
夏の思い出(虫編)
ようやく東京の空も秋らしくなってきて、エアコンをつけなくても大丈夫になってきた。
やっと夏が終わったんだなぁ、と思うと感慨深くなってくる。
未だに夏休みも取っていない私の夏の思い出は、実家での恐怖体験である。
実家のマンションの裏には小高い山のようなものがあり、木が生い茂っている。そのせいか、セミが異様に多く、夏はいつも賑やかである。しかもここ二年ほどは異常大量発生と呼んで差し支えないほどである。
それは別に構わない。セミは幼少の頃よく捕まえて遊んだものだし、一応都会と言われているところでアブラゼミ以外のセミの声が聞こえるなんて体験はあまりしていないからだ。
しかし、大量発生したセミがマンションになだれこんでくると話は別だ。
実家はエレベーターより非常階段の方が近かったので、私は通勤時、いつも非常階段を使っていた。
ところがそこに、セミが大量に転がっているのだ。
4階から1階までで平均10匹くらいだろうか。しかも死んでいるならまだましなのだが、生きているものが大半で、何をする気もないのに、ちょっと近づいただけで
ジジジジジッ!!!!
と鳴いて、文字通り襲い掛かってくるのだ。朝もそうだが、夜遅く帰るときは本当に恐ろしく、大声で悲鳴を上げてしまったことも一度や二度ではない。
彼らは恐らくもう寿命が尽きる寸前なのであろうが、自己防衛のために戦っているのだろう。けなげではあるが、私にとっては恐怖でしかなかった。
夏が終わりに近づくと、今度出てくるのはカナブンである。
カナブンは襲い掛かってきたりはしないが、とにかく大量にいて、すきあらば家に入ってこようとする。
母親いわく「追い出しても一晩経つと家の前にいる」というので、まるでストーカーである。
次の夏も実家ではセミとカナブンが大量発生するのだろうか?
虫好きの子供たちに捕獲をお願いしたいものである。
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