魔界王侯貴族が序列1位とされ、最高位最上級超常体――大魔王クラスに限りなく近しい バェル[――]。元はカナン(地中海とヨルダン川・死海に挟まれた地域一帯の古代の地名)を中心に各所で崇められた嵐と慈雨の神と云われる。かつて「バアル」と呼ばれた名はセム語で「主」を意味し、旧くは「神」そのものを表した。大魔王バールゼブブやベルフェゴールにも由縁があるというのは其の筋で有名な話らしい。
「――しかし猶太教や基督教圏で零落させられて魔王バェルとなった。バェルは様々な姿で顕れ、蛙、猫、または人間に似た姿、もしくは此れ等全てを併せ持った姿を取るという」
神話や伝承に詳しい幹部(士官)による座学に、下町・菜之花(したまち・なのは)二等陸士は、名古屋城跡で垣間見たバェルの姿を思い浮かべる。先行して突入した部隊の救援に向かった僅かな間の挑戦だったが、其の第一印象は気持ち悪い肉腫。常に其れは蠢き脈動し、人の様な顔が浮かんだり、蜘蛛の脚が突き出たり、猫の眼が見開いたり、蛙の様な粘液に塗れた肌が盛り上がったりと醜悪な姿を晒していた。
「……ああ、成程。確かに特徴は全部出ていたんだ」
菜之花の呟きに、応えるかの様に座学教官はバェルの説明を続ける。
「コラン・ド・プランシーが著わした『地獄の辞典』の挿絵では、猫、王冠を被った人間、蛙の頭を持った蜘蛛の姿で描かれていたそうです。皺枯れた声で話し、人を透明にしたり、知恵を与えたりする力を持つと。剣術の達人で戦いに強いとも書かれていたとか」
「あの肉腫で、剣を振るうの?」
触手の先に剣の様な突起物が出てきてチャンバラしてくるのだろうか? 其れは何となく厭だ。
「ちなみにカルタゴの英雄ハンニバルの名が『バアルの恵み』という意味を持ち……」
「――其れ以上は結構。説明を感謝する」
説明が興じて脱線し掛けた幹部を、名古屋城跡掃討作戦指揮官(三等陸佐)は制した。そして作戦会議に集まった一同の注目が注がれる。
名古屋城跡に潜んでいた完全侵蝕魔人の掃討と、奪われていた草薙剣の奪還作戦が行われたのが、つい先日。数体の完全侵蝕魔人を倒し損ねて逃がしてしまったものの、名古屋城の敷地内へと包囲網を縮める事には成功した。だが草薙剣の奪還は叶わず、敵の目的であるバェル顕現を阻止する事も出来なかった。だが、
「――阻止出来なかった事を何時までも悔やむよりも、バェルを倒す作戦を考える方が有意義だろう」
三等陸佐の言葉に、尤もだと菜之花も頷いた。
「しかし三佐。バェルを倒すにも火力が足りません。正に化け物と云うべき驚異の回復力に対して、通常戦力では撃破不可能です」
「其れこそ絨毯爆撃か、火砲の集中か。敵の狙撃手を倒している今、ミサイルや爆弾が撃ち抜かれる事は無いでしょうし」
「……其れで確実に倒せる保証があれば、何の苦労も無いのだがな」
三佐は大きく溜息を吐く。火力が足りないというのは、菜之花にとっても悔しいが事実だ。菜之花自慢の96式40mm自動擲弾銃改を以てしても、肉腫は瞬く間に再生した。誰かがやったが、焼夷手榴弾の火力では勢いが足りない。そして肉腫の圧力で火元が消し潰される。ミサイルや爆撃、砲弾は、だが確実に敵を倒せるという保証が無い。バェルに限らず、強力な超常体は直に活動停止を視認しなければ安心出来ない存在なのだ。爆発に巻き込んでも、土砂で押し潰しても、ヤツ等を殺せたとは云えない。隙を狙って、次の瞬間には此方の首を狙ってくるのだ。ましてや驚異的な再生力を有する異形系にもなると、心臓であり頭脳でもある核を確実に潰さなければ活動を停止させられない。
「……間接的な打撃では確実と言えず。直接的な火力では殺し足りず。どうすべきか」
重苦しい雰囲気が下りる会議室。だが菜之花は意に介さず、元気良く挙手した。
「はーい。電池を取り外せばいいんじゃないかな?」
三佐が顔を向けてくる。釣られて他の幹部や同席者達も、菜之花を注視した。保護者代わりの第10109班長が起立を促した。
「下町二士、意見をどうぞ」
起立した菜之花に、改めて三佐が口述を促した。先程のバェル説明の時間と云い、まるで学校の教室みたいな雰囲気に、思わず菜之花は笑みを漏らす。そして口を開いた。
「電池を取り外せば、機械は止まるよね?」
「……動力源が電池ならば、そうなりますね」
「――ほら、其処のモテなさそうな曹長、揚げ足を取らない。あ、下町くん、こんなモテなさ男は無視して続けて、続けて」
何だかんだと云いつつ、菜之花の意見を「子供だから」という理由で無視する事はしない。暴論的なまでの実力主義。其れが維持部隊だ。
「えぇと……突入した先行部隊からの話だと、バェルは草薙剣を呑み込む様に、覆い隠す様に、這いずり、纏わりついているんだよね? 様子を聞いた限り、コアになっている草薙剣を外せば、弱体化しそうな気がするんだけど」
菜之花の言葉に、誰かが拍手を叩いた。感化されて音が重なっていく。
「なので味方と協力して、目標周辺に火力を集中して取り外せば何とかなるんじゃないかと」
「――考えてみれば当たり前な話だ。しかしバェルばかりを頭に置き過ぎて、気が付かなかった」
「火力を集中するとして、天守閣奥へと突入する者の選出はどうします?」
「前回の包囲戦で、魔人の多くが休ませてもらっているからな。バェルの中核――草薙剣へと辿り着くぐらいの志願者は選り取り見取りだろう」
意見が出し合われ、作戦が練られていく。
「問題は……バェルが発する強制侵蝕現象の波動だな。此ればかりは根性で耐えろとしか言いようがない。下町二士、行けるかね?」
三佐の質問に、だが菜之花は元気良く首肯して返すのだった。
旧・五十鈴公園に張った、伊勢分屯地。発電機器や配電盤を点検する施設科の隊員は、警務科の 荒金・燕(あらがね・つばめ)二等陸士に振り返ると異常が無い事を伝えた。
「……もう、他に仕掛けられていないのか。其れとも別の処に隠されているのか」
顔半分を隠す仮面の奥で、目を細める。引き続き点検と確認をお願いすると、定例の作戦会議へと出向する。席に着くなり、隣にいた同僚が口を開いた。
「――先日の戦いで捕虜となった敵兵だが」
「武装や状況からして米軍なのは間違い無い。其れが何か?」
「……米軍基地や在日大使館や領事館を問い詰めても、素知らぬ顔して『存ぜず』だと。なら伊勢湾に居座っている艦隊や、そして二見に上陸した海兵隊は何だと怒鳴ってやった」
同僚の度胸に頼もしく思うと同時に、恐れ知らずなところには冷や汗を掻きながら、
「……で、何と?」
「超常体が活発化しており、同盟国である日本の維持部隊を護る為に派遣している、という事だ」
予想していた返事に荒金は重く溜息を吐いた。
「ヘブライ神群――天使共に襲われているのを逆手に取った訳だ。とはいえ戦力を維持出来ているのか?」
亜米利加合衆国軍海兵隊は世界有数の打撃部隊であるが、其の本質は奇襲や強襲にある。敵地に上陸し、橋頭保を築いたとしても兵站が続かなければ1週間も保たないという分析もあった。
「戦線維持の為の、伊勢湾に陣取っている第七艦隊だろうが……どうも動きが変だという分析が出ている」
「――動き?」
同僚の言葉に、荒金は訝しげな表情を浮かべた。
「……動きといっても、戦略とかいった大まかな動きだ。どうも米国軍に統一的な意思が見当たらないというか何というか」
「――ヤンキーの派閥は大まかに2つだニャン。1つは国務長官のゲイズハウンド派、もう1つはルーク・フェラー大統領補佐官。尤も派閥と言うより、どちらの意向がより強く出ているかと言った方が正しいだろうニャン。そして米軍の大半の兵士は、どちらに付いている訳でもなく、祖国と残された家族の為に与えられた任務をこなしているだけ……という話だニャン」
突然、横から口を出してきたのは 化野・東雲[あだしの・しののめ]陸曹長。内宮を護る近衛隊――別名“侍女隊”もしくは巫女隊を指揮するWAC(Women's Army Corps:女性陸上自衛官)は先日まで安静を言い渡されていたのが嘘のように、調子が良さそうだった。
「完治したのか」
「ばっちしニャン。但し相手も同じ条件だから注意するニャン」
化野は5月頭にて阿剌伯諸国連合の特殊部隊の指揮官――其の正体は完全侵蝕魔人と相討ち。怪我が癒えるまでの間、戦闘行為を禁止されていたのだ。其の化野が戦線復帰するとなれば、同じく敵も戦線復帰してくるというのは予測に難くない。
「確かに……此れまで以上に阿剌伯諸国連合の特殊部隊に対する警戒度を上げておく必要があるな」
「両面作戦か。面倒だな……」
同僚のぼやきに、だが荒金は暫し熟考。そして口を開く。
「いや……目の前に居るのは米軍だ。従って、主たる敵は米軍を予定しよう。普通科部隊にも其れを心掛けてもらわなくてはならない。阿剌伯の特殊部隊の襲撃があったからといって浮き足立つ訳にはいかない」
「なら、従来通り、近衛隊に阿剌伯特殊部隊は任せるニャン」
語尾や癖のある髪がもたらす印象通りに、猫みたいな舌舐めずりをする化野。だが、
「――いや。私も阿剌伯特殊部隊を引き受ける」
荒金の申し出に、化野や同僚だけでなく、いつの間にか耳をそばだてていた周囲の者も眉間に皺を刻んだ。注目が集まっていたのを認識して、荒金は周囲を見渡す。警務隊伊勢派遣隊長(二等陸尉)だけでなく、伊勢分屯地の司令官たる第33普通科連隊の中隊長(三等陸佐)とも目が合った。
ヤレヤレと苦笑しながら、
「何、倒せずとも倒されなければ目的は達成出来るのだから、不可能では無いだろう。不可能な時には死んでいるので後のことは気にしない」
「……無責任極まりないな」
荒金の苦笑に、中隊長も頭を掻いて応じた。表情を改めると、
「とはいえ、みすみす、歴戦の勇士を死なせる訳にはいかん。貴官1人だけとはいえ古強者に死なれたら、戦線は辛くなるものだ」
化野へと言い聞かせているようにも思える。化野率いる内宮近衛隊は、いざとなれば伊勢分屯地司令官の指揮系統から独立して行動出来るが、其れでも全体の士気に関わる。先日までの戦闘禁止令はそういう意味もあった。
「荒金二士は内宮近衛隊に出向。化野曹長とバディを組んでもらって、阿剌伯特殊部隊に当たれ。阿剌伯特殊部隊だけでなく、米軍の完全侵蝕魔人もまた本隊とは別行動しているようだから気を付けろ」
敬礼して応じる、荒金。そして作戦会議が終わり、化野に連れ立って内宮の奥殿警備へと向かう。
「……さて。アタシが調べてきた敵情報を教えておくニャン」
「いつの間に調べていたんだ?」
「戦闘に参加するのを禁止されていた時に。戦闘キャラだからといっても、情報ぐらい集める行動は出来るものだニャン」
語尾は兎も角、何だか説教されているように思えて、荒金は複雑な表情を浮かべる。
「別に、荒金だけに対しての事じゃないニャン」
「メタ入ってないか?」
気の所為だニャンと返すと、化野は話を再開する。
「先ずアタシと戦って相討ちになったヤツ。多分、正体はヘブライ神群系の完全侵蝕魔人」
ヘブライ神群と一口に言ったものの、基督教もイスラーム、そして猶太教は「セム族の啓示宗教(アブラハムの宗教)」の伝統を受け継ぐ。そういう意味ではヘブライ神群というよりもアブラハム神群という呼称が相応しいだろう。
「しかしヘブライの神は偶像崇拝を嫌う。今でこそ十字架に掛けられた基督像や、聖母像だけでなく宗教画も認められているけれども、本来は全て背教だニャン」
イスラームの一部過激派が、其の点で厳格なのはよく聞いた話だ。アブラハム神群という呼称だと、アブラハム其の人を神に看立ててしまう誤解を生むので宜しくない。
――閑話休題。
化野は個人携帯端末で情報を開くと、
「名前は、アズハル・アービド・アースィム。階級は少尉に相当。操氣系。そして“神の救い(アズラエル)”の受容体だニャン」
“ 神の救い( アズラエル[――])”はイスラームにおいて死を掌る天使の名だ。片手には全ての生者の名を記した書物を持ち、人が死ねば其処から名前が消えるという。全身に無数の目や口、そして舌を持ち、人の罪を見て、語り、そして裁くのだと伝えられる。
「更にアズハルと並ぶ戦士がいるニャン。内宮に来ずに、米海兵隊の上陸を邪魔していたのは、コイツ――イーハーブ・イフラース・イルファーンだニャン」
能力は幻風系らしい。直接、相対した訳ではないが、イーハーブも完全侵蝕魔人――最高位最上級超常体の受容体なのは想像に難くない。
「イスラームで有力な天使は4柱。其の内、ミカエルとガブリエルは京都にいるから……」
「消去法だと、残る1柱がイーハーブの正体だな」
荒金の言葉に、化野は首肯する。
残る1柱は、“ 神の音( イスラフェル[――])”。音楽を掌るが、最後の審判の裁きを知らせる喇叭を吹くと謂われている。
「イスラフェルが審判の刻を告げ、アズラエルが死をもたらすと……穏やかな話ではないな」
苦笑するしかない。荒金は肩をすくめると、
「どうやら防衛に専念して持久戦に持ち込み、時間切れの勝利を目指すしかないな」
だが荒金の言葉に、化野が何とも言えない表情を浮かべた。其れに気付かず、荒金は言葉を繰り返す。
「――防衛に専念すれば、どの勢力が襲ってきても対応できる。と、信じるしかない」
そう、噛み締めるように呟くのだった。
敬礼もそこそこに ラリー・ワイズマン(―・―)二等兵は、椅子へと強制的に座らせられる。拘束されていないとはいえ、両腕は腰の後に回させられた。背後に控えるのは、コルト9mmSMGを手にしたMP(Military police:憲兵)2名。そして正面には米海軍第七艦隊・第79任務部隊の将校3名が座しているが、ラリーを照らし出すライトの逆光により、容貌は判らなかった。
「さて、ラリー・ワイズマン。提出された情報に偽りは無いな」
まるで簡易な軍事法廷だ。上官を誤射して投獄された忌まわしい記憶が浮かび上がり、ラリーは顔をしかめた。背後に控えていたMPの1人が警棒で肩を打つ。突然の激痛に声を上げた。
「質問には速答しろ、ラリー・ワイズマン。当然、語尾にはSir.を付けろよ、くそったれ」
「Yes Sir...」
奥歯を噛み締めながら、将校達へと向き直る。
「偽りは在りません。Sir.」
「当然だ。此の程度の仕事ぐらい、こなしてもらわなければならん」
「……しかし日本軍を消耗させたようには思えませんな。犯罪者や悪魔憑きは役立たずにしか過ぎないという事ですか」
侮蔑の混じった溜息を漏らしてみせる海兵隊将校達。そのままラリーは報告書に上げた内容を繰り返させられ、其の度にいちゃもんをつけられてMPに殴られた。
――此れは憂さ晴らしなのだ。米軍海兵隊は超常体の襲撃によって作戦を予定通りに進行出来ず、また消耗が激しい。将校達はラリーを痛め付ける事で憂さ晴らしをしているのだ。
だが飽いてきたのだろう。将校達はラリーからの報告を確認すると、MPに命じて下らせるように促した。呻き声を漏らすまいと耐えていたラリーだったが、MPに席を無理矢理立たせられようとした時、思い切って将校達へと顔を向ける。
「……何か言いたそうだな、ラリー・ワイズマン」
「イセ攻略に意見具申があります。作戦立案書を添付しておいたはずですが」
其の瞬間、ラリーはMPに激しく殴り倒されていた。海兵隊将校達は冷たくせせら笑うように見下ろす。
「身の程を弁えろよ、ラリー・ワイズマン。お前は二等兵だ。一兵卒ですらない。しかも誇りある海兵隊ならば、不名誉除隊とされる犯罪者だぞ」
「そんなお前が作戦立案? ふざけるな、何様のつもりだ。黙って命令に従って、そして戦いながら死ね」
「……日本では上官に逆らい、勝手な行動しても咎めなしという軍規が無い状態だと聞く。まさかステイツの海兵隊が、そんな野蛮な集団と同じだと? それとも、お前が居たU.S.Armyがそうだったのかね?」
そして連れて行けとMPに命じる。両腕を捕まれたラリーはMP達に乱暴に引き摺られたのだった。
MPに乱暴に扱われて帰ってきたラリーを、リリア・エイミス(―・―)二等兵が慌てて手当てに駆け寄った。MPはリリアに対しても居丈高に態度に出ようとするが、ゴロー・ヤマデラ[―・―]軍曹の姿を見ると、慌てて最敬礼。逃げるように去っていった。
「まぁ……先遣部隊として自由に動けていた頃と同じように考えていたら、こうなるな。とりあえずラリーは傷を癒せ。悔しさは敵にぶつけろ」
ゴローが頭を掻きながら、ラリーに肩を貸すと、寝台へと運ぶ。そしてリリアに振り返った。
「という訳で第79任務部隊として行動すると、今までのような勝手は許されなくなる。とはいえ、もう少しやりようがあったと思うんだが……何で、ラリーは本隊の作戦を立案しようとしたんだ?」
「よく解らないけど……其れもまたラリーに対して海兵隊のお偉いさん達が冷たく当たっている原因の1つ?」
憑魔に寄生されて日本に送られるまで普通のスクールライフを満喫していたリリアには、軍隊という組織がよく解らない。
「下っ端の鼻摘まみ者が、部隊全体の行動に口出してきたんだ。普通の組織だったら睨まれるに決まっている。……其れが正論だとしても」
「――なら、ラリーが立案した作戦は……」
「参考にはされるさ。だが――最終的に無視されるだろう。そして作戦立案を担当する将校は、ラリーの意見を潰すようなモノを対抗して並べていく」
そして結果は惨めなものになるだろう。
「……後味の悪い話ね。莫迦な命令に従わなければならない皆が可哀想だわ」
「其れが軍隊っていうものさ。猊下――フェラー大統領補佐官が直接乗り込んで来たら、無能な連中は一掃されるだろうけれどもな」
「其の大統領補佐官は今頃何を?」
「札幌を発ったという報せは来ている。夏至の日までにはキティホーク(※註1)に乗艦なされるらしい」
ゴローは淡々と告げると、整備していたM16A4アサルトライフルを手に取った。
「……さて。俺とシイナは本隊とは別に行動し、神宮の侵入を図るが、お前達はどうする?」
声を掛けられて、リリアは熟考。ラリーは軍人だ。邪険に扱われようとも、使い捨てにされようとも、本隊と行動するようだが、リリアは狙撃の腕を買われているとはいえ其処までの意識は無い。戦友は大事だ。しかし……
リリアはゴローに改めて向き直ると、口を開いた。
日を追うごとに、そして時を経るごとに、バェルから発せられる波動の強大さが増していく。遠方からも波動は憑魔核を恐怖で震わせ、魔人の隊員達を心身共に脅かしていた。人間は慣れの生き物だと云うが、刺激に対する痛みには鈍くなっても、重く圧し掛かる氣には馴染む事は出来ない。
波動だけでなく肉腫の大きさも当初の3m程の大きさを遥かに超えており、今や20mを超し、天守閣本体の半分を占拠していた。
魔人で無い者にも影響を及ぼす強大な存在感に、だが維持部隊は互いに声掛け、励まし合う事で、機会を待っていた。
『――報告。予定時刻を10分程遅れましたが、配置完了しました』
「……よし」
名古屋城跡掃討作戦指揮官の三等陸佐は送信機を手にする。通信科隊員だけでなく、徒歩や偵察用オートバイで伝令を担う普通科や機甲科の隊員までが一字一句、命令指示を聞き逃さぬように傾注した。
「――各員、奮闘せよ。状況を開始する」
続いて三佐の指示に沿って、幹部達が令を発する。守山駐屯地奪還戦に引き続いて、豊川から支援に駆け付けた第10特科連隊が、155mm榴弾砲FH70サンダーストーンで轟音を撃ち放つ。続いて、名古屋城を包囲している96式装輪装甲車クーガーの隊列が、搭載している96式40mm自動擲弾銃で40mm×56対人対戦装甲擲弾を連打。
「すっごぉぉーーーい!」
目を輝かせる菜之花に、第10109班の先輩達が苦笑。だが班長が手を叩いて注目を集めると、一同の顔が引き締まる。第10109班長は教師然とした風貌のまま、眼鏡の位置を補正した。そして学級会の始まりを告げるように、声を発する。
「――それでは遠慮なく、惜しみなく、皆さんの持てるだけの力をぶつけなさい」
第10109班だけでない。第10107班長の 鳥羽・沙織(とば・さおり)三等陸曹が声を張り上げる。
「――突入!」
砲撃支援を受けながら、機甲車輛を所有する普通科班が、一斉に名古屋城へと突入を始めた。
――憑魔覚醒。侵蝕開始。半身異化状態に移行。
充分に休養を得た魔人隊員達が憑魔能力を解き放っていく。特に操氣系魔人は氣の防護障壁を展開するとバェルから発せられる威圧感を緩和してくれた。そして氣の障壁の隙間を、逆に銃眼と見立てて強化系魔人が12.7mmブローニングM2重機関銃キャリバー50を連射する。菜之花も負けじと自慢の96式40mm自動擲弾銃改でバェルの肉腫を削っていく。
「……とはいえ、やはり再生力が半端無い」
先輩の苦悶の混じった呟き。だが、
「それでもドンドン突き進んじゃうよっ!」
屈託なく菜之花が笑う。身体から発せられた雷光が96式40mm自動擲弾銃改に寄生する憑魔の餌となって、発射される40mm対人対戦装甲擲弾の威力を増していく。無尽蔵に再生してくる肉腫の触手を、火勢で以て寄せ付けない。
クーガーで出来る限界まで接近してから降車。最大火力を有する菜之花を護るように、降車した第10109班員だけでなく、多くの魔人隊員が集まってくる。菜之花が纏うのは学生服に似たデザインの白いインターセプターボディアーマー。肉腫に囲まれ、炎を撒き散らしながらも自然と目立つ。まさに戦場の白い悪魔。
「――天使とか、妖精でなくて?」
「そんな、おっかない妖精は厭だ」
銃声が轟く中、笑い声が上がる。辛い戦況だが、前進あるのみ。操氣系魔人が防護壁を張り、強化系魔人がキャリバー50や84mm無反動砲カールグスタフを振り回す。89式5.56mm小銃BUDDYの列が弾雨を降らせ、菜之花の96式40mm自動擲弾銃改が立ち塞がるモノを焼き払っていく。
そして――白い悪魔に率いられた戦闘集団は目的地に到達。氣を探知していた沙織が草薙剣を指し示す。
「――いっくよぉ! 邪魔だぁ、どけぇぇぇぇっ!」
指し示す方向へと最大の力を叩き込んだ。沙織が悲鳴を上げる。
「草薙剣まで壊すなよ!」
だが沙織の心配は杞憂に終わった。菜之花の最大火力を叩き込んでも尚、草薙剣は燃え尽きておらず、無傷。そしてバェルの肉腫もまた焼き焦がされながらも草薙剣を還さぬとばかりに絡み付いていた。周囲からも再生してきた肉腫が再び草薙剣を呑み込まんと、覆い隠す様に、刀身を這いずり、纏わりつこうとする。沙織が、魔人隊員が、草薙剣へと手を伸ばした――。
「もらったぁぁぁぁぁっ! イェイ!」
誰よりも、ナニよりも、草薙剣の束(つか)を握ったのは菜之花。瞬間、其の場に居た全員に声が聴こえてきた……。
『――我を解放せよ。異邦の神の戒めから解放せよ。我が名を呼びて、解放せよ』
語り掛けてきたのは草薙剣? 否――
「剣の中に、また異なる神が封じられているのか?」
沙織が瞠目した。草薙剣の更なる内側に封じられている神の存在に、操氣系能力が気付いた。
「でも封じられているって言われても、どうやって解放すれば? 叩き折るとか? 確かに見た目は直ぐにでも壊れそうだけど」
菜之花の言葉の通り、草薙剣は広刃の直剣であるが、どうやったのか知らないが美事なまでに中心から分かたれており片刃となっている。其の分、強度を失っているように思えて、だが菜之花の攻撃にも無傷で耐えて見せたのだ。
そもそも如何なる神が封じられているというのだ? 熱田神宮の主祭神は草薙剣を神体とする熱田大神、そして相殿神として 倭建命[やまとたけるのみこと]が連ねる。熱田大神は草薙剣の神霊と云われるが、一般の見解では天照大神の事であるとしている。だが熱田神宮創建の経緯を鑑みるに倭建命と非常に関わりが深い。従って熱田大神は倭建命のことであるとする説も根強い。
(……しかし此の世界で魂の存在は無い。此れは絶対だ。従って倭建命が封じられている可能性は低い)
倭建命が特定個人の英雄でなく、実は特殊な任務に就く集団としての名という説もある。だが其れにしても其の中の1人が神として封じられている可能性は考えられなかった。そうだ、封じられているのは神1柱であり、1人ではない。
――そして草薙剣とは何か? 建速須佐之男命が八俣遠呂智を退治した時に建速須佐之男命が尾を切ると剣の刃が欠けたという。其の尾の中から出てきたという天叢雲剣の別称が、草薙剣だ。建速須佐之男命は天羽々斬(アメノハバキリ)という剣で八俣遠呂智を退治した。天羽々斬は10束の長さの剣――十束剣(十拳剣)であり、束は長さの単位で拳1つ分の幅らしい。記紀では天羽々斬の他にも十束剣とされる剣が存在しており、有名なモノでは伊邪那岐が……
其処まで思案に暮れていた沙織を、菜之花の悲鳴が呼び戻す。草薙剣を失った事で無尽蔵の再生力は失われたが、肉腫の勢いが止まる事は無かった。
「電池を取り外したら、弱体化すると思ったのに」
「再生しなくなっただけマシだが……」
草薙剣に封じられている神を解放すれば、バェルを抑え込む事が出来るか? だが疑問に答える者は無く、そして――
膨れ上がっていた肉腫が収縮していく。瞬く間に強靭な肉体の偉丈夫となった。右掌の内側から骨を突出すると、鋭利な刃と変わる。そして偉丈夫――バェルは、草薙剣を手にしている菜之花を向いて、不敵な笑みを浮かべた。威厳と凄みを持つ笑みを向けられて、菜之花は頭の底が冷えていく感覚を覚える。小さく不規則な音が場を支配する。其れが、震えて自身の歯が鳴らしている音だと、菜之花は気付かなかった。
「――って、全裸で凄んでんじゃねぇよ!」
強化系魔人が担いでいたカールグスタフを撃ち放つ。遅れて他の隊員達もBUDDYで弾雨を降り注ぐ。だが、
「……当たらない?」
バァルは驚異的な身体能力で弾雨を避けていた。そして手にはカールグスタフから発射された多目的榴弾HEDP502を掴んでいる。
「――目標は果たした! 一時撤退する!」
バァルが多目的榴弾を投げ返してくる直前に叫ぶと、沙織は閃光発音筒を放った。閃光に紛れて菜之花達は脱出を試みる。だが数人は逆にバァルへと立ち向かっていっていた。逃げ切る時間稼ぎに殿を買って出たのか、其れとも功を焦ったのか、解らない。次の瞬間に彼等はバァルから放たれた雷光に打ち撃たれたからだ。
「小さくなったんじゃないな……贅肉を振り絞って、より強靭になったんだ」
「隔離前に流行した格闘アニメに出てくる悪役――フ●ーザ様みたいなものかな!?」
「喩えが判るような、判らないような……まぁ、多分大体そんな感じだな!」
そして菜之花達は犠牲を無にしないよう、全力で撤退したのだった。
天守閣の奥からバァルが追撃してくる事は無かった。だが草薙剣を再び奪取しようと狙ってくるのは予測が付いている。其の草薙剣の扱いについては未定のまま。神が封じられているのは確かだが……
「神の名を当ててみろ、ね。難しいなぁ。熱田神宮で祀られていた神様の名前じゃないんだよね? 調べ物は苦手なんだけどなぁ」
「もっと勉強をしなさいという神様の思召しですよ」
草薙剣を見詰めて呟く菜之花の姿に、第10109班長が溜息を漏らすのだった……。
米軍海兵隊の幹部連に蔑視されようとも、肩を並べて戦う末端の兵卒に、ラリーの存在は受け入れられていた。勿論、海兵隊流の『手荒い歓迎』があった事は言うまでもない。
結局のところ、ラリーが考案した作戦は採用されるどころか表沙汰になる事も無く、キャンプ・イセの制圧を試みる戦闘は開始された。其れでもラリー達が事前に収集してきていた情報は活用しない程、莫迦では無かったらしい。だが、
「Sit! また墜とされやがった!」
歩兵にとって頼みである航空支援。其れを担うF/A-18Eスーパーホーネットが双翼の人型超常体――阿剌伯諸国連盟特殊部隊の完全侵蝕魔人によって次々と撃墜されていく。最早、完全に異形と化した阿剌伯諸国連盟特殊部隊員。数は少なくとも、其の機動力はスーパーホーネットを軽く凌駕する。航空優勢を確保するどころではない。イセ上空は魔人によって蹂躙されていた。
「――イセ湾や、揚陸作戦の時の比じゃねぇ」
伊勢湾上ではプリンシパリティやアンカンジェルに率いられたエンジェルスに航海を妨害された。揚陸作戦では阿剌伯諸国連盟特殊部隊の襲撃に遭った。だがエンジェルスといった低位超常体の姿は無くとも、異形の姿を晒した阿剌伯諸国連盟特殊部隊は、最大の脅威として『クルセイダー』作戦を阻害していく。
単体に於いて、魔人は戦車や航空機に優る戦力だ。米軍にも魔人がいない訳ではない。だが暴論なまでの実力主義が横行する日本国軍と違って、米軍では思うように統制が出来ない。――否。統制しようとして、逆に魔人の力を阻害しているのだ。そうと考えれば、暴論なまでの実力主義と思われていた日本国軍の有様は、魔人を効率的に活躍させる為の方便ではなかったのか? そしてスタンドプレーに走りながらも、利己に陥るだけでなく、全体の和や利益を重んじる日本国軍人達。日本人の社会性や精神を思い知ったような気がした。
其の日本国軍人達もまた、米軍の任務を邪魔せんと立ちはだかる。米軍からの呼び掛けに応えない。通信傍受したところ第79任務部隊の作戦進行は超常体の群れによる強襲として扱われていた。日本国軍人が扱うアサルトライフルから発射されるのは火薬量を調節した弱装弾だ。ボディアーマーを貫通する事は無いが、衝撃を全て緩和する事は無いし、また撃ちどころが悪ければ危ういのは変わりない。そして先程言った通り、魔人が脅威となる。ラリー達が事前に地勢を調査していたとはいえ、アウェイに違いない。魔人や、そうで無い者も神出鬼没に振舞い、米軍を掻き回す。
「グランパが話していたベトナムを思い出すぜ」
「俺は親父から厭になるほど聞かされたな」
廃墟に立て籠もり、無駄口を叩く海兵隊員達。監督する先任軍曹も注意する余裕は無いようだ。
「……艦砲支援は無いのかよ!」
イセを制圧するのが目的だ。イスズ・パークにあるキャンプ・イセへの艦砲やトマホーク発射は行われているようだが、日本軍人もまた護るべき対象が何であるか理解しているらしい。キャンプ・イセは拠点であるが、日本国軍人の防衛を優先すべき対象ではない。彼等にとって灰燼となっても問題無い――切り捨てるべき対象なのだ。制圧に向かった部隊を嫌がらせとして足止めしても、死守しようとは思っていなかったようだ。時間が掛かるものの、キャンプ・イセの制圧は何とかなるだろう。
だが本来の目的地の制圧は全く以て進んでいない。日本国軍人による抵抗に加えて、阿剌伯諸国連盟特殊部隊の妨害という横槍が大きい。戦場は三者が入り混じっており、数に優るはずの米軍が今のところ一番の劣勢だ。そして目的地への爆撃や砲撃は禁止されていた。結局のところ米軍上層部はイセを可能な限り無傷で押さえたいのだ。従って被害が甚大となる攻撃は禁止されている。
「――来たぞ。最大の敵が」
航空優勢を手にした阿剌伯諸国連盟の特殊部隊。其の完全侵蝕魔人の半数を率いる青年、イーハーブ・イフラース・イルファーンが悠然と姿を表す。六翼を生やした異形の姿を晒して、周囲の米海兵隊を血祭りに上げていた。
「戦友を救え!」「Sir, Yes sir!」
半ば自棄になりながらもM16A4アサルトライフルで弾幕を張る海兵隊員達。ラリーもまたM240Bravo 7.62mm機関銃で支援する。
「おい、ラリー! ブラボーなんてアーミー上がりらしいな! 重すぎねぇか? ゴルフみたいにダイエットしろよ」
「使い慣れたモノが一番だ!」
銃声に負けじと声を張り上げる。声を上げる事で湧き上がってくる恐怖心を拡散する。5.56mmや7.62mmのNATO弾の雨を、だがイーハーブは能力で生み出した爆風で直撃を逸らす。返す手で衝撃刃を放ち、荒れ狂う風が新たに死体を増やしていく。
「――作戦は失敗だ。一時撤退する」
悔しそうに分隊長が歯噛みした。が、其の瞬間、日本国軍の緊急の喇叭が戦場を割って、高らかに鳴り響いた。戦場の空気が変わり、イーハーブが始めて焦りと怒りの表情を見せた。
「……もしかして別部隊がVIP接触に成功したか?」
ラリーが思わず呟く。いずれにしても阿剌伯諸国連盟特殊部隊も姿を消した。日本国軍との睨み合いは続いているが……
「戦友達の身を確保しろ! 必ず故郷へと、家族の元に帰してやるぞ」
死傷した戦友達の回収を急ぐ。其の中でラリーが疑問を抱いた。
「VIPの身柄を押さえたにしては様子がおかしい……」
空気が変わった事で心身が少しばかり軽くなったような気はする。だが――
『――急げ! 超常体の群れが突然発生した!』
通信兵からの伝達に、色めき合う。超常体だと? 阿剌伯諸国連盟特殊部隊の完全侵蝕魔人でなくて?
『――デーモンの群れだ。インプやグレムリン、リザドマン……日本人が魔群と呼んでいるグループだ!』
『今のところ、新たに現れた超常体の群れから米軍への被害は無い。……日本国軍や、阿剌伯諸国連盟特殊部隊への攻撃は確認されているが』
矢継ぎ早に送られてくる情報に、ラリー達は顔を見合わせる。
「デーモンの群れが、ステイツの味方気取りって訳か? 何が起こっている……?」
――時間は遡る。
米軍の攻勢が始まった事に、素早く第33普通科連隊の中隊長(三等陸佐)は指示を出した。先ず分屯地の放棄を視野に置いた上で、伊勢神宮の防衛。そして久居駐屯地の第33普通科連隊司令部に応援要請。
「阿剌伯の完全侵蝕魔人もまた利用しよう。だが充分に気を付けろ! 利用はしても、信頼するな。今のところ米軍を仇敵にしているようだが、次の瞬間に矛先が此方へ向かってくる危険性は高い」
敬礼で応じる幹部達。指示や注意事項が伝わっていく。それからと付け加える。
「……ああ、肝心の事を忘れていた。『米軍による侵攻なんて目の錯覚だった。同盟国であり、誇りある亜米利加合衆国が火事場泥棒のような卑怯な事をするはずがない』――従って襲ってくるのは人に擬態した超常体の群れだ。我々は此れを迎撃する。まぁ、我々は優しくて寛大だから、せいぜい脅して追い散らすだけにしてやろう。……以上だ」
三佐の言葉に、失笑が漏れた。
そして阿剌伯諸国連盟特殊部隊の完全侵蝕魔人が入り混じる、対米防衛戦が開始された……。
阿剌伯諸国連盟特殊部隊の完全侵蝕魔人は米軍への攻撃だけでなく、やはり伊勢神宮へと侵入を図ろうとしていた。率いるのはアズハル。迎え撃つのは化野が率いる内宮近衛隊と、タキシードの仮面戦士。
「よく考えなくても……コメディな光景だニャン」
「……私だけを批判せずに、先ず近衛隊の巫女姿を何とかしてくれ」
化野の喋りに、荒金は仮面の下で溜息を漏らした。だが敵の接近を感知して、気を引き締める。
「阿剌伯諸国連盟特殊部隊――アレは、もう人間辞めてるニャン。仮呼称としてザバーニーヤというのはどうだニャン?」
「ソレは何に由来するのだ?」
「イスラームの『クルラーン』に記されているというジャハンナム(地獄)を管理する天使の名前だニャン。ヘブライ神群に感化された完全侵蝕魔人はドミニオンやパワー、ヴァーチャーに変ずるというけれども、イスラームの阿剌伯諸国連盟特殊部隊に、基督教由来の呼称を付けるのは色んなところから怒られそうだからニャン」
「メタいぞ、本当に……。――来たぞ!」
双手に其々携えたFN P90(ファブリックナショナル プロジェクト ナインティー)から5.7×28mm弾が放たれる。其れを合図に、突入してきたザバーニーヤへと近衛隊が一斉射撃。被弾したものの、氣の防護膜を展開していたのか、直ぐに体勢を整えてステアーAUGで反撃してくる。氣弾が荒れ狂い、手榴弾が爆発する。仕掛けていた指向性対人地雷M18クレイモアが爆風と弾体でザバーニーヤの1体を吹き飛ばした。
弾丸が行き交う戦場を支配するのは3つの影。強化された身体能力で敵に接近して、双のFN P90を叩き込むのは荒金。異形系マントがザバーニーヤの弾やナイフを絡み取り、また氣の防護にて直撃を緩和する。Mk2破片手榴弾を絶妙なタイミングで置き土産。
化野もまた、練った氣を組み合わせての、銃剣による刺突と、9mm自動拳銃エムナインで急所を抉る。近衛隊の銃撃支援を存分に受けて、ザバーニーヤの息の根を止めていく。
だが、そんな2人でも――
「……成程。化野曹長が苦戦する訳だ」
アズハルが変じたアズラエルが猛攻に対して、冷や汗を感じる。ステアーAUGも使うが、脅威なのは放つ氣弾。大砲の如き破壊力と、正確無比な命中率。人型のミサイル発射装置と呼称するに相応しい。また巧みな体術で、荒金の攻めを捌こうとする。
「格闘技術に関しては合格点だ。――だが、未だ上があると知れ!」
アズラエルの反撃を、荒金は更に巧みな動きで捌き返す。其々、雷光と火炎を纏ったFN P90を突き付けた。連打。本体下部の排莢口から、空薬莢が排出されていく。零距離からの発射にも関わらず、氣の防護膜が貫通と衝撃を緩和させて、アズラエルに致命傷を与えられない。だが防護膜の上から、圧し通す蹴撃。銃弾への防御体勢で棒立ちとなっていたアズラエルの右脚を踏み抜いた。声にならぬ苦悶を上げるアズラエル。怒りが氣の塊となって、荒金へと向けられたところに、化野が練った氣を纏わせた銃剣を投擲。首に、肩に、翼の付け根に、そして腰へと突き刺さる。
「――くたばれ」
雷光と火炎が合わさった銃撃が、アズラエルの頭部へと集約。断末魔の絶叫を上げさせる間も与えずに、止めを刺した。
アズラエルを倒し、伊勢神宮に突入してきたザハーニーヤの掃討戦に移る。1、2体は逃したものの、防衛には成功したと言えよう。それでも……
「近衛隊の被害は?」
「1名死亡。3名重傷だニャン。他にも軽傷者多数。タキシード仮面の助けがあるからとはいえ、流石に無傷で終わらなかったニャン」
其れでも本格的な突入作戦に対して被害は少ない方と言えるだろう。
「……阿剌伯諸国連盟特殊部隊は、未だ別働隊が生きてるニャン。其れに、べ、べべっ、米軍に擬態した超常体の群れもまた健在。五十鈴の伊勢分屯地が陥落するっぽいニャン。三佐が放棄を決定したニャン」
「久居からの増援は?」
「明朝には到着。包囲網を展開するだけでなく、二見のちょーじょーたいの営巣地への打撃部隊を向けてくれるみたいだニャン。問題は湾上の艦隊――に擬装している大型海棲超常体だニャン」
いちいち言葉を置き換えるのが面倒臭い。兎に角、イスラフェルが率いる阿剌伯諸国連盟特殊部隊は未だ残っており、米軍の進攻も終わっていない。伊勢神宮の護りもまた固め直す必要が――。
荒金が次へと思い巡らせていた時、内宮の奥より緊急の喇叭が戦場を割って、高らかに鳴り響いてくる。そして伊勢の空気が変わったように感じた。化野が慌てて走り出した。荒金も直ぐに反応。
「――最終防衛線を突破された!? 殿下の身が危ないニャン!」
近衛隊も続く。奥殿に辿り着いた化野達を出迎えたのは苦痛を漏らして倒れ伏す巫女達。負傷した巫女達が語るには、奥殿への潜入を果たしたのは米軍の少女2人。其れから正体を現した2柱の魔王だという。
「――殿下の身柄を速やかに奪還しなければならない。そして『神の門』が開かれるのを阻止しなくては……」
……阿剌伯諸国連盟特殊部隊が内宮へと突入を図ってきたのと同じ頃。
「――シャーマンというのか、それともジャパニーズ・ゴッズのシスター? 兎に角、そういう奴等が未だ数人は残っているよ」
双眼鏡で内宮奥殿の辺りを探っていた相棒の マリー[――]が悪態を吐く。混戦模様のイセ周辺。すぐ南側の山林では日本軍の内宮近衛隊と阿剌伯諸国連盟特殊部隊が死闘を行っている。だがリリアは戦場に生じた空隙を縫うようにして、内宮の奥殿手前まで潜入を果たしていた。
皇大神宮の領域を分断するように東西に流れる川に掛かる風日祈宮橋。其れより内に土嚢や家具を積み重ねて作ったバリケードで警戒待機している近衛隊の巫女たちの姿が見える。向こう側に隠密行動が出来るような陰は少ない。ましてや渡河する際に姿を見せ、物音を立てる危険性がある。
「なるべく戦闘は避けてきたけれども……」
見える限り相手は3人。だが全員が魔人だと判る。狙撃で排除出来るのは幸運が続いても2人が限度。3人目でリリアとマリーの隠れ潜む場所まで接近。何とか倒せたとしても、敵の応援が駆け付けてくるまでにVIPと接触出来る時間や余力があるか?
「……ゴロー。いるわよね?」
リリアの呼び掛けに、能力で気配を消して迷彩を施していたゴローが返事をした。
「――正解。シイナも一緒だ」
「任務達成の為に協力を要請するわ。増援を呼ばれる前に敵を無力化し、VIPの身柄を確保する」
リリアに対して「了解」と答えると、ゴローと椎名は姿と気配を隠したまま、風日祈宮橋を渡って敵へと接近。姿と気配は隠せても、物音は立つ。敵もまたゴローや椎名といった姿と気配を隠す存在への警戒を忘れなかったようで、直ぐにゴロー達が居る場所へとBUDDYを向けて発砲――する直前で、閃光が走った。椎名が目晦ましを放った事で出来た敵の隙。リリアはM16A4アサルトライフルで狙撃して無力化する。姿を現したゴローと椎名が残る巫女を打ち倒し、リリアもM16A3に持ち替えて突撃した。
「止めはどうする?」
M16A4を手にしたマリーが倒れ伏している巫女の頭部に銃口を向けたが、
「――お待ち下さい。私に免じて彼女達を見逃して頂けませんか?」
凛とした声にマリーの動きが止まる。幻風系や祝祷系能力が使われた形跡は無い。だが何故かしら逆らい難い力があった。声が掛けられてきた方をリリアが見ると、10代後半の少女が奥殿から姿を現していた。日本人は年齢より幼く見えるから実年齢はもっと上かも知れない。
兎に角、生まれながら持つ高貴な気配とでも言うべきだろうか。マリーが毒気を抜かれているだけでなく、いつの間にかゴローと椎名は片膝を付いて、少女へと頭を垂れていた。間違いなく彼女が目的であるVIPだ。
「不躾ながら質問する。御身は斎宮内親王殿下に在られるか?」
「はい。昼子と申します。宜しければ貴方達も名を教えて頂けませんか?」
殿下に問い掛けられて、反射的にリリアは敬礼しながら名前と所属を告げる。マリーもまた同様だった。そしてゴローと椎名は頭を上げてから、
「此の受容体の名はゴロー・ヤマデラ。亜米利加合衆国Navy SEALs軍曹。そして俺は七十二柱の王侯貴族が16位、真紅公の称号を賜りし、ゼパルだ」
「受容体の名は椎名小鳥。亜米利加合衆国特殊作戦軍の現地協力者です。そして私は七十二柱の王侯貴族が12位、魁偉公子の称号を賜りし、シトリーです」
リリアが瞠目。マリーが思わず調子の外れた口笛を鳴らした。
「……ただの完全侵蝕魔人でなくて魔王だったのね」
「判っているモノと思っていたがな。俺が怪しいとは思ったが……本当に、正体について追及が足りなかったよ、お前達は」
呆れ口調で返すゴロー改め ゼパル[――]。椎名改め シトリー[――]は微笑を浮かべる。
さておき気を引き締め直すと、
「内親王殿下。此れよりは俺達が貴殿を拘束させて頂くが……」
「ちょっと待って。ゼパルとシトリー、あなた達の言う『俺達』とはステイツの事? 其れとも――魔王としての集団という意味?」
リリアの詰問にシトリーは困ったような顔をして、
「どちらかというと後者になりますね。勿論、ステイツに不利益にならないよう取り計らいますが」
リリアは亜米利加合衆国の人間であるが、魔王の仲間になった覚えはない。VIPの身柄を人外に渡す訳にはいかない。しかし、此の場で魔王2柱と戦って勝つ自信も無かった。其の逡巡を読み取ったのか、
「……前にも話したな。いずれ選択しなければならなくなる時が来ると。今が、其の時だぞ?」
ゼパルやシトリーを排除するか、それとも……。悩むリリアとマリー。シトリーは殿下に向き直ると、
「内親王殿下の処遇については未だ決まりかねていますが、とりあえず私達に従って頂きます。先ずは――」
「日本軍への降伏勧告。戦闘の中止と、速やかな占拠が先よね?」
答えは一旦保留してもらい、リリアは意見を述べる。だが殿下は困ったような笑顔で、
「申し訳ありませんが、私を人質にした上での交渉は通用しません。私を救出しようと働き掛けるでしょうが、だからと言って停戦は在り得ないでしょう」
殿下の言葉を裏付けるようにゼパルが溜息を吐く。
「俺達は殿下に危害を加えられないからな。其れが日本軍の連中も解っているんだ。理由は2つ。殿下に危害を加えたら――仮に殿下の命を殺めた場合、此の世界が終わる、文字通りの意味で。『遊戯』は流れる。そして2つ目――」
シトリーが苦笑しながら続ける。
「危害を加える以前に、私達では殿下に勝てません。其れ程の実力差があります。文字通り、瞬殺されます。何故なら殿下は……」
「「日本国の主神たる天照坐皇大御神の受容体で在られるから」」
ゼパルとシトリーの声が重なった。
「……人質にとったようで、実は常に緊張を強いられる危険物を身に置いている状態なのね」
「言い得て妙だが、だいたい合っている」
リリアの言葉に、ゼパルが首肯した。
「……其れでも殿下の身柄を確保する必要があります。殿下しか、此の地に隠されている『神の門』を開く事が出来ませんから」
「『神の門』?」
シトリーの説明に、リリアは疑問を投げ掛ける。確かに作戦目標は2つ。VIPの身柄を確保するのと、イセの地を占拠する事だ。つまりイセを占拠するという事は……
「本来、アッカド語でそういう意味を持つ地名。転じてシュメールに於ける『高い峰』という意味を持つジグラット(聖塔)をも表す」
「前にヒントを出したよな? 誰も正解出来なかったどころか、回答しようとすらしなかったが、答え合わせの時間だ。――伊勢は古代メソポタミアの都市国家ウルに対応する。ウルの遺跡でジグラットは有名だ。そしてバビロンのマルドゥク神殿に在ったジグラット『エ・テメン・アン・キ』――シュメール語にて『天と地の基礎となる建物』という意味を持つ遺跡は、聖書で語られる『神の門』のモデルとされており……」
「……聖書、神の門、塔――」
思い当るのは、
「――バベル!?」
驚くリリアとマリーに、殿下が微笑む。
「連想ゲームみたいな繋がりですけれども。しかし、そうと呼ばれる“モノ”――天御中主様に至る御坐が此の地に在るのは事実です」
話を聞かされてもリリアとマリーは呆然とするしかなかった。そんな2人を呼び戻す様にゼパルが咳払い。
「話が余所に行ってしまったが、とりあえず殿下に先にお願いしたい事は――影響を払ってくれ」
「致し方ありませんね。其れぐらいならば」
ゼパルの申し出に対して、殿下は柏手を打つ。そして払う仕草。途端にリリアは心身が軽くなった感じがした。目の前で行われてなければ、何が起こったのか、原因が何であったのか思い当らなかっただろう。殿下がイセに及ぼしていた影響を払ったのだ。つまり其れは殿下によって抑制されていた超常体が、力を取り戻した事を意味する。
「――此れで、ようやくインプやリザドマン程度なら呼び出せます」
「“唯一絶対主”を盲信する連中も、エンジェルスやアルカンジェルといった下っ端を呼び出してくるだろうがな。早く『神の門』を開いて勢力図を塗り固めないと――『夏至の日』まで間に合うかなぁ」
軽口を叩き合う、ゼパルとシトリー。だがリリアはそんな魔王2柱の心境が理解出来なかった。既に奥殿は日本軍によって包囲されており、殿下救出の為に突入してきてもおかしくない。戦場では米軍と日本軍、阿剌伯諸国連盟特殊部隊の三つ巴に、魔群と呼ばれる超常体の群れが加わったらしい。
聖書で語られた塔の挿話――其処でバベルとは『混乱』という意味を付加されたのではなかったか? まさにイセの地はバベルと呼ばれるに相応しい状態だった……。
其の時……あらゆる通信機器から、電波ジャックした放送が流れてくる。凛々しい女声が響き渡る。
『――諸君』
バェル攻略の為に突入路の再確認を行っていた沙織が地図から顔を上げる。
『諸君』
負傷した味方に肩を貸して、救護テントへと後送していたラリーは固い表情のままだった。
『諸君――』
女の声は、三度同じ呼びかけをし、
『――私は松塚朱鷺子、旧国連維持軍・神州結界維持部隊・西部方面隊第8師団第42連隊所属、第85中隊隊長だったもの。天草を拠点として腐れきった日本国政府からの独立を唱え、宣戦布告をしたものとして覚えておられるだろう』
弾薬の残りを受け取り、愛銃の手入れをしていた菜之花が、不安げな先輩達に笑い掛けながら、
「あははは、私に難しい事を言っても解りませんよ?」
第10109班長が、それもどうだろうかという困った顔付きになった。さておき、
『かつて、私はこう言った。――我々は、日本国に生まれ育ち、そして超常体と呼ばれる来訪者達を身に宿したというだけで自由と生存権を奪われ、その裏に己の保身と私欲に走る愚鈍な各国政府と日本国政府との間に密約があったという事を!』
放送主は一息吐き、そして爆弾発言を続けた。
『その証拠を今こそ示そう! その時が来たのだ。証拠とは――』
女の語りに、冷たい表情をシトリーは浮かべ、唾棄せんとばかりのゼパル。涼しい顔付きなのは殿下だけだ。そして放送の内容より、リリアとマリーは奥殿を包囲する外の維持部隊の動きに対して緊張を強いられていた。
『――私自身だ! 私という存在がその証拠である。私は……我こそは処罰の七天使が1柱“神の杖(フトリエル)”―― 最高位最上級にある超常体、熾天使(セラフ)である!』
何処からか奥歯を噛み締める音が聞こえる。
『我は、この世界に“主”の御命による安息と至福に満ちた国を建てる為に、愚かなる者どもを打ち倒し、魑魅魍魎を祓い出すよう申しつけられ顕現した。己が自由と誇り、生命を守る為に、当然ながら我等に抗われるだろうと覚悟の上で、だ。しかし――』
悲しみと怒りに満ちた声が周囲に渦巻く。
『――あろうことか、愚鈍な者どもは保身と私欲の為に我等に媚び諂うと、この国を売り渡したのだ』
糾弾するフトリエルの声が天に満ちた。
『――怒れよ、戦士達。我は、同志であれ、同志で無くとも、耐え難きを耐え、忍び難きを忍んできた諸君等に惜しみない賞賛と敬意を送る。と、ともに問い掛けたい。…… 我は諸君等の敵であるとされていた。確かに我等は諸君等を殺め、命を奪ってきたものだ。だが、真なる敵は諸君等から自由と権利を奪い取り、そして何よりも誇りと生命を軽んじている者どもではないだろうか!?』
聞く者の心に、困惑と、そして嘆きが迫ってきていた。呆然が憤然に取って代わる。
『今一度、呼びかけたい。――我は約束する! 戦いの末、“主”の栄光の下で、真なる安息と至福を諸君等に与えよう。ゆえに己が自由と誇り、生命を守る為に、この理不尽なる全てに対して抗いの声を上げよ。そして我等とともに戦い抜こうではないか!』
……聖約が、もたらされた――。
内宮突入の為に打ち合わせをしていた荒金は、放送の内容を鼻で笑う。そして仮面の奥で目を細めながら、
「……天使が何を言おうと、襲ってくる奴は全部敵だ。――違うのかね?」
対面する化野――否、まるで奥殿を護る維持部隊全員に聞かせるような口振り。其の言に、我に帰った一同は口元の端を歪める事で応じるのだった。
■選択肢
EAh−01)伊勢で米軍を迎撃打倒
EAp−01)伊勢で米軍へと天誅を
EAh−02)伊勢で対阿剌伯部隊戦
EAg−02)伊勢で狂信者に復讐を
EAp−03)伊勢で維持部隊を殲滅
EAg−03)伊勢で維持部隊を制圧
EAh−04)伊勢神宮に侵入・調査
EAp−04)伊勢神宮へと突破敢行
EAg−04)伊勢で『神の門』開錠
EAh−05)名古屋城で魔王を攻略
EAp−05)名古屋城で魔王を討伐
EAg−05)名古屋城の魔王に服従
EA−FA)近畿地方東部の何処かで何か
■作戦上の注意
当該ノベルで書かれている情報は取り扱いに際して、噂伝聞や当事者に聞き込んだ等の理由付けを必要とする。アクション上でどうして入手したのかを明記しておく事。特に当事者でしか知り得ない情報を、第三者が活用するには条件が高いので注意されたし。
伊勢神宮での混戦は、第5回終了直後から始まる。選択(EA-01〜04)する場合、注意されたし。特に内宮奥殿に居る者は、維持部隊の近衛侍女隊によって包囲網が布かれている。
そして名古屋だけでなく、伊勢でも強制侵蝕が発生する可能性が高い為、注意する事。
なお維持部隊や米軍の在り方に不信感を抱いて天御軍に呼応したり、阿剌伯諸国連盟特殊部隊に与したりする場合はEAp選択肢を。人間社会を離れて独自に行動したい場合もしくは米軍として行動する場合はEAg選択肢を(※米軍として魔群に対する行動をする場合は逃亡兵として扱われる可能性がある事に注意)。
泣いても笑っても、次が『隔離戦区・禁神忌霊』第10師団( 愛知・三重 = 東亜剌比亜 )編の最終回である。後悔無き選択を! 幸運を祈る!
※註1)キティホーク……米海軍航空母艦。現実世界では2009年に退役。代わって横須賀を母港とする後継艦として2008年からジョージ・ワシントンが配備されている。しかし神州世界においては最老朽艦ながらもキティホークが現役として横須賀に健在。