◆ロケットガール
著者(野尻抱介)、イラスト(むっちりむうにい)
◆第1巻「ロケットガール」4
著者(野尻抱介)、イラスト(むっちりむうにい)
というわけで「クレギオン」を書かれていた野尻抱介さんによるスラップスティックSFコメディ「ロケットガール」
これはドラゴンマガジンに連載されていたヤツらしいです。
今巻は、ハネムーンで失踪した父親の消息を求めて、ひとりアクシオ島までやってきた女子高生・森田ゆかりは、なぜかいきなり日本出資の宇宙開発団体「ソロモン宇宙協会」で働くことになり、世界最年少の宇宙飛行士としてロケットに乗ることになるって話。
いや、面白かった。
ロケット打ち上げなどの描写が、なかなかにリアリティある科学考証により描かれており、「もしかしたらホントに女子高生がロケットに乗る日が来るかも!?」っていう「if」な感じがあって良い。
あと、まるで自分が宇宙飛行士になったかのような空気感があるのもいいんだよねえ。
でも、キャラが少々ステロ過ぎるのと、後半の展開が強引過ぎた感じはあったかな。
思いっきりアニメ絵なイラストも少し損をしてるかもしれないしねえ。
それはともかく、これからのゆかりとマツリの活躍が楽しみです。
◆第2巻「天使は結果オーライ」5
著者(野尻抱介)、イラスト(むっちりむうにい)
というわけで、ロケットガ−ルの第2巻。
今巻から仕切り直しってことで、イラストが前巻のOVA「Aika」のキャラデザなどをやられていた山内則康さんから、むっちりむうにいさんに変更。
別にむっちりむうにいさんが嫌いな訳ではないが、やはり途中からイラストレーターとかが変わるとちょっと困る。
今まで想像していた絵と違う絵で想像しなきゃいけないから、慣れるのに時間がかかるんだよね(苦笑)
「ライトノベルは絵だねえ」という言葉もあるように(ホントか)、ライトノベルにおいては絵は重要だからね。
しかも、アニメ絵だった山内さんとは対局な、漫画絵のむっちりさんだからねえ。
まあ慣れるしかないわな。
でもって今回は、ゆかり、マツリに続く第3のロケットガール、三浦茜登場。
偶然母校であったネリ女に不時着したゆかりとマツリは、天才少女・茜と出会う。
そしてゆかりにSSAへと誘われた茜は、宇宙飛行士のテストを受けてなんとか合格する。
で、茜は初の宇宙飛行で、事故により発射できなくなったNASAの冥王星探査機オルフェウスをNASAの宇宙飛行士たちと共に救出するって話。
で、今巻から登場の三浦茜はいい感じである。
戦隊的にいうなら、勝ち気なゆかりがレッド(赤)で、おちゃらけなマツリがイエロー(黄)、で沈着冷静な茜がブルー(青)って感じであろう。
セラムン的に言えば、ゆかりが火野レイで、マツリが月野うさぎで、茜が水野亜美って感じかな。
あと、仲裁役のグリーン(木野まこと)と、アイドル系のピンク(愛野美奈子)がいれば、見事に宇宙戦隊ロケットガールズのできあがりである(爆)
まあ、それはともかくなかなかにバランスのいいキャラ構成になって良い感じである・・お約束な構成ではありますが。
勝ち気で意地っ張りなゆかりとは対極な、心優しく優等生で努力家な茜のキャラが、話にいいアクセントをつけている。
前巻は、キャラ的広がりはそれほどなかったからねえ。
で、宇宙研での宮本教授とのやり取りとか、スペースシャトル・アトランティスでのやり取りとかが良かった。
特にオレアリー博士との会話の所と、冥王星探査機オルフェウスを助ける決意をするところの、
「ゆかり、私・・どうしても、オルフェウスを助けたい!」の所が良かったねえ。
もちろん茜だけでなく、ゆかりのNASAの宇宙飛行士たちとの小さな対立と和解、そしていつものごとく非常に空気感、日常感があり考証などがされている宇宙描写や、オルフェウス救出ミッションにおけるみんなの一体感とかも良かった。
でもしかし、「それゆけ宇宙戦艦!ヤマモトヨーコ」とかもそうだけど、夢のような競争率を勝ち残り、血のにじむような訓練を受けたプロフェッショナルである熟練の宇宙飛行士達が、技術的格差などがあるとはいえ、この前までど素人であった(優秀で才能はあるけども)一介の女子高生に軽くあしらわれて劣って描かれるのは、痛快とはいえ、ちと不快でもあるかな。
「努力とか真面目さ」とかそういうものが、「運や才能」というものの前にはまったく太刀打ちできないような感じがするからね。
いやまあ考え過ぎではあるけどね。
一応きちっと、「プロ」に対しての敬意も払ってるしねえ。
まあ漫画とかアニメとかもそうだが、こういうものではある程度「そういう風」に描かないと、そもそもお話しがなりたたないからねえ。
プロを愚鈍に描き、アマが運と才能でプロを翻弄するのは常套手段だし、痛快でカタルシスもあるからね。
実際にはなかなか「アマはプロには勝てない」だろうしねえ。
そういう感じで描かないと、子供がロボットに乗って戦ったり、世界の平和を救ったりはできないからなあ(爆)
まあそれはともかく、3人となったロケットガールズの今後が楽しみです。
◆第3巻「私と月につきあって」5
著者(野尻抱介)、イラスト(むっちりむうにい)
というわけで今巻は、ゆかり達ロケットガールズは、フランスとの共同ミッション、月旅行の訓練のためにギアナへと向かうって話。
うむ、面白かった。
正直、ゆかり達SSAチームを乗せるために、フランス娘っ子達が自己管理のなってない妊娠合戦を行うアホぶりには結構萎えたりはしたのですが(ちゃんと避妊しろよ!)、それ以外は、様々なお約束のアクシデントや苦難に見舞われながらも、それらにめげずに前向きに協力しあいぶつかりあい、月という近くて遠い星を目指すゆかり達の頑張りが大感動でした。
「月面到達」という宇宙開発的偉業が、相変わらず非常に空気感のある緻密かつ正確な描写で描かれていて、まるで自分が月に行ったかのような感覚になる所が良いですな。
特に、犬猿の仲であったゆかりとソランジュが、茜達のサポートを受けながら月面から脱出する辺りは白眉。
やはり、人類の未来は宇宙ですな。