ラストレター



<もう、二度と届かないと決めこんでいた思い。

いつしか、手に入れることを諦めかけていた、気持ち

『逃げている』といわれた。

それでもよかった。



あなたの側にいられるなら、それでも良かった…


軽く握っているペンの先から、インクが出て、すらすらと紙上に文字を書き連ねて行く。
何行か、言葉を書いたとき、その便箋をビリッと破いてポイ、とごみ箱へと放り投げた
「………案外、手紙を書くって言うのは難しい物だな…。」
カミューは一人ゴチてごみ箱から溢れんばかりに多くなってしまった書き損じ便箋の山を見た。
今更、手紙を書いて伝えるのもなんだかバカバカしかったけど。
それでも、かいて、形の残るものとして彼に伝えておきたかったのである。
「――――――――――――ふぅ。」
ため息をつきながら、ごみ山の一つを―――自分で丸めて放った物だ―――広げる。

『親愛なるマイクロトフへ』

という一文から始まった文字は、それ以降何も書かれていなかった。
「どうしたもんだろう…。これ以上何を書けばいいのか思い浮かばない。」
カミューの小さな嘆息を聞いていたかのように、開け放しておいた窓から、冷たい風が吹き込んできた。
夜の風は、少しだけ冷たいけど、今の彼には心地良く思えた。
日頃、『同盟軍内No.1フェミニスト』の通り名で通ってるカミュー。
彼はいつでも本命だが大本命に宛てた手紙となると何を書いていいのかわからなかった。

「カミュー。」

コンコン、と扉を叩く音と少し低い声がした。
ノックの仕方でもうわかる。
「開いてるよ、マイク。」
その言葉に、カチャリとドアが開き青い騎士服に身を包んだマイクロトフが部屋にはいってきた。
「どうしたんだい?早寝早起きがモットーのお前がこんな時間まで起きてるなんて。」
カミューは、いいながら彼を見た。
といっても、まだ宵の口である。
マイクロトフが起きていても不思議な時間帯ではない。
「少し、夜風に当ってたら、お前の部屋の灯りがまだ点いてたから来てみたんだが…。
何か、かいてたのか?」
机の上に広げられた便箋を見て、マイクロトフが聞いた。
「あぁ…これ?
手紙を書こうと思ったんだけどね…難しいものだね、手紙を書くって言うのは。」
「そうか…?俺は、言葉で伝えるのが苦手な分、手紙の方が幾分か楽だが。」
その言葉に、カミューが心底驚いたような顔をした。
「――――――なんだ。」
「いや…。お前が手紙を書くのが得意だなんて以外だったから。」
「失礼な奴だな。手紙って言うのは、自分よりも遠くにいるものに伝える手段だろう。
俺は、言葉で言うよりか得意だ。」
「フゥン…」
カミューはいつになく、ぷりぷりしている様に見えるマイクロトフに感嘆詞を述べた。

「それで、お前はなんでいきなり手紙を書こうと思ったんだ?カミュー」
「え?あ、ああ。言葉で伝えても、あやふやだと思ったから、せめて形に残る様に、と思ったんだけど…
なかなか、言い分が思い浮かばなくてね。いい加減、どうしようかと思ってたところなんだ。」
「それなら、1行だけ書くというのはどうだ。」
「1行?」
「ああ。自分の気持ちを要約して立った1行だけ書くんだ。
それなら、筆下手のお前でも出来るだろ?」
「―――――――――なるほどね…」
カミューはその言葉を聞いてにやりと笑んだ。


『親愛なるマイクロトフへ』


愛してるよ。




と言った内容の手紙がマイクロトフの手の内に届くのに2、3日もかからなかったと言う


FIN.

麻生琴音ちゃんのHPにてキリ番をGetした際にリクエストしたSS。
まだまだうら若き琴音ちゃんに無茶なお願いをするわけにもいかないのに
「赤x青の甘々」なんて抽象的なリクエストをしてしまいました。
それでも本当に甘々なお話を書いて頂きまして有難う御座いますvv
甘々な話を書くのは苦手だけど読むのは大好きなので、私。



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