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『それは剣と言うにはあまりもに大きすぎた。大きく分厚く、重く、そして大雑把すぎた。それは、正に、鉄塊だった。』 「いい食いっぷりだな。ここのマズイ飯がよくそんなに食えるものだ」 ザムザは軽蔑しきった視線で、べたつくチャーハンをかっこむリキマルを見ていた。リキマルはちらと視線を皿から離し、にっと笑ってみせる。 「ハラが減ってりゃ、何でも満貫全席でさあ」 ハイ・ヨーのレストランで相席になった二人だ。気取り屋で自惚れの強いザムザは、がらっぱちでおおらかなリキマルとは気が合わないのがわかっていたので、それまで好んで話をしたことなどなかったが。 ザムザが頼んでいたステーキが来た。ウェルダンと言ったのに、ナイフを入れたら血が滲み出て来た。だからここのレストランはイヤなんだ。 「覇っ!」 ザムザは拳を突き出した。ぼうっ炎が吹き出し、肉をちりちりと焼いた。リキマルも思わずれんげを握る手を止め、その技に見入った。 「便利なもんっすねえ」 「便利? みごと、と言ってくれたまえ」 しかし、そのみごとな技も、戦闘で使われることは少ない。扱いにくい性格のせいで、パーティーに入れてもらえないからだ。『あらぶる鉄拳』も、今は肉を焼くぐらいしか使い道がない。これでは『あぶる鉄拳』である。 「ザムザさんは、拳が武器だから、荷物が軽くていいっすよね。あっしの『鬼丸』なんて、持ち上げるだけでハラが空いちまいますよ」 リキマルは、テーブルの横の壁に立てかけた鉄塊をぽんぽんと叩いた。等身大の菜切り包丁といった外見のその剣は、テッサイの手によってみごとに鍛え込まれていた。ザムザは、自分の鉄拳とこの鬼丸が、鍛えるのに同じ値段なことを不満に思いふくれた。 その時。カタカタと、テーブルの上の食器が音をたてたような気がした。 「・・・?」 地震だ! がくんとザムザの体が後ろにのけぞった。リキマルは椅子から転がり落ちた。ハイ・ヨーの悲鳴とともに、厨房では派手な音がしている。 「ザムザのだんなも、早くテーブルの下に!」 リキマルが、テーブルクロスをめくって中に入りながら叫んだ。 「・・・その前に、この剣を早くどけんかっ!」 ザムザは倒れて来た鬼丸の下敷きになって、手足をじたばたさせていた。 「やあ、だんな、運がよかったっすね。刃が下になっって倒れたら、胴体がすっぱりってとこでしたね」 おわり |
先日まで、ドリキャスの『ベルセルク』をプレイしていたので、つい。
この展開だと、リキマルの仇討ちの内容も想像つく。 いいなづけが、もののけに酷い目に遭って、云々(笑)。 |