FUNNY

 コンビニの扉を押し開けて外へ出ると、纏いつくような空気を感じてゲンナリする。
 家へと早く戻ろうと足を踏み出したが、二〜三歩進んだだけで歩みを止めた。
 自販機が視界に入ったことによって、タバコの買い置きが切れていたことを思い出した。
 しかし店内に戻ってタバコを買い求めるのも面倒臭い。
「庵、チョイ待って」
 前方を進む背中にそう声を掛けて、ポケットの中の小銭を探る。右手の中にそれを掴みだし、硬貨を確かめながらそのまま片手で自販機に投入した。目当ての銘柄を選択すると身を屈めて自販機からタバコを取り出す。
 その間に立ち止まって京の動作を眺めていた庵が向きを変えて歩きはじめた。
「よっ、お待ち!」
 軽やかな足取りで庵に追いついて並び隣へ視線を向ければ、それに返事を返すわけでもなく興味もなさそうに歩いている。
 京の隣を歩く庵はブラックジーンズにグレーのカットソーという至極平凡な出立ちで、コンビニの袋を片手に歩いている。その姿がなんとなく可笑しくて込み上げる笑いに喉が鳴った。
「…なんだ?」
 笑う京を不審気な表情をして庵が振り返る。
「いや、お前にコンビニの袋ってなんか似合わねーのな」
 そう言って、また笑う。
 別段、傍目に見ておかしいところはない。如何にもバンドマン風の男がコンビニで買い物した帰りというだけの構図だ。庵の髪の色も、都内だったら珍しいものでもない。
 だから、すこしでも庵のことを知っていなければ、その違和感を感じられないだろう。
「なら、自分の物は自分で持ったらどうだ?」
「だって、一緒に入れられちゃってんじゃん」
「殆ど貴様の物ばかりなのだがな?」
「いいじゃん、持ってくれても」
 京のそんな発言に、庵もどうでも良かったのか軽く肩を竦めただけだった。
 男二人連れでわざわざコンビニまで足を運ぶ自分たちが可笑しくて、再び堪えきれずに笑い声を漏らす京を庵が不審に呆れを上乗せして見やる。
「さっきから、なんなんだ一体…」
「べっつにー」
 可笑しかったのが半分だが、嬉しい気分だったのが半分。
 そんなところだった。
 茶化す気はなかったが、京は片目を閉じて意味ありげに笑った。
 マンションのエントランスに辿り着くまでの僅かな道のりを、そうやってじゃれ合いながら二人は戻っていった。
−終−
初出 : 2000.07.10
 だから、何???(死) 関係ないケド、意外にもShinは煙草を吸わんのよね。喫煙者っぽいキャラなのに。(笑)

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