第45話 『十代目・大蒜屋 銀銃郎(じゅうだいめ・にんにくや ぎんじゅうろう)』   


 「ペペロンチーノの大盛り。ニンニクを多めに」
 カーンはメニューを閉じてウェイトレスに返した。
 ビクトールはビールをあおりながら笑う。
「ネクロードを倒した後も、ご立派なことだな」
 カーンもにが笑いして、
「今では、ニンニクが入っていない料理はものたりないんだ」
「パスタが来るまで、つまんでてくれよ。ガーリックトーストだ」
「いただこう。・・・ふん。生ではなく、乾燥させた粉末を使ってるな。ハイ・ヨーのレストランもこんなものか」
「まるでニンニク評論家だ。ネクロードがいなくなって、バンパイヤ・ハンターの仕事も廃業だろう。ニンニク道でも極めてみるか?」
 からかい気味にビクトールが言うと、カーンは真面目な顔になった。
「世界中に、何人吸血鬼がいると思ってる。マリィ家の仕事に終焉はない」
 ビクトールはまばたきし、ジョッキを握る手を止めた。
「そ、そんなにいるのか、奴のお仲間は」
「見ろ、この文献の多さを」
 カーンは、脇に置いたカバンから、資料・文献をざっとテーブルに広げた。本だけでない、CD−R、ビデオ、etc.・・・・・・。
『こんなにまだ吸血鬼がいるのか? オレの村のみんなのように、被害を受けている人達がいるのか!』
 ビクトールは震える手で一冊を取った。
「・・・ミッシィコミックス・デラックス? 主婦と生活社?」
『絹の金髪 氷の微笑み 美しき闇の使徒 アルカーディ・アルカード・・・』
「これ、少女まんがじゃねえか。しかもコメディ・・・」
(めるへんめーかー『ヴァンパイヤ幻想たん』である。うちの辞書は「たん」の字が出ない。しくしく)
「コメディは嫌いか? じゃあ、これはどうだ。泣けるぞ」
「『ポーの一族』。デイジーが持ってたな。・・・いや、そうじゃなくて」
 ビクトールは気を取り直して、CR−Rに手を伸ばした。
「『伝説のオウガバトル』?」
「このゲームは凝っていてな、夜はバンパイヤなんだが、昼は棺桶に入ってるんだ」
「・・・・・・。」
「棺桶だと、攻撃されても殆どダメージはない」
「・・・・・・。」
 ビクトールは黙ってテーブルの資料(?)をカーンのバッグにしまい始めた。ウェイトレスが、ガーリックを漂わせてペペロンチーノを運んで来ようとしていた。

                            ☆ おわり ☆


私は、朝ごはんにガーリックトーストを食べ、今は昼の1時半だが、まだ息が臭い。   カーンで79人目。まだまだ先は長い。


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