疾風(かぜ)より速く走れたら


『火事になったら、何を持って逃げる?』
 スタリオン達も、子供の頃はよくそんな話をして、盛り上がったものだ。
 木彫りの笛!父さんからもらった子供用の弓!猫のぬいぐるみ!お気に入りの靴!
 子供の頃は、大切なものがたくさんあった。とても両手には持ち切れない。
 齢数千年と言われる聖なる大樹。その巨大な樹の上にエルフの村はあった。
 風が吹くと枝と共に足元が揺れた。枕木のように板が並べられた道は、踵が当たってカラカラと軽やかな音をたてる。
 ざわざわと、葉擦れの音。葉の隙間から覗くまだらな陽は、幼なじみのみんなの顔や服に水玉模様を作る。仰ぐと葉脈が透けて、やわらかい日差しを顔いっぱいに感じることができた。
「私は、誕生日にキルキスが彫ってくれたウサギの人形!」
 シルビナが臆面も無く言う。小さな体をぴょんぴょん飛び上がらせて、嬉しそうに宣言した。シルビナのプラチナ・ブロンドは微かにピンクがかかっていて、まるでチェリー・ブロッサムが天気のいい日に遠くで霞んでいるような髪だった。飛び上がるたびに、その柔らかそうな髪が、ふわりふわりと波打った。
 そう宣言されて、キルキス本人が赤面して固まってしまったのは仕方ないとしても、その場にいたスタリオンもルビィも、どう反応していいかわからず困ってしまった。
 とりあえず、兄貴格のルビィが『ほら!』と肘でキルキスを小突いた。
「え、あ、でも、シルビナはおっちょこちょいだから、決めておいてもつい枕を持って逃げちゃいそうだな」
 キルキスは、頭をかいて苦笑いしながら答えた。
『おいおい〜』とスタリオンとルビィは顔を見合わせた。でも、そう言われてもシルビナは、まだにこにこ笑ってキルキスに見とれている。
 この頃のキルキスはまだ赤毛だった。金髪になったのは二十歳過ぎてからだったと思う。でも、子供の頃からきれいな少年だった。思慮深そうな青い瞳と、聡明そうな薄い唇を持っていた。
「オレは、身ィひとつで逃げるぜ。オレには、自分以外に大事なもんなんてねえよ」
 ルビィが、ぶっきらぼうに言った。
 ルビィはみんなより少しお兄さんで、声ももう低くて、スタリオンはちょっぴりあこがれていた。冷徹で断定的なもの言いをするこの金色の髪の少年を、スタリオンもキルキスも『おとなっぽい』『かっこいい』という羨望の思いで見上げていたのだ。
 そしてスタリオンはと言えば。
 細い目と、高すぎる鼻。しかも形はおやじ臭い『鷲鼻』ってやつだ。どう考えても、『鷲鼻』で美少年はあり得ない。髪だって、黒に近いブルーグレイ。金髪じゃない。
 喧嘩は弱いし、頭もよくないし。弓だってうまく命中しない。木の実の名前当ても勝てた試しが無い。
 でも。走ることだけは。これだけはスタリオンは誰にも負けなかった。
 エルフの村の樹を降りて、下の草原を思い切り走る。
 兎も犬も彼には追いつけない。蝶を追い越す。小鳥と競争になる。
 風はびゅうと強く髪をなびかせる。
 頬にビシビシと風が当たって、心地よい痛みがある。速く走りすぎると、時々、風が口に入ってうまく呼吸ができなくなる。そんな時、鷲鼻だとうまく息が吸えることに気づき、『ああ、オレって、走るための人なんだなあ』とつくづくと思った。
 芝を踏みしめ走ると、足の裏の窪みにまで柔らかな草の感触が残る。土を蹴って走ると、粉のような砂埃が足首にまとわりつく。
 ただし、地上で走っているのを大人に見とがめられると、必ず叱られた。エルフは、他の民族とあまり接触をせず、ひっそり暮らしている。 スタリオン達の村が樹の上にあるのもそのためだ。エルフの子供が、村のすぐ下の草原で、目立つ走り方などしていてはまずいのだった。
『他の民族との接触は避けて生きる』。
 好きに走れない事を不満に思いながら、生まれた時からそうだった掟を、スタリオンは不思議に思うことは無かったのだが。

『排他的』『旧弊』、スタリオンがそんな言葉も覚えた頃。ルビィが村を出て行った。
 その夜、スタリオンだけが、村の樹の下の梯子に呼び出された。ルビィは、旅支度もなかった。身、一つ。
「黙って出て行こうと思ったが。行方不明者が出ると、事故の可能性を考えて村中で探索するだろ。余計な手間をかけさせてもいけないと思ってな」
 ルビィはもう青年と呼んでもおかしくない年齢になっていた。
 スタリオンは、泣くのを我慢しながら話そうとしたから、うまく話せなかった。
「なんで?なんで出て行っちゃうんだ?この村は嫌いなのか?」
「嫌いだね」
「・・・。」
 そう言い切られてしまってはもう、スタリオンに引き止める言葉は無かった。
 細い月が出ていた。エルフの耳に似た、尖った月。森は暗くて、見送るスタリオンの視界からすぐにルビィは消えた。
『ルビィ・・・。ほんとに行っちゃうのかよ?オレたちを置いて?
 村が嫌いだからって・・・オレたちも嫌いなの?』
 スタリオンは、ぐっと拳を握りしめた。梟の鳴き声が遠く聞こえる。手の甲で、こぼれる涙をぬぐった。
『引き止めよう!』
 足を一歩前に出した。闇で膝から下が見えなかった。
『・・・。』
 深淵の闇。村のむこうには何があるのか?この草原を突っ切ってルビィを追っていって、何が待っているのか?
 真っ暗だった。何も、何も見えはしなかった。
 二歩目は出すことは出来なかった。スタリオンは彫像のようにその場に立ちすくんでいた。
 ほうぅぅと、梟がもう一度鳴いた。弱虫のスタリオンをあざ笑うかのように。
『韋駄天スタリオン。走れなかったら、ただのでくのぼうだ』
 スタリオンは、がっくりとその場に膝をついた。

 27歳になったとたん、どこのおやじやおばさんとすれ違っても、「結婚しないのか?」「嫁さんを世話しようか?」と言われるようになった。もちろん、両親がいちばんうるさい。
 狩りの仕事が無い日は、スタリオンは、樹の一番上、高い枝の茂みに避難することにしていた。そこで本を読んだり酒を飲んだり、景色を見たり昼寝をしたりして、気ままに過ごす。
 エルフは手先が器用なので、木彫り工芸や木の実のアクセサリーを作って売る者も多い。弓を作る職人もいる。だが、殆どが狩人と言っていい。スタリオンは弓は得意ではないが、駿足な分獲物に早く近づけるので、そこそこの仕事はできた。だが、狩人の仕事が好きというわけでもなかった。
「ねえ、スタリオン、遊ぼうよ」
 秘密の場所のはずなのに、何故かシルビナだけはここを知っていて、キルキスが構ってくれなくて退屈な時は、スタリオンをからかいに来る。
 寝ころがって両腕を頭の後ろに組んだスタリオンのすぐ近くに、髪もマントもふわりとなびかせて座った。
「キルキスは、昨日までお出かけだったし、今日は会議だし、つまんないよう」
「会議って、奴が昨日連れて帰った解放軍の人間達とか?」
 シルビナは知らない。村長の怒りを買ったキルキスが、その人間どもと一緒に、昨夜から牢に入れられていることを。
 キルキスには少しお灸を据える程度だろうが、村長は人間は明日処刑すると騒いでいた。
「うん。シルビナ、人間って初めて見たよ。もっと怖そうな生き物かと思っていた」
「エルフにも色々いるように、人間にも色々あるんだろ」
 そう言うスタリオンも、人間を目の当たりにしたのは初めてだったが。
 数日前、「ちょっと出かけて来るから、村長にそう伝えておいてくれ」と言って、キルキスは村を出て行った。頭の切れるキルキスは、あの若さで村の政(まつりごと)に一役買っていた。キルキスは親が早く亡くなり、村長の家に身を寄せていた。孫のシルビナとの結婚も決まっていて、次期後継者として村人からも信望を集めている。
 そんな彼が、掟を破って、人間を村に連れて来た。昨夜村長に何か意見をしていたようだが、その後で全員が捕えられてしまった。
 ・・・一体、何があったのだろう?
 この場所からは、森のかなり遠くまで見渡せる。コボルトの村に何か異変があったことも見て取れた。忽然と村人達が全員姿を消すなんて、尋常じゃない。
 何かが起こっている。起ころうとしている。
『やめた、やめた』と、スタリオンはパタンと本を閉じて体を起こした。頭の悪い自分が、いくら考えても仕方の無いことだ。そういうのは、キルキス君に全部お任せするとしよう。
「おい、シルビナ。何か甘い物持ってないか?クッキーとかキャンディとか」
「えー?」
「よく、スカートのポケットに入れてただろ?・・・ほい。サンキュ」
 シルビナが渋々差し出した薄荷キャンディを口に放り込み、スタリオンは再びコボルトの村の方角を見つめた。
 彼らはどこへ行ってしまったのか?

 ルビィはどこへ行ってしまったのか。
 村長に報告する試練を終えたスタリオンだったが、次に控えていた苦行は、シルビナに号泣されて抱きつかれるというものだった。
「いつか、彼は行くと思っていたよ」という、キルキスのクールな言葉を聞いて、シルビナは更に当てつけのように激しく泣きじゃくった。
「なんで、引き止めてくれなかったの!?」
 そしてスタリオンを非難した。
「怖くて、できなかった」
 スタリオンは、一言で答えた。言い訳なら百も出て来そうな気がした。でも、そこまで卑怯者に成り下がる度胸も無かった。
「だいたい、オレに気安く抱きつくな。ほら、シルビナの定位置はあっちだろーが!」
 怒声と共にキルキスへと突き飛ばし、スタリオンは逃げるように樹の上へ上へと昇った。一人になりたかった。

 彼らはどこへ行ってしまったのか。
 キルキスと人間達が投獄された翌日、なんとシルビナが祖父からこっそり鍵を盗み出し、彼らを逃がしてしまった。
 厳しい村長だが、孫を処罰することが忍びなかったらしく、『キルキスと人間達に調査を依頼して、解放した』ことにした。
「調査?コボルト村の件ですか?」
 スタリオンの問いに、村長は憤然として話し始めた。
「いや。くだらん作り話じゃよ。
 人間達によると、コボルトの村の神隠しは、事件の一部分に過ぎんそうだ。
 帝国が『焦魔鏡』とかいう森を焼きつくす兵器を製作中だと言いおる。『だから、解放軍と手を組んでそれを阻止しましょう』とぬかしおった。
 賢いエルフが、そんな口車に乗るとでも思っておるのか。キルキスの阿呆め、簡単に騙されて、乗せられるとは情けないのう」
「・・・焦魔鏡?」
「この大森林全部を焼け野原にできるような兵器だとのたまわった。大森林の広さを知らん馬鹿者のたわごとじゃ」
 大森林を焼き尽くす兵器・・・。
「そんなものが、あってたまるかい」
 村長の言葉に、指先が冷たくかじかんでいく。死人のように自分の体温がすうっと引いて行くのがわかった。
 闇が怖くて、前へ進めなかった自分。何だかわからないものが怖くて。見えないから怖くて。ルビィを追いかけることができなかった。
 人間の言うことは、きっと本当なのだろう。村長は、恐怖から、真実を見ようとしていない。
 誰かが意見すれば、また投獄され、「死刑だ」「処刑だ」という騒ぎになるのだろう。
『滅びるのか、この村は・・・』
 たぶん一瞬で。自分もおやじもおふくろも、宿屋のおばさんも防具屋のおやじも、子供も少年も妊婦も、村長もシルビナも、そして聖なるこの大木も。
『火事になったら何持って逃げる?』、なんて。たぶん、逃げるヒマさえ無いんだろう。それに、大森林をその一撃で焼き尽くすというのに、どこまで逃げれば安全だと言うのだ?
 この森から出たことのないエルフ達。

 秘密の場所の、見晴らしのよさがうらめしい。スタリオンは、ストックしてあった一番いい果実酒の瓶を握り、ここへ昇って来た。
『ちぇー、どうせみんな死ぬんだ。いい酒飲んで、いい夢見て死んだ方がいいや』
 風が、髪をなびかせていく。葉擦れの音が、気持ちいい。スタリオンは瓶のコルクを抜くと、ぐいと薄紅の液体を喉に流し込んだ。
「あーっ!それ、私とキルキスの結婚式にカンパするって言ってたヤツ!」
 すぐ足元で声がしたので、覗き込むと、シルビナが茂みから顔を出した。淡いピンクの髪に、いっぱい葉っぱがくっついていた。
「え。えーと。これはもう賞味期限が切れそうだったから。式までには、もっといい酒をゲットしてくるからさ」
 スタリオンは咄嗟に嘘をついた。みんな、何が起こったかわからずに、幸福な気分のままに逝く方がいい。
「飲むか?」
「うん」
 シルビナは笑顔で瓶を受け取り、女性にあるまじきラッパ飲みで果実酒を口に含んだ。
「甘ーい。おいしーい」
 髪の葉っぱを取ってやりながら、
「キルキス達がどこへ行くつもりか、聞いてないか?」と訊ねると、シルビナの笑顔が曇った。
「本当は、エルフの仲間にも言っちゃダメだと言われたんだけど。ドワーフの村へ行くって。ドワーフの村には、焦魔鏡を壊すことができる兵器があるらしくて」
「兵器を破壊する『兵器』か・・・・。やれやれ。
 焦魔鏡の、詳しい事を聞いたか?」
「ううん。ただ、六将軍の鉄壁のなんとかって人が入手した兵器なんだって」
「鉄壁のクワンダ。パンヌ・ヤクタの将軍だな」
 スタリオンは、首を曲げて南の方向へ視線を移動した。草原と森が切れた所から山脈の裾野が始まっている。荒れてごつごつと岩の出た斜面の上。崖の上に石作りの城壁がかすかに望めた。
「キルキス、いつ帰って来るのかなあ」
 ため息まじりのシルビナの問いに、スタリオンは返事を飲み込んだ。彼女の前髪をくしゃっと握って、笑顔を作った。
「待つのも楽しいくせに」
「いやダぁ、スタリオンったら」
 頬をピンクに染めたのは、酔いのせいか照れたせいなのか。
 死んで、いいはずはない。誰もが、死んでいいはずはない。
「シルビナ!」
「なに?どうしたの、そんなシリアスな顔をして」
「逃げよう!オレと逃げてくれ!」
 スタリオンはシルビナの細い手首を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ!私はキルキスの婚約者よ。私は彼を待つわ。
 スタリオン、あなたは幼なじみとして愛してはいるけど」
「違う違う違うーーっ!
 村のみんなで逃げるんだよ!パンヌ・ヤクタからできるだけ遠くへ。村長を説得しに行こう。孫の君の話は聞いてくれるかもしれない。協力してよ」
「スタリオン?」
 その時、パンヌ・ヤクタの城の方で、何かが光った気がした。
『焦魔“鏡”って言うくらいだし・・・。鏡を使った兵器か?』
「来るーーー!」
 スタリオンは、シルビナを抱きかかえて、樹の幹を全力で蹴って宙を飛んだ。

 ドワーフの協力は取り付けたものの、焦魔鏡の発動を止めることはできなかったキルキス達は、失意の状態でコボルト村へと休息を取りに向かった。
 エルフの村は全壊だった。幹は黒焦げになり葉も枝も焼け落ちた聖なる大樹に茫然としたキルキスは、シルビナに贈るつもりだった指輪を投げ捨てた。だが、人間の一人が拾い、彼をいさめる言葉と共に再び握らせた。
「シルビナは不幸なことになったかもしれない。だが、彼女への想いまでも捨ててしまうのか。大切に抱いていようとは思わないか?」と。
 キルキスが心を強く持とうと決意した矢先、コボルト村が帝国軍に囲まれてしまう。その時、解放軍が助けに現れた。
「なぜだ?大森林には魔法がかかっていて、エルフが先導しないと通ることはできないのに」
「へへ。オレが助けを呼びに行ったんだよ、解放軍の本拠地まで。ついでに先導もして来てやったよ」
「スタリオン!」
 服も着替えず走りっぱなしだったのだろう、白の拳法着はうす汚れ、所々かぎ裂きが出来て、血も固まったままでへばりついていた。髪を切ったのかと思ったら、焦げて短くなったらしい。結んだ毛先がちりちりに丸まり、固まっている。
「オレが韋駄天でよかったろ。いくら感謝されても足りないよなあ。さ、シルビナ」
 スタリオンの背後からおずおずと顔を出した少女は、煤けたドレスをまといマントの裾も焦げてみすぼらしかったが、見紛うことなくシルビナだった。
「シルビナ!無事だったんだ!?」
 キルキスは恋人をきつく抱きしめた。
「スタリオン、すまない。君の両親は亡くなっただろうに・・・」
 スタリオンは苦笑して、足元に視線を落とす。
「シルビナを助けなかったなら、おやじとおふくろを助けられたと思うか?違うだろ?
 今さら、もう、仕方のないことだ。おやじとおふくろだけじゃない。みんな死んじまった」
 スタリオンの肩が震えていた。
 キルキスがスタリオンの手を取り、掌で包み込んだ。
「スタリオン。できなかったことでなく、できたことを思おう。
 君はシルビナを助けた。助け切ってくれた。ありがとう。本当にありがとう」
 スタリオンの視線は、下を向いたままだ。
「シルビナを助けることができたのは偶然だよ。
 でもまあ、腕にシルビナがいたからあんなに走れた。オレ一人だったら、諦めてた」
 爪が割れたのか、血豆が裂けたのか、布の靴の爪先は血が乾いて滲みになっている。
 こんな風に走れるなら。自分がこんなことのできる男と知っていたなら。なぜ早く村長を説得しに行かなかった。投獄も処罰も、こんな結果を目の辺りにしたら、恐れるほどのことではなかったのに。いや、村長に反対されても、危険をみんなに伝えることができたはず。もっと知恵があれば。もっと勇気があれば。
 満足なんかしていない。キルキスに礼を言われても、きりきりと心が痛むだけだ。
 スタリオンは唇を噛む。
「オレも入れてよ、解放軍。走ることしかできそうにないけどさ」
 闇の中に、右足を突っ込む。そして左足も。あの時、できなかったこと。
 右足を出して次は左。そしてまた右。
 スタリオンは、前へ進もうとしていた。

< END >

★珍しくあとがきも書いた★
 ゲームでは直接描かれなかったけれど、プレイヤーとしては設定は何となく感じていました。スタリオンの気持ちはゲームの中では全く語られていませんが、「なぜ助けたのだろう?」というのは暗黙の了解なのだと思います。
 でもそれを書いてしまうと、『ゲームで敢えて描かなかった設定を、文章で表面化させただけ』になってしまうので、色恋抜きで助けた理由を捏造して描いてみました。
 ゲーム脚本の最初の予定では、エルフは全滅しキルキスだけ生き残るエピソードだったそうです。スタリオンもシルビナも助からなかった。追加された部分だったせいか、色々不自然なところもあって。
 あと、村の他の人々の死は無視されました。彼らの家族も居たはずなんだけどなあ。
 家族が死んだ悲しみをきちんと描くかどうかは、悩みました。あまりにも重く、そっちが主流になってしまうので。うーん。それも変なのだけど、もともと、ゲームの救出劇が不自然なんだってば・・・。
 それから、演出上変更したこと。キルキスが主人公達と投獄された時、ゲームではスタリオンも牢にいました。
 主人公の全然知らないエルフが、シルビナを助けて登場したり、解放軍を呼びに行ったりするのはおかしいので、牢で出会わせていたようです。
 練習のつもりで、少し若い人向けにわかりやすい話(「作者の言いたいこと」が200文字以内でまとめられるような)を作ってみました。こういう感じの小説は、私の中でも珍しいかもしれません。
 ちなみに、幻水経験者では無いかたへ。
 ルビィ君は、後にちゃんと再登場します。仲間になってくれるんですよ。キルキスがレベル41以上・・・というから、だいぶ先っすね。  


 

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