隔離以来、京都に巣食う天使共と戦う最前線である、大津駐屯地。先日、周辺の駐屯地からの応援も加えて、突入部隊成功させる為の大規模な陽動作戦を敢行した。激戦の末に、人面獣身の高位上級超常体ケルプと2対の翼を持つ人型高位中級超常体ドミニオンを撃ち倒す事に成功したものの、四大元素天使の一角“ 神の人( ガブリエル[――])”1柱によって戦況を引っ繰り返された。
四大元素天使とはガブリエルの他に、“ 神の如し( ミカエル[――])”、“ 神の薬( ラファエル[――])”、“ 神の光( ウリエル[――])”の3柱も加えての、京都奪回する最大の障害だ。野戦においては、其の強大な能力と、手に持つ神器――憑魔武装で猛威を振るう。戦術――もっと怖れを込めるならば戦略兵器そのものだ。戦略シミュレーションゲームにおけるMAP兵器と言えば解り易いかも知れない。目標地点だけを定めて力を発すれば、猛威が吹き荒れ、其処は焦土と化す。
……京都突入支援を目的とした当作戦で、神州結界維持部隊は8割近い損失を記録。大津駐屯地司令を兼任する中部方面混成団長は同規模の作戦は今後不可能と判断した。そして、其れ程の損害を出したにも関わらず、京都への突入を決行したMAiR(Midle Army Infantry Regiment:中部方面普通科連隊)と零参特務(第03特務小隊)からの報告は――未だ無い。
一度の戦いだけで中部方面混成団長の身体は痩せこけていた。団長の腕には点滴の管が繋がっており、衛生科のWAC(Women's Army Corps:女性陸上自衛官)が付き添っている。其れでも執務をこなす姿は悲愴の一言に尽きる。入室した第10高射特科大隊・試作自走対空砲小隊長の 村田・巌(むらた・いわお)准陸尉は敬礼しながら、思わず固い唾を飲み込んだ。団長の落ち窪んだ眼には爛々とした光があり、知らぬ者が見たら異生(バケモノ)と悲鳴を上げざるを得ないだろう。
「――天使共の侵攻……つまり領域拡大を抑え込む為に今まで通りの防空体制を続ける……か」
「はい。防衛に専念するにしても、再編制の時間は稼がないといけません」
村田の言葉に、団長は片眉を微かに動かし、
「再編制……そんな戦力等、最早、中部方面隊にはないよ」
と淡々と答えた。村田の方が目を細めてしまう。団長は書類をめくりながら、
「神州各地で超常体の活動が激化しており、対応に追われている。身近なところで、名古屋の守山駐屯地奪還戦。北陸でも原発銀座が焦点となっているな。関西の第3師団も何かを感じ取ってか、特科や航空機を温存している」
ただでさえ燃料不足や維持の問題から、特科の戦車や車輛は無用の長物と看做されている。大津駐屯地は京都の天使対策として高射特科の必要性がある方だが、其れだけ余力が無いのも事実だった。
「残念だが再編制の予定は今後も無い。先日の戦いのような大規模な攻勢は、もう無理だ」
団長の言葉に、村田も悲痛な表情が浮かんだ。
「……たとえ突入した者達が大金星を上げたところで、余程の事が無い限り、京都を奪還する事は不可能だろう。其れこそ神や悪魔が助力しない限り、な」
超常体の事ではない。其れはまさしく奇跡を願う言葉だった。在りもしない絵空事と諦めに似た嘆きだった。其れでも村田は、
「――僅かな戦力と雖も、可能であれば強力な敵の撃破を目指します」
強い意志を告げた。団長は溜息を吐くと、
「……くれぐれも無理はするな。陸自からの友人を此れ以上失いたくないからな」
村田は敬礼をすると、退室するのだった。
中部方面総監部等のある伊丹駐屯地。一般隊員からは、第3師団司令部のある千僧や、後述する川西も合わせて『伊丹』と呼ばれている。
現在、第3師団管区である大阪を騒がせているのは、クスリやアルコール等の禁制品の蔓延。其れ等の流通に対して、警務隊は厳しく取り締まりしているものの、成果は芳しくなかった。第36普通科連隊及び信太山の第37普通科連隊も駆り出して、ミナミ――島之内・道頓堀・難波・千日前といった地域に広がっていた元繁華街を大規模な捜索を行ったところ、ようやく出所の手掛かりが掴めた。
「――亡くなった隊員の部屋を捜索したところクスリの粉末が見付かりました。効き目を期待するには摂取量として不十分ですが、組成分析したところ間違いないようです」
警務科隊員―― 檜山・大河(ひやま・たいが)一等陸士からの説明に、先日の捜索に参加した普通科隊員達が唸る。ミナミ捜索中に、遭遇した禁制品流通の首魁との取引現場。取引していた隊員2名は完全侵蝕により超常体化し、そして『処理』された。
「――完全侵蝕したという事は魔人だった?」
「いえ。普通科に所属してはいましたが、魔人ではありません。しかし報告によると急変したのは事実です。そして――」
押収されたクスリの包装紙を摘まみながら、
「配布しています書類の通り、組成分析の結果、クスリは憑魔の細胞を粉末状にしたものです。作用は酩酊・多幸感等をもたらす一方、強力な依存性があります。そして――微量ならば兎も角、摂取すると侵蝕と同じ症状が体内で発生……つまり此の『亡くなった』隊員の事例になります」
其れでも、状況を思い出した 先山・命(あずやま・みこと)二等陸士は首を傾げた。流通の犯人グループが隊員達に囁き掛けた後、急激に変貌した。摂取量が末期に近かったとしても、何か変貌に至るトリガーを有していたのではないだろうか? だが、
「――つまりクスリは異形系のものだと?」
先山が手を挙げる前に、他の班長が檜山に問い質していた。しかし檜山は頭を横に振ると、化学科隊員に説明の替わりを促す。
「時折、誤解されますが、憑魔核自体に能力系統の違いはありません。勿論、寄生を終えると、其々の能力に応じた特徴を有するようになる訳ですが……」
頭を掻く。眼鏡の位置を補正すると、
「判っている事だけ口にすると、寄生してきた時点で、憑魔は、どの能力も有しません。ならば魔人が使う能力とは何なのか?という謎は未だ完全に判明、理解されてないのです」
そして話を続ける。クスリの包装紙を指して、
「つまり、此のクスリの原材料もまた同じ“無色”の憑魔という事です。此れを摂取し、完全侵蝕した結果、異形系になるか、其れとも異なる能力を持つのか……なってみない事には」
「簡易な魔人生成薬という事か」
「……憑魔核を粉末にしたところで、我々に此のクスリと同じモノは精製出来ませんがね。其れに摂取したモノは例外なく完全侵蝕し、超常体と化しています」
要するに人類に取り扱える代物ではない、危険なモノという事だ。魔人の力を得られると勘違いして、安易に摂取しないように釘を刺してくる。
「――では、精製出来ないはずのモノをバラ撒いている点からも、首魁が大魔王だったという報告に嘘偽りが無いと理解してくれるかの?」
取引現場に遭遇した第37普通科連隊・第377班、甲組長の 田南辺島・清顕(たなべじま・せいけん)陸士長の発言。一同から重い溜息が漏れた。
第377班が捜索した旧大阪松竹座。隊員達と取引していた現場にいたのは3つの影と、見慣れない超常体数匹だった。3つの影の内、隊員達と直接相手をしていたのは、遠目からでも美しいと判る蠱惑的な女。そして容貌は判らなかったが男の姿。だが其れよりも、
「――アスモダイですね。犯人グループのハッタリにしても、騙るにしても仰々しい大物ですが」
七十二柱の魔界王侯貴族が1柱にして、七つの大罪の1つ“姦淫”を掌りし大魔王 アスモダイ[――]。旧約聖書外典の『トビト記』等に登場し、グリモワールの1つ『ゴエティア』では72の軍団を率いる序列32番の大いなる王とされる。姿形は牛・人・羊の頭とガチョウの足、毒蛇の尻尾。手には軍旗と槍を持って地獄の竜に跨り、口から火を噴くという。……だが先山と田南辺島達、第377班が目撃したのはカリスマ性を醸し出す、美髯のロマンス・グレー。
「アスモダイの追跡も含めたミナミの捜索は引き続き普通科にお任せします。警務科は駐屯地内にクスリが何処まで浸透しているのか調査に専念しますので。尤も完全侵蝕の件もあります。何名か、調査への同行をお願いしますが」
檜山の言葉を最後に会議は解散となる。先山と田南辺島達――第377班員も退席しようと立ち上がったところ、1人のWACが敬礼しながら挨拶してきた。
「――信太山より第307中隊長の命令で、第377班へと応援に来ました、橘です! 宜しくお願いします」
ボリュームのあるセミロングの髪色は茶色、瞳の色は黒。顔立ちは可愛い系だが、一見して目を引くのは、平均より大きいと思われる胸。橘・柑奈(たちばな・かんな)二等陸士は第377班員のみならず、周囲の注目に赤面し始めた。
「……ああ、宜しく。しかし中隊長の命令か」
第377班長は露骨に嫌そうな顔をした。第307中隊長の口癖が「懲罰隊送りにする」というのは部下ならば誰もが知っている事だ。特に、
「――あなたが田南辺島士長ですね。お噂はかねがね」
邪気のない笑顔を向けられて、だが田南辺島は困惑する。中隊長や他の班長からの受けが良くない、田南辺島には数々の蔑称が付きまとっている。其の内1つが……
「『死神』でしたよね。……どうやら第307中隊は、ミナミ捜索――否、田南辺島士長の居場所に送る事で、橘二士を死なせたいようです」
突然、口を挟んできた人物に驚いた。声の主である檜山の姿に、田南辺島は目を細め、そして見開く。
「もしかして檜山二士の……」
「兄です。――弟について色々と田南辺島士長から、問い質したい事はありますが……」
檜山は暫く目を瞑って、何事か堪えた後に、
「現状、其れどころではありません。いずれ、じっくりと。其れまでに戦死しないようお願いします」
では、と会釈して退室する。檜山の背を黙って見送るしかない田南辺島の肩を、第377班長が軽く叩いた。
「――いつか、檜山一士にも納得してもらえる時が来るさ。其れまで生き残らないとな」
「……はい」
ところで中心にいながら、1人だけ話が解っていないのは、柑奈だった。
「えーと。よく解んないけれども、『死神』って格好良いんじゃないの?」
どうやら噂の深い事情は知らず、名前の持つイメージだけ柑奈は受け取っていたらしい。先山がこぼれるような笑みを向けると、
「あはは。其れには僕も同意しちゃう☆」
そして柑奈を歓迎するのだった。
ところ変わって、川西駐屯地。伊丹駐屯地より北に200mもない此の地には阪神病院等が駐屯している。壊滅した第36普通科連隊・第309中隊第3小隊・第398班の生き残りである 三鷹・秀継(みたか・ひでつぐ)陸士長達は伊丹に帰還した後、第3小隊長の命令により川西へと送られた。三鷹と、相棒である 高殿・透[たかどの・とおる]一等陸士には若干の疲労が見られたものの、検査後は解放。“彼”の監視という名目で、長期休暇を与えられる。
「――先輩。僕達、此れからどうなっちゃうんでしょうか?」
高殿の言葉に、三鷹は紫煙を吐き出すと、
「人員不足の他の班に編入させられるか、或いは俺達で第398班を復活させるか、だな」
とはいえ第3小隊長も三鷹達の希望に沿う形で働き掛けてくれるだろう。急な配置転換、強引な編入等は考えられなかった。
「……此のまま“彼”の監視役で収まるか」
そんな三鷹の呟きが応じた訳でもないだろうが、診察室の扉が開いた。中の医官より呼ばれたので、三鷹は煙草を消して入室する。そして三鷹達は思わず声を失う程に、見惚れてしまった。入浴して髪や肌に付いていた汚れを落とし、洗い立ての65式作業服を着た“彼”から人知を超えた美しさが零れ出ていたのだ。
三鷹達の姿を見ると“彼”が緊張と同時に恥じらいの表情を浮かべたようだった。其れよりも高殿が喉を鳴らす音が三鷹の耳に付いた。高殿は震える声で、
「……先輩。もう僕、倒錯した愛に目覚めても良いでしょうか?」
「落ち着け。口に出して本官に確認の質問が出来るだけ、貴官は未だ帰ってこられる余地がある。冷静だ」
高殿との会話と、医官の咳払いでようやく呪縛から解放された。
歳の頃は10代後半ぐらいで、女性とも男性とも判断の付かない華奢な体格。だが第398班を壊滅させた元凶でもあり、熾天使や魔王といった高位上級超常体に追われているところを保護した存在。其れが“彼”だ。
未だ少しばかり警戒している“彼”の相手を衛生科WACや高殿に任せると、三鷹は診察を終えた医官から話を聞く。
「――歯型、血液型、指紋といったところを保管している健康診断の記録と照合してみたが該当者は無し。此処まで徹底して『Unknown』な人物は初めて見た。“存在しないはずの人物”と断言して良い」
「でも実際“彼”は其処に居る。まさか超常体と同じように此の世でないところから“空間”を割って出現したとか?」
三鷹の感想に、医官は書類を渡してきた。
「……身に纏っていた野戦服から手掛かりが見付からないかと需品科や警務科にも調査してもらった。すると桂駐屯地のものではないかという推測が来た」
「桂……あの20年近く前に壊滅したという? 隊員の生存は絶望視されていたはずだが。まさか天使共の棲息地の中で、未だ人類が生き残っていると?」
疑問に、医官は頭を掻くと、
「絶望視されているが、桂駐屯地の生き残りや子孫がいる可能性は零でないからな。天使共の監視を盗んで大阪まで逃げてきた……という夢物語も考えられる」
「……そういう嬉しい夢は、眠っていても中々見られないだろうが」
三鷹の言葉に、苦笑が漏れる。
「少なくとも、需品科や警務科から、そういう見解が出たのは事実だ。そして貴方からの報告によると追跡者は熾天使と魔王――どちらも大物だ。“彼”が京都からの脱出者ではないかと期待したくなる」
しかし、と言葉を切った。
「記憶を喪失しているようだから、中の様子を聞き出す事は不可能だろう」
「……催眠療法とか?」
「考慮はしたが、貴方の報告によると藪蛇の怖れもある。少なくとも強行すれば死傷者が出るかも知れないパンドラの函だと思うが」
医官の指摘に、三鷹は第398班が壊滅した時を思い出した。魔人だった班長は突如として暴走。近くにいなかった高殿も憑魔強制侵蝕現象と同じ痛みに苦しんでいた。
「……魔人でなければ影響がないのでは?」
「貴方の報告だけだと、そうだが……。まぁ、勘だ」
医官の片眉の端が上がり、瞳が三鷹を見詰める。
「――医官としての経験?」
「いや、女の」
どういう勘だ。医官に対して白い目。だが三鷹の白眼視にも平気な顔して医官は笑う。
「ちなみに女性も、男性も、立派に機能するぞ。年甲斐もなく、私も身体が火照ってしまった。WAC達だけでなく男女問わず“彼”に熱い視線を送る者が出ている始末だよ」
「先生……其れはドクハラ、セクハラだ。訴えられても知らないぞ」
哄笑を上げる医官に、三鷹は呆れた表情。だが、
「冗談はさておき……未だ完全では無いとはいえ、計測した数値から出た侵蝕率の高さを考えると、其の時も近い――“彼”は危ないな。其の時が来たら直ぐに射殺しろ。反撃を許してしまったら……」
「――其の時、“彼”がドチラに目覚めていようとも、人類の敵になるのは確実だ」
会話に割って入ってきた人物に、三鷹と医官は凍り付いた。ようやく気が付いた高殿やWAC達が動こうとする前に、突如として現れた、病んでいるかのように痩せ細った男が機関拳銃M9エムナインを突き付けている。
「ロノヴェ、そしてヴァッサゴだったな。何時の間に?」
「先程からずっと。貴方達の会話が面白くて、思わず集中が途切れてしまった」
七十二柱の魔界王侯貴族が、美貌伯 ロノヴェ[――]と予言貴公子 ヴァッサゴ[――]の姿に、三鷹の拳が固く握り締められる。だが、
「……おっと。誤解しないでくれ。私達は交渉に来ただけだ。流石に、いきなり流血を求めるような野蛮さは持ち合わせていない。――あの“唯一絶対主”を盲信する輩と違って」
「そうだな。……いいだろう。先日、助けられた事にも感謝する。話を聞こう。――とはいえ“彼”に関する事だろう?」
三鷹の視線に逸らす事無く、ロノヴェは頷いた。
「“彼”の身柄を渡して頂きたい」
「――理由は?」
問いを重ねると、難しい表情を浮かべてから、
「いずれ来る『黙示録の戦い』において“彼”がドチラに目覚めているかで戦いの趨勢が決まる。“彼”はそういう存在だ。そしてドチラに目覚めていようとも、貴方達、人類にとって敵となる。ならば殺される前に“彼”を保護し、私共――猊下の味方として目覚めさせた方が良いかと」
「……飽く迄も、君らの都合だな。しかも“彼”が人類の敵になるというのならば、おいそれと引き渡すと思うか?」
三鷹の返事に、だがロノヴェは微笑を浮かべた。
「――思わない。しかし貴方達が、私共の盟友となる可能性も捨て難い。そうなれば何の問題も無くなるだろう? 私共は“彼”を仲間として迎えられる。貴方達も私共の盟友となる。そして『黙示録の戦い』で協力し、“唯一絶対主”を盲信する輩を払い除ける。素晴らしい未来ではないか」
酔っているかのようなロノヴェの物言いに、三鷹は奥歯を噛み締めた。だが気付かないのか、それとも振りなのか、ロノヴェは言葉を続ける。
「……何にしろ、先ず戦いより交渉を持ち掛けるのは、理知有るモノとして当然かと思った次第。どうかね? 拙速も無理強いも好まない。どうか時間を掛けて熟考してくれ。良い返答を期待する。では――」
そして優雅に会釈する。そしてロノヴェとヴァッサゴの姿が掻き消えた。気配も感じられない。但し“彼”は見えているかのように視線を動かすと、
「……何処か、懐かしい、人達。また会える?」
と呟いたのだった。
京滋バイパスを南下して、宇治へ。
「トンネルを抜けて直ぐ右手に、宇治駐屯地跡がある。各員、警戒を怠らないよう。天使が来るぞ!」
村田の言葉に、副官が各車に通達。
「――射撃準備!」
砲手は機関砲を旋回させると、宇治トンネルを出て直ぐの天使の待伏せに備えた。宇治は桂と同じく、隔離以来、放棄された駐屯地だ。元々、補給処である為に戦力が無かった事もある。とはいえ天使に襲撃されるより先に放棄を決断、南西の大久保駐屯地への撤退作業が行われた為、人的損失は最小限に収まっている。……流石に物資は天使共に略奪されたようだが。そして宇治駐屯地跡は天使の巣窟となっており、京都南側における最前線となっていた。
村田達、35mm2連装高射機関砲L-90改4門が緊張の面持ちでトンネルを出る。幸いにして天使の待伏せは無かった。気付かれるより早く宇治東IC(インターチェンジ)よりバイパスを下りると、勢いを殺す事無く宇治橋を渡って大久保駐屯地へ到着する。駐屯地司令は敬礼を以て村田小隊を出迎えてくれた。
大久保も、元々は第4施設団等が駐屯する地だったが、天使が京都を制圧してから南面における監視塔のようなものになった。そして大津や伊丹からの増援が来るまでの防波堤の役割として、一応の戦力を有している。とはいえ対空装備が充実している訳でもなく、12.7mmブローニングM2重機関銃キャリバー50頼みとなっている。此の春から超常体の動きが活発化している事を考えると、村田小隊の到着を歓迎するのも解る気がした。
「――宇治川を防衛線にして、侵犯したエンジェルやアルカンジェルを撃墜するぐらいですよ」
大久保駐屯地司令と意見交換して、最適な防空体制の構築に勤しむ。
「……立教大跡地や宇治駅跡地に布陣出来るな」
地図を眺めて、村田は目聡く最適地を図り出した。とはいえ、
「――相手は空を飛べるからな。此方の配置を擦り抜けて侵攻してくる恐れが高い」
「其れでも此方から京都へ進入しない限り、相手にしなければならないのはエンジェルやアルカンジェル程度ですから。情けない話ですが、プリンシパリティ以上の天使が加わっていたら逃げるしかありません」
東側のガブリエルもそうだが、四大元素天使は積極的に領土拡大へと動いてこない。其れが20年近い間、被害が京都と其の周辺で収まっていた最大の理由だ。
「各地で超常体の襲撃が相継いでいるからな……今までが『そうだった』としても、油断は出来ない」
村田の呟きに反応した訳ではないだろうが、警報喇叭が鳴り響く。慌てて駆け込んでくる伝令。
「――宇治より天使が飛来。防衛線にて交戦を開始しました!」
「数と種類は?」
「エンジェルが8、アルカンジェルが2です。プリンシパリティ以上は見当たりません」
大久保駐屯地司令が安堵の息を漏らすのを見逃さなかった。しかし、
「九州の第8師団や、北海道の第7師団からも最近の天使との戦いについて報告が上がっている。ちゃんと学習したか? エンジェルといっても気を付けろよ」
天使の中でランクは低いが、油断出来ない。村田は部下達を叱咤すると、対空砲撃の指揮に向かった。
――村田小隊の参戦もあって、被害ゼロで迎撃に成功。とはいえ、
「……高位超常体が出てきたら、押し潰されるな」
村田は状況と戦果を確認しながら、独りごちる。四大元素天使が出てきたら瞬殺だろう。先日のガブリエルの猛威は記憶に新しい。そして南側を護るのはミカエル――記録によればガブリエルより苛烈な存在だ。
「……さて。白樺二士達は無事に進入出来たか?」
村田は目を細めるのだった。
――防水シートに包んでいたとはいえ、念入りに部品の状態を確認し、整備。そして組み立て直す。
「ブーツも乾いたようだぞ」
相棒である観測手の言葉に、白樺・十夢(しらかば・とむ)二等陸士は苦笑する。
「ブーツは兎も角、衣服はそう簡単に乾かせないからな。裸になっている時に、超常体に襲われて死んだら目も当てられない」
村田達が天使の侵犯を迎撃している機を狙って、白樺と観測手は渡河に成功していた。淀大橋の陰に隠れながらの水泳である。警邏しているエンジェルやアルカンジェルの目を盗んで、崩れていない建物に潜り込むと、武器点検も兼ねて小休止に入っていた。
「其れで計画の再確認しよう。優先事項は敵拠点の調査。次いで敵要人の暗殺……天使も『人』と呼んでいいのか解らないが」
白樺の言葉に苦笑を交えつつ、
「……最初に行くのは?」
「京都を観測していた航空科からの報告によると、3月末に京都南側――伏見・稲荷へと動きがあったと聞いている」
「……よく撃墜されなかったものだな」
相棒の感嘆に、白樺も頷いた。
「勿論、観測しているのに気付いたのか、天使が接近してきたそうだが……命からがら逃げたとさ」
兎に角、動きがあったのならば、伏見・稲荷を調査から外す訳にはいかない。罠だとしても、看過するのもまた危険だからだ。
「それから先日の作戦で突入しているはずの零参特務やMAiRと合流を果たしたいが……」
「無線機に感無し。……大久保へと報告出来たからには通信妨害されている訳ではないようだが」
背負い直した隊用携帯無線機を指す。通信に異常がないのならば、MAIRや零参特務と連絡が付かないというのに最悪の事態を覚悟しておかなければならない。
「――行くぞ」
覚悟を決めて足を踏み出す白樺に、相棒の観測手は深く頷き返してきた。
書状を手にして、中部方面通信隊本部を強制捜査に入ったのが、つい3日前。檜山達、警務隊は禁制品を取引していた隊員2名の通信記録を洗い出していた。通信科の協力を得て、2名が交信していたリストを作成する。
「――檜山一士、其方の作業は……?」
「もう直ぐ……今、終わりました。データを渡します」
燃料不足の問題から、電子媒体よりも紙の方が、多く記録は残されている。其れ等に目を通していた同僚に数値や文字を打ち出した用紙を手渡すと、檜山は疲れた目を押さえた。電子媒体による記録は少ないが、其れでも0でない。むしろ残したくない情報は電子でやり取りするのが、よくある話だ。檜山は時間を掛け、破損したり削除されたりした情報を根気よく復元、解析する。
「……新たな被疑者の通信記録だが」
かつて通信科に在籍していた事も、檜山にとって味方した。旧い知人は警務科の捜査にも厭な顔をせず、協力を申し出てきてくれたからだ。信頼出来る、少なくとも“汚染”されていないと判断出来る人物からの協力は有難い。
「――2名が他者との接触を盛んに始めたのが、今年に入ってから。ミナミにある巣からはぐれた低位超常体を駆除する任務を終えてからだな」
「其の時の通信記録、未だ残っていますか?」
檜山の言葉に、笑みを浮かべると通信科の知人は用意していた書類を差し出してくる。目を通すと、
「――超常体と接触してから、伊丹に帰還するまで、半日掛かっていますね」
「理由としては敵超常体の反撃にあって、班が壊滅。追ってくる超常体から逃げ回っていたとあるが」
「……其の時にアスモダイと接触したと?」
可能性としては在り得る。檜山は考え込むと、
「……彼等と似たケースは?」
「他にもあるな。正直、ミナミに行った部隊が戻ってくる方が珍しい。些細な任務でも帰ってきた連中は、ちょっとした英雄だ。……たとえ『死神』でもな」
「――止して下さい」
檜山は露骨に厭そうな顔をした。解っていて『死神』の話をしたのだろうな、此の旧い知人は。知人は複雑な表情を檜山に向けていたが、
「兎も角、目立ってオカシナところが無ければ見過ごされる事もある。其れが、今になって災いとなった訳だが……」
「そうした、似たケースの連中は?」
「半数近くは、もう此の世にはいない。多くが、禁制品に手を出したという事で、此の数日で命を落としているからな」
言われてみれば、名前が挙がっている隊員に覚えがある。手入れの際に完全侵蝕魔人となって『処理』された者や、拘束された者ばかりだった。
「――未だ身柄を拘束出来ていない者は? 其れに、彼等と交流を以て、二次汚染された恐れのある者は?」
檜山の問いに答えたのは、別の場所を捜査してきた警務科の同僚。気難しい顔をして、
「疑わしい連中で生き残っている奴の多くが脱柵している。しかも見事に女ばかりだな。……ハーレムでも作るつもりか、アスモダイは? “姦淫”の大罪の通りに。……其れよりも問題が発覚した」
「――脱柵よりも問題とは?」
檜山や他の隊員達の注目が集まった。
「ケースの通り、当然ながら接触が多かったのは衛生科隊員達だ。一応、怪我で入院や検査する訳だからな。今、川西駐屯地は大騒ぎさ」
「身柄確保の応援に出ます!」
だが待てと手を出すと、
「俺達は、此れより化学科と普通科と合同で、駐屯地業務隊の糧食班本部に突入する。食事にクスリが混入されていた恐れが高い!」
慌ててリストを見直した。確かに需品科にも“汚染”が広がっている。何人かが吐き気を覚えたのか、口を押えていた。微量ゆえに直ぐに効き目がある訳ではないが、伊丹にいる全ての隊員に潜在的な“汚染”が始まっているのだ。そして定期健診をする衛生科もまた既に“汚染”されているのだから……
「思った以上に、アスモダイの戦略は進んでいたというのですか!?」
「ああ。――直ぐに踏み込むぞ」
檜山の叫びに頷くと、全員が武装を確認した。そして普通科と化学科の隊員達と合流すると、強行捜査に踏み込んだ。何も知らずに身柄を確保される者、逃げ出そうとしたところを拘束される者、そして完全侵蝕魔人化して抵抗して射殺されるモノ――地獄絵図が広がった。
「あと数週間も気付かず、摂取していたら危なかったでしょうね……」
射殺した隊員の持ち物からクスリを発見した、化学科隊員が疲れきった声で呟く。檜山も同感だ。既に体の中に蓄積していると思うと、腹を割いて、胃腸を洗浄したくなる。
「……排出されないんですか?」
「残念ながら、否応なく、消化や吸収してしまうんですよ。此のクスリの成分は憑魔核と同じものと考えれば寄生されると言っても良い。つまり一度取り込んでしまった以上、体外に排出されません」
だから摂取量――体内に蓄積された量が“汚染”の度合いとなる。今のところクスリそのものとして使用し、摂取量が一定の範囲を超えたモノが異生になるようだが……
「其の異生化の仕組みも完全に解明されていません」
何を切っ掛けに、異性となるのか。本当に微量だからといって影響は無いのか? 檜山は己の人体で眠っているナニカに恐怖を感じる。しかし怖がっていても話は進まない。川西駐屯地に捜査の手伝いに向かおうとしたところで、
「――ッ!? 何ですか、爆発音!?」
先程の“汚染”されているモノとの戦いでも、爆発といった衝撃はなかった。
「まさか……アスモダイの襲撃ですか」
檜山達は無線機で混乱する情報をまとめつつ。続く銃声や爆炎が上がる方へと駆け出したのだった。
時は前後する。
伊丹駐屯地にある隊員宿舎の1室。三鷹と高殿は割り当てられた部屋で、ミーシャ[――]と他愛も無い会話に興じていた。ミーシャとは“彼”に付けられた名だ。“彼”の意見を聞きつつ、容貌に相応しい欧州系で中性的なものを選択した。当初は呼ばれる事に不思議そうな顔をしていたが、次第に直ぐに返答するようになった。
ちなみに伊丹駐屯地に移されたのは、魔王クラスの超常体の出現への対策だ。傷病者が多い川西駐屯地を、まさかの戦場にする訳にもいかない。途中観察・定期健診として、伊丹と川西を行き来する毎日だった。
「――ガム、食べるか?」
デザート代わりに付いてくる余り物のガムを差し出すと、微笑んで受け取る。此の様に記憶喪失の弊害か、幼児めいた仕草や反応を示す事もあるが、外見相当の知性を有している事も、接している間に判ってきた。
歓談といっても救助するまでの記憶は失くしているのだから、自然と内容は持ち込んだ本や、前日に在った出来事についての話題となる。驚くような吸収力で、三鷹や高殿も目を剥くような専門知識を理解した上で言葉の端に並べたり、教えようとしたりする。
「……此処、数日で学生時代に戻ったような気がします。僕ってこんなに勉強出来たんだ……」
「ミーシャの教え方が上手いんだな。自分だけでなく、どう相手にも伝えれば良いか、問題の本質をちゃんと理解していないと駄目だぞ、こういうのは」
苦笑しながら、三鷹は教本から顔を上げる。高殿は口をヘの字にしながら、ミーシャから渡された宿題に取り掛かっていた。当の本人は、また難しそうな専門書に目を落としている。ガムを噛む音が聞こえ、そして喉を鳴らして呑み込んだ。三鷹は目を丸くして、
「味気が無くなったのは呑み込まずに、ペッとしろ、ペッと。今度から包み紙に、な」
「……御免なさい」
謝るミーシャの姿に、三鷹は頭を掻く。溜息を吐くと有線電話を手にした。川西の医官に繋ぐ。
『――ああ、三鷹士長か。悪いが、本日の健診は無しだ。警務隊が乗り込んできてな』
ミーシャの検査記録で何かあったのだろうか? 其れにしてはミーシャ当人や三鷹達を拘束するような動きは見られない。
『……なに、ミーシャとは別件でね』
「もしかしてセクハラの罪状で訴えられましたか」
三鷹の冗談に、医官は莫迦笑いで返してきた。
『麻薬だか酒だかに手を出した連中がいるって話だ。直ぐに解決するだろうが、要請があれば、私も捜査に協力しなきゃならない。ちょっとミーシャの相手してやる余裕が無さそうで――』
有線電話の向こうで、微かに銃声が響いた。驚いて三鷹が声を掛けるよりも早く、
『――怪我人が居るんだぞ! 銃撃戦なら外でやれ、お前達! ……スマナイ、上の階で銃撃戦が始まったようだ。落ち着いたら掛け直す』
そして切られた。高殿とミーシャが驚いた顔で、三鷹を見詰めている。
「……何事ですか?」
「俺にも判らん。ちょっと川西に行ってくる。高殿はミーシャと此処で待機。念の為にBUDDYを手元に置いておけ。警衛にも詰めてもらうよう頼んで――」
言葉の途中で衝撃が走り、一瞬、身体が宙に浮いた。警戒喇叭が鳴り響く。高殿は憑魔核のある部位を押さえて、脂汗を流していた。
「――先輩。来ました、プシエルです!」
―― Sanctus, Sanctus, Sanctus Dominus, Deus Sabaoth. Pleni sunt caeli et terra gloria tua.
赤髪の少女が高らかに歌い上げる詩に合わせて、続々と空間を割りながらエンジェルスが出現する。そして光の矢を雨霰と降り注いできた。僅かながらアルカンジェルも顕れて練気の刃を振り下ろす。
「――斉射!」
積み上げたバリケードから乗り出した普通科班が89式5.56mm小銃BUDDYを横列に並べて、一斉射撃。エンジェルスの多くは地に墜ちるが、赤髪の少女――処罰の七天使が1柱“ 神の火( プシエル[――])”に付き従う、ドミニオンとパワーが氣の壁を張ると、5.56mmNATOは弾かれてしまう。
「誰か、パンツァーファウスト持って来い!」
「痛みから快復した魔人隊員は、直ぐに戦列に加わってくれ! 突破される!」
悲鳴や怒声が響く。其れでもプシエル達の強襲に対して果敢に迎撃に出る第36普通科連隊。
「……高殿。能力でミーシャと一緒に気配を消して隠れていろ」
「先輩はどうするんですか?」
プシエルは第398班を壊滅させた仇だ。咥えていた煙草の煙を深く吸い込んでから、三鷹は愛用のM14バトルライフルを構えた。
伏せ射ち姿勢になると、建物の陰からプシエルへの狙撃を試す。ダットサイトにプシエルの姿を捉えると、引き鉄を絞る。だが7.62mmNATO弾が銃口より出てくる前に、プシエルへと味方のFN5.56mm機関銃MINIMIが弾雨を降り注ぐ。そして三鷹は目を見張った。
――プシエルが手を軽く振るうだけで、5.56mmNATOの弾雨が宙空で融け落ちたのだ。三鷹が放った7.62mm弾も同様だっただろう。更には飛来してきた110mm個人携帯対戦車弾パンツァーファウスト3もまた熱波で誘爆する。成形炸薬のモンロー効果も小柄な身に傷を負わせる事は出来なかったようだ。
「話に聞く、四大元素天使が1柱ミカエルと同じか」
ミカエルもまた身を覆う炎の膜や、放出される熱波で、火器の類を寄せ付けないという。
三鷹の呻きは、他の隊員達の代弁だった。ならばとばかりに氷水系の魔人隊員が能力を駆使する。しかし取り巻きの1羽であるヴァーチャーが同じ氷水系の能力で以てプシエルの援護に回り、傷を負わせようとしない。
「……しかし援護に回るという事は、裏返して考えれば、氷水系の攻撃はプシエルの弱点として通用する」
三鷹の考えは直ぐに伝わり、氷水系魔人の援護に集中する。また地脈系魔人が壁を作る。相生相剋関係が正しければ、プシエルへの勝機となるだろう。だがプシエルは嘲るような笑みを浮かべると、
「――邪魔よ!」
振るった腕の軌跡が炎の鞭となり、土の壁を叩き潰した。炎の勢いは地脈系魔人まで迫り、身を焦がしていく。……圧倒的な実力差が在る場合、相生相剋の法則が通用しない時もあるという事例を、まざまざと見せ付けられたのだ。
プシエルは鼻で笑うと、声高らかに宣言する。
「――処罰の七天使が1柱“神の敵(サタナエル)”を渡しなさい。そして我等が“主”へと絶対の忠誠を誓うというのならば、我等が造り給う楽園に住まう事を許すわよ」
しかし、もしも抗するというのならば、
「此の施設を、我が名の通り、神の火にて処罰し、焼き尽くして浄化するわ!」
通牒を叩き付けてきた。
『――先輩。サタナエルって、もしかして……?』
高殿からの無線通信に、三鷹は唇を噛む。
「ミーシャの事だろうな。いいか、高殿、ミーシャから目を離すな」
『え? あ、はい……って、ミーシャ、何を!?』
通信が切れる前に、声にならない高殿の叫びが聞こえた。第398班が壊滅した時に聞いた苦悶の叫びだ。高殿だけではない。空間が悲鳴を上げ、そして煩悶に満ちていく。魔人の多くがのた打ち回っていく。強制憑魔侵蝕現象に影響されないという第二世代(デビル・チルドレン)もだ。そして……
「まさか、プシエルにも影響を与えるのか!?」
プシエルが頭を抱えて叫び声を上げていた。取り巻きの超常体の群れも見境なく暴れ始めている。
――狂騒が伝播していくのは、魔人や超常体だけでない。三鷹達にも影響を及ぼし始めていた。精神が高揚し、血潮は熱く滾る。視界が薄く赤く染まり、持て余した力が憤りとなって心の中で渦を巻く。愛銃を構えると、三鷹は暴走する心のままに乱射した。幸いな事に味方は銃口の先になく、パワーが凶弾に倒れた。
「――“憤怒”の力の暴走。……撤退よ!」
額に血管が浮き出るような辛い表情で、プシエルが叫ぶ。そして取り巻きを集めると、プシエルは空間を“跳んで”消え去った。
途端に、空間を支配していた“憤怒”が散っていく。完全な調子を取り戻した訳ではないが、三鷹は声を張り上げると味方に一喝、残っていたエンジェルスを掃討していった……。
気絶して倒れていたミーシャの身柄は、快復した高殿によって無事に保護されたが、
「……此れまで以上に、周りから危険視されるようになってしまったな」
「出来れば、より詳しい情報が欲しいところですよね」
高殿の言葉に首肯するが、最早、定期健診程度では何も判らない。失った記憶を探る方法を考えるか、詳しい事情を知るモノから聞き出すか。
「詳しい事情を知るモノって……居るんですか、そんな人が?」
「人では無いが居る――ロノヴェといった魔王が」
伊丹が騒動の渦中にあるとはいえ、ミナミの捜索は引き続き行われた。天使の襲撃は兎も角、クスリによる汚染の元凶がアスモダイにある以上、追跡の手を辞める訳にはいかない。
「……麻薬やアルコール類は生産・備蓄が必要だよね? やっぱり中継拠点が無いとオカシイはずなんだけどなぁ」
前回アスモダイの姿を目撃した、大阪松竹座。田南辺島の意見により、第377班は大阪松竹座を始点にして捜索を再開する。先山のボヤキの通り、クスリやアルコールを一時的にも保管しておく場所が必要だろう。大阪松竹座が受け渡しだけに使われているとは思えなかった。
「……しかし、お酒って、どんな味なんだろう?」
先山の疑問に、田南辺島も首を傾げる。飲酒が禁じられてから随分と年月が経っている。戦闘時において酩酊状態にあった場合、自身だけでなく味方にも多大な損害が生じる。かつての亜米利加合衆国で悪名ともなった禁酒法時代と違い、神州で徹底されているのは、物資全てが需品科による配給の為に蓄財の意味がなく、またアルコール成分の有無が超常体との戦いで生死を分ける事が解り切っているからだ。そして酒の味……というより酔いのイイ気分を知っているのは、40歳過ぎの古強者ぐらいだ。他に知っているとしたら禁制品に手を出した罪人だろう(※註2)。
兎も角、一通り確認して、クスリの粉末は見付けたものの、手掛かりとは言い難い。建物から出て、次の捜索目標を選ぶ。
「そういえば難波(なんば)だったな、此処は……」
なんば駅舎の上に建てられた、南海サウスタワービルを田南辺島は見上げて呟く。地上36階、高さ147mもあったという南海サウスタワービルは、現在、半ばで叩き折られるような形で崩落しているが、其れでも威容さは残っていた。
大阪の二大繁華街の一つであるミナミに包含され、一般的には其の玄関口となる駅周辺の繁華街を指す難波。概ね、道頓堀以南、千日前以西の地域だ。隔離前に計画された難波の再開発は、だが超常体の出現により文字通り中止。そしてミナミ全域が超常体の巣窟となった事で、荒れ果てていくに任せている。
「――知っておるか? あの建物の南側には球場が昔あったそうだ。隔離前に解体されたのだが、計画では商業施設として生まれ変わるはずだったらしい」
「……超常体が現れさえしなければ、ミナミも随分と様変わりしていたんだろうなぁ」
田南辺島の説明に、先山が感心する。さておき、
「ではサウスタワーから捜索していくか?」
第377班長の言葉。しかし其れまで黙って周囲を警戒していた柑奈が首を振った。
「……どうも先に別班が突入して捜索しているみたいよ。車輛だけでも3班は乗り込んでいるみたい」
目敏く見つけた、ビル陰に隠されている96式装輪装甲車クーガーや高機動車『疾風』を指し示す。それぞれの操縦手と銃手が縄張りを主張するように、他班と睨み合いをしているのに呆れてしまう。
「――超常体の巣窟のど真ん中で、手柄争いしている場合じゃないと思うけど」
先山の呟きに、田南辺島は苦笑。
「単なるジャレ合いだ。喧嘩や、足の引っ張り合いにまで発展しなければ、問題なかろう」
「遅れ馳せながら、私達も乗り込む?」
すっかり班の一員として砕けた口調の柑奈が提案。だが田南辺島は首を振ると、
「あちらは他班に任せて、俺達はちょっと気になるところを……地下はどうなっておる?」
田南辺島に言われて、部下達が慌てて地図を用意する。――千日前通には地下街が設けられている。東は堺筋から西は四つ橋筋までの間に広がり、周辺の各駅とも一体だったり、隣接したりしている。
「……なんばウォークか。地上は他班に任せて、我々は足の下の安全を確認するか。――田南辺島士長、甲組から先行を頼む。先山、橘も甲組に同行。支援並びに退路の確保は、乙組で当たる」
第377班長の指示に敬礼で応じると、BUDDYを手に警戒しながら地下への階段を探す。
「……柑奈ねえちゃん。其れは取り回しが大変じゃない?」
得物のバールを構えた先山が、柑奈が肩に負う対物狙撃銃バレットM82A2にツッコミ。対空火器として改良されたもので、大きな仰角が取れるよう、引き金よりも作動機構が後にあるブルパップ式を採用。携行地対空ミサイルのように肩に担いで攻撃ヘリの迎撃が可能。とはいえ、現在は生産中止となっており、何処で手に入れたのか、何故愛用しているのか、ツッコミどころが多過ぎる。少なくとも閉所では扱いに悩む代物に違いない。
「小型軽量化したM95はポンプアクションなのよねぇ」
柑奈は溜息を漏らした。
さておき、なんばウォークへの階段は巧妙に瓦礫の陰に隠れていた。
「明らかに……人為的なものだよね」
小柄さを利用して、個人用暗視装置JGVS-V8を装着した先山が最初に潜る。
「罠が設置していないとも限らん。慎重に進めよ」
田南辺島の警告を背に、先山は細心の注意を払う。そして階段を下りた先、地下街なんばウォークの空間に顔を覗かせた。手信号で、目視した超常体の数を報せる。大阪松竹座で見た体毛の無い真っ黒な馬のような姿をしているアパオシャや、両手両足が長い人型のブーシュヤンスターだ。此方に気付いている様子はないが、突破するのに戦闘は避けられない。
「白兵戦に備えて銃剣を装着。――突撃!」
田南辺島の合図に、戦いに歓喜するかのように震えるバール。だが先山は美しい顔に笑みを浮かべて、
「先ずはお守り代わりの、此れをどうぞ」
安全ピンを外して投擲。放物線を描く最中に安全レバーが外れたMk2破片手榴弾は超常体の眼前で、衝撃と弾体を撒き散らした。
「……ちょっと物騒だけどね」
舌を出して、お茶目さんを演出。兎も角、手榴弾の爆発を合図に、突破戦が開幕された。
半身異化状態になって強化された肉体はバレットの取り回しを容易くする。柑奈が放った12.7x99mmNATO徹甲弾はアパオシャ数匹をまとめて挽き肉に変えた。
「くれぐれも橘二士の射線上に割り込むな! 巻き込まれるぞ」
田南辺島の叫びに対して「冗談でも御免だ」と先山の美顔が引きつった。其れでもバレットの弾倉交換中に肉薄してくる超常体を迎え撃つ為に、先山と田南辺島は果敢に得物を振るう。バールの先端は超常体の体液に染まり、5.56mmNATOの弾倉が尽きてきた。
「――サブアームを持ってくるのを忘れておったわ」
交換しようと手に取ったのは、9mmパラペラムの弾倉。思わず茫然となって田南辺島は呟く。さておき、我に帰ったのは全身を駆け回る痛みの御蔭だった。田南辺島だけでなく、柑奈や先山も苦悶の表情を浮かべる。直ぐに甲組の部下達が弾幕を張って、3人を援護する。痛みを堪えながら、田南辺島は強制憑魔侵蝕現象の元凶を睨み付けた。前回は顔を確認出来なかったが、雰囲気は憶えている。アスモダイの後に控えていた男に違いない。
2m近い、肉付きの良い大柄の体格。だが人間と明らかに違うのは、左右の肩口からそれぞれ生えている大蛇の首。……大蛇? いや、アレは竜だ。そして田南辺島は、田南辺島の憑魔核は、アレに覚えがある。
「――まさか。あの時の竜なのか!?」
未だ銃の扱いに慣れていなかった頃だ。当時に所属していた部隊を壊滅した竜の眷属。惨劇の記憶に浮かび上がったのは、三つ首を持つ異形の竜だった。
「……待て」
だが田南辺島の叫びを無視すると、異形の男は一番街西通りの奥へと姿を消す。……逃げたのか? なんばウォークを徘徊していた超常体の多くを倒され、また後詰めの乙組が加わり、確かに戦いは幕を閉じかけていた。だが異形の竜が本気を出せば、壊滅していたのは、むしろ第377班の方だったのではないか?
「何か……あるのか?」
独り悩む、田南辺島。其のような中、息を整え終えた先山が頭を振りながら、柑奈に問い掛ける。
「――西側には、地上には、何が未だ残っていたかな?」
「地図によれば、ホテルモントレのグラスミアハウスが……って、あそこも廃墟となっているわね」
他に何があったかと意見交換する2人に、何とか回復した田南辺島は、
「……OCAT(オーキャット)が外観、内装ともに健在だったはず。調査しておいて損は無かろう」
大阪シティエアターミナル――OCAT。
「急がないと、既に逃げられているかも知れんが」
しかし残弾や体力ともに限界だ。他班と協力して、OCAT包囲網を布ければいいが、ミナミが超常体の巣窟という点を考慮すれば、其れも無理そうだ。
「――逃げられても仕方ない。OCATの監視は、他班に連絡を入れて引き継いでもらい、第377班は退かせてもらうとしよう」
班長の鶴の一声で、伊丹に帰還する事となった。ちなみに他班による南海サウスタワービルの捜索は空振りに終わったらしい。
……そして後日。
連絡を受けた他班の1つが先走ってOCATに突入。施設内にて、待ち受けていた超常体の群れと、失踪した隊員の姿を確認。其の連絡後に壊滅したという……。
第36普通科連隊と第37普通科連隊は、OCATをアスモダイの拠点の1つと看做して、大規模作戦の立案に着手するのだった。
肉体は熱病に罹ったような気だるさ、だが異常な程の清涼感を覚えるという矛盾した状態。其れでいて夢見心地。そう、寝ていながら意識のハッキリした夢を見ている感覚に近いかも知れない。
京都の中心部に近付くにつれて、白樺を襲ったのはそういう感覚だ。相棒もまた軽度ながらも同じ症状を訴えている。白樺との違いは憑魔核の有無だろう。常に核が励起した状態であり、血流や、神経を通る電気信号と異なるナニカが憑魔核から心身を廻っているのが厭なくらいに白樺は理解出来た。
(――自身の異常さに狂いかねない)
京都に入ってから、到る所でエンジェルスの姿を見掛ける。アルカンジェルは定期的に隊を組んで哨戒しており、氣を張り巡らして不埒な侵入者がいないか、不心得者がいないかを探っている。超常体が近くに居る事で憑魔核は常に活性化し、疼痛に似た刺激を送ってくる。ところが人間とは“慣れの”生き物だ。憑魔核から来る痛みに対して、白樺の感覚は麻痺。だからこそ覚醒夢に似た状態と、痛みとは別の奇妙なナニカに怖気を未だに覚える事が、狂いそうになるのだ。
「……狂っているというならば、此処の連中か」
知らず、思いが口に出た。京都市外縁で戦闘による傷痕をまざまざと見せ付けられた白樺達だが、奥に進むにつれて、整然としていく建物や街路に、無数の天使の姿以上の、気味悪さを覚える。妙なる歌声が鳴り響き、暖かい光が天地を満たす。そして――
人の姿。人が居た。人類が生き残っていた。
超常体の巣窟で、人類が生存していた事に驚きを禁じえなかったが、其の表情に、更に薄ら寒いものを感じる。天使の言葉に従い、高位の天使ヴァーチャーが教える“唯一絶対主”を奉じる。瞳や動きに意思は伺えられなかった。其れでも彼等にとって“喜び”であり“幸せ”なのだろう。
生き残っている人類との接触や観察は、後回しにする。短いながらも定期的に大津駐屯地へと報告を入れているので、いずれ対策が考案されるだろう。
ちなみに現在のところ大津へと報告を入れる事に成功したのは、白樺だけらしい。先の戦いで突入したはずのMAiRと零参特務、また他の志願者からの生死は不明のままだった。
不安と驚きは日々増していくばかりだが、当初の目的を忘れず、白樺達は伏見稲荷大社へと辿り着いた。能力で気配を隠し、建物の陰から様子を伺う。
伏見稲荷大社は、全国に約4万社ある稲荷神社の総本社であり、稲荷山の麓に本殿があり、稲荷山全体を神域とする。突入する前に頭に叩き込んでいた資料通りに、表参道の一番鳥居から楼門、外拝殿(舞殿)、内拝殿、本殿が一直線に並んでいた……ようだった。今では天使に蹂躙されて、鳥居や建物の痕跡が残っているだけだ。
そう。天使によって制圧されていた。京都に入ってから今までに見た以上の数のエンジェルス。アルカンジェルや、プリンシパリティはおろか、高位のパワーやヴァーチャーの姿も確認出来た。先日の戦い程ではないが、其れでも圧倒的な数の群れに違いない。
意を決すると、慎重かつ大胆に境内へと潜入する白樺と相棒。能力で気配は隠せても、音や姿、臭いは誤魔化せない。牛歩よりも遅い速度で進み、ようやく本殿を直接伺えられる場所まで辿り着いた時には、陽が暮れ掛けていた。
(……何かを探しているようだが?)
天使共の動きを見て、荒らした伏見稲荷大社を捜索し直している様子と判断した。果たして本殿だった廃屋から六翼を生やした天使――高位上級超常体セラフ2体が出てきた。1体は、発育が良いものの雰囲気はオトナになりかけていない感じの少女。もう1体は義務教育課程中の10歳に満たない少年。しかし天使であるからには、見た目と脅威度は一致しないだろう。
「やっぱり此処には無かったじゃないか、ハニエル。ボクが言った通り、あるのは山の頂上だよ」
少年の姿をしたセラフが口を尖らせると、“ 神の栄光( ハニエル[――])”と呼ばれた少女が頭を掻く。超常体といっても、仕草が人間らしいのはどういうものか。さておきハニエルは稲荷山の方を見上げると、
「飛んで行ければ楽なのにねぇ。……どうにかならないかしら、ザドキエル?」
ハニエルから“ 神の正義( ザドキエル[――])”と呼ばれた少年が怒鳴り返す。
「ボクが知るか! 文句ならば伏見稲荷の獣魔を封じた糞山の王の配下にしろよ」
「文句を言おうにもアタシが顕れる前に、ミカエル兄が懲らしめてしまったしねぇ……」
溜息を漏らす。そんなハニエルとは別の意味でザドキエルも肩を落とした。そして捜索は、また夜が明けてからと呟くと供のパワーを連れて境内の外へと足を向ける。ハニエルも慌てて追い掛ける。見張りとして残っているのは2体のヴァーチャーだ。今までの遣り取りで気付かれている様子は無い。
(……山か)
応仁の乱で焼失したものの、稲荷山の中には幾つか社があったらしい。再建されず、神蹟地として残っているらしいが、其処に天使共が探しているナニカが在るという事か?
ヴァーチャーに気付かれないように本殿の裏へと回る。荒れ果て、生い茂る草を掻き分けて進むと、突然、空気が変わった。京都に突入してから感じていたものとは明らかに違う。身体を蝕んでいた気だるさが嘘のように消え、心も軽く感じる。
「――此処が、話に聞く、千本鳥居……か」
無数にも見える、鮮やかな朱の鳥居。路となって闇に浮き上がる。そして白樺達は『声』が聞こえてきたような気がした。奥を見れば、淡く光る影。一瞬、狐に見えたが、目を凝らすと、狐面を被った巫女。体格はザドキエルより更に小柄で、童女といっても良い。薄く透けて見えるところから、人間ではないのは確かだ。しかし……敵ではないと確信した。
『わらわは宇迦。伏見稲荷の権現なり。瑞穂の子よ、来たれ。――縛める檻よりわらわを解き放て……』
狐面の童女はそう囁くと、姿を消したのだった。
■選択肢
WA−01)京都の状況を偵察・観測する
WA−02)京都の四大元素天使1柱挑む
WA−03)京都・伏見稲荷の制圧/調査
WA−04)「ミーシャ」の処遇について
WA−05)ミナミ捜索/アスモダイ追跡
WA−FA)近畿地方西部の何処かで何か
■作戦上の注意
当該ノベルで書かれている情報は取り扱いに際して、噂伝聞や当事者に聞き込んだ等の理由付けを必要とする。アクション上でどうして入手したのかを明記しておく事。特に当事者でしか知り得ない情報を、第三者が活用するには条件が高いので注意されたし。
また強制侵蝕が発生する可能性が高い為、注意する事。
なお京都へ突入したとしても、脱出するのにもアクション1回分を消費し、都度、成否判定がある事を了承せよ。京都とは異なる地域(愛知・三重・大阪・中部地方の何処か)を選択しただけでの移動は認められない。脱出の為のアクションが無い場合は失敗もしくは死亡したとして処理する。そして再び突入する際にも厳重な判定がある(※註1)。
対してヘブライ神群(天使群)側としてキャラクターを作成し、アクションを掛ける事も出来るが、高位天使の監視は厳しいので警戒を怠らない事。但し京都の出入りは人類側と比べて易しく、他の地域(愛知・三重・大阪・中部地方の何処か)を選択するだけで移動は可能である。
※註1)京都の突入/脱出の特別ルール……
1.「WA−01)京都の状況を偵察・観測する」「WA−02)京都の四大元素天使1柱挑む」「WA-03)京都・伏見稲荷の制圧/調査」の3つから選択する。
2.突入する方角(東・西・南・北の4つ)を選び、突入する為だけのアクションを別に明記する。上記選択肢における行動とは異なるアクションとして処理される。此れは複数行動に当たらない。もしも突入アクションが明記されていない場合、自動的に京都突入は失敗する。最悪、死亡。
3.京都から脱出する場合は「京都とは異なる地域(愛知・三重・大阪・中部地方の何処か)」を選択する。
4.脱出する方角(東・西・南・北の4つ)を選び、脱出する為だけのアクションを別に明記する。上記選択肢における行動とは異なるアクションとして処理される。此れは複数行動に当たらない。もしも脱出アクションが明記されていない場合、自動的に京都脱出は失敗する。最悪、死亡。なおアクション判定で失敗した場合、其のキャラクターのプレイヤーには京都のノベルが送られる。
5.突入/脱出する方角を護る四大元素天使やケルプが倒されていた場合、アクション判定における難易度は大幅に下がる。
※註2)お酒の味……但し在日米軍基地周辺ではアルコール類が横流しされていたり、駐日外国軍人向けに製造や販売が黙認されていたりする。