第五章:初期情報


同人PBM『隔離戦区・砂海神殿』 初期情報 〜 沖縄:南極


『 狂った彼方の地 』

 西暦1999年、人智を超えた異形の怪物―― 超常体 の出現により、人類社会は滅亡を迎える事となる。
 国際連合は、世界の雛型たる日本 ―― 神州 を犠牲に差し出す事で、超常体を隔離閉鎖し、戦争を管理する事で人類社会の存続を図った。
 ―― それから20年。神州では未だに超常体と戦い続けている……。

 日本国西端に位置する先島諸島は、前世紀から中華人民共和国(中共)や中華民国(台湾)が領有権を主張し、度々侵犯してきた海域である。
 それは神州が隔離された現在も変わらない。特に超常体出現初期においてナパーム弾投下による爆撃や、核兵器使用の焦土作戦を敢行した中共としては、復興する為にも海底資源の確保を必要としていた。
「 ―― H.Q., this is Kuina02. Over 」
『 ―― This is H.Q., Over 』
「 …… Target is Type636, Chinese SSK 」
『 Roger. Kuina02 continue to patrol. ―― Out 』
「 Roger. ―― Out」
 静粛性は世界のディーゼル潜水艦の中でもトップクラスと言われる中共キロ級。だが、潜行するキロ級の上空を、哨戒機ロッキードP-3オライオンが予断無く追尾していた。
 航法士が通信を終えるのを聞き届けながら、戦術調整士官は送られて来るデータからキロ級の動向を淡々と見張り続けていた。
 中共は関東地方に進駐して、過去に大日本帝国から受けた苦辱を晴らした事に満足せずに、沖縄・先島の南西諸島の占領を狙っている。しかし沖縄諸島は駐日米海兵隊が居座り続けていた。中共が比較的に亜米利加の軍備が薄い先島諸島に目を付けるのは当然。だが海棲超常体に対する怖れの為か、未だに上陸作戦を強行してこなかった。大方、このキロ級による侵犯も先島周辺海域の情報収集といったところだろう。事実、今回の哨戒もこの年に入って3回目に当たる。
 今度もある程度の情報を収集し終えて、己の母港に戻るだろうと思っていた。何事も無かったかのように素知らぬ振りをしてやればいい。勿論、彼等が“ 充分 ”な侵略準備を整えてきたら、強烈な歓迎で応対するだけだ。駐在は百歩譲って認めてやっても、侵略は容赦しない。獅子吼をもって懲らしめてくれる。
 …… だが、この日は違った。非音響装置MAD(磁気探知)を担当していたセンサー操作士官が、驚きのあまり面を上げる。
「 ―― 6m超の大型物体が、目標に接近中!」
 キロ級の全長は約70m超。接近対象すらも目標と比較すれば小型に思えるだろう。だが、目標と対象がいるのは海中だ。しかも、対象が明確な攻撃意志を有しているのならば。
 パッシプ音響装置を担当していた士官が眉間に皺を寄せた ―― 打撃音と、浸水音を確認。キロ級は隠密性を捨てると、慌てて浮上を試みる。緊急用搭載艇の射出を確認。
 そして跳び上がる様に姿を表わすキロ級。艇に搭乗出来なかった者達が司令塔から脱出を図る。救命胴衣1つだ。春の東シナ海だ。緯度も低く、水温も冷たくは無い。だが超常体がいる以上は救出が必要だ。
「 ―― 西表に至急連絡を」
 航法士が通信を入れようとするのを、だが戦術調整士官は押し止める。苦渋に満ちた顔で、
「 …… 出来ん。我が部隊は秘匿された特殊機関だ。如何なる事態であれ、表面化される事態は避けなければならない」
 しかし!と危うく上官を非難する言葉が発せられる寸前、
「キャンプ・コートニーに通信を送れ。中共の回線を装ってマリーンに救助を要請するのだ」
 戦術調整士官の言葉に、航法士は連絡を入れようとする。しかし今度はセンサー操作士官が引き止めた。
「 …… 救助の必要性は無くなりました。全員、海中に引きずり込まれてしまい …… 生存の可能性は皆無です」
 魚群が跳ねているように海面が泡立っている。白き浪に時折、肉片と中共潜水艦乗員達を襲った超常体の姿が混じる。半人半魚の中型低位中級超常体ディープワン。そして、6m超の新たな超常体。
「 …… ならば、せめてバラクーダの投下許可を」
『気持ちは解かりますが。此処は伊良部への帰投をお願いします』
「今度は何だ!」
 操縦席からの連絡に、思わず戦術調整指揮官は声を荒げてしまった。機関士は声を返すと、
『与那国から極大型飛行超常体が接近中 ―― ハンティング・ホラーです!』
 忌まわしき狩人! 神州最西端にして完全に超常体に支配された地 ―― 与那国島から有翼の巨大なクサリヘビが飛び上がってきた。奇妙な螺旋形の非ユークリッド的な線を描きながらも、猛スピードで渦巻きながら接近して来る。
 悔しさに歯噛みしながら、オライオンは伊良部分屯地へと逃げ帰るだけだった。―― 与那国島では嘲笑うかの様に、奇妙にして巨大な影が月に咆声を上げていた。

*        *        *

 風に煽られて、『めんそーれ!』と歓迎の意を示す横断幕がはためく。横断幕の下、滑走路脇では神州結界維持部隊西部方面隊・第1混成団隷下の第1混成群・第1403中隊第1小隊が、作業服姿の二列横隊で出迎えの待機をしていた。また音楽隊もいる。
 船舶及び飛行機の所有・運行が脱出阻止の為、国連並びに日本国政府によって著しく制限・管理されている現在において、沖縄の数少ない玄関口 ―― 沖縄本島・那覇駐屯地に隣接する那覇国際空港。
 浅くて小さい河川を渡る手段としての舟艇はあるが、船舶の多くは超常体との戦闘で沈められたり、また脱出を阻止する者達の手で破壊されてしまったりしている。そして船舶を操縦出来る者は限られており、彼等の存在もまた秘匿されている。船を操縦する技術自体が喪失してしまったのではないかと笑えない冗談もあるぐらいだ。
「 …… しかし、銘苅隊長。1個小隊も駆り出しての歓迎なんて相手は何処のVIPですか?」
 副官の質問に、銘苅・昌喜[めかり・まさき]三等陸尉は難しい顔をした。
「知らんよ。だが市ヶ谷(※幕僚監部)さん経由の異動だから、オジイが気にしてな。―― 粗相の無いようにだと」
「オジイ …… ああ、群長が。それにしても1個小隊も、ですか」
 第1混成団は、1995年に策定された防衛大綱に従い、「第1旅団」へと改編中であった。これは「平時地域配備する部隊については、(略)8個師団、6個旅団の体制にすること」「主として機動的に運用する各種の部隊を少なくとも1個戦術単位有すること」と定められた事に基づく。
 だが超常体の出現により改編は劇的に変更。「第1混成団」という名称はそのままに、編制は旅団規模の「普通科4個連隊(群)」と大幅に増強された(※改編前は、歩兵戦力は混成群1個のみ。後述するが在沖縄米軍には日本防衛の義務と責任が無い為、実は沖縄の防衛力は薄氷に近い)。
 大幅に増強されたとはいえ、やはり出迎えに1個小隊も割かせるとは、尋常では無い。隊員一同、唾を呑み込んだ。
 航空科の連絡偵察機LR-2『ハヤブサ』が滑走路に降り立つ。レイセオン・エアクラフト社のビジネス用ターボプロップの『キングエア350』を基にして、連絡・偵察及び離島の緊急患者や要人輸送等の改装が施された固定翼機である。航続距離は約1,800km以上。
 ハヤブサの乗員口に人影が見えた時、音楽隊が演奏を開始。副官の号令を発し、第1403中隊第1小隊が立て銃体勢から捧げ銃へと移行。敬礼をした。
 …… だが、
「 ―― あ、えーと …… ?」
 搭乗口からは10代前半と思われる、若いWAC(Woman's Army Corps:女性陸上自衛官)1人が現われただけ。当然、その後にVIPが降り立つだろうと演奏も敬礼も止まない。
 数分間の異様な雰囲気。流石に、搭乗口が閉まり、ハヤブサが動き出したところで隊員達に不安が起こった。…… まさか、いや、そんな。
 WACは一瞬困り果てたような表情を浮かべたが、背筋を伸ばして顔を引き締めると、敬礼。
「 ―― 歓迎ありがとうございます。ボクは、此の度に習志野から第1混成団管区に出向してきました、八木原・祭亜[やぎはら・さいあ]です」
 91式第1種常装冬服(制服)の左上腕には、濃緑色布製台地にV字型金色線1つと桜星章の組合せ。
「 ―― あきさみよー! ぬーんち、二等陸士がちゅーんんやいびんどー(何故、二等陸士が来るんだよ)
 銘苅が思わずツッコミすると、ようやく演奏も途切れ、敬礼していた者も呆然と口を開く。祭亜は頬を伝う汗を拭いもせずに、
「 …… ええと、習志野や幕僚監部から、ボクの事について連絡はなかったんですか?」
 一同、綺麗に揃えて首を横に振る。そして脱力。力無い声で、銘苅は散開を命じた。とりあえず、自由になった隊員達は、改めて若いWACに自己紹介を始める。相手がどうであれ、本土からの客人だ。
 若い男性隊員達に囲まれた祭亜を横目に、
「 …… 意外な客人ですが、彼女が習志野出身で、幕僚監部の命で出向してきたのは事実でしょう」
「やしが、二士だぞ? ぬーがらぬばっぺーうてぇー(しかし、二士だぞ? 何かの間違いでは)
「習志野は、第1空挺や特戦群(※ 註1)の駐屯地ですよ。左胸に空挺やレンジャーの徽章が。恐らくはMOS(※Military Occupational Speciality:軍事特技区分)も …… 」
 第1空挺は長官直轄の機動運用部隊で、前世紀では日本唯一の落下傘部隊(エアボーン)。名言は『空挺なめるな!』と『細心大胆』。信条は『精鋭無比』。東部方面隊第1師団・習志野駐屯地に所在。訓練が苛酷な為『第1くるってる団』もしくは『あぼーん』等と呼ばれる事も。
 そして特殊作戦群。魔人や高位超常体、ゲリラ・コマンド制圧を目的とした、長官直轄の特殊部隊 …… という噂だ。
「たかが二士ぬくせにぬーむんだ?(たかが二士のくせに何者だ?) …… しかし、左胸に注目なんて、お前も、たいがいヤラしいな?」
「ぬーんち、あんないんか!(何で、そうなりますか!)
 銘苅と副官の視線の先で、祭亜が自己紹介を続けている。祭亜は「好みのタイプは?」という質問に、
「 ―― あのね、ボクはレズで、シスコンなんです。実は市ヶ谷に勤めているお姉ちゃんがだーい好き★ キャッ、言っちゃっいました♪ …… あれ? 皆、どうしました?」
 祭亜の告白に、地面へと頭から陥没していく男性隊員達。見ていた銘苅は、こう呟いた。
「……やくとぅ、あぬひゃーやぬーなんだ?(……だから、あいつは何なんだ?)

*        *        *

 会議室では、2つの主張が対立していた。
 第3海兵遠征軍司令部のあるキャンプ・コートニー。超常体の出現により、駐日米軍の役割も大きく様変わりをしていた。
 太平洋戦争の敗北で、連合軍 ―― 特に米軍の進駐を受け入れた日本国。以来、89ヶ所の基地・施設を米軍は日本国内に有している。だが実は直接的に日本を護る部隊は無いのだ。
 陸軍の戦闘部隊はキャンプ・トリイの第1特殊作戦群第1大隊(グリーンベレー)300人だけで、これは輸送機で亜細亜、中東に派遣される部隊だ。そして海兵隊は米第7艦隊の担当地域である西太平洋・印度洋全域に出勤する為に待機しているだけ。しかも輸送艦で運べるのはキャンプ・ハンセンの第31海兵遠征隊だけ。実は、第3海兵遠征軍は司令部だけで、師団長や参謀等のポスト維持の為だけの幽霊師団であった。
 戦力だけでは無い。1997年に結ばれた日米防衛協力の指針は「防空、日本周辺海域での船舶の保護、着上陸の阻止・撃退について、自衛隊が一義的責任を持つ」と定められている。つまり駐日米軍に、日本国を護る責任は無いのだ。しかし冷戦期は対ソ連、そして冷戦後は対中共・対北朝鮮の為に“ 米軍は存在するだけでも牽制に ”なっていた。米軍基地問題解決の難しさは此処にも在る。
 それが超常体の出現と、神州の隔離により事態は激変した。北海道に陸と空の軍隊を駐在させると共に、駐沖縄戦力を強化。第3海兵遠征軍は実質的な力を有し、第31海兵遠征隊と共に超常体との戦いに追われている。だが、その戦い方において積極派と消極派とで二分されていた。
 積極派代表は ジョージ・ルグラース[――]大尉。今や完全に支配された与那国島への着上陸を強行し、超常体の“ 親玉 ”と目される存在の撃破を主張していた。
 対する消極派代表は、同じく大尉の ジョセフ・ウィリアムス[――]。沖縄本島及び米軍基地の護りを固め、超常体からの襲撃のみに応対すれば良いという考えだった。
「維持部隊から報告のあった、中共の潜水艦沈没もある。このまま手をこまねいていたら、いずれ手のうちの出来ぬ程、超常体が溢れかえるぞ」
「日本にはこういう諺もあるそうじゃないか。『 障らぬナンとやらに祟り無し 』。第一、分別を持たず、そして力も無いのに我が物顔をしていた中共が悪い。我々は彼等と違って、与那国方面の警戒は充分にしている。奴等が警戒域を越えた時に出動し、撃退する。それで充分ではないか。そして数量を調整すれば良い。それこそ、我が合衆国、いや世界が認めている神州の役割だろう。いたずらに、火薬庫にマッチを投じる必要は無いだろう?」
 静かに睨み合う、ルグラースとウィリアムス。上官の中佐は顔をしかめて2人を着席させると、いつも通りの報告を済まさせて、待機任務を命じた。
 中佐にしても、ウィリアムスの言う通り、いたずらに兵力を損なうつもりは無い。臆病者と影ながら罵られようとも、大統領閣下と合衆国から預かった貴重な部下の命を粗末にする気はなかった。勿論、自身の命も惜しい。それに、
「ジョージ。いつも君は声高に与那国制圧を主張しているが、何か他にも理由があるように思えん。良ければ聞かせてくれんか?」
 だがルグラースは即答せず、暫く胸ポケットを押さえて無言。唇を噛んでから、
「 …… いえ。私が主張するのは、述べた通りです」
「なら、私も君の意見に賛同する理由が無い。以上だ」
 中佐の言葉に、ルグラースは軽く十字を切ってから懺悔をするように天井を仰いでいた。そして退室。
 その後ろ姿を見ていた、ウィリアムスは唇の端を歪めると、
「貴様の思い通りにはさせんよ ―― la mayyitan ma yatabaqa sarmadi fa itha yaji ash-shuthath al-mautu qad yantahi. …… 我が神よ、もうすぐです」
 誰に聞かれる事も無く、呟くのだった。

*        *        *

 隔離されてから20年。紆余曲折、思考錯誤の末に本土では治安維持の為に、厳しい風紀の取り締まりが行なわれている。…… だが沖縄では、正に治外法権ともいうべき別世界が広がっていた。
 前世紀に渡って良くも悪くも米軍に支配されていた沖縄には、米兵に向けての商売や性風俗・行楽施設が立ち並ぶ歓楽街が生まれていた。本土では貴重な電力が惜しげも無く使われて、不夜城の様相を示す。
 駐屯地や米軍キャンプでの事務や支援任務からあぶれた非戦闘員の多くは、行楽施設で働く事で日々の生活と安全を確保する。配給が基本の神州で、沖縄だけは米兵が落とすドル紙幣とセント硬貨が流通の基本となっている。これら歓楽街における治安の番人は維持部隊の警務科ではない。米軍の憲兵だった。
「駐日米軍のおかげで、酒と賭博を興じる事が黙認されているのは、皮肉だが、ありがたくもある」
 氷を浮かべたグラスを軽く振ってから、銘苅は煽った。水で割ったとはいえ、琉球伝来の地酒 ―― 泡盛は火がつくほど強い。だが、すっと咽喉を通るまろやかさがある。
 米兵と維持部隊員との仲は、決して良いとも言えないが、本土で衝突を繰り返しているほど悪くも無い。一世紀近い支配に対する諦めもあるだろうが、それ以上に「いちゃりばちょーでー」「なんくるなんさー」というウチナーンチュの精神が強いのだろう。喧嘩が生じても、憲兵に仲良く小突かれ、臭い飯を食べて、それからショバに出てきて酒を交わせばまた仲直りだ。
「ああ、先輩。此処におられましたか」
「おう。…… で、例のあいつはどうしている?」
 隣の席に座った副官に、銘苅は目配せをして本土からの来訪人の動向を問い質した。
「どういう手品を使ったのか、暫く団長室で話し込んだ後、第1混成団管区での自由独立行動権を手に入れたようです。それに付随して各施設・地域の立入り調査・発砲許可等も。…… 『 上 』は彼女のあらゆる行動を許可するみたいですね」
「二士風情が、か? …… ぬーがらあいんな(何かあるな)
「現在、彼女は御嶽(ウタキ)や琉球の神話、そして『 キンマモン 』というのを調べているそうです」
「琉球神話やキンマモンか。…… 戦いで語り継ぐ者もいなくなり、資料も散逸した今、調べるのも容易では無いだろうに」
「ええ、だから隊員の一部が、彼女に協力を申し出ているとか」
 思わず口に含んだ酒を噴出すところだった。
「待て。あぬひゃー、同性愛むんにしーよーねー熱狂とぅか自称しちうらんたんか? しむがやー、あんしー?(待て。あいつ、同性愛者にして姉熱狂とか自称していなかったか? いいのか、それで?)
 副官は肩をすくめるだけ。銘苅は達観したように、
「ま、いいか。…… 話は変わるが、聞いたか。中共潜水艦の件は?」
「ええ、USネイビーが報告してきた与那国近海ですよね。―― 沖縄本島にまで襲って来ますかね?」
 銘苅はグラスへと新たに泡盛を注ぎながら、
「判らん。ただ、西表・石垣・宮古で極秘任務についている連中が何らかの対策に出ているだろうさ」
 石垣島周辺 ―― 八重島列島に治安維持部隊上層部が極秘の特殊部隊を置いているという噂は、限られた者の間では、そこそこ信憑性のある話だった。海自の流れをくむSBU(※ 註2)の疑いが濃いのだが、銘苅には自ら進んで暴こうという気までは無い。
「 …… 本土でも色々とキナ臭い事が起きているようだし、沖縄も今迄通りという訳には ―― 」
 呟きを遮る形で、銃声が遠くから響いた。そして憑魔の活性化で、痛みを訴える魔人達。銘苅は愛用のM1911A1コルトガバメントを握って外に出る。
「 ―― 緑ヶ丘公園の方だ!」
 既に血気盛んな米兵がM9拳銃ことベレッタM92Fを、維持部隊員が9mm拳銃ことSIG SAUER P220を手にして走り出している。遅れてM4A1カービンライフルを構えた憲兵達が制止を呼びかけながら、追い掛けていた。国際通りから一銀通りに入って、次に右折。
「うれー、いやーか!(やっぱり、お前か!)
「やっぱりって何ですか! やっぱりって!? ボクはただ蛾を追い掛けていただけですよ」
 騒ぎの中心にいたのは、祭亜と協力者達。遮蔽物に身を隠しながら、超常体との銃撃戦を交わしていた。
 相手は甲殻類に似た身体に、茸のような頭部を有する低位上級超常体ミ=ゴ。超常体でありながら、人間の武器を鋏状の触手で器用にも使いこなす存在だ。
 多勢に無勢を悟ったのか、数体のミ=ゴは夜空に舞い上がって逃げ去っていく。罵詈雑言を吐いて、ミ=ゴの逃走を見送る米兵や維持部隊員。その隙に、祭亜と追っ掛け達も姿を消していたのに気付いた者は少なかった。銘苅は毒吐く。
「あぬひゃー、やっけー事 持ちこんなたんんやあらんがやー?(あいつ、厄介事を持ちこんできたんじゃないか?)
 ふと視界の端を、大きな蛾が横切っていった。

■選択肢
Sp−01)那覇駐屯地で色々と探ってみる
Sp−02)キャンプ・コートニーにて活動
Sp−03)キャンプ・ハンセンで戦闘準備
Sp−04)御嶽巡りや琉球神話の研究調査
Sp−05)八重島列島で厳重な警戒体勢を
Sp−FA)南西諸島の何処かで何かを


註1) 特殊作戦群 …… 現実世界においては2003年に発足した陸自初の本格的特殊部隊。国内でのテロ、それに類する不正規戦に備えて創設された。米国のデルタ・フォースを範としているらしいが、規模・武装の詳細は不明。精強無比。
 神州世界において特殊部隊は幾つか在るが『魔人駆逐を主任務にした部隊』の代表は、実は此れ。

註2) Special Boarding Unit : 特別警備隊 …… 現実世界においては2000年に発足した海自の特殊部隊。不審な船舶に移乗し、制圧・武装解除し、積荷に武器や輸出入禁止物品が積載されていないか検査する。
 神州世界では2004年に発足され、沿岸部における特殊超常体殲滅活動に従事している、数少ない操船技術や水中作戦の専門家達として設定。哨戒回転翼機SH-60K等の航空機も配備。
 キャラクターでの注意 : SBUのキャラクターで作戦遂行したい場合は、必ず自由記入欄に「コール・サイン(暗号名)」を設定しておいて下さい。任務遂行時にノベルでは、そのコールサインでしか描写されません。また行動選択肢は制限され、自由を奪われます。命令無視は「即射殺 = 死亡処理での再登録」をしてもらう事になりますので予め御了承下さい。


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