◆ポストガール
著者(増子二郎)、イラスト(GASHIN)


◆第3巻4
著者(増子二郎)、イラスト(GASHIN)


というわけで、増子二郎の「ポストガール」の第3巻。
第十一話「エンジェル」<シルキーは道端で倒れた少女・ジブを助けることになる。
第十二話「スケアクロウ」<シルキーは拝み屋の男・カーグと出会う。
第十三話「ギャングエイジ」<グラムは町の子供たちと仲良くなる。
第十四話「シリウス」<シルキーは地球を守るヒーロー天狼のシリウスに手紙を届けることになる。
第十五話「ブラザーズ、シスターズ」<シルキーはシャンベルの頼みで学校を作る手伝いをする。
の5本。
今更だけど、キャラクターとか話とが妙に厚みがあり、深い感じである。
一本一本妙な「重さ」があるんだよな。
やはり、その「終わってしまった静かな世界」を背景に、地味に淡々と丁寧に描写してる所に「力」が生じているのであろう。
シルキー自体は「ロボット」というより「人間の少女」なわけではあるが、地に足のついた人間たちと絡めて巧みにその心情を描いているおかげで、それぞれの奥行きが出てる感じである。
個人的にはやはり、「ヒーローへの憧憬」を描いた「シリウス」が一番好きで、こっ恥ずかしい話ではあるが泣けて良かった。
あと、作品の情感を後押しするように、GASHIN氏のイラストもどんどん上手くなっていて、情感と厚みと深みが増している感じ。
やっぱ、背景がきちっと描けてるのが強いよな。
「ブギーポップ」や「キノの旅」と同じく、文と絵が一体となった感じがある。
今後に期待できそうな人である。



◆第2巻4
著者(増子二郎)、イラスト(GASHIN)

というわけで、増子二郎の「ポストガール」の第2巻。
第六話「タンデム」<シルキーは「妻」を失ったイシュタルであるマフリーと海を目指す。 
第七話「プリズナー」<シルキーは攻撃機に搭載された疑似人格であるイナリに元パイロット・タイチの手紙を届ける。
第八話「アミュレット」<シルキーは台風の日に春画家の男・ラタと少女・ニリーと出会う。
第九話「イン・アザー・ワーズ」<シルキーは同じメリクリウスの弟・グラムと喧嘩をする。
第十話「フェスタ」<シルキーはキューザックに呼ばれた祭で少女・ヴォサカと出会う。
の5本。
第1巻と同じく、相変わらず非常に地味で淡々とした作りであり、ノスタルジー漂う内容である。
戦争の終わった静かな時代ってとこが、やはり「キノの旅」っていうより「ヨコハマ買い出し紀行」って感じだな。
「バグ」持ちである人型自律機械・シルキーが、手紙を届けながら様々な場所で色んな人や機械と出会う、ハートフルでちょっと切なく温かいお話っていうのは常に貫かれており、正直派手さはないけど丁寧で情緒感と牧歌的な所があるのはやはり良い。
イラストのGASHIN氏の温かみのある丁寧な絵柄と、バランスの取れたブックデザインも作品の雰囲気を良く後押しいている。
まあ問題としては、シルキーがあまりに「人間らしすぎる」ので、ロボット(作られたもの)としての成長や葛藤っていう部分があまりない所だな・・ほとんど「少女として」のそれになってるからね。
まあその代わり、他の機械とかがその代わりはやってくれてるところはあるけど。
で、今回株を上げたのは、やはりシルキーの開発者であり保護者でもあるキューザックさんであろう。
1巻ではいまいちキャラが良くわからなかった気がしたんだけど、シヅカさんと良い仲になったり、春画を集めてたり、実は裏の過去があったり、「顎のおじさん」としてイラストもついたりしてキャラ立ちが出てきた。
キューザックさんとシヅカさんの幸せを祈りたい。
あと、どうやらポストガールという言葉には「郵便屋の少女」と「次代の少女」というテーマを思わせる意味があるようで、その辺もどのような結末を迎えて行くのが楽しみである。


◆第1巻「ポストガール」4
著者(増子二郎)、イラスト(GASHIN)

というわけで、第1回電撃hp短編小説賞受賞作である、増子二郎の「ポストガール」
MMF108−41シルキーは、戦争により通信システムの崩壊した世界で地域へ郵送物を配達する、人型自律機械(メルクリウス)の少女だ。
彼女の中に芽生えた大切な「バグ」・・それは人の心って話。
なかなか面白かった。
正直、「キノの旅」や「ヨコハマ買い出し紀行」や「ToHeart」などのイメージがかぶるが、それらとはまた一味違った独特の世界が作られていたのが良い感じであった。
連作短編形式で描かれた、崩壊した世界でのロボットであるシルキー達の、「作られし物の悲哀」なども描かれていて、情感ある、温かくもの悲しい雰囲気が素晴らしく、どの話もなかなか良い。
あと、相変わらず電撃文庫は「ブックデザイン」自体が凝っていて、これもカラーとそれぞれの話の扉絵以外のイラストはないという上手い作りで、雰囲気をさらに盛り上げてくれている。
「小手先」とも言われるかもしれないが、こういう「演出」は好きだ。
続きが読みたい感じではあるが、できれば全13話くらいのアニメでも見てみたいねえ。


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