◆スクラップド・プリンセス
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
◆第1巻「捨て猫王女の前奏曲」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、榊一郎の「スクラップド・プリンセス」の第1巻。
どうやらこれは、ドラゴンマガジンで行われていた「龍皇杯」という、若手作家6人が短編を競作し、一番面白いものを読者諸氏に選んでもらうという、読者参加型企画からできたようである。
で、ただ今もドラゴンマガジンで連載中の模様。
で、今巻は、「聖グレンデルの託宣」により、その身を禁忌とされた「廃棄王女」であるパシフィカと、その兄姉である双子のシャノンとラクウェルの旅立ちの話。
まあまあ面白かった。
まあ、お約束のライトファンタジーものではあるけど、「生まれてきてはいけない子」というダークなネタがなかなかいいです。
その辺りで、今後上手くやってくれるといいですなあ。
あと、魔法描写がちょこっと凝っていて良いですな。
まあ、できればキャラやらストーリーやら世界観やらに、コレっていう押し出しがもうひとつ欲しいところではありますが、まあそれは今後に期待です。
しかし、いきなり1年は飛び過ぎだよな・・。
◆第2巻「赦されざる者達の騒動歌」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、スクラップド・プリンセス、略称「棄てプリ」の第2巻。
今巻は、辺境の町であるタウルスへとやってきたパシフィカ達は、大熊亭という宿屋でウイニアという少女と出会う。
そこで、粛清使や特務部隊ブラックホーク、そしてかつて戦った特務戦技兵の少年クリストファー・アーマライトの襲撃を受けるって話。
少し、物語の大筋が見えてきました。
どうやら、廃棄王女であるパシフィカを狙うのは、「律法」を守る「秩序守護者」と呼ばれる存在で、まああの世界における神様みたいのが、パシフィカを狙っているようです。
果たして、パシフィカの正体とはって感じです。
パシフィカ達は、システムやルールに逆らう存在って感じなのかもしれないですな。
まあ、今後の展開に期待です。
で、今回は王国の特務部隊であるブラックホークも登場。
ファンタジー世界の戦士とかを、現実の特殊部隊の兵隊っぽく描写しているのは、ちょこっと斬新で良い感じでした。
しかし、キャラのやり取りとかは少々臭い感じですな・・まあそれが売りではあるんでしょうが。
◆第3巻「異端者達に捧ぐ鎮魂歌」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、捨てプリの第3巻。
今巻は、異教検察官ベルケンスと知り合ったパシフィカ達は、モスバーグ河の中にある島にたどり着き、そして「ブラスフェマーズ・ガーデン」という宗教集団に捕まるって話。
なかなか面白かった。
「宗教」をテーマにした、ちょっと危ないネタが良いね。
「宗教」やら「思想」やら「個性」に関しての部分は結構同意する部分も多かったからなあ。
まあ、「宗教」とか自体の価値観は認めるとこではあるが、やはりその価値観を押し付けるのは勘弁してもらいたいところである。
それは宗教に限らずだけど。
しかし、オウム、エヴァ以降のネタって感じではあるよな、こういうのって。
それにしても、相変わらずそこはかとなく暗く、説教臭い感じではある。
まあこの青臭く、泥臭い独特な文体が。個性でもあり、売りでもあるんだけどね。
あと、パソコン的な表現で描かれる、魔法描写もなかなかに味があって良いですな。
◆第4巻「半熟騎士の行進曲」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、捨てプリの第4巻。
今巻は、騎士を目指す少年、正義馬鹿のレオと出会ったパシフィカ達は、かつて廃棄王女の殺害計画に関わった王国騎士ドイル・バレットに会いに行く。
そしてそんな時に、クリスはバロネスの頼みで15年前の事件を再調査するためにバロネスの息子となり貴族となるって話。
うむ、なかなか面白かった。
まあ相変わらず少々泥臭く、地味ではあるが、今巻はクライマックスの色々ネタばらししまくってる派手な所が良かったな。
さて、この辺りのネタをどのように締めてくれるのか楽しみである。
あと、どうやら書き下ろしとドラゴンマガジンの連載を順番にやっていくみたいである。
◆第5巻「捨て犬少女の夜想曲」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、捨てプリの第5巻
今巻は、ある町でシャノンはひとり佇む黒髪黒瞳の少女スィンと出会う。
パシフィカは、自分よりも本当の妹らしいスィンに嫉妬心を抱く。
そんな折り、「バイアス・ハウンド」のピエトロ・ベレッサはスィンを探していた。
実はスィンにはある重大な秘密があったのだ、って話。
なかなか面白かった。
正直、狙い過ぎだとは思うが、記憶喪失の無口な少女であるスィンが可愛かった。
そのスィンとシャノン達のやり取りや、それに嫉妬とするパシフィカが良かった。
で、そのスィンは実は「秩序守護者」だったわけだが、今後は敵になったスィンことシーズとの絡みも楽しみである。
しかし、そいやパシフィカとシャノンは、血のつながっていない兄妹なんだから、往年のあだち充の「みゆき」のような、「そういう展開」も十分ありだったんだな・・気づかなかった(笑)
今後はそっち方面の展開も楽しみである。
◆第6巻「つかの間の歌劇曲」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、捨てプリの第6巻・・今回は書き下ろし。
で、今巻は、偶然出会った劇団イングラムに入って、舞台をやることになるパシフィカ達。
そしてそんなパシフィカ達に襲いかかる暗殺者たちって話。
なかなか面白かった。
パシフィカ達の、劇団でのドタバタがなかなかに笑えた。
特に、「パシフィカ3段変形」は笑った。
泥人の「誰かのために」と絡めて、シャノンの「誰かに頼ること」を絡めたのもなかなか良かったしね。
でも、もっと物語の根幹を成すかと思った泥人達が、あんまり活躍しなかったのは残念だねえ。
もっと出番が欲しい所であった。
◆第7巻「通りすがりの子守歌」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで捨てプリの第7巻・・今巻はドラマガ連載仕様。
今巻は、パシフィカ達は、母親を失った赤ん坊メイフェリアを助ける。
そして実はメイフェリアは、公爵家の家督争いに巻き込まれていて、傭兵達に追われていたって話。
今巻のネタは「子育て」でした。
子育てに奮闘し、赤ん坊であるメイフェリアに振り回されるパシフィカ達が、まあまあ面白かった。
まあ、展開自体はいつもと同じで、少々マンネリ気味ではあるんですけどね(苦笑)
本筋である、秩序守護者との戦いもないですし。
クリス達による、王都防衛戦の話はありますが。
あと、アルトの「戦旗術」はアイデアとして面白く、ビジュアルとして見てみたい感じではありましたな。
それにしても、魔法の「パソコン風描写」と同じく、戦闘描写とかの「特殊部隊風描写」が好きですな。
まあ、「現代風アレンジ」って感じで良いとは思いますが、少々ファンタジー的ではなかったりするので、微妙に違和感を感じたりってのはありますな。
◆第8巻「終わりなき恋歌」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで捨てプリの第7巻。
今巻は、鋼鉄の甲冑との戦いにより大怪我を負ったシャノンは、貴族の娘であるアムネーゼに命を助けられる。
そして行方不明になったシャノンを探すために、パシフィカ達はドレンという悪趣味な商人に声をかけられるって話。
まあまあ面白かった。
<チャクル・ダヴィ> 操る甲冑は、なかなか格好良かった。
まあ、暗殺者としての快楽殺人者っていうのは、ありがちではあったけどね。
しかし、「殺さず」な主義があるせいか、基本的に敵側はシャノン達の手にかけられる事なく、自滅したり、流れで殺されたりするので、ちと甘くて爽快感にかける気はするな。
あと、キンヴァースの死でアムネーゼが覚醒したり、実は最後に生きていたエルディナンドというのも、お約束ではあるが、ご都合な気もするな。
まあ基本的に、諸国行脚して悪い奴を倒すって感じの水戸黄門な時代劇テイストな作風なんで良いとは思うですが。
しかし、なかなか本筋に入らないな。
◆第9巻「獣姫の狂詩曲」4
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで今巻は、ギアット帝国へ行くために海原へと出たパシフィカ達は、暗殺者の罠により船を爆発されて散り散りなる。
そして、ギアット帝国の「獣姫」ことセーネスに助けられたパシフィカ達は、海に浮かぶ砦「スキッド」へと乗り込み、そして自分たちの秘密と、秩序守護者との戦いに巻き込まれることになるって話。
うむ、なかなか面白かった。
今回は久々の本編で、話が転がり初めて面白かった。
起承転結における「転」って感じで物語がそろそろ佳境に入り始めたようで、話が盛り上がってきた。
今回登場のキャラである獣姫セレースやギアット帝国危機管理組織「紅」も格好良く、特に、ファンタジーには似つかわしくない戦闘用語の並べ立てられる、作戦シーンとかが燃える。
この作品では珍しく、セレースの友であるエイローテがきっちり死ぬのも良かった。
で、どうやらあの世界は実は「メガゾーン23」や「マトリクス」のように作られた「封棄世界」で、秩序守護者はあの世界を維持していこうとする存在で、それとは逆にアーフィ達魔族は、かつて秩序守護者と戦っていた存在のようである。
そして、「廃棄王女」「律法を破る者」であるパシフィカは、その秩序守護者に対抗しうる唯一の存在のようである。
で、そのパシフィカを守るシャノンとラクウェルも、予め定められていた行動ってことになっているようだ。
なんかちょっとSFチックしてきて、そして「神殺し」「運命に逆らう者たち」って感じが出てきていい感じである。
今まで若干違和感のあった、現代ちっくな戦闘用語や魔法用語も、世界観とあってきて違和感なくなってきたしね。
◆第10巻「遥かなる追想曲」4
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで今巻は、秩序守護者に挑戦され、王都ザウエルへ向かう決意をするパシフィカ達。
しかし秩序守護者への切り札たるパシフィカを危険な目に逢わせるわけにはいかないと、3人の前にアーフィ達が立ちはだかるって話。
まあまあ面白かった。
まあ、今巻は前巻の続きって感じで、前巻に振られたネタの地固めって感じで、正直ちょっとタル目だったかな。
アクションもそれほどなく、長い「設定明かし」って感じだったからな。
で、どうやらこの世界の外には、秩序守護者以上の敵がいて、秩序守護者もかつては、魔族であるアーフィ達と同じ人類が作り出した兵器だったようである。
「序章」のような燃える展開は好きなので、正直、そっち側の話が読みたかったかも。
で、どうやらパシフィカは記憶喪失となり、物語は終盤に向かって進み始めているようである。
今後が楽しみってことで。
◆第11巻「路地裏の挽歌」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、WOWOWノンスクランブルでTVアニメが好評放送中のすてプリの第11巻。
今巻は、スキッドを戦略級攻性魔法により攻撃され、パシフィカは記憶を失ったまま王都をさまよう。
そして、そんなパシフィカをどこかシャノンを思わせるフューレと名乗る青年が助けるって話。
やっとこ「王都編」に突入し、今までのキャラも総登場しはじめて、クライマックスへとあともう少しって感じで、なかなか面白かった。
で、今巻のキモは「読者キャラクター」であるフューレだが、まあまあ良かったかな。
やはり、「シャノンと似ている」という設定のせいか、どうもいまいちキャラが弱い感じがしたからなあ。
まあ、最後は格好良かったけども。
で、アニメの方もちょうど折り返し地点となり、アニメも原作の方も、あとはクライマックスへとひた走るだけである。
どちらも、どんな結末が待っているのか楽しみにしたい所である。
◆第12巻「反逆者の多重奏」4
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、WOWOWノンスクランブルでTVアニメが好評放送中のすてプリの第12巻。
今巻は、聖都グレンデルへとやって来たパシフィカ達はなにものかに捕らえられ、そしてシャノンは王都ザウエルで秩序守護者との決戦を迎えるって話。
「フューレ編」が終わっての「逃亡編」。
今回の目玉はやはり、王都ザウエル上空での、竜騎神(ドラグーン)、竜巨人(ギガス)、秩序守護者(ピースメイカー)の3者による怪獣大決戦。
なかなかにド派手な決戦が格好良く、なかなかに面白かった。
しかし、連載版を読んでない自分は、竜巨人のビジュアルがわからないのはちと残念だったな。
で、今回もうひとつの目玉はパシフィカと、母・エルマイアの偶然なる再会。
正直、もうちっと色々感動の再会が欲しかったところではあるのだが、可哀想すぎるエルマイア王妃は泣けた。
そして、役者は揃いまくって、あとはクライマックス一直線の「聖都編」へと大突入である。
果たして、パシフィカ達の運命やいかに。
・スクラップド・プリンセス サプリメント
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
◆外伝第1巻「さまよう者達の組曲」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、「スクラップド・プリンセス」の短編集の第1巻。
で、内容は書き下ろし2本を含む、4本。
「星空に捧ぐ祝賛歌」3
幼いころのラクウェル達が、母親であるキャロルの誕生日に歌う曲を練習するって話。
プレ編って感じで、在りし日のキャロル母さんが見れて、良い感じであった。
「闘犬達の挽歌」3
クリストファは、仲間を殺し逃亡した最強の特務戦技兵ジョシュアを追うって話。
ファファルがなかなかに可愛かったので、再登場を希望(笑)
「処女と殺人者の小夜曲」3
キダーフは、ある男爵につれ去られようとしている少女・コーティエと出会うって話。
なかなかにキダーフが格好良くて、キダーフとコーティエの今後の話がみたい感じであった。
「温泉狂想曲」3
酒を飲んで、温泉街で暴走するラクウェルって話。
ちょっと暴走し過ぎで、滑り気味な感じではあったが、暴走するラクウェルはお約束だが、なかなか面白かった。
◆外伝第2巻「恋人達の狂想曲」3
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、すてプリ番外編である「スクラップド・プリンセス サプリメント」の第2巻。
今巻は、パシフィカが廃棄王女と呼ばれる前、一通のラブレターを受けとったシャノンとパシフィカ達は、そのラブレターを届けるために、謎の暗黒メイド軍団に襲われたりするって話。
すてプリのプレストーリーであり、パシフィカが「廃棄王女」となる前の話で、本編のようなシリアスさとかは全然なくて、全編ドタバタのコメディのノリで、榊一郎お得意の「メイドオンパレード」もあり、パシフィカとシャノンの「ラブラブ兄妹」っぷりもありと、なかなかに楽しかった。
とはいえ「プレ話」のためか、シャノンの剣術やら、ラクウェルの魔法やらは、「おとなしめ」なせいもあってか、ちょっともの足りない感じがあったのも確かだったな。
リステルとソイの恋愛ネタも、ちと定番過ぎで、間延びした感じもあったし。
で、どうやら完結したすてプリも、あと3冊ほど出るようなので、その辺楽しみです。
◆外伝第3巻「聖地に流れる円舞曲」4
著者(榊一郎)、イラスト(安曇雪伸)
というわけで、特別編でもある「スクラップド・プリンセス サプリメント」の第3巻「聖地に流れる円舞曲」
今巻は、マウゼルシステムが停止した事により魔法がなくなり、ラクウェルは世界に再び魔法を復活させるべく聖地グレンデルに向かうって話。
本編終了後の「余談」とも言える話ではあったのだが、気を抜いたコメディ話でもあり、それぞれのキャラも生き生きしていてなかなか面白かった。
特に、「暴走」ラクウェル姉はやはり楽しくて笑えて、できればもうちょっと「暴走」が見たかったところである。
というか、こうやって久々に「すてプリ」キャラに触れて見ると、意外にこの世界やキャラが結構好きだったんだなと気づき、もうちょっと続きが読みたいなという気分にさせられた。
まああと2冊(予定)はあるみたいなんだし、その辺に期待するかな。
あと、最終巻で気になっていたスィンが一体誰の子なのかってヤツなんだけど、ラクウェル姉のお子さんじゃなかったんだねえ・・残念!
◆外伝第4巻「竜乙女の変奏曲」4(75点)
著者(榊一郎)、イラスト(安墨雪伸)
というわけで今巻は、大事な人を目の前で亡くしたことを責め続ける「竜機神」の人工知能であるテレジアは、「竜騎士」候補生のタクロウと「お見合い」することになるって話。
「スクラップド・プリンセス」の外伝・・パシフィカ達が生まれるずっとずっと昔の話、「竜騎士」タクロウと、「竜機神」テレジアの出会い・・。
「ファンタジア・バトルロイヤル」に書かれた短編を大幅に加筆して長編にしただけあってか、短編の時より色々と掘り下げてあり、榊一郎お得意の人工知能という「偽物」をテーマにしつつ、タクロウとテレジアの「ラブストーリー」として綺麗にまとめあげていて、なかなかに面白かった。
特に、「大事な人を守れなかった」事で傷つく二人が、それを絆とすることで互いに引かれ合うっていう展開は、流石はこういうのが得意な榊一郎だけあってか非常に上手かった。
この「すてプリゼロ」は色々「美味しいネタ」も満載であり、非常に面白くもなりそうな要素が多いので、26機の「竜機神」の話とかもっと読みたかったよなあ(設定も色々あるみたいだし)・・タクロウにデレデレなテレジアとかも凄い可愛いしねえ。
とりあえず、「すてプリ」自体は残るは一冊だけのようで、ちと残念である。