあるかな。


◆第6巻「お月見試験とホゴ活動」
著者(清水文化)、イラスト(七瀬葵)

というわけで今巻は、ミリィは妖精界で行われる試験に立ち会うことになり、その試験にユメミのお月見と自然環境保護団体が絡んで来て大騒動になるって話。
まあまあ面白かった。
試験などの設定は、なにげに深く描かれていて、世界観の作り込みは相変わらずしっかりしていて広がりがあり良いね。
「ファンタジー」といった感じである。
でも、やはりどうも文章などは重たい感じがして、いまいち軽さが足りない感じはするかな。
その辺りは「SF」っていう感じかもね。
で、今巻は今後の新たなる敵となりそうな「自然環境保護団体」が登場。
でも、いまいち敵としては迫力がないかな。
まあ、今後の展開に期待といった感じである。
あと、ミリィの出生の秘密もあっさり今巻は明かされました。
父親が双子だったんだねえ。
どうやらミリィは、出世街道まっしぐらなようで、その辺も期待です。


◆気象精霊ぷらくてぃか
著者(清水文化)、イラスト(七瀬葵)


◆第1巻「サクラサクラン」4
著者(清水文化)、イラスト(七瀬葵)

というわけで、ドラゴンマガジンで連載中の「気象精霊記」の外伝話である「気象精霊ぷらくてぃか」の第1巻で、ドラマガに連載されたものに加筆修正され、書き下ろしも加わったものである。
で、今巻は気象精霊になるために、ミリィはイツミの開く修行場へとやって来るって話。
うむ、なかなかに面白かった。
ミリィやユメミの幼少の修行時代の話であり、今と昔の違いがあったりで、興味深い・・特に全然キャラの違うユメミとか(笑)
「今こうなってる」理由なんかは書いてくれるのかな?
あと、それぞれのキャラも可愛く描かれていてなかなかに良かったのだが、やっぱりちょっとキャラが大過ぎで、ちょっと判別がつきにくかったかな?
単行本では、それぞれのキャラにちゃんと名前がついて書かれていて、わかりやすくなってはいるけど。
それにしても、どこか「説教臭さ」のある学問に対する姿勢の描き方とかは、人を選びそうな感じではあるな。
その辺は作者さんの主張のひとつではあるのだろうけど。
まあ、これから幼少時代のミリィ達がどんな活躍を見せるか、楽しみです。


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