同人PBM『隔離戦区・神邦迷処』第5回〜 東北:西比利亜


SiB5『 土を潰す ―― 壊 ―― 』

 月山8合目にある、弥陀ヶ原(※御田ヶ原)の月山中之宮(御田原神社)。月山神社本宮と頂上小屋にて抗う ミズクメ[――]が率いる妖怪達との決着を付ける為に、第610中隊先遣の第6107班をはじめとする2個小隊が天幕を張っている。
 いつもならば休憩時間でも、各自、鍛錬に励んだり、銃器の分解洗浄等に務めたりしているはずなのだが、本日ばかりは訪れた珍客に其れどころではなかったようだ。
「――デモDVD版で見た通りだぞ」
「可愛いな、いや、本当に可愛いな」
 男達(と一部の女性も含む)が騒ぐのも無理はない。珍客とは――神州結界維持部隊・東北方面音楽隊・魔法少女番組撮影班『魔法少女 マジカル・ばある』の主演の1人、田中・国恵(たなか・くにえ)二等陸士だったからだ。未だ試験撮影段階で、慰問活動を始めている訳ではないが、先行配布されているデモ映像で東北方面隊のロリコン変態――もとい紳士のハートをキャッチ。熱狂的な歓待で迎えられた。
 正統派の魔法少女衣装に身を包んだ国恵は愛想よく笑うと、小隊長へと敬礼をしてみせる。
「第9師団長からの特命により、月山解放の応援に出向しました田中です。宜しくお願いしますわ」
 早くもファンを自称する隊員達が歓声を上げた。他のWAC(Woman's Army Corps:女性陸上自衛官)は呆れた目で、遠巻きに眺めるだけだ。
「――いや、中々に油断は出来ないですね。彼女、空挺とレンジャーの徽章持ちですから」
 目聡く 斉藤・麗華[さいとう・れいか]二等陸士が指摘すると、親友の言葉に感嘆の息を漏らした。憑魔蕨手刀『大通連』を刷くと、大竹・鈴鹿[おおたけ・すずか]一等陸士は打って変わって頼もしく頷いてみせる。
「――成る程。応援というのは実戦も込みか」
「一見、華美なだけの衣装ですが、アレは憑魔武装ですよ。色々改造もしているようですし。……何気ないようですが、あの身のこなしからしても近接戦闘が得手かと」
 第6107班の女傑2人が感心しているとは別の理由で、東北方面警務隊本部付の 玉川・九朗[たまがわ・くろう]陸士長が呆れて見せた。八角杖に身をもたれかかるようにして脱力を表す。普段はきつい面立ちの九朗も流石に苦笑するしかないようだった。
「……巷で噂の魔法少女とは聞いてはいたが、実年齢は幾つだ、あれは?」
「さあ。ぼく達も見掛けに関しては、あんまり人の事はとやかく言えないからね」
 第6偵察隊に所属する 黒川・大河(くろかわ・たいが)陸士長の言葉に、白山・勇吉[しらやま・ゆうきち]一等陸士も頬を掻くだけだ。飯縄山の権現――飯綱三郎天狗に従う九朗は黒髪黒目のショートカットの20歳前後の女性体であるのに対して、座敷童の黒川と雪ん子である勇吉は、姿形が名の通り“童子”である。とはいえ座敷童や雪ん子も、半不老不死である異形系でもない限りは、何時までも名の通り“童子”のままである訳でもなく、一応は成長していくらしいが。
「しかし魔法少女とは……」
「あら? お話があるようですけれども?」
 笑みを浮かべて国恵が挨拶に近付いてくる。しかし目の奥は笑っていなかった。
「何なら……肉体言語でお相手しますけれども」
 他の人には聴こえない程度の声量で、だが確かに凄みを効かせてきた。勇吉が固まる隣で、
「おっかないなぁ。キミが何の妖怪か、見当が付かないけれども?」
「さて……人間社会に紛れ込んで長いですから。疫病と医療を司る神として祀られたモノとしての記憶が少しだけ」
「それだけじゃ難しいところかな?」
「類似のモノとしては“河童”でした記憶が」
「河童も諸説あるからなぁ……でも、そうだとするとキミが若い姿の理由も解る」
 座敷童もだが、河童には間引きした赤子の霊という説がある。幼くして死なせてしまった子への罪の想いが具現化したといえば、若い姿もむべなるかな。
「ただ、問題としては先程も申し上げました通り、人間社会に紛れ込んで長いものですから……“こっち”に知り合いは残ってないかと」
 頂を見遣る。人の世を選んだモノと、人の世を拒んだモノとの見えない境界線が敷かれているように思えた。九朗は肩をすくめるだけだ。
「これは共闘の道を探りたかったものだがな」
 溜息を漏らすと、
「……まぁ、兎も角としてだ。これは戦いで確保したモノ達の扱いに関して、隊長等と予め話を通してくる。それ達は、あれ等も交えて、ミズクメ達とどう当たるか戦術でも練っておかれよ」
 八角杖で肩を叩きながら、九朗は幹部達が詰めている天幕へと向かう。あれ等と呼ばれた麗華達だが、先日に戦った妖怪についての考察を話し合っているようだった。
「しかし相手はミズクメ――すなわち玉藻御前と、鬼女紅葉の縁者ですか」
「それを言うならば大竹一士も、鈴鹿御前の血に連なる半妖らしいけれども」
 腰に刷いている憑魔蕨手刀『大通連』を見遣る。多くの人妖の血肉を吸った憑魔刀は、其れ自体が一個の妖怪とも言えよう。血縁者とはいえ、鈴鹿の元でおとなしくしているのが、むしろ空恐ろしい。
 成る程と頷いてから考え込むと、
「……黒川童子。あなたは色々とお詳しいようですので、少し知識を拝借したいのですが」
「判る事ならばいいんだけれどもね」
 国恵の問いに、黒川は半ば身構えるように応える。
「えぇと、ですわね……『異なる時空を括ると共に聞き入る巫の力を司る御方』について心当たりはございません?」
 霊山恐山での状況を説明する。時空の綻びにして歪みたる“門”の発生と、“向こう側”にて ヤミー[――]と称する比丘尼姿の存在から聞かされた話をした。“門”を完全に消滅させるには『異なる時空を括ると共に聞き入る巫の力を司る御方』の助けが必要という。
「――今は天魔……多分、外津国の神々の事だと思うけれども、ソレによって身や力を封じられているという話なのですけれども……」
「――もしかして、其れは菊理媛様の事じゃないかな? 白山比痘l」
 菊理媛[くくりひめ]――白山妙理権現の異称の通り、霊峰白山の化身。古事記には名が挙がらぬ神であり、日本書紀の一書に一度だけ出てくるのみで、謎が多い。しかし菊理媛を主祭神として祀る白山比盗_社は、日本各地に2,700余りある白山神社の総本社である事からも考えると、神格や力は、かなり上位にある存在と看做される。
「一説には、正体は伊邪那美様そのものと言われているらしいよ。天父神たる伊邪那岐様が天照様を後継者としたのと対照的に、地母神たる伊邪那美様は菊理媛様を後継者としたという説もあると聞いた事が……」
 事実、最近の研究によると白山比盗_社の祭神は、本来は菊理媛でなく、伊邪那美だったとされている。そうと考えれば、菊理媛が記紀より抹消されたのも邪推出来ると言えるだろう。記紀は天孫を自称する大和政権が創り上げたものであるからだ。
「だけれども荒吐神と違って完全に歴史の奥底へと秘匿する事は出来なかった……」
「其れだけ力のある存在という事ですわね」
 国恵は唇を噛んで考え込む。霊場恐山に布陣している部隊の戦力は充分であり、“門”から溢れ出てくる超常体への対処に問題はない。――今のところは。
 だがヤミーの力が衰え、“門”が増え続け、拡大を止める事が出来なければ、遠からず霊場恐山一帯を放棄しなければならないらしい。第9師団長からコッソリ聞いた話では、既に最悪の状況を考慮して、青森駐屯地だけでなく第9師団全体を出動させる準備を進めているという事だ。
(……問題は、宮城の仙台駐屯地――つまり東北方面総監部の動きに不明瞭なところが窺える。もしかすると第9師団は青森で孤立するかも知れん)
 そのような弱音も漏らしていた第9師団長の姿を思い浮かべる。
「……恐山や菊理媛様も気掛かりだけれども、今は月讀様の解放を優先してもらうよ。御免ね」
 申し訳なさそうな黒川の言葉で我に帰ると、国恵は首肯で応えるのだった。

*        *        *

 警戒しながら胆沢城址に戻ってみたものの、綺麗に片付けられており、宮澤・静寂[みやざわ・しじま]二等陸曹だった肉片が散らばっていた痕跡すら残っていなかった。
 静寂の死を以って、NEAiR(North Eastern Army infantry Regiment:東北方面普通科連隊)――通称『荒吐(アラハバキ)連隊』残党および首魁であろう、東北方面総監の 吉塚・明治[よしづか・あきはる]陸将への捜査と追跡は事実上消滅の憂き目にあっている。
 吉塚に協力している魔人―― 那賀須泥毘古[ながすねひこ]は、『古事記』にも伝えられる、真の神代(かみよ)の刻から存在する英雄神。強弓の名手と謳われた那賀須泥毘古は、現代において得物を銃に変えて、静寂を肉片に変えた。静寂が構えていた空間湾曲を上回る威力からして対物狙撃銃に間違いない。
 対して護衛役であった 小島・命[こじま・みこと]二等陸士達は近接戦闘が主。このまま狙われ続けて生き残れる可能性は低い。
「――でも荒吐連隊の最終目的が何であれ、やっている事は魔人による強化部隊の創設と活動だよね?」
 恋人でもある 神代・光[かみしろ・ひかる]二等陸士が周りに目を配らせながら、尋ねてくる。
「……確かに人工的に憑魔を寄生させる事は、完全侵蝕魔人――超常体の暴走に繋がり、人類社会の終焉を招くという懸念はあるけれども」
「……けれども?」
「今のところ、吉塚陸将や那賀須泥毘古によって統制がなされているからこそ、僕達にも見付からずに活動していた訳で……考えてみれば、連隊を潰す必要性はないんじゃあ?」
 神代の言葉も尤もである。荒吐連隊の存在を非人道的と看做して苦々しく思っているのは中央であり、連隊に加わっていた者の中には志願者も少なからずいたのだ。
「……とはいえ過ぎた力は、いずれ身を滅ぼすものよ。光ちゃんもいつかは解るようになるわ」
 歳相応の思慮めいた微笑を浮かべる小島。
「しかし……静寂ちゃんが亡くなった以上、私達が付き合う理由がなくなったのも事実なのよね〜」
 旧日本国陸上自衛隊警務科と、日本国警察組織機関が統合された、つまりは神州結界内での警察機関である警務隊は、維持部隊長官直轄の部隊のひとつだ。警護・保安業務のほか、規律違反や犯罪に対する捜査権限(と、あと査問会の許可による逮捕や拘束権)を有する。
 だが小島も神代も普通科所属。静寂の護衛も、東北方面警務隊本部長(一等陸佐)に厳命された訳でない。事実、東北方面警務隊本部長も中央――市ヶ谷からも捜査の継続や身の振り方について何も言及されてはいなかった。
「本当に……どうしようかしらね?」
 溜息を吐いて天井を仰ぎ見る小島。神代が心配そうに窺うしかない、その場に、
「――明確な敵対勢力は減らすべきだと思うけど」
 冷たい響きの声が掛けられた。身を正してから振り向くと、身長を遥かに超える重火器ケースを背負った美少女と、何故か着ぐるみの人物。更に言うならば、美少女の方は見た目がゴシックロリータ風に改装されたボディアーマーを着用している。
「もしかしなくても『魔法少女 マジカル・ばある』の娘? 映像通り、可愛いのね☆」
 喜色満面の小島に対して、ゴスロリ―― 遠野・薫(とおの・かおる)二等陸士は笑みも照れた素振りも見せずに、空いた席に座る。代わって着ぐるみが律儀に挨拶をしてきた。
「東北方面音楽隊・魔法少女番組撮影班『魔法少女 マジカル・ばある』の姿南三曹です」
 慌てて神代が起立して敬礼。座ったままだが小島も 姿南・久万美[すがたな・くまみ]三等陸曹へ敬礼を送ると、
「……で、敵対勢力って、どういう意味なの? 警務隊と違って、貴女達は東北方面隊の人間だと思ったけれども」
「東北地方や北陸地域では、白髪鬼である君やわたしのような存在は正体がバレても黙認され、受け入れられやすい。だから表向きだけ東北方面音楽隊に所属しているだけ。それを言うならば、白髪鬼も東北方面隊の普通科隊員よね?」
 薫の指摘に、小島は肩をすくめながら苦笑した。
「この娘達は公式の戸籍――例えば人間扱いの身分保障といったものと引き換えに協力の契約をしている立場……つまり、どちらかと言うと中央に近いんですよ。事実、撮影の協力者は元特戦群のパイロットだったという人もいますし」
 姿南は着ぐるみの中で苦笑したようだった。
「――となると、君も?」
 今更ながら薫は、久万美に尋ねてみた。着ぐるみは首を横に振る仕草をすると、
「……生憎と。遠野さんに目を付けられた、哀れな普通科隊員ですよ」
「そうだったかしら。哀れなのは否定しないけど」
 薫の言葉に、落ち込む着ぐるみ。小島も神代も何とも言えない表情を浮かべるだけだ。さておき、
「吉塚陸将が首魁というならば、東北方面で誰が味方か敵かは難しいところね」
「少なくとも警務隊本部長はシロよ。但し中堅から下の連中は判らないわ」
 岩手駐屯地には第123地区警務隊岩手派遣隊が詰めているが、吉塚陸将の動きを把握していなかった――若しくは誤魔化していたところから考えて、クロに近い灰色と言える。少なくとも静寂に対して積極的に協力的な動きを見せなかったのは間違いない。
「それと青森の第9師団長もシロね。ロリペド――紳士だけれども、裏表のない人物なのは確かだから」
 第9師団長の影響力が強い青森・弘前・八戸の駐屯地は同じくシロと出た。山形の神町駐屯地は灰色だが、シロに近いと思われる。尤も第6師団長と第20普通科連隊長は出羽三山の対応に向けて控えており、クロだとしても吉塚陸将と歩調は合わせ難いだろう。秋田の第21普通科連隊も同様だ。そして逆に考えると宮城にある各駐屯地はクロと思われた。
「……本部長の身辺を警護しなければいけない気がするわね。敵地の真っ只中じゃない」
「じゃ、白髪鬼は警護に向かうの?」
 小島の呟きに、薫が口を挟む。小島は天井を仰いで暫く考えている様子を見せた後、
「いいえ――達谷を探るわ。瘤だった静寂ちゃんが亡くなった事で、吉塚陸将が密かに仙台へと舞い戻っているかも知れないけど……」
 岩手を守護する神、八十禍津日――またの名を 瀬織津姫[せおりつひめ]の言葉が気にかかる。達谷窟毘沙門堂……坂上田村麻呂の伝説で有名なものの1つ、悪路王退治の舞台だ。
「勘だけれども……何か手掛かりか何か残っている気がするのよね」
 後手に回っているのは事実だが、かと言って達谷窟毘沙門堂を調査せずに、他にアテもなく吉塚陸将を追跡する訳にもいかない。
「それに……」
「――それに?」
 言葉を切る小島の顔を、薫は覗き込んだ。真剣な表情を浮かべた小島は唇を軽く舐めると、
「……那賀須泥毘古様が、達谷で待ち構えている気がするのよ」
 小島の言葉に、神代が身を固くする。しかし薫は頷き返すと、
「解ったわ。事前で調べられるだけの情報を頂戴。地形図とか。わたしが那賀須泥毘古と対決する。時間がないので、調査は頼んだわ」
 席を立つ。そして唇の端に冷たい笑みを形作ると、
「わたしは――妖怪アリサカ・ライフル。太古の狙撃手、那賀須泥毘古……相手にとって不足無しだわ」
 やれやれと久万美が溜息を吐いたようだった。対物ライフル同士。直撃しなくとも、お互い、無事に済まないだろう。神代が身震いをする。
「……そういえば。綾ちゃんの姿が見掛けられないけれども?」
 今頃思い出したか、小島が周囲に視線を送る。薫が首を傾げて、
「――綾? ……ああ、あの娘ならば、人手が足りないからといって、わたしと入れ替わりに恐山へと呼び戻されたみたいよ。国恵に代わる近接の壁が必要だったようだから」
 小島と神代が顔を見合わせる。そして、
「――恐山、大丈夫なの?」
「大丈夫なんじゃない? 戦力は充分に足りているみたいだから。但し……それでもジリ貧なのよ」
 矛盾したような物言いに、小島と神代は再び顔を見合わせるのだった。

*        *        *

 腰まである長い黒髪を風になびかせ、ただ鋭い瞳は刺すように北方へと視線を向けていた。視線の先には何処からでも観測出来る、竜巻に似た柱が立っている。――津軽海峡を越えた彼方、函館には最高位最上級超常体ハストゥールが顕現しており、淀んだ風と瘴気が渡島半島を侵蝕していっている。
「……あの柱の元に、正巳が――」
 佐伯・綾[さえき・あや]三等陸曹は振り返ると、
「白鷺准尉、今すぐに函館まで! 待っていて、正巳。お姉ちゃんがすぐに助けに行くから! ブラックホークを奪ってでも」
「……流石に、其れは聞けない話ですが」
 角張った中年男――東北方面航空隊・強襲輸送班長、白鷺・純一(しらさぎ・じゅんいち)准陸尉は乾いた笑いで応じた。地上戦力として綾を引っ張ってきたのはいいが、
「――大丈夫ですの?」
 同じく呆れたような顔で、魔法少女番組撮影班『魔法少女 マジカル・ばある』の 桃山・城(ももやま・しろ)二等陸士が尋ねる。
「……聞けば函館にも未だ生存者がいるようです。佐伯三曹の弟さんも無事が確認されており、ハストゥールの対抗策として情報収集に余念がないとか」
「らしいですわね。奥里士長もいらっしゃるようですから大丈夫……と、そうではなくて」
 桃山がクラシックドレスをはためかせて抗議する。アレだけ重火器の設置や、爆薬を弄っているのに白色ベースの布地に汚れが目立っていないのは、白鷺から見ても不思議に思うくらいだ。
「――綾さん。頼りになりますの?」
 共同して作戦を行ったのは、およそ二ヶ月前の数日間だ。あの頃は未だ霊場恐山の“門”も大量発生しておらず、また固定化もなかった。現れたのは餓鬼の群れに過ぎず、接近される前に桃山と薫で大部分を殲滅したような覚えがある。国恵や 奥里・明日香[おくざと・あすか]陸士長と共に、綾は出番待ちで終わったはずだ。
「――田中二士や遠野二士が抜けた分、地上火力要員の補充が必要だと判断しました。大丈夫、佐伯三曹は力になってくれますよ」
 見た目と違って、白鷺は穏やかな口調で桃山をなだめる。だが状況が開始されれば、行動に迷いはない。事前準備も怠らず、入念に支援要請を八戸へと出していた。
「そうですの? ……確かに人手が減りましたけど、綾さんのように別に引っ張ってきて、事前準備が整えられているなら、何とかなりますかしら? 国恵の話では、八戸は第9師団長の影響が強いから問題ないらしいですけれども」
 其れは薫が出向いた先での話だ。東北方面隊内部で不穏な影があるというのは、未だ一部の者しか知らない。何しろ張本人が方面総監だというのだから、洒落にならなかった。今は末端の混乱を恐れての情報統制がなされているが、誰が味方か敵かを見極めておかないのは厄介だ。
「八戸には私の友人も多いですからね。全員が『マジカル・ばある』の熱狂的ファン――紳士だからという訳でなく」
 苦笑する。事実、“門”の向こうからの敵側戦力の大規模出現を警戒した白鷺は青森、八戸へと頻繁に連絡や輸送を行っている。
「攻撃ヘリがあれば、敵が増えても押さえ込めます。輸送ヘリがあれば迅速に撤退出来ます」
 霊場恐山に駐留している部隊規模は、普通科2個中隊。第9施設大隊や第9後方支援連隊から送られてきた人手もあって本格的な陣営地が形成されている。
 其れでも回を重ねる毎に、“門”から出現してくる超常体の群れは強力になってきている。餓鬼から始まり、人身獣頭の獄卒鬼、そして羅刹沙(ラクシャーサ)に、羅刹斯(ラクシャーシ)という羅刹鬼。鬼、おに、オニのオンパレードだ。
「地獄の釜の蓋がひっくり返ったというのは、こういう事を言うのですわ」
 特に、羅刹鬼は獄卒鬼や餓鬼の群れと違い、単体でも並の強化系魔人に匹敵する。何より力任せや数頼みに走る事なく、組織行動を取れる程に賢い。
「――急に2割増しで襲撃を掛けられても、退けられる程には現状戦力は足りていますが」
「……最悪の場合、撤退も視野に入れて防衛戦を行いませんとね。撤退戦闘の場合、殿軍を努めて損害を減らしますわ」
「航空からの対地攻撃支援もお忘れなく。しかし……今後、航空戦力の存在意義を示せる機会は減る一方でしょうね」
 何しろ航空機の維持や燃料は莫迦にならない。春から蠢動した超常体の異常な攻勢がなければ、航空戦力も、戦車といった機甲戦力も、無用の長物として朽ち果てていくだけだったのだから。
「逆に言えば、この三ヶ月近くで大量に消費したから、もう贅沢に飛ばせる程の備蓄は無い……と三沢の友人も嘆いていましたよ」
 ――後の話だが、千歳の航空基地も天御軍(あまつみいくさ)つまりヘブライ神群の奇襲によって多くの機体や人材、そして燃料を喪っている。
「――撃退、最悪でも拮抗するだけの戦力は整っておきながら、それでもジリ貧ですのね」
「“門”を閉じる方法が見付からない事には……」
 何度も調査や確認をしたが“門”の発生原因は“こちら側”でなく、“向こう側”にあるのは間違いない。“向こう側”では ヤマ[――]が元凶を取り除く為に動いているらしいが、好転は難しいようだ。なお“門”の拡大を抑えようとしているヤミーとの連絡は、薫が残した交神記録を元に、操氣系魔人が行っている。
「……どうもヤミー様の衰弱振りが激しいそうで。6月中旬まで保てば良い方と診たてられていますわ」
「……操氣系の判断ですか?」
「ぷらす、衛生科の診断結果」
 沈黙が訪れる。早い段階でヤミーが言っていた『異なる時空を括ると共に聞き入る巫の力を司る御方』の協力を得られていれば、また話は違ったかも知れないが。今となっては逆転勝利するのはギリギリだろう。そもそも『異なる時空を括ると共に聞き入る巫の力を司る御方』がナニモノか、何処に封じられているかが謎のままだ。国恵が、その手の知識に詳しい人物に尋ねてみたそうだが……。
「――撤退戦ですわね」
「……悔しいが、最悪の事態を想定しての準備も進めておきます」
 揃って大きく溜息を吐いた。

*        *        *

 拡声器を手にした第6107班長は大きく息を吸い込むと、
『 ――再度通告する。武装を解除し、降伏せよ。諸君等が何を計画しているのか検分させてもらう。場合によっては、計画の要――月讀の封印を解放する。抵抗するならば容赦はしない』
 対峙する、月山神社本宮と頂上小屋の周囲を固める多くの妖怪達の中、顔を引き締めた金髪の美女ミズクメが、応答する。
「……御忠告致します。これより先は我等も譲れぬ領域。速やかにお戻り頂きますよう、重ねてお願い申し上げます。……月讀様ならば、もうすぐ御身を解放致します。今はお帰り頂けませんか?」
 視線がぶつかり合い、そして――指示が発せられた。クレハ[――]が89式5.56mm小銃BUDDYを構える隊員へと牽制を兼ねた炎を放つが、勇吉が凍気で以って打ち消す。生じた水蒸気で視界が埋め尽くされた中、突貫するのは魔法少女の影1つ。国恵は跳弾や、妖怪達の流れ矢を意にも介さず、まっすぐにクレハへと突き進む。胸や腹に受けても、纏ったボディアーマーが氣の膜を張って貫通を防ぎ、また衝撃を吸収する。露出した部位をかすめても……
「魔法少女は傷付かないものですわ!」
 瞬時にして傷痕が消えた。乙女の汚れなき柔肌が戦場では眩しい。
「「「……魔法少女、すげえっ!!!」」」
「――異形系能力持ちなのね」
 クレハは舌打ちすると、炎の矢を放った。面から線、そして点への集中攻撃。
 流石に怪我が自然治癒するといっても、細胞そのものが死滅するような火傷は回復が難しい。顔をかばうように長袖の腕部で構え、そしてボディアーマーに寄生した憑魔が氣の膜で炎より損害を軽減する。また勇吉が凍気でクレハの火力を抑え込んでくれようとしてくれるのはありがたかった。
「うふふ。――肉体言語でお相手します」
 またクレハの攻撃が国恵に集中してくれた御蔭で、部隊全体の負担が軽減。主力を今までの戦いで失っている妖怪達にとって、維持部隊の一斉射撃だけでも戦意を挫くのは間違いないだろう。
 だが――
「ミズクメ様!」「玉藻御前っ!」「お助けを!」
 求める声に応えて、縦横無尽に駆け巡るは1柱の妖狐。日本三大妖怪の1つに数えられし、白面金毛九尾の狐。光が放たれると、触れた者達を吹き飛ばしていく。また四方八方からの弾雨すらも物ともしない堅牢な光の陣容。余りの出力に物質化した波動ともいうべきモノが荒れ狂う。ミズクメ1柱で維持部隊の大半が戦闘不能に追い込まれていた。
「危険極まる光……悔しいけれども強いっ。でも!」
 放たれた光の波長に合わせるように、黒川は意識を集中する。そして――溶け込ませた。
「推して、参るっ!」
 黒川の光に包まれた鈴鹿が大通連を振りかざして、ミズクメへと肉薄。波長を変えた光で護りを固めるべく放とうとするところを、鈴鹿とは別方向から麗華が円弧を描くように、舞うような優美さを以って打撃を叩き込む。左手に持った小さい鎚を振り子の重石代わりに、指向性を持たせながら派生した力を増幅し、右手から解き放つ。衝撃はミズクメのか細い胴体に容易く浸透し、大きく血を吐かせた。更に振り下ろされた大通連が両断する。
「……やりましたか!」
 思わず息を吐く。全身の毛穴から汗が一気に吹き出た。黒川の光に包まれ、また胸甲に寄生している憑魔で氣の膜を纏っていたとはいえ、ミズクメの放つ衝撃に強化されているはずの身体が悲鳴を上げていた。其れは鈴鹿も同様。片膝を付いて、大きく肩で息をしている。妖怪達の首魁を討った――此れで。
「ダメだ、其れは負けフラグだよ!」
 黒川が発する警告に、2人同時に身構え直す。反射的に大きく跳び下がった。先程まで居た空間を、重い何かが抉り取る。
「……成る程。異形系能力もあるのか」
「まぁ幻惑だけでないとは思っていましたが」
 質量保存の法則を無視しているかのような巨大な尾が9つ。其々が意思あるよう自由自在に動き回る。光の波動の面的な攻撃ではないが、脅威さは増したようだった。
「心臓部――核を探すのが厄介だな」
 操氣系である鈴鹿が〈探氣〉で以って、ミズクメの核の位置を探ろうとするが、其の際に攻撃は疎かになり、また防御や回避にも隙が生じる。麗華の胸甲に寄生している憑魔もまた〈探氣〉に回す事が出来るが、正確さに欠ける。
「……安心して。全力で支援するから!」
 黒川の強い言葉を受けて、WAC2人が大きく頷いて見せた。
 確かにミズクメは強力な妖怪だ。人間達に称される憑魔能力に近いモノを幾つも保持している。だが、幾多の力を所有していようとも、一度に発現出来るのは1つのみ。主神や大魔王クラスと呼ばれる最高位最上級超常体も其の縛りから逃れられない(※註1)
 ミズクメが異形系に似た能力を全解放しているのならば、逆に弱みにもなる。即ち――
(……今ならば幻惑が効くという事だ!)
 暴れ回る力ある九つの尾。銃弾や爆薬を物ともせずに猛威を振るう。傷付け、分断したとしても、すぐに蘇生して反撃してきた。
「――では黒川士長。お任せした」
「其の間、鈴鹿さんは僕がしっかりガード!」
 親友を信じると、鈴鹿は意識を集中して核の位置を探る。暴れ回る尾は許すまじとばかりに鈴鹿へと振り下ろされるが……数本の尾は空しく宙を切る。其ればかりかミズクメを囲むように無数の麗華が出現した。
「……ふ。一対多の戦いでも戦える様に師匠から叩き込まれた分身の術です!」
 無数の麗華が高々に宣言して構えると、僅かにミズクメは動揺したようだった。

 ――同時。勇吉の支援を受けながら、国恵がクレハへと押し迫る。炎は勇吉によって緩和してもらい、雹は回復力頼みに払いのける。肉薄する国恵が微笑むとは逆に、クレハの顔が恐怖で引き攣っていった。
「……くるなっ! こないでよっ、バカっ!!」
 涙目で訴えてくるが、魔法少女は微笑を絶やさぬままに打撃を加えていく。そして弱ったところで身を絡みつかせると、
「――サブミッションは王座の技ですわよ」
 関節技で動きを抑え込むと、完全に極めた。痛みで失神するクレハ。
「……殺したの?」
「――マジカル・アウトブレイクで完全に無力化も考えましたけれどもね。後々、面倒な事になりそうでしたから止めましたわ」
 勇吉へと笑顔を見せると、クレハを解放。さてとミズクメを見遣る。強力な妖怪の姿に身震いした。
「……異形能力には、私の〈感染〉は最も有効的でしたようですが……」
 正直、疲労が溜まっていた。クレハとの戦い、支援や憑魔武装の防御力、そして自身の回復があったとは無傷とは言えなかった。見えないところで疲労や傷が溜まっている。
「――正直、動けないのが残念ですわ」

 国恵が呟いた時、ミズクメもまた無念そうに顔を歪めていた。クレハの敗北を目の端に捉えた刹那、隙が生まれたように思えた。核の位置を探し求めていた鈴鹿が目を見開く。そして大通連を構えて、一気に詰め寄った。無数に存在する麗華も呼応して全方位からミズクメに攻撃を仕掛ける。ミズクメは放射状に尾を伸ばし、鈴鹿と無数の麗華達を薙ぎ払おうとしたが、
「――全部、黒川童子の幻影でしたか!?」
 本物はどれでもなく。そして黒川によって今まで巧妙に姿を隠されていたWAC2人がミズクメの急所へと踊り掛かる。麗華が衝撃を打ち込み、そして鈴鹿が大通連で断ち切った。声にならぬ悲鳴を上げて、ミズクメは倒れる。叫びや慟哭が妖怪達から起こった。
「……終わった。此れで月讀様も解放されるんだ」
 思わず安堵の息を漏らす、黒川だったが。
【……未だですよ、黒川童子】
 ミズクメの声が耳元で囁いた。周りを見回すが、ミズクメの声に気付いた者はいない。否――妖怪達の数体が唇の端を歪ませたのは気の所為か? 国恵も不思議そうな表情を浮かべているから聴こえているのかもしれない。
「――核は、大竹さんが断ち切ったはずだ」
【危ういところでした。ですが……彼女は『遊戯』に抗う資格と力を得る事が出来る可能性を持つモノではありません。黒川童子の支援があってこそのものでしたが……本当に倒すのならば、貴男様や彼女が直接に私の核を狙いに来るべきでしたね】
 声だけで国恵を指し示す、ミズクメ。
【……とはいえ、最早、戦う力はありませんが。ゆっくりと運命の流れに身を任せる事に致しましょう】
 心の底から悔しそうな響き。
【しかし月讀様を解放するには月影鏡が3枚必要。月山は、あの御方の最も力の強い場所ではありますが、其の2枚だけでは封印を解く事は出来ません】
「――残るは湯殿山か!」
【……イワテは最後まで頑強に抵抗するでしょう。1枚だけでも月讀様の力をお借りしてマヨヒガは完成します。但し私は退きます。もう戦える力はありませんから。力及ばずに他の仔達を護り切る事が出来なかったのが心残りですが――此れもまた『遊戯』に抗う資格と力を得る事が出来る可能性を持つモノの選んだ結果となれば、致し方ございません……】
 そしてミズクメの声が小さくなる。同時に武装解除されていた妖怪達が笑みを浮かべた。彼等を見張る九朗が顔をしかめる程だった。
「……心底では抵抗を止めていないんだな」
 油断は出来ない。内憂を抱え込んでしまっただけの気がする。
「――『黙示録の戦い』がもうすぐ来ますわよ。間に合いますの? ミズクメは潔く退いたようですけれども、話に聞く限り、湯殿山に居るイワテは殺す気で行かないと無理そうですわよ?」
 声を掛けてきた国恵に、黒川は力なく頷いてから、
「――そうだね。でも今は月讀様の解放が先だよ」
 月山神社の本宮より割れた鏡を取り出す。羽黒山のと継ぎ目を合わせると、まるで何事もなかったかのように1つとなったのだった。

*        *        *

 北上川の一支流大田川を県道31号線に沿って、西に遡る。平泉より南西約6km、谷を分岐する丘陵尾根の先端に、天台宗達谷西光寺の跡地が残っていた。境内西側には、東西は長さ約150m、最大標高差も約35mに及ぶ岸壁があり、其の下方の岩屋に達谷窟毘沙門堂があるらしい。延暦20年(801年)、坂上田村麻呂が、ここを拠点としていた蝦夷(えみし)を討伐した記念として建てたという。名の由来通りに108体の毘沙門像を祀られたというが……
「今や、荒吐連隊の棲処という訳ね」
 普段のゴスロリ風や着ぐるみでなく、擬装を施された迷彩服で身を包む、薫と久万美。薫は伏射姿勢でXM109ペイロードライフルを構え、傍らには久万美が片膝を付く姿勢で双眼鏡や観測器具を手に補佐している。かつての陸上自衛隊伝来の擬装と、薫の〈消氣〉により風景と一体化していた。
「……境内は神域とされていて、喫煙飲食や動物を連れての参拝が禁じられていたそうですよ。当然ながら、殺生禁断地。かつて諸国行脚の聖や山伏だけでなく、乞食や落ち武者達が生まれ変わっていく為に身を休める安住の宿とされていた事もあるらしいとか」
「――確かに。言われてみなければ判らないけれども、氣やエナジーが静かに貯えられているわね」
 操氣系憑魔能力に似たモノを持つ薫には、達谷窟に秘められたモノを感じ取っていた。〈探氣〉をするまでもない。だが充分に貯えられている力は荒れ狂う事なく、静謐を保っている。
「……まさに嵐の前の静けさだわ」
 問題は大きな氣に圧倒されて、潜んでいるだろう那賀須泥毘古をはじめとする魔人、そして荒吐神の存在が掴み辛い事だろうか。
 なお更に其の西側の岸壁上部には大日如来或いは阿弥陀如来と謂われる大きな磨崖仏が刻まれているという話だ。蝦夷が刻んだのか、其れとも田村麻呂、もしくは聖や上人、山伏が彫ったのかは窺い知れないが、
「さぞかし霊穴に相応しいモノだったのね」
 だが神域は、今や荒吐連隊が隠れ潜む拠点だ。地理的な問題から直接狙撃する事は難しかったが、
「……悪いけど白髪鬼達には囮になってもらうわ」
 XM109の照準眼鏡で覗く先に、入念に戦闘迷彩を施した小島と神代の姿が映し出されていた。隠密の特性があるとは言い難いが、2人ともそうと判っていなければ、並みの者では接近に気付かれない程の体術の持ち主だ。特に歩法を極めた小島は戦闘だけでなく隠密にも活かして路なき道を掻き進んでいる。
「……とはいえ、そろそろ罠が張られていたり、警戒中の魔人が哨戒していたり……」
「――どうやら、見付かったわね」
 額に角のような憑魔核を生やした操氣系のヤト(夜刀)が指揮する、キチン質に似た外皮をした異形系のヤツカハギ(八握脛)の1個班が、小島達を待ち伏せする。小島は卓越した身体能力で敵を打ち払っていくが、相手もまた組織的に動いている。異形系という特徴を活かして、敵味方が入り混じる接近戦にも関わらず、9mm機関拳銃エムナインで弾をバラ撒いていた。能力で身体強化した小島と神代といえども、至近距離の弾幕を避け切れる訳ではない。少なくとも小島独りならば可能かも知れないが、神代ともとなれば動きが鈍る。
「……其れでも流石は恋人同士。上手い事、カバーし合っています」
 久万美は感嘆の呟きを漏らす。小島は巧みな戦闘技術で以ってヤツカハギの憑魔核を的確に潰し、また神代も恋人の技を盗み倣うように打ち倒していく。
 其の中で薫は戦況を遠目から観察しながら、彼方にも注意を払っていた。静寂が亡くなった状況が形作られつつある。異形系魔人による足止めと、巻き込む形での砲撃。余程運悪く憑魔核に直撃しない限り、ヤツカハギは失われない。痛みも覚悟の上で奴等は足止めに徹しているのだ。何しろMk2破片手榴弾の安全ピンとレバーを眼前で外すぐらいだから。
「――動いたわ」
 彼方に、微かながらも動きを察した薫が短く警告。素早く反応した久万美が個人携帯短距離無線機で小島達に送る。其の僅かな注意で、戦場に撃ち込まれる銃弾の直撃を免れた。とはいえ、かすっただけでも人体ならば水風船のように破裂する威力だ。憑魔能力で頑強となった小島達もただでは済まない。吹き飛ばされた小島達は傷ついた身体に鞭打つように動かすと、慌てて草叢や岩陰に潜む。
「――追撃が着ませんね」
「必中の銃弾が直撃しなかった。其の点に疑問を抱いたのならば、直ぐに狙撃位置を離れたのよ。撃った後、大きく揺れたから」
 今ので狙撃位置を割り出して、薫は25mmHEAT弾を叩き込むつもりだった。だが那賀須泥毘古も狙撃の名手。油断はない。
(其れでも位置は絞れたわ。相手も此方を警戒しているはず。次、現れた時が……)
 ――勝負だ。
「……目標らしき影を確認。射ち方用意。指命、前方1,000、敵狙撃手――那賀須泥毘古」
 久万美はささやくような声で風向、風速、湿度、温度を読み上げて行く。狙撃の修正材料として必要な情報。だが那賀須泥毘古もまた此方の位置を絞り込んだようだった。直視しなくとも照準眼鏡の先で、此方へと狙いを着けている那賀須泥毘古の姿が脳裏に浮かんだ。動悸が高鳴り、掌が汗ばむ。初めての感覚。此れが焦りというものだろうか?
 ――お互い、対物ライフルでの狙撃だ。其の威力は直撃しなくとも死を招くのに充分な威力を有する。ならば直ぐにでも撃ち放つべきなのでは? しかし那賀須泥毘古が異形系ならば反撃が来る。捉えた照準先の影が那賀須泥毘古でなかったら? 那賀須泥毘古について判っている事は少ない。狙撃の名手、其れだけ。
「……私は薫さんを信じています」
 久万美の言葉に、薫は我に帰った。死の危険は久万美にも及ぶ。覚悟の声に、意を決すると冷静さを取り戻した。大きく息を吸い、ゆっくり吐いた後に息を止めた。身体を弛緩させ、だが意識は鋭く照門の先に結ぶ。目標との間に張り詰めた1本の線が見えた。
「――射てっ!」
 合図と同時に、薫の指が引鉄を絞り――轟音が響き渡った。だが砲撃に似た銃声は2つ。薫の視線の彼方にも、炎が見えていた……。

 失神していたのは僅かな時間だったのだろう。意識が戻ってもなお、薫は呆然としていた。身体中、血と肉片を浴びて真っ赤に染まっている。恐る恐る身体を確認して四肢が無事に繋がっていた事に安堵した。では、薫が浴びた血肉は誰のものだろう? 那賀須泥毘古が放った銃撃は薫から僅かに逸れ、だが傍らに居た久万美を肉片に変えるには充分だった。事実を認めて、薫は――生まれて初めて、絶叫した。

 砲撃と銃声の応酬が静まると、続いて遠くから絶叫と、そして慟哭が響く。1つは薫。しかし達谷西光寺の跡地から聞こえてくる、もう1つの慟哭は?
 ヤツカハギとヤトは慌てて退き、追撃する形で小島達は達谷西光寺の跡地へと迫る。其処で見出したのは、肉片となったモノを掻き集めて慟哭する仮面の女。遮光器土偶のような、ゴーグルが目元を縁取る奇怪な仮面。そしてヤツカハギやヤト、モムノフは彼女を護るように周囲を固めていた。
「――もしかして荒吐神かしら?」
 小島の疑問の呟きに、答える者はない。其処を砲撃のような銃声が轟くと、ヤツカハギ達を血肉と変えながら25mmHEAT弾が仮面の女へと叩き込まれた。衝撃をマトモに受けて吹き飛ぶ仮面の女。込められた成形炸薬はモンロー・ノイマン効果によって仮面を穿つ。そして仮面が割れた。中から現れたのは、女の顔。聡しい嫗にも見え、優しい母にも見え、愛しき妻にも見え、輝かしき娘にも見えた。まさしく“女”が其処に居た。
「……此れが荒吐神」
 惚けた声が神代の口から漏れたが、小島は恋人の浮気を追及しなかった。何故なら同じく小島の男の部分も反応していたからだ。しかし、其れよりも驚愕したのは……
「――無傷? 対物ライフル弾の直撃よ!?」
 続いて狂ったようにXM109から銃弾が飛来してくるが、荒吐神は衝撃で吹き飛ばされるものの、其の玉体は傷1つ付かなかった。瀬織津姫に似た――否、以上の存在感に小島は次第に圧倒されていく。
 そして荒吐神の慟哭が頂点に達した時、達谷窟の方から強大な力が天に挑むように放たれた。其れは八つ首の大蛇に似ていた。大蛇を模るエナジーの奔流は螺旋を描くように寄り集まり、そして――
「……“柱”が立った。此れで荒吐神の支配域が確立したのね!?」

 其の時……あらゆる通信機器から、電波ジャックした放送が流れてくる。凛々しい女声が響き渡る。
『 ――諸君』
 薫が血走った眼で、空を睨み付けた。
『諸君』
 国恵が首を傾げて、同じく顔を見合わせた鈴鹿と麗華を見遣る。
『諸君――』
 女の声は、三度同じ呼びかけをし、
『 ――私は松塚朱鷺子、旧国連維持軍・神州結界維持部隊・西部方面隊第8師団第42連隊所属、第85中隊隊長だったもの。天草を拠点として腐れきった日本国政府からの独立を唱え、宣戦布告をしたものとして覚えておられるだろう』
 愛機整備の手を休めた白鷺が、眉間に皺を刻んだ。剣呑な雰囲気に、桃代が爪を噛む。
『かつて、私はこう言った。――我々は、日本国に生まれ育ち、そして超常体と呼ばれる来訪者達を身に宿したというだけで自由と生存権を奪われ、その裏に己の保身と私欲に走る愚鈍な各国政府と日本国政府との間に密約があったという事を!』
 放送主は一息吐き、そして爆弾発言を続けた。
『その証拠を今こそ示そう! その時が来たのだ。証拠とは――』
 九朗が眼を鋭くし、勇吉が頬を掻く。黒川は拳を掌に思わず叩きつけていた。
『――私自身だ! 私という存在がその証拠である。私は……我こそは処罰の七天使が1柱“神の杖(フトリエル)”―― 最高位最上級にある超常体、熾天使(セラフ)である!』
 奥歯を噛み締める音が聞こえた。
『我は、この世界に“ 主 ”の御命による安息と至福に満ちた国を建てる為に、愚かなる者どもを打ち倒し、魑魅魍魎を祓い出すよう申しつけられ顕現した。己が自由と誇り、生命を守る為に、当然ながら我等に抗われるだろうと覚悟の上で、だ。しかし――』
 悲しみと怒りに満ちた声が周囲に渦巻く。
『 ――あろうことか、愚鈍な者どもは保身と私欲の為に我等に媚び諂うと、この国を売り渡したのだ』
 糾弾するフトリエルの声が天に満ちた。
『 ――怒れよ、戦士達。我は、同志であれ、同志で無くとも、耐え難きを耐え、忍び難きを忍んできた諸君等に惜しみない賞賛と敬意を送る。と、ともに問い掛けたい。…… 我は諸君等の敵であるとされていた。確かに我等は諸君等を殺め、命を奪ってきたものだ。だが、真なる敵は諸君等から自由と権利を奪い取り、そして何よりも誇りと生命を軽んじている者どもではないだろうか!?』
 聞く者の心に、困惑と、そして嘆きが迫ってきていた。呆然が憤然に取って代わる。
『今一度、呼びかけたい。――我は約束する! 戦いの末、“ 主 ”の栄光の下で、真なる安息と至福を諸君等に与えよう。ゆえに己が自由と誇り、生命を守る為に、この理不尽なる全てに対して抗いの声を上げよ。そして我等とともに戦い抜こうではないか!』
 …… 聖約が、もたらされた――。

 仙台駐屯地――東北方面総監部。通信科隊員達は、松塚の電波ジャックに対抗するべく様々な試みで挑んだが、奮闘空しく東北方面全域に知れ渡った。調査によると、ありとあらゆる電子網、通信機器を通して放送は行われていたといい、通信科隊員にとって敗北は止む得なかった事かも知れない。
 仙台駐屯地の施設内でも、ある者は呆然となり、またある者は騒然となっていた。だが次第に静まっていくとともに緊張が施設を――否、駐屯地を支配していく。時折、銃声と思しき音や悲鳴、怒号が起こるが、直ぐに鎮圧された。そう……鎮圧だ。
「……皮肉な話だな。敵超常体の戯言が、結果として此方の利となるとは。此れもまた『遊戯』の一環なのか。悔しいが、好都合でもある」
 突然の声に、通信科隊員達が振り向いた。東北方面総監の吉塚陸将の姿を認めて驚き、そして慌てて起立して敬礼を送ろうとするが、両脇を固める武装隊員が銃口を向けてきた事に戸惑いと戦慄を覚え、固まった。普段連れている警衛の者ではない。防護マスク4型で顔を隠し、ボディアーマーを着込んでいる。特徴的なのは、紺の脚絆と手差し。
 吉塚陸将の制止の声で、武装隊員は銃口を下ろすが、奇妙な緊張は解かれていない。吉塚陸将はマイクを見出すと、声を発した。初老の域に達しているとは思えない剛健なる体格から発せられた声は力強いものだ。
『 ――諸君。私は東北方面総監の吉塚だ。暫くの間、耳を貸して欲しい』
 有無を言わさぬ威厳ある声に、駐屯地内の全員が動きを止めて傾注する。
『……先程の放送は残念ながら事実と認めるしかない。日本国政府は保身の為に、我々の人命を超常体に売り渡したのだ。其処からの苦労や悲劇は言うに及ばないだろう』
 吉塚の目尻に光るものが見えた。
『 ――日本国政府は最早信用するに値しない。しかしだからといって、敵超常体の甘言に惑わされてはならない! 敵に籠絡されてはならない!』
 拳を力強く握り締めると、聴衆に訴えかけるように振り上げた。
『ならば、どうするか! 我等の人命、誇りは、我等の手で護らなければならない。日本国政府――中央が信じるに値しないのであれば、頼りにするのは自らであり、戦いを共にしてきた同胞である。今こそ力を合わせて困難を乗り切る時であり、同時に悪逆非道な日本国政府から独立するべきである!』
 駐屯地の彼方此方から呼応する声が上がった。
『 ――我等には旧き神、荒吐の加護がある。最早、信じるに値しない中央に見切りを付け、そして押し寄せる外圧を撃ち払おう! 奪われてきた我等の人命と誇りを取り戻すのだ!』
 吉塚に続いて、幕僚幹部達が詳細な現状の説明と、弾薬や燃料、糧食といった必要物資の備蓄に関しての説明を行っていく、また荒吐連隊の復活と、更なる志願者を募る旨を告げた。
「……警務隊本部の制圧状況は?」
「一部の抵抗が激しかったものの、ヤツカハギとモムノフの投入により完全鎮圧に成功しました」
 報告に、吉塚の顔が曇る。
「本部長は存命か? ……殺すなと厳命していたはずだが。中央の犬とはいえ、奴を殺したら各地の警務隊に動揺が走り、治安が乱れる。洗脳してでも味方に着けなければならんのだ」
「……危ういところでしたが、幸いにして命は取り留めたようです。監視も兼ねて衛生兵が付き添っています。仙台をはじめ多賀城、大和、霞目といった宮城の各駐屯地、分屯地は此方の支持に回りました」
「――秋田の第21普通科連隊、福島の第44普通科連隊、そして神町の第6師団長及び第20普通科連隊は態度保留の模様です。但し『黙示録の戦い』が始まったら否応なく味方となるでしょう」
 続く報告に、吉塚は苛立ちを含んだ溜息を漏らす。
「……其れもまた『遊戯』あってこそか。皮肉な話だな。『遊戯』に抗する為の決起だというのに、此れもまた『遊戯』の一環とされるとは……。他には?」
「岩手の各駐屯地も賛同しました。中央と行動を共にしていた者達を狩るべく、特別部隊を出動させる模様です」
「――噂に聞く白髪鬼は手強いぞ。可能ならば味方に付けろ。だが抵抗するならば射殺も止むなしだ」
 吉塚の断固たる言葉に頷くと、幕僚幹部は岩手駐屯地へと指示を飛ばす。
「青森の第9師団長は中央に媚びるようです。抗議の声が返ってきました」
「――ならば敵だ。とはいえ一枚岩ではあるまい。中央に対して不満を持つ者が少なからず潜在しているはずだ。切り崩していけ」
「――早池峰の瀬織津姫は如何致しましょう? また出羽三山では月讀の復活を目論んでいるそうですが」
「瀬織津姫には恩義がある。遠野一帯への手出しは禁ずる。だが月讀は天津神系――」
 そして、断言した。
「……力尽くでも、復活を阻止しろ!」

 松塚の爆弾発言に続き、吉塚の決起宣言。現れた荒吐連隊の魔人に連れられて、荒吐神は奥へと隠された。小島と神代は包囲されて身柄を取り押さえられる前に撤退を決め込む。
「……薫ちゃんの様子が心配ね」
「でも、命……どうするの? 東北方面隊全てが敵に回った気がするけれども」
 気弱な声を上げる神代に、だが小島は不敵に笑い返すと、
「――全てが敵という訳ではないわよ。どうするかは此れから決めるとして、今は兎に角、逃げるわよ!」

*        *        *

 爆弾発言に騒然となり、決起宣言に呆然とする。とはいえ……
「現場、しかも最前線では、やるべき事を成し遂げるのが先決ですわよね」
 桃山の言葉に、頷くのは『魔法少女 マジカル・ばある』親衛隊の腕章を着けた隊員達。霊場恐山の状況維持に務める第5普通科連隊の第93中隊と第98中隊は、直ぐに調子を取り戻した。『マジカル・ばある』のアイドル性もあると考えれば、白鷺としては複雑な心境である。
「――問題は補給や輸送面ですか。尤も青森、八戸、弘前は引き続き支援と……撤退時の救助活動、そして霊場恐山の封鎖体制に関して協力姿勢を見せてくれていますから、心配はしていませんが」
 直ぐにツテや古い知人に連絡を取った白鷺の報告に、中隊長をはじめとする幹部連は安堵の息を漏らす。
「まぁ、政府の思惑がどうであろうが、霊場恐山の状況の維持と、悪化した場合の対策が大事だというのは此処に居る連中が誰よりも解っている」
「“門”が拡大し、超常体が溢れ出したら、政府がどうとか“主”がどうとか、其れどころではありません」
 白鷺の言葉に、一同が頷いた。
「そういう意味で考えると、吉塚陸将が青森に直接戦力を向ける事はないだろうな。とはいえ第9師団長に対して何らかの圧力を掛けてくるだろうが」
 しかしと頬を掻いてから、中隊長達は白鷺に頭を下げてきた。
「……白鷺准尉が直ぐに連絡を取ってくれた御蔭で、補給と輸送に問題がない事が判ったのもありがたい。此れで自暴自棄になるものが出なくて済んだ」
「当然の事をしたまで。何より孤立無援の状態は避けたいものですからね。隊員達の士気に関わります」
 照れて笑みで返すと、頭を上げるように白鷺は言う。取り巻く環境は悪化しているようだが、霊場恐山においては戦意や部隊の関係は良好だ。
「しかし油断は出来んぞ……」
 首肯して顔を引き締めたのを図っていたかのように警戒喇叭が鳴り響く。爆発音が轟いた。
「――東北方面航空隊強襲輸送班、航空支援を開始します!」
 頼んだ!という声を背に、白鷺は部下達の元へ戻る。心得たもので回転翼機MH-60Kブラックホークの離陸準備は整っていた。
「八戸の対戦車ヘリ部隊へ支援要請は?」
「勝手とは承知ながら、隊長の名で既に!」
 結構――そう返事すると愛機に搭乗する。そしてブラックホークが離陸した。

 押し寄せてくる餓鬼の群れを楯にして、獄卒鬼や羅刹鬼が爆炎や弾幕を突破してくる。桃山は最大火力を惜しみなく叩き込んでいるが、
「湧き過ぎですわ!」
 押し寄せてくる波が一方向だけならば、桃山のマジカル・ジャベリンや96式40mm自動擲弾銃や圧殺可能だ。しかし増大した“門”によりカバー出来ない範囲が広過ぎた。勿論、桃山だけでなく銃手は他にもいるし、また白鷺のブラックホークや支援要請により到来したAH-1Sコブラの対地攻撃が猛威を振るっている。それでも突破してくる暴力的な数の群れ。昔の人はこう言った――アニキ、戦争は数だよ!と
 だが桃山や12.7mm重機関銃ブローニングM2の銃座まで敵超常体が辿り付く事は無かった。接近戦が得意な隊員達が壁として、羅刹鬼の突進を阻んでいるから。特に綾は頑丈な64式7.62mm小銃を得物にすると、巧みな銃剣術で刺突し、薙ぎ払う。
「――でも何で泣いているかしら?」
「えーと……佐伯三曹は“泣き鬼”だから。色々と溜まっている鬱憤を敵超常体にぶつけているのさ」
 桃山の疑問に、何故か視線を逸らしながら給弾手を買って出た『マジカル・ばある』親衛隊員が答える。最愛の弟に会えない哀しみとか、中央にいる姉からの指示命令に対するストレスとか、色々とあるらしい。
 そんなこんなで、今回も防ぎ切った――と思った瞬間、激しい音を立てて空間が割れた。そして割れ目から投げ飛ばされてくるのは……
「――ヤミー様!」
 尼僧姿のヤミーの身体は、地面に叩きつけられてから更に2度ぐらい跳ねる。慌てて救命に駆けつけようとする桃山と綾達だったが、
【……カラよ。ソレはヤマへの弱点になりうるモノです。腕や脚を捻じ切るぐらいならば構いませんが、存在を消滅させないように】
【すまなかった、シュールパナカー姉。しかし、此処が『遊戯盤』の地か。邪魔な人間を食い殺して、南の地で戦っているラーヴァナ兄と合流しなくてはな】
 割れ目から現れたのは多くの羅刹鬼を従える、羅刹斯と羅刹沙の姉弟。羅刹鬼の弟はヤミーを肩に担ぐと、咆哮を上げる。そして“門”から更なる超常体が這い出てきた。
『 ――各員、体勢を整え直せ! 第一次防衛ラインを放棄し、第二次防衛ラインまで後退せよ!』
 追撃を掛けてこようとする羅刹鬼の群れへと爆炎を叩き込むと、桃山達は仕方なく後退するのだった。

 

■選択肢
SiBh−01)青森・霊場恐山にて死守
SiBh−02)山形・湯殿山で封印解放
SiBg−02)山形・湯殿山で妨害活動
SiBh−03)山形・鳥海山へと寄り道
SiBh−04)岩手・達谷巌に突撃玉砕
SiBp−04)岩手・達谷巌へ潜入工作
SiBg−04)岩手・達谷巌の防衛戦闘
SiBh−05)宮城・仙台で荒吐に関与
SiBp−05)宮城・仙台の傲慢を裁く
SiBg−05)宮城・仙台で吉塚に賛同
SiB−FA)東北地方の何処かで何か


■作戦上の注意
 当該ノベルで書かれている情報は取り扱いに際して、噂伝聞や当事者に聞き込んだ等の理由付けを必要とする。アクション上でどうして入手したのかを明記しておく事。特に当事者でしか知り得ない情報を、第三者が活用するには条件が高いので注意されたし。
 なお霊場恐山や出羽三山では、強制的に憑魔の侵蝕率が上昇する事もあり、さらに死亡率も高いので注意されたし。また荒吐関連で動く場合も充分に警戒せよ。
 なお玉川士長と佐伯三曹(のPL様)と同じく小島二士(のPL様)が多忙により、NPC化申請を行っている。
 救援を必要とする場合は、アクションに明記する事。東北地方ならば要望に応えて何処でも馳せ参じてくれるだろう。要望がない、或いは多数の場合、玉川士長・佐伯三曹・小島二士は荒吐連隊関連へと向かう。なお吉塚への態度は状況に合わせて決定するので、予め御了承頂きたい。

 なお維持部隊に不信感を抱き、天御軍に呼応する場合はSiBp選択肢を。人間社会を離れて独自に行動したい場合や荒吐連隊に賛同する場合はSiBg選択肢を。

 泣いても笑っても、次が『隔離戦区・神邦迷処』第6師団、第9師団( 東北 = 西比利亜 )編の最終回である。後悔無き選択を! 幸運を祈る!

※註1)一度に発現出来るのは1つという縛り……中部・近畿地方にて特例が1柱存在する事が確認されているが――また別の話である。


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