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シャドウラン(SFC)1993年 日本語版移植・販売 データイースト 開発
BEAM SOFTWARE
ジャンル RPG 8メガ+バッテリーバックアップ

○ストーリー
テクノロジーと肉体の融合は、20世紀後半に始まった。コンピュータとのインターフェイスは、その第一歩でしかなく、反射力を強化するための体内への埋め込みや人口機能の移植へと、次々に発展して行った。そして、そんな時代に「目覚め」が起こった。神秘の力の衰退によって3000年も閉ざされた魔法が、この世界に蘇ったのである。エルフ、ドワーフ、オーク、トロールらも、人間の姿を脱ぎ捨てて、本来の姿に戻って行った。
 「目覚め」から数十年の間は、混乱と恐怖と無秩序が続いた。神秘の力を信じてきた民族は、目覚めた魔法で、迫害してきた大国に反旗をひるがえした。巨大な情報ネットワークは、不可解なコンピュータウィルスによって、破壊され、失敗とはなったが核ミサイルも発射された。ドラゴンが宙を舞い、伝染病や飢餓が地球を覆った。目覚めた種族と人間の間にも、衝突が起こり始め、政府は壊滅、世界は混沌とした状態になって行った。
 だが、人間と目覚めた種族には、心がある。荒廃と無政府状態の中だったが、じょじょに秩序を取り戻し始めた。コンピュータウィルスは、サーバーテクノロジーにより撲滅し、古い情報通信は、マトリックスと呼ばれるネットワークへ取って代わった。インディアン、エルフ、オーク、ドワーフそれぞれが新国家を形成、巨大都市国家メガプレックスが誕生して、中央政府も自らを法とする巨大企業に取って代わった・・・・・・
(以上、オープニングより)

タイトルと犬に握られた瞬間
○ゲーム内容
「シャドウラン」はサイバーパンクファンタジーRPGである。その舞台となるのは電脳と混沌とノイズの支配する世界。銃器と魔法が共存し獣人やエルフ、ドワーフが街を闊歩する。シャドウランナー、ジェイク・アーミテジ。一度殺されかけ、魔法により生き返った彼は過去の記憶を失っていた。数奇な運命に翻弄されながらも、自らの過去を取り戻すため彼の孤独な戦いが始まる。だが彼には知る由もなかった。その戦いがやがてマトリックスの未来、そして世界の運命をも左右する戦いとなるということを・・・。
このゲームはサイバーパンクTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)「シャドウラン」をベースに製作されたRPGである。同様に「シャドウラン」をベースとした作品として、メガCD最後のRPG「シャドウラン」(コンパイル)がある。タイトルは同じだが、海外製RPGであるSFC版とは全く内容が異なる。
ゲームはいわゆるクォータービュー(斜め見下ろし)の画面で展開する。フィールド移動と戦闘画面の区別はなく、Rボタンで銃を構えて敵に照準をあわせることでリアルタイムに攻撃することができる点はアクションRPGに近いといえる。だが、アクション性は高くない。いったん敵に照準をあわせれば自動追尾するし、こちらが回避行動をとる必要もない(銃器類の命中率はスキルから算出される確率で決まるので回避のしようがない)。敵を倒すことでカルマ(経験値のようなもの)が手にはいり、それを振り分けることで能力UPが可能である。Xボタンを押すとカーソルが出現し、画面上の人やものに対して話す、調べる、取るといったアクションが実行できる。人に話しかけると会話画面に変わる。ここでは今までに聞いたキーワードを選択することで、情報を得ることができる。中盤以降になると主人公は銃以外に魔法とサイバーデッキが使用できるようになる。魔法は回復、攻撃、補助など全6種類あり、カルマを振り分けることでレベルを上げることができる。サイバーデッキを使うとコ
ンピュータを通じてマトリックスにハッキングすることができる。マトリックス内はマインスイーパーのような画面になり、仕掛けられた攻性プログラムを回避または破壊しながらプロテクトを破り、必要なデータを集めていく。
また、シャドウランナーと呼ばれる連中を金(単位は新円[nuyen])で雇うことで、パーティを組むことが可能。シャドウランナーは主に武器戦闘を得意とするマーシナリー、各種魔法を使うメイジ、マトリックスに侵入するデッカーの3種類に分類できる。

ジェイク(使用前)ジェイク(使用後)

○レビュー
西暦2050年
シアトル。物語は主人公ジェイク・アーミテジの死から始まる。ギャングのような連中に銃で撃たれるアーミテジ。だが、そこに謎の獣人が現れジェイクの死体に魔法をかける。死体安置所で息を吹き返したジェイクはしかし、全ての記憶を失っていた。死体が動いたと騒ぐ所員を尻目に、街道へ出るジェイク。そこに男が近づいてくる。話し振りからすると、どうやらこの男はジェイクのことを知っているようだ。奴に聞けば、自分が何物なのかわかるはず。そう考えて奴の後を追ったジェイクは再び自分の命を狙うオークに遭遇する。銃を手に入れ辛くも勝利した彼は、路地裏で不思議な犬と出会う。犬は唐突に語リ始めた。

「おぬしの運命は"犬"が握っている。3つのアイテムを手に入れ、彼を見つけるのだ。」

 シャドウランとはどういうゲームなのだろう?システム面での完成度は高いし、操作系も洗練されている。しかし、戦闘部分に特に面白みは無いし、シナリオに関しても別段凝ったものが用意されているわけではない。グラフィックもSFCのソフトとしてはチープな部類に入るだろうし、マトリックスの表現もそれなりに雰囲気は出しているものの、中身はただの地雷ゲームだ。ではこのゲームが私を惹きつける理由はいったいどこにあるのだろうか?

「そうさおいらは狂ってるよっ!でも雇ってくれよ!ヤホハァティヒィハァ!」

 その答えは実は私にもよくわからない。うまく説明できないのだ。強いて言うならそれはやはり緻密に再現されたサイバーパンクの世界観だろう。『ニューロマンサー』などの湿度ゼロの乾いた文体をそのままゲームにしたかのようなシャドウランの世界。それは単なる設定の再現ではない。いかにも頭に何か埋め込まれていそうなイカれた登場人物達のセリフ、金で得られる(金でしか得られない)打算的な仲間達、誰かに支えられることも感謝されることも無く、犬の精霊の加護のもと一人戦いつづける、記憶のない主人公。こうした要素の一つ一つがサイバーパンクに特有の雰囲気を形成している。この世界観にハマることができる人なら、きっとこのゲームを気に入ってもらえるだろうと思う。

通常画面(左)と戦闘画面(右)