◆第1巻「ニンゲンのカタチ〜THE MOLD〜」
というわけで、ストレイト・ジャケット第1巻。
この作者の他の代表作である、「スクラップド・プリンセス」シリーズや、デビュー作の「ドラゴンズ・ウィル」とは違い、
この「ストレイト・ジャケット」は、コメディやギャグがなくて、暗くて重くてシリアスタッチなハードボイルドである・・らしい。
だってこの作品以外まだ読んでないからなあ・・まあいつか読むこともあるであろう。
しかし、主人公であるレイオットを筆頭に、この作品世界全般に漂う「けだるさ」「諦観」「無気力」「虚無感」な感じは好みである。
特にレイオットの愛人・・もとい助手の少女であるCSA、半魔族の少女・カペルテータは、いい感じである。
(つか、自分で言うのもなんだが、「萌え」から入るのはこの頃のマニア一般の悪い癖だよな(苦笑)
しかし、この「萌え」っていうのは、マニア内の共通言語として一般化したために語りやすく、共通認識を得やすいんだよなあ。
と、これは余談・・)
まあ、セラムンの蛍、エヴァの綾波、ナデシコのルリルリ以来大量増殖した「ダウナー系」ギャルではあるけど(笑)
それはいいとして、もちっと可愛い絵で描いて欲しかったかも。
眉毛ないのは怖いよ・・(なんか、「平安時代の貴族」みたいだよな(笑))
つうか別にこの作品、「萌え」を目的に作られてるわけではないんだから仕方ないのだが(笑)
まあ、可愛いに越したことはないからね(笑)
で、このストレイト・ジャケットは、「魔法」という概念を少し体系化して、ゲームのように世界設定を組み上げてから、
キャラクターや、ドラマ、ストーリーを作り上げたらしい。
「まず、世界ありき」ってヤツだね。
そのせいもあってか、やや「世界設定説明臭い」印象はあるな。
しかし、「世界設定」というのも物語を構成する重要な要素のひとつだからな。
まあでも、「魔法と科学が混在する世界」っていうありがちな世界観ではあるけどね(苦笑)
でも「中世」でなく、「近代」と魔法を上手く絡めた作品って存外ないから、それはいい感じだね。
しかし、小説では「文章」でそれらを表現しないといけないからなあ(当たり前だが)。
読者にその世界観を「読み取りイメージする想像力」も必要だしねえ。
俺みたいに、想像力貧困だと大変(笑)
その辺はやはり、「SFは絵だねえ」の名文句もあるように、世界そのものを絵で映像で表現できる映画や漫画やアニメは強いねえ(この頃はゲームもあるか)。
映画の「ブレードランナー」「砂の惑星」「2001年宇宙の旅」、
漫画の「風の谷のナウシカ」「AKIRA」「攻殻機動隊」、
アニメの「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」「新世紀エヴァンゲリオン」、
とか、たった一枚の「絵」で世界の空気や匂いをを表現できるからねえ。
ってまあ、それをやるのも大変なんだろうけどね(笑)
話がずれた・・。
で、この作品は、「魔法士」「モールド」「魔族」っていう3つぐらいを基盤に世界が作られている。
これら世界とキャラクターとを絡めてドラマやストーリーを作っているので、物語にまあまあ厚みが出ていて良いね。
でもまあ、やはりそれは「ライトノベルの限界」もあってか、それほど厚めでもなかったりするけど(笑)
で、今回は、無資格の戦術魔法士であるレイオット・スタンバーグとその助手であるCSAのカペルテータと、
労務省魔法管理局所属の新米監督官、ネリン・シモンズとの出会いが描かれている。
やはり、物語は「出会い」から始まらないとねえ(笑)
それと同時に世界観説明と、事件の始まりも描かれている。
序章「咎人は罪の重さに叫び」が、物語の発端ともなる、若きレイオットが魔族化した自分の恩人を殺してしまう過去の話。
第1章「人たることを人は忘れ」が、病院で魔族化した医療魔法士が暴れ出して、ネリンに依頼された無資格戦術魔法士であるレイオットがそれと戦い、豪快に鎮圧する話。
第2章「憎しみは淀むことなく」が、ネリンがレイオットに資格を取らせるべくレイオットの家にやってきた所に、
レイオットに魔族化した父親を殺された少年が、レイオットに復讐すべく密造拳銃を手にやってくる話。
第3章「されどこの不安なる世界に生まれて」が、化学工場で起きた魔族事件を鎮圧しに行った2人の戦術魔法士が魔族化してしまい、
それをレイオットが死闘の末に倒す話。
終章「営みは絶えることなく」が、それぞれの後日談。
まあ、今回はまだ全5巻(予定)であるこの物語の序章的な話ではあったが、なかなかに面白かった。
まあ、それほど突き抜けたキャラクター、ストーリー、テーマ、世界設定、文体っていうのはないけど、
やはりこの物語から醸し出される「空気」というのがいい感じだね。
未だに語られていない謎・・っつうか過去みたいなものもあるしね。
あと、イラストの藤城陽さんも、なかなかに作品の雰囲気を出していて良かった。
この物語がどのような結末を今後もたらしてくれるのか、今から楽しみである。