第15話 風呂屋の掟
 

   ある日、目安箱に一通の手紙が入っていた。リーダーはゆっくり封を開けた。
 手紙は、風呂一筋・ほかほかを愛するテツのオヤジからだった。
『隊長さんよお、頼むから風呂に動物を連れてくるのはやめてくれねえか。
 クマ男、オオカミ男、トリ男くらいまでなら我慢するが、犬や馬やムササビまで湯船につからせないでほしい』
 オオカミ男はボブ、トリ男はチャコたちウィングボードのことだろう。『我慢する』って言われても、クマ男は一応完全な人間なんけどなあ。そのうち自分も『悟空少年』などといわれ、猿扱いされるのかもしれない。
 リーダーは手紙を手にしてため息をついた。まだそれには続きがあった。
『他の客から苦情が出ているし、湯に動物の毛がたくさん浮いて掃除が大変なんだ。仲間を大切に思う隊長の気持ちもわかるが、おいらの立場も察してくれよ。頼むぜ。テツより』
 実は風呂に関してはリーダーも困っていた。先日は、メグにくっついていつの間にかからくり丸も入ってきてしまった。当然故障してメグが泣きながら修理した。アビズボアなどは、茹だって死にかけた。ヒトでないものが入浴しないように、何か工夫しなくては。
 
 数日後、キニスンの「あにまる健康ランド」が開店した。動物キャラ専用で、ジャグジー風呂やラベンダー風呂、海水風呂などの設備がある。ジークフリードもアビズボアも大喜びだ。ボブもわざわざ狼に変身して足を運ぶほどの気にいりようだった。
「やあ、リーダー。いいもん作ってくれて感謝してるぜ」
 ボブが、タオルを首にかけて全身の毛を拭きながら店から出てきた。
「喜んでもらえて・・・」嬉しいよ、と言うとして言葉が止まった。出口からビクトールが出てきたのだ。
「ビクトール! ここの風呂に入ったのか?」
「ああ、ボブに勧められてな。広々して気持ちよかったぞ」
「・・・受付で、止められなかったのか?」
 あっけにとられるリーダーに、ビクトールは怪訝な顔をした。
「いや、別に。なぜだ?」
 今まで自分はビクが『完全な人間』だと思っていたが、もしかして人には違って見えるのかもしれない。恐るべし、クマ男。

☆おわり☆  



風呂で初めてジークフリードが女の子だと知る。ムササビ五人衆は私は仲間にしきれませんでしたが、ちゃんと男女の別があるのでしょうねえ。他のRPGゲームもよく入浴シーンがあるけれど、たいてい少年ファンへのサービスでした。「幻水」はどう考えても、女性ファンへのサービスですよね。


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