第一章:“ 神州 ”世界解説


●“ 神州 ”世界の歴史背景

 人類が、突如として出現した謎の敵の攻撃によって地上の生活圏を脅かされるようになってから、既に20年以上の歳月が流れている。
 地球上の全てが戦場となり、安らかな夜の眠りと平穏な日々の営みが追憶の中にしか存在しなくなった時代に、君達は生まれた。
 ―― 超常体
 それが、君達の日常を脅かす敵。何処からともなく現れ、全てが謎に包まれたまま人類に敵対行為を繰り返す、異形の存在群の総称。彼らの出現によって、それまで人類が築き上げてきた繁栄は緩やかに、しかし確実に、崩壊への下降線を辿って行く事になる。

 公的に記録されている「超常体」と人類との遭遇は1999年の8月13日、場所はアメリカとされている。その日以前にも超常体は世界の何処かに存在していたのかもしれないが、人類がその存在を無視できなくなったのは、その日が最初だった。
 その日を境に、世界中で一斉に超常体の発生が認められるようになる。轟音と共に周囲の物体を吹き飛ばし、消失した空間と入れ替わるようにして忽然と姿を現すおぞましい怪物達。その能力や姿は千差万別であり、爬虫類じみた外観のモノもいれば、全身を分厚い毛皮で覆われた獣のような個体も多く確認された。神話や伝承、御伽噺の存在達。しかし出現地域や姿形は異なっても、ほとんどの超常体が、人類に対して極めて攻撃的であるという共通項を備えていた。
 世界の各地で、絶えず超常体と人類の戦いが繰り広げられるようになった。そして、その中で、人々は超常体に関する奇妙な性質に気付く事になる。
 ――それは、超常体が出現する地域には、異常な偏りが認められるという事。
 日々数十体もの超常体の出現が確認され、人々の生活は深刻な危機に陥れられた地域がある一方、月に数体出るか出ないかだったり、それほど極端な数の超常体が発生する事はなかったりする地域が存在した。理由は判然としないものの、超常体の頻出する区域はかなり限定されているという統計的事実が導き出されたのである。
 そして、その中でも南米や中国では超常体の頻出地区の人口密度が低かった事から、当該地域に対して爆撃機によるナパーム弾を投下する作戦を実行に移していた。超常体の出没する地域を、徹底的な爆撃により超常体もろとも根こそぎ焼き払う事で、敵が出現する空間そのものを消し去ろうとしたのだ。それによって確かに一時的には超常体の出現は減ったかのように見えた。
 だが、それが致命的な戦術ミスであった事が、後に判明する。
 その後も統計を取り続けた結果、確かに爆撃を行なった地域の超常体出現確立は低下したものの、そのすぐ近隣の地域で、超常体の発生確率が上昇しているという、ドミノ倒し現象が起きている事が発覚、しかも爆撃によって焦土と化した地域には猛烈な勢いで奇怪な樹木が繁茂し始め地域を覆い尽くし、その地域での超常体発生確率は再び以前と同様に高くなっているという事実が観測されたのだ。それどころか、密林化した地域に出現した超常体達は雄と雌の間で自然に交配を重ね、自然発生よりもさらに猛烈な勢いでその数を増やしていった。再び超常体が大量発生した地域に、当事国の軍隊は更なる爆撃を敢行したが、超常体達はその後に再び数を増やし、そうなったらまた更に爆撃を繰り返し――そうした終わりの見えない戦いの中で、中東諸国や中国では最終的に核兵器まで使用されたが、その結果は超常体達に広大な支配地域を提供した上に、地球の環境を汚染しただけで終わったようだ。
 日本の場合、そうした事例を目の当たりにしていた事、そして超常体の頻出区域に住む人々の数が多く、大量破壊兵器の使用が困難だったという事情もあり、幸か不幸かそこまで思い切った戦術には踏み入る事が出来なかった。その為、日本で採られたのは他の国よりも消極的な手段。それは、出現した超常体に対し、自衛隊や警察がその都度出勤して、一匹一匹これを撃退していくという方法だった。
 だが、この方法もすぐに限界を迎える事になる。
 最大の理由は、超常体の出現数に対して自衛隊や警察の人員が圧倒的に不足していた事だった。出現の際に周囲の空間を爆風で吹き飛ばす超常体達によって連日連夜爆弾テロが起きているかのような状況に見舞われる事になった。超常体の出現時の爆発、そして出現した超常体による被害、それらから一般人を守り、かつ迅速に事態に対応し続けるのは警察と自衛隊、そして在日米軍の全力を投入してもやはり不可能だった。奮戦もむなしく、都市部は急速に荒廃の一途を辿る事となり、人々は暴徒と化し、超常体と同様に治安を悪化させていった。
 日本がそうした状況に置かれている中で、最も早い時期から超常体の被害に晒されていたアメリカでは、1つの作戦構想が試験的に実行に移されていた。

 ――それが、「 隔離戦区構想 」である。

 統計的に、超常体が頻出する地域を特定し、その地区から一般人を完全に退避させ、安全を確保。そうして超常体達をその地域に「隔離」した上で歩兵と戦車を中心にした陸上戦力を投入、大火力の陸戦兵器で撃退。以後は部隊をその地域に駐留させ、超常体達の生態を観察。爆撃による徹底的な殲滅とは違い、超常体の出現と繁殖をある程度まで容認し、それが近隣区域への脅威となりそうだと判断した場合には速やかに掃討する――それは、いわば超常体と人類の歪んだ「共存計画」だった。
 超常体の出現地域には奇妙な偏りがある事、そしてその地域に対して徹底的な攻撃を加えられると、超常体はその出現地域を移行させるという傾向は既に確認されていた。逆に言えば、超常体達は主に特定の地域を選んで出現し、その地域に対して極端な攻撃が加えられない限り、出現地域を移行しないという事になる。
「隔離戦区構想」は超常体のそうした特性を踏まえた上で、考案された苦肉の策だった。超常体達の出現地域が特定出来ているのならば、その地域を超常体達に明け渡し、その地域だけで被害を食い止めようという……。
 それは、いつ果てるともなく続く、泥沼のような戦いの始まりだった。超常体達を殲滅してはいけない。その地域を人類の手に取り戻す事も出来ない。ただ超常体達が増え過ぎないように、数を減らす為に戦い続ける――希望も終焉も見えない戦いが、その地で延々と繰り広げられる事になったのだ。

 そして、それから一年後。
 アメリカ全土での超常体発生数の統計数値によれば、「隔離戦区」での超常体出現確率はそれまでに比べて僅かな上昇を示したものの、それと反比例するかのように他の地域での超常体出現率は大幅に低下するという、驚くべき結果が報告された。特に隔離戦区以外の地区での超常体出現率はアメリカ全土でも一日あたり3体以下という、国土面積からすれば信じられないほどの低確率を記録した。
 この報告は、世界中に激震をもたらす事になった。
 何しろ超常体達は隔離戦区に集中的に出現するようになる代わりに、他の地域からはほとんど姿を消したのだ。ある特定の地域を超常体達に明け渡す事で、他の地域の安全が確保できるという可能性を、隔離戦区は示唆したのである。また、明け渡した地域だけを集中的に警戒すればいいという状況は、無差別に広範囲の地域で出現されるよりも遥かに対応策が講じやすい状況になる。絶える事のない超常体の出現によって、世界中が深刻な荒廃を迎えていく中、アメリカの「隔離戦区構想」を模倣した戦術を駆使する国々が現れるようになった。
 だが、この地上で行なわれている対超常体戦術のほとんどは「現状ではとりあえずうまくいっている」という事実に基づいた、極めて楽観的な対応策でしかない。
 いくら「隔離戦区構想」が上手くいっているからといってこの作戦がこれから先も平和を保障してくれるのかどうかは未知数であった。そして、この作戦が続く限り、各国では特定地域が常に隔離され、戦場となり続ける事になる。
 戦いの中で失われてゆく人員の補充は間に合わず、超常体によってズタズタにされた経済状態では、装備を増強する予算も無い。アメリカや中国といった大国でもそんな状態であるのに、小国ならば如何ばかりか。
 そこでアメリカ主導により国際連合は、新たな作戦構想を展開した。世界各地に点在する隔離戦区を、1つの地域に集中させ、封鎖してしまうというものだった。

――それが、「 神州結界構想 」である。

 出口王仁三郎の「世界雛型理論」に代表される、「神州世界対応論」。地脈の相において、日本は世界の相を持っている。日本の形状、神州は世界の大陸と対応する。
 本州東北から中部はアジア東側。東北沿岸がロシア。富士山はチョモランマを顕し、千葉は東南アジア。関東平野は中国、伊豆半島はインド。近畿は中東であり、紀伊半島はアラビア、中国地方はヨーロッパ、四国はオーストラリア、九州はアフリカであり、北海道は北アメリカ、樺太は南アメリカである。そして沖縄は南極大陸とされる。

 これを以って神州世界対応という。
 神州日本を世界に見立てることで、世界各地に現われる超常体を神州に集中させてしまうこの構想は、言うなれば日本を犠牲にすることで、他の国の被害を軽減するという構想に他ならない。当然ながら、日本国民の猛反発を受けたが、世界各国首脳は強行採決。また日本政府首脳も自らの保身と引き替えに、日本国土を売り渡してしまった。
 如何なる手段が用いられたのかは知らないが、超常体の出現が日本に集中。他国の隔離戦区が解放されていく中、神州は封鎖。結界を施され、隔離されてしまった。
 現在、日本国内は、自衛隊を母体とした国連軍・神州結界維持部隊と、超常体による、管理された戦争状態のままにある――。

 君達は、国連軍・神州結界維持部隊の一員として、いつ果てる事のない戦いを強いられているのだった。

歴史背景 超常体 憑魔 人間


●超常体:

 神州結界が施されて数年、人類に敵対行為を繰り返す超常体にも、ある種の群を形作ることが判明している。
 それは、主として、その出現地域によって構成される群であり、神州に対応する世界各地の神話・伝承に似通っていた。
 また超常体の群も、互いに敵対関係があると判明しており、一種の縄張り争いを繰り返している事もまた認められている。
 あるオカルト好きの士官が、系統付けたところ、

 ではこのオカルト的分類が正しかったとして、日本土着の神や妖怪の類は、どこへ行ったのだろう?という疑問が沸きあがる。
 少なくとも、妖怪と呼ばれるだろう存在は今もなお猛威を振るっているが、高ランクの超常体――神宮にて奉られる神は姿を見せず、呼びかけに応じることはない。各地の社殿は破壊されたままとなっている。
 神州に世界中の超常体が、集中して出現するようになったのは、「日本政府の裏切りによって、日本土着の神々が封印されたからだ」という陰謀説もまた流れているが、政府はこれを否認している。
 逆に、各地の神群を束ねる最高ランクの超常体――主神クラス(例:オーディン、ゼウス、アメン・ラー、熾天使長メタトロン、七十二柱の魔王など)を倒すことができれば、超常体もまたこの世界への『侵攻』を取止めるのではないか。……夢物語ではあるが、そんな期待感を兵士達が持ったのは無理なからぬものであった。

 超常体は総合的強さや元となる神話伝承により、大体7つにランク/クラス分けされている。

・最高位最上級……主神/大魔王クラス
 神話や伝承、学術的に、最高位に位置するといわれる存在。全能という存在(ただし絶対ではない)。神々の王。(解り易い代表例:オーディン、ゼウス、マルドゥーク)
 しかし同じ神群内にも主神クラスが複数いる場合もあるので、必ずしも神群1つに、1柱という訳ではない。
 敵対者では“七つの大罪”や、スルト(or ロキ)、テュポーン、ティアマット、セト、テスカトリポカといった存在が上げられる。

・高位上級……群神/魔王クラス
 多神教における、有名な神々。また“七十二柱の魔王”や魔界軍団将といった強力な大魔属も此処に含まれる。
 個々の差の開きが一番大きいクラスでもあり、たとえばアポロンやアテナ、ベリアルやアスタロト等は限りなく主神/大魔王クラスに近い力を有している。だが“七十二柱の魔王”でも認知度が低い存在は、下位の亜神/神獣クラスと同等の力しか有していない事もありうる。
 しかし、憑魔をヒトに植え付けたり、強制侵蝕現象を引き起こす等が出来るので(たとえ弱くても)亜神/神獣クラスとは一線を画す。

・高位中級……亜神/神獣クラス
 多神教における、認知度の低い神々。あるいは神では無いが、匹敵する存在。巨人や神殺しの獣。(解り易い代表例:ヘカトンケイルやアルゴル、フェンリルやヨルムンガンド、ガルーダ、八俣大蛇)

 此処より下級は、クラスに特別な言われ方はされない。個体にではなく、群体(種族)単位に名付けられる。

・高位下級
 人並み以上の知性を有するか、或いは、知性は低くても個としては危険極まる強力な存在が分けられる。(解り易い代表例:ドラゴン)
 完全侵蝕した魔人は、最低でも此処。

・低位上級
 知性が低い(飽くまで人間からの主観)超常体で、個人でも何とか渡り合えるのが、このクラス。単体では、やや危険。群れで襲ってきた場合、チームワークで相対しないと危険。
 知性は有するが、個の戦闘力は低い存在(エンジェルス等)も分けられる。

・低位中級
 知性が低い(飽くまで人間からの主観)超常体で、個人で渡り合えるのが、このクラス。単体では弱い。群れになったら、やや危険。手にしても原始的な武器が多く、特殊能力は持たない(毒を有する事はあるが)。

・低位下級
 雑魚。でも数だけはいるので、うっとおしい。義務教育中途者(12歳以下)でも、油断しなければ、まず負ける事は無い。ただし数が多いので、調子に乗って、気付いた時は疲労困憊で完全包囲され……そのまま戦死という場合もある。

 なお、現状で確認されている高ランク――神クラスの超常体は存在していないとされ、オカルト説は否定されている(国連公式見解)。

歴史背景 超常体 憑魔 人間


●憑魔:

 ――憑魔。

 君達の多くが「普通の人間」から「神州結界で戦う軍人」へと人生の軌道修正を余儀なくされる原因。
 人類の敵、超常体。彼らは世界中のありとあらゆる場所に出現する。出現地域に偏りはあっても、超常体が全く出現しない場所など存在しない。家でも、学校でも、会社でも、病院でも、彼らは何処にでも現れる。
 人間の体内ですら、例外ではない。
 そう。平たく言うと、君の身体には、超常体が棲み付いている。
「超常体に寄生される」――それは、問答無用で終身刑を言い渡されるのとほとんど同じ事だ。超常体に寄生された者は国連軍・神州結界維持部隊に送られ、特別な場合を除いてそこから出る事は許されない。
 原則的に、君達はこの地域を出る事を禁じられているし、肉親家族・友人にも、これから先、何度会う事が出来るか判らない。一応、建前上は、数ヶ月に一度「特別外出」という神州結界外への外出許可が出るとされているが、実際にほとんど許可される事はない。
 何故なら、超常体に寄生された人間は、もう普通の人間ではないからだ。たとえ身体の一部とはいえ、その人間はもう超常体(人間の場合は俗に「魔人」と呼称される)になっている。
 そして、超常体は超常体を呼び寄せる。
 だから、寄生された人間はもう、普通の人間と一緒には、暮らす事が出来ない――。

 ――活性化、半身異化

「活性化」というのは、憑魔が別の超常体の存在を感知した時に示す様々な反応の総称だ。この状態になると、君の身体は人間ではなく、小型の超常体と化してしまい、身体能力が激しく強化される。
 ただし相手が小型の超常体の場合は、憑魔では察知出来ない場合の方が多い。戦友の憑魔に反応して活性化するような事はなく、ある程度の大きさがある相手でないと近くに潜んでいても判らない。また、近くの存在を感知するだけで、その具体的な数や種別、また動きや位置を察知する事は出来ない。
 また、憑魔は宿主の神経にまで根を張って寄生しているので、長時間活性化が続くと痛みや震えなどの症状が現れる。
「半身異化」は、活性化による憑魔の覚醒を深める事により、通常の活性化以上の身体能力の強化だけでなく、憑魔が有する様々な特殊能力を行使する事が出来るようになる事だ。
 ただし――半身異化を繰り返す度に、君は憑魔によって身体を侵蝕されていく。侵蝕率が100%に達した時、君は完全な超常体と化す。昨日まで君の戦友だった者達には、君への殺害許可が下りる事になるのだ。

歴史背景 超常体 憑魔 人間


●人間:

 神州日本における、国民寡兵の実態。
 神州日本において“一般民衆”は存在していない。

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 なお隔離封鎖された神州の地は今や国民皆兵と等しい環境であり、それ故に“一般市民”というものは存在しない。
 銃を手に取れる者は全て超常体と戦い、戦えぬ者は全て支援に回る。老いた者は教え、幼き者は学ぶ。
 唯一の例外は子を産み育てる母だ。銃と剣に強固に守られた駐屯地奥深くの施設にて、出産・養育する。それでも絶対的に安全な楽園とは言い難い。
 自由と生存権を奪われ、終わり無き戦いを無理強いさせられた日本人達。
(『神州結界』第1回ノベルより)
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 銃を手に取れる者は老若男女問わず、戦闘に参加している。
 また、傷病により戦えなくなった者と、特殊な技術や知識を持つ者は支援活動に従事している。大学といった高等教育機関も存在しており、士官候補生や希望する者は、そこで学習や研究を行う事が出来る。
 なお、支援活動に従事する者の多くは、憑魔に寄生されていない“一般隊員 ”がほとんどだ。憑魔に寄生され、魔人となった時点で、戦線に投入される事を余儀なくされる。
 唯一の例外が、妊婦。
 ただ当初は安全な“外”で出産・育児させようという動きもあった。が、故意に妊娠する事で“外”へと脱出しようと、性風紀が著しく乱れてしまうという事件が発生。また、片親であれ、魔人との間の子供は、必ず先天的な魔人として産まれてくるという事実も発覚。これらの為、妊婦であっても“外”に連れ出される事はなくなった。必ず“内”で出産・育児が行なわれる。

 なお日本国には徴兵令はないので、建て前上、日本国民全員が「超常体と戦う神州結界維持部隊に志願した」という位置付けになっている。
 無論、この十数年間の間に、戦いを拒否する者もいるが、“戦わないと生きていけない”という事実 ―― 超常体に襲われた際に生き残る為の手段としての戦闘技術の必須や、衣食住などの生活の問題 ―― から、皆、納得ないし諦めているのが実状だった。

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「この神州内で消息不明になる部隊がどれほどあると思う? そのうち幾つかは間違いもなく壊滅した結果だが、ほとんどが脱走のものだ。勿論、脱走したところで、山奥や廃墟に隠れ潜んだ末に誰の手助けも求められずに、餓死したり、強力な超常体に囲まれて殺されたりがオチだがな」
(『神州結界』第1回ノベルより)
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 下手に戦闘を拒否して脱走したとしても、安全が確保されなければ、すぐに死亡してしまうのが現実である。
 それならば、嫌々ながらも、皆で超常体と戦うほうが生き続けられる可能性が高いのであれば、そちらに従うのが心情ではないか。

 そして皮肉な事に、多くの日本人の気質である、付和雷同なところも、また幸いした。
 つまり“上”や“周囲”に従わない者や皆の“和”を乱す者を、排斥する気質。
 村八分などの虐めなどで自殺に追い込んだり、戦闘時において孤立させたり、または“戦闘や訓練中の事故”により、そういった者は“居なくなっていった”のだ。

 これにより、事実上の“国民皆兵”が成立し、神州日本においては“一般民衆”は存在しなくなった。

 ちなみに、海外に出ていた日本人はどうなったのだろうか?
 超常体が出現し、人類社会が崩壊。
 隔離戦区思想や神州結界思想によって、隔離封鎖された日本国だが、封鎖が完了するまでに海外にいた(※出張、旅行、留学など)日本人や、海外に脱出に成功した一部の特権階級(※大資産家、政治家など。勿論、日本国象徴たるやんごとなき血族の御方達も含む)は勿論いる。
 彼等は、海外に臨時設立した“日本国政府”により保護・管理されているが、この“日本国政府”がどこに所在しているかは、極秘事項になっている。
 これは、自国領土を売って逃げ出した事による非難を避ける為とあるが、非難をする者たちにとっても“日本が犠牲になっているから、自国の安全がある”という現実に、非難しにくい点もあり、所在が秘密という事が逆に彼らの助けになっているという、まさに皮肉な状況でしかない。
 NGOの人権団体が“神州に取り残されている日本人を救うべく”脱出させる為の計画を呼びかけているが、「神州で戦う人達がいなくなれば、超常体が世界に溢れ出す」という未来予測がある為、マトモに取り合い、協力しようとする人は、極僅かだ。
 つまり「日本 ―― 国土や人命 ―― を犠牲にする事で、世界の安全が保たれる」というのは、完全に暗黙の了解となっていると言えよう。

 さらに在日外国人等の扱いは複雑である。
 在日外国人の多くは、日本が隔離封鎖されてしまうという事が発覚すると、大使館を頼って故郷へとさっさと逃げ帰っていった。
 その後“内”に居るのは、だいたい3つに分類される事になる。
 1つめ は、婚姻や交遊関係、義理や人情その他諸々から、母国を捨てて“日本人として”戦う事を決意した者。彼等は、日本国自衛隊を前身とする結界維持部隊に“日本人”として編入、周囲から快く受け入れられている。
 2つめ は、正義感を燃やす“義勇兵”や、金銭褒賞(※国連から出ている)を目当てにきた“傭兵”として自発的意思で飛び込んできた者。彼等の所属は、マチマチで、結界維持部隊に加わっている者(※ただし、上述の1つめの者と違って、彼らはあくまで他国人として扱われる。その為に周囲から受け入れられない事も多々ある)もいれば、駐日外国軍のスタッフとして加わっている者もいる。そして彼等はいざという時は、自国の駐日軍を頼って 海外に脱出する事も可能 なのだ。
 3つめ は、憑魔に寄生された魔人や、死刑や長期の懲役令等を宣告された大罪人といった、故郷に戻る事が許されない者達。駐日外国軍の兵士のほとんどを占めている。

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 駐日外国軍兵士の大半は、罪を犯した事による懲罰として、或いは憑魔に寄生されての、文字通り、故郷を追われた者達だ。
 彼等は二度と故国の地を踏む事は無い。家族や友人と団らんを囲む事ももはや出来ない。
(『神州結界』第1回ノベルより)
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 なお、結界維持部隊にも、師団ごとに懲罰部隊は存在しており、苛酷な戦線に真っ先に投入される事になる。

歴史背景 超常体 憑魔 人間


●参考資料……というか元ネタ(パクリとも言う)の一部:


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