◆ネガティブハッピー・チェンソーエッヂ 全1巻5
著者(滝本竜彦)、イラスト(安倍吉俊)


というわけで、第5回角川学園小説大賞の特別受賞作品である「ネガティブハッピー・チェンソーエッジ」
主人公である山本陽介はある雪の日に、謎のチェンソー男と戦う女の子、雪崎絵理と出会う。
そして山本は絵理と共に、そのチェンソー男と戦うことになるのであった、って話。
なんつうかもう、圧倒的に「ダメ人間」を突っ走る自分にとっては、結構「来る」話であった。
正直、某エロゲーの「KANON」とネタやらはちょっとかぶっていたり、非常にエロゲーテイストな感じだったのだが、あっちが「オタに都合の良いキャラ萌えな感動」なら、こっちは圧倒的にネガティブで、後ろ向きで、負の雰囲気がモリモリで、ダメっぷりが高い・・まあ、都合の良いキャラ萌えな感動もあるんだけど(笑)
もう、自らの感情の赴くままの事柄を叩きつけた感が強く、テンポ良い文章や、世界の雰囲気や、あの独特の一人称の文体やら、話の方向性やらが、ある種の疾走感を産み出し、今の「終わらない日常」を生きる日本の若者が少なからず持っているであろう、「閉塞感」「絶望感」「虚無感」「未来に対する漠然とした不安」とかってヤツを表現していた。
特に、ラスト辺りの怒涛の疾走感は圧巻。
「さくらの唄」(安達哲)や、「CLEAR」(耕野裕子)や、「ストリッパー」(山田玲二)や、「極東学園天国」(日本橋ヨヲコ)や、「イエスタデイをうたって」(冬目景)や、「ブギーポップ」(上遠野浩平)や、「夢からさめない」(白倉由美)とか、「センチメントの季節」(榎本ナリコ)とか、大槻ケンジなどの、「後ろ向きの青春」が好きな人、「自分はなんて不幸なんだろう」とか毎日考えてる人には、間違いなしにはまれるネガティブっぷりです・・っていうか俺が好きなだけか(笑)
まあでも「ネガティブハッピー」だから、「後ろ向きだけど、ちょっとだけ前向き」って感じなんだよなあ。
ネガティブとポジティブを合わせた、「ポガティブ」ってヤツだね(笑)
あと安倍吉俊の、どこか憂いのある表紙もあっている。
あとがきの鬱丸だし加減も、いい味出しています。
しかし、「幸せな人」にはまったく関係のない小説だな(笑)


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