Every little thing he does is magic

 むっつりと不貞腐れてしまった子供を前に、テリーは座っている彼の前にしゃがむんで顔を覗き込む。
 不機嫌そうな口許のままで上目遣いに視線を合わせて来る少年は、背の丈が自分の半分もなかった頃から変わらないように思う。
「オレ、テリーの事が本気で好きって言ってンのに…」
 睨み付けるような視線でそう告白してくれるのは、本心から嬉しいと思ってはいるのだ。

 …例え、それに困惑が付いてまわったとしても。

「………いや、だから、オレもロックの事は、本当〜に大事に思ってるんだけど?」
 困った様に髪を掻きながら、それでも慎重に選んだ言葉は、彼の癪に触ってしまったようだ。
「オレとテリーのは意味が違うじゃねーかよ!」
 怒りを露にするロックの前で仕方がないなぁーと思わず零した苦笑が更に彼の怒りを煽る。その様子に、「年頃の子供は難しい」とロックを本気で怒らせそうな事をテリーは内心で思って首を竦めた。



 むっつりと黙り込んでしまったロックにテリーが困っていると、突然、ロックが立ち上がってリビングを出て行こうとする。
「…お、おい?」
 それに慌ててテリーが声を掛けると、扉を開いた状態のままで動きを止めて「メシ、作ってくる」と振り向きもせずに返事をして、彼は出ていってしまった。
 はぁ…とテリーから盛大な溜め息が零れる。自分でも気付かなかったが、かなりな緊張状態にあった事に肩の力が抜けて気付いた。
 布貼りのソファに音をたてて座ると、頭を抱え込むような姿勢に自然となってしまった。

『あぁ、オレ…。どうすりゃイイんだろ…』

 親の心子知らず…とか言ってたのは草薙柴舟だったか、はたまた坂崎タクマの方だったろうか…。
 つい思考が横に流れるのは、物事を考えることに自分が向いていない所為だと思う。
 誰だってそうだろうと思うが、自分が育てた子を自ら進んで道義的に反するような行為を奨励しないだろう。
 しかしながら、自分を偽らない性格に育ったのは元来の持って生まれたものもあるだろうが、自分の育て方の要素の方が大きい気がする。

 それを間違っていたとは全く思わないのだが…。

 だが、しかし…?

 思考がぐるぐるし過ぎて、テリーは気分が悪くなりそうだった。
 過去にこんなに深く物事を考え込んだことはなかった気がする。

『あぁぁぁ〜〜〜、どうすりゃいいんだ〜』

 ロックが夕食の準備を終えてテリーを呼びに来るまで、テリーは彫像のようにそのまま固まっていた。
−終−
初出 : 2000.03.22
 ………実は去年の12月に古織さんとロック×テリーの話題で盛り上がってた時に書いたヤツ。今頃、出すなよ…。(苦笑)
 でも、思い出したので出します。
 VIVA!ロック×テリー!!(笑)
 タイトルは大好きな STING から! 歌詞がね、メチャ私のロック×テリー観にハマってる! 好きなのに好きって言えないの!…って、告白しちゃってるじゃんっ、ウチの息子!?(笑) 正確な歌のタイトルは、『Every little thing she does is magic』 ←"he" ではなく "she"。

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