リューベの山道を抜け、やっと村にたどり着いた主人公一行は、嬌声と破壊の音に思わず足を止めた。
リューベの村が、ルカのハイランド王国軍によって襲撃されていたのだ。
燃えさかる家屋。道に倒れる人、人、人・・・。
血に飢えた狂皇子ルカが、逃げまどう村人を背中から次々と斬りつけて殺した。
追い詰められた若い女性は、震えて言った。
「た、たすけて・・・。何でもします」
「何でも? ふふふ、では、ブタの真似をしてみろ」
「ぶ、ブタですって?」
「そうだ。地面に這いつくばって、ブーブー鳴きながら歩いてみろ」
「・・・ブタより、私、トラの真似の方が得意なんですけど」
「トラ、だと?」
「は、はい。トラです」
「・・・わかった。やってみろ」
「はい、やります。・・・けっこう毛だらけ、猫灰だらけ」
「・・・?」
「お尻のまわりはク○だらけ」
「・・・????」
「生れも育ちも葛飾柴又」
「・・・・・・・。もう、いい。わかった。気がそがれた、行っていい」
「おう、おっちゃん、ありがとうよ。さーくら、おにいちゃん、今から帰るからなあ」
女性は寅さんの真似をし続けたまま、リューベの村を出ていった。
芸は身を助ける。・・・主人公はそれを目の当たりに見た。
<おしまい>